<2006.09.23 K.Kotani>「ピピアめふアニメーション教室」特別講座 20


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2006年09月23日

「ピピアめふアニメーション教室」特別講座 20




 セルアニメの基本的操作については前回説明したため、今回は「アニメスタジオII」のカメラワーク的手法について説明します。

 カメラワークとは

 カメラワークとは、実写においてはカメラの移動や方向転換、レンズのズームやピント操作等によって画面の変化をつくり出すものである。

 実写の対象はカメラの前にあるものであり、「山」や「海」を動かす事は出来ないため、カメラの方を動かすしかない。方向を変えるだけなら三脚の頭を回せばよいが、横に移動するとか、高さと角度を変える場合は、三脚ごと台車に載せてレールの上を走らせたり、クレーンに載せて動かしたりした。ニュースなどではそういうものの準備ができないため、カメラを持ってカメラマンが走るため、カメラがぶれて画面がぐらぐら揺れるが、その迫真感を出すため、映画でも手持ちで撮影する場合がある。

 アニメーションにおいては、撮影される対象はペッタンコな絵であって、立体感は「遠近法」で描くとか、絵の方で工夫されてきた。
 立体感を出すための各種試みが続いた後、ウォルト・ディズニースタジオの開発した「マルチプレーン」方式が標準方法として確立した。
 これはカメラから見て何層かの絵を距離を違えてならべ、ピントの違いにより立体感を出す事ができる。また、カメラを横に移動する効果の場合、各層の動きを違える事により、あたかも各層がカメラから違う距離に有るように見せる事ができた。
 さらにカメラが絵に寄って行く場合、距離によって大きくなり方が違うため、よりリアルな立体感を表現させる事ができる。

 ※人間は両目で見る事により立体感を認識するが、両目で見ても平面の絵は立体としては認識できない。しかし片目で見ても、立体物はある程度は遠近感は把握できる。それは距離によって目のピント位置が異なり、それによってある程度の距離感がつかめるためである。また、距離の有るもの同士については「移動」により立体物である事を認識できる。

 このマルチプレーン撮影台は、構造上巨大となり、また各層の移動に精密性を要求されるため、大手スタジオのステイタス・シンボルとして各スタジオに君臨していたが、現在は博物館で余生を過ごす状態となっている。(杉並アニメーションミュージアムに現物が展示されているそうです)
 さて、アマチュアレベルでは、そもそも「カメラを精密に動かす」という事自体が困難であり、基本的にカメラは「固定」して、作画で変化を出すという手法が選ばれてきた。
 ごく少数の作者がカメラワークによる表現に挑戦したが、がくがく動く画面になってしまい「お笑い」となってしまった。

 その後、パソコンの進化により、プロの世界ではフィルムによる撮影が「サザエさん」を除いてなくなってしまい、平行してアマチュアの世界では以前より始まっていた3Dの立体CGアニメに加え、2Dアニメが「アニメスタジオII」や「RETAS LITE」などの廉価版ソフトの出現によって、8ミリフィルムが衰退後「絶滅」も危惧されていた自主制作アニメが劇的に復活、ビデオにパッケージしてマニア向けの店で常設販売されるような状態となった。

 2Dアニメソフトの機能としては、前回講座でやったセルワークに加え、

1.1フレーム単位でのぶれのないスムースなカメラ移動
2.同じくピント移動による立体表現
3.複数層対応によるマルチプレーン表現

 などが可能となった。


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