2008.3.22 K.Kotani>
「ピピアめふアニメーション教室」特別講座 31
毎月読める日本で唯一の自主アニメ情報誌
月刊近メ像インターネット
2008年3月22日
「ピピアめふアニメーション教室」特別講座 31
「コマ撮りの世界」
コマ撮りについて
元々映画のカメラは定速でフィルムを送り、一旦停止させては撮影、一こま送っては撮影、というプロセスをサイレントでは毎秒 16コマ、トーキーでは毎秒24コマ繰り返す機械である。ビデオカメラの場合は、毎秒30フレームの画面を一定のペースでテーブに書き込んでいく。このペースを維持するために家庭用ビデオではヘッドを傾けて幅広のテープに斜めに短冊状に書き込んでいくという技術が開発され、それを実現するためのヘッドを支える軸受けの精度が米ソの戦略核ミサイルの部品より精度が高くなったというので、昔話題になった。
普通の写真のカメラは一こま撮り専用である。まれに連続撮影の出来る機種もあるが、毎秒数枚のレベルである。
アマチュア用の映画のカメラ(16/8mm)でコマ撮りがされていたが、普及機にはコマ撮り機能がついていなかった。一こま送って撮影する、というメカニックを必要としない人が多く、(運動会の記録用には使わない)すべてをメカ的にコントロールしていた時代では、不要な機能は省略して価格を下げる事が必要だった。
フィルムからビデオに移行した時、このコマ撮り機能はほとんど継承されなかった。もともと一こま撮影しては一こま送るという機能を持っていたフィルムカメラは割と簡単に一こま機能が載せられたが、ビデオカメラは高精度のヘッドが定速で走るテープに映像信号を書き込むという形になっており、停止したフィルムに撮影するというフィルムと異なり、記録時に定速でテープが走っていないといけない。このため、「いったんテープをある程度巻き戻す」「戻したテープを走らせる」「走って定速になった時に一瞬書き込む」「テープを止める」という作業を行うことになった。一部の8mmビデオで、4フレーム(毎秒7.5コマ)撮影ができるようになったが、作品作りに使用されたケースは少なかった。
ビデオは8mmからミニDVに進化したが、なぜかコマ撮り能力は毎秒7.5コマから毎秒5コマ(6フレーム撮り)に落ちた。ますます作品作りには使われなくなった。
一方もともとコマ撮りのできる(コマ撮りしかできない)スチルカメラは、銀塩フィルムからデジタルカメラに移行した。この過程で動画がとれるデジタルスチルカメラも登場したが、「コマ撮りで動画が作れる」というカメラは現れなかった。一方、ムービーカメラの方も撮像素子数がどんどん増え、「静止画もとれる」ものがどんどん現れた。ここまでくるとムービーカメラとデジタルスチルカメラの境界があいまいになってくる。
あいまいになってくるが、アニメーション用のデジタルカメラ・ビデオカメラというのはついに出でこない。というのは、同時期にアニメーション制作のコンピュータ処理化が進み、「コマ撮り」という概念そのものがあいまいになってきたのである。
昔のテレビアニメで言えば、アニメーターが原画・動画を描き、背景画家が背景を描く。動画はセルにトレスされ、ペイントされて背景と重ね合わされ、ムービーカメラでコマ撮りされる。
現在では原画・動画を描くまでは一緒だが、動画はトレスされるのではなくスキャナーでパソコンに取り込まれ、パソコン上で着色される。別に用意された背景が取り込まれる(パソコン上で直接描かれる事もある)。この背景とパソコン上で着色された原画がパソコン上で重ね合わされ、一枚の絵になる。この絵は数千枚保存され、組み合わされて「動き」を作り出す。
どこで「コマ撮り」されたのかというと、動画が描かれてから最終的に動きが作られるまでの間で「コマ撮り」という作業は分散されて行われているという事である。
CGの場合はさらにあいまいになる。昔は1枚ずつ確かに作られていたが、最近のようにパソコンが高速になると、簡単な絵柄なら、毎秒数十枚で絵を作る事が可能になり、そうすると目で見ているのと同速度以上で絵が作られる為、コマ撮りでなく、流し撮りに近くなる。ゲームのプレイ画面はすべて作られた画像であるが、「あれはアニメーションか」という事になる。
立体アニメの場合は、デジタルスチルカメラで撮られるのが一般的になってきたため、昔のコマ撮りにやや近い。デジタルスチルカメラで静止画を撮り、それをパソコンに取り込んで並べて動画を出力する。もちろんパソコン内である程度静止画を加工する事もあるが、カメラの前で撮影されるものすべてを並べるという点では昔のコマ撮りと同じである。
昔、写真アニメというのがあり、(今でもあるが)銀塩カメラで撮った何十枚もの写真を焼き付けてアニメの原画とし、8mmや16mmカメラでコマ撮りしてアニメにするというものであった。いったん写真にしたものをコマ撮りするため、順番を逆にしたり間を飛ばしたり、複数の写真を組み合わせたりで自由な動きは作れたが、画質はムービーカメラでそのままコマ撮りしたものに比べると色はあせ、粒子は荒い、というものだった。大体写真の焼き付け代がばかにならなかったので、あまり多い枚数のものは作れなかった。
現在のアニメの制作プロセスはこの写真アニメと似ているが、取り込んだ写真を並べ替える段階で再撮影を必要としないため、画質の劣化がない。
動きの「なめらかさ」
映画のフィルムは毎秒24コマで動いている。実写の場合は実際の動きを1/24に分解した静止画にして記録し、毎秒24コマで再生する事により、「動き」を再現している。もちろん実際には「静止画」を連続して見ているだけで、人間が動きを錯覚しているだけである。
元の動きを図で描くとこうなる。なめらかな斜めの線である。
1/24コマで撮影した動きを図にするとこうなる。まだ線に見える。
さらに毎秒12枚だとこうなる。だんだん階段に近くなる。
TVアニメレベル・毎秒8コマ・3コマ撮りだとこうなる。
以上のようにだんだん「線」には見えなくなってくる。ミニDVによるコマ撮り・毎秒5コマ・6フレーム撮りだとこうなる。(ビデオは毎秒30フレーム)ほとんど「階段」で、「ガクガク」という動きになる。
実際には人間は頭の中で動きを補完しているようで、3コマ撮りでも結構なめらかに見える。補完された動きを図で描くとこうなる。
だだし、カメラを水平に振るとか、横にセルを移動させてコマ撮りするような場合には3コマ撮りではがたがたして見える。動画の場合は1枚1枚が少しずつ形が違う為、間を補完する作用がわりと働くようだが、止まった絵の場合はやや違和感があるようで、実際のアニメの撮影でのこの部分は1コマ撮りをしている。
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