<2008.9.21 K.Kotani>「ピピアめふアニメーション教室」特別講座 33


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2008年9月21日

「ピピアめふアニメーション教室」特別講座 33





「動きの秘密 その7」


 アニメーションは動きでものを表現する。
 「マンガ」は動かないが、静止画と擬音、コマ割りの組合わせで動きを表現し、ものを表現する。かってのトキワ荘時代の漫画家が皆アニメーション制作にあこがれており、ついにはアニメスタジオを作ったものまで出た。
 動かない芸術作品(絵画、彫刻、立体造形などなど)は静止した姿でものを表現する。
 動く芸術作品(映画、演劇)なども、アニメーションと同じく、動きでものを表現する。
 音楽は動きでものを表現するわけではないが、時間軸を使って一定の時間の中で音の高低、音色、音の大小などを組み合わせてものを表現する。

 動かない「映像」作品

 大島渚の「忍者武芸帳」という、漫画のコマを映画のカメラで撮影して、一本の映画にしたものがあり、パン・ズームイン・アウトなど、カメラ技法で映像に動きを付けたものであるが、絵自体はまったく動かず、「漫画映画」ではあるが、「アニメーション」ではない。
 現代アーティストのアンディ・ウォーホールの作品に「眠り」という寝ている男を8時間写し続けた作品があり、止まっているのではないが、まったく変化のない映像が8時間続いている。
 TVアニメーションも「動かないアニメーション」として、既存のアニメーション関係者より攻撃された時期があった。(現在でも批判する人はいる)現在では逆に、枚数を使えない制約から発達したカメラワークによる表現が海外でも評価されている。

 動けば良いというわけではなく

 アニメーションは動けば良い、というわけではなく、というのは動けば良い、というのであれば何が何でもたくさん枚数を描いた方の勝ちという事になってしまう。最近の話題(笑)で、「崖の上のポニョ」が、フルアニメの毎秒24枚を超えた毎秒28枚の動画を使ったので「超フルアニメ」というよく分かっていないマスコミのコメントがあったそうだ。一番枚数を使ったカットではセル10層重ねで毎秒100枚位の動画を描いたとの事だが、当然毎秒24コマを超えるはずもなく、逆にセルの多層重ねは省力化の技法として使われているのである。画面の中に数百匹の魚やら海藻やらなんやらが動き回るのを一枚の動画に書き込んだのでは何がなんだかわからなくなるだろう。
 日本の古典的演劇表現として「止め」「決め」で表現するというスタイルがあり、我々はそれを無意識のうちに継承している。TVアニメが最初から受け入れられたのもその一つの結果だろう。
 昔はアメリカのTVアニメも予算の関係でさっばり動かなかったが、最近のJLAシリーズや「ティーン・タイタンズ」などは、劇場版長編アニメほどの動きではないが、なめらかに実によく動く。これは動画を人件費の安い海外(日本も含まれているらしい)に発注できるようになった事と、アニメーションはなめらかに動くものだと言うアメリカの観客の要望に答えた結果ではないか。

 実写に迫る

 最近のCGアニメの進歩は、ほぼ実写と同じものを再現できるレベルまできており、劇場用映画などでは特撮を使わずCGを使う様になってきている。ジェラシック・パークでも当初機械仕掛けの恐竜を準備したが、CGの出来映えを見て急遽全部CGに変更したとの事だから、大分以前からの話である。そうなるとアニメが要らなくなるのではなくて、実写が要らなくなるのだろうか?

 手描きの復権

 一時、「ファインディング・ニモ」のヒット後、アメリカのアニメーション会社が一斉に平面アニメから撤退、3DのCGに移行したが、最近ではまた平面アニメも作られてきている。東京のディズニースタジオも撤退したが、最近また会社を作って平面アニメを作っているらしい。
 TVのコマーシャルのCGアニメも、いかにもCGでございます、というCGは影を潜め、見た目は人形や切り紙としか思えないアニメがCG技術で作られている。  



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