<2009.7.19 K.Kotani>「ピピアめふアニメーション教室」特別講座 36


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2009年7月19日

「ピピアめふアニメーション教室」特別講座 36





「切り紙アニメを作る」

切り紙アニメーション

 切り紙アニメ(英語ではCUT OUT "切り抜きアニメ")は、背景の上に切り抜いたキャラクターを載せ、少しずつ動かしたり取り替えたりして動かすテクニックで、アニメーションの初期よりよく使われた。
 しかし人形アニメに近い、アニメーターが撮影現場で直接キャラクターを動かす制作形態であるため、分業化が効かず、セルアニメの発明とともに、商業アニメの世界からは次第に姿を消した。
 日本においては、製作費が少なく、高価なセルの代用にされたり、また、少人数での家内手工業的な制作形態に切り紙アニメで適していた事もあり、商業アニメの初期より作品制作が続けられていたが、セルの普及に伴いだんだん姿を消した。

 生き延びた切り紙アニメーション
 切り紙アニメーションを駆逐したかに思えるセル・アニメーションだが、分業化が可能な反面、原画・トレス・彩色というプロセスを経て完成した撮影素材となるため、特に初期のハンドトレスの時期には画家のオリジナルな絵が完全に反映されない・ベタッとした色使いしか出来ないという短所もあった。
 日本では独自路線を歩む大藤信郎が影絵アニメ・千代紙アニメの秀作を作った。ペーパーの質感を活かす技法はセルアニメでは出来ない技法であり、海外でも注目された。
 旧ソ連の国営スタジオでは、人形アニメや実験的な採算ベースにのらない作品も作られ、その中に切り紙アニメもあった。
 また、カナダのNFBでも切り紙アニメの秀作が製作された。
 量産が効かない反面、画家のタッチが活かされ、個性的な作品作りが可能な切り紙アニメーションは個人制作に近い制作形態の中で作り続けられて行くようになった。
 こうして切り紙アニメーションはアート系アニメーションの一ジャンルとしての地位を確立した。

 自主制作の切り紙アニメ

 自主制作の世界でも初期より切り紙アニメは多く作られた。初期にはいかにもセルアニメの代用としか思えない作品があったが、アート系の作品が多く作られるようになると、切り紙アニメーションの特色を活かした秀作が次々と作られた。

 切り紙風CGアニメ

 コンピュータが低価格化し、個人でも手軽に制作できるようになると、切り紙アニメの制作にも活用されるようになった。オリジナルの絵を取り込んで自由自在に複写・加工できるコンピュータは、今後新しい映像表現を生む事が期待される。最近国家的支援を受けて盛り上がっている韓国では、人形・粘土アニメは3DCGにほぼ置き換えられているようだが、切り紙アニメは「デジタル・カット・アウト」として生き延びている。

切り紙アニメーションの手法

 切り紙アニメの基本手法は、切り抜いた動画を背景の上に置き、撮影しては少しずつ動かしていく方法である。作画枚数は少なくてよいが、ペーパーアニメやセルアニメと異なり、動き作りが一発勝負で、少数の熟練アニメーターによってのみ制作可能である。
 また、少しずつ違った絵を置き換えていく手法もある。
 キャラクターに人形アニメのように関節をつける方法もあるが、「置き換え」が使えないので、胴体と手足のパーツをつなげてしまう事のデメリットもあり、バラバラのパーツで組み立てる事が多い。
 切り紙アニメの特色として、紙や布の材質を活かした絵作りができる事があげられる。最近ではCGでも類似の効果が出せるようにはなってきたが、繰り返しややりなおしが比較的自由にできる半面,本来の切り紙アニメらしい材質の質感の表現ではまだ本物には及ばない。
 撮影は、昔ながらのフィルムでの撮影も一部では行われているようだが、最近ではほぼデジタルでの撮影に移行していると思われる。すなわち、デジカメでの撮影と、パソコンでの動画化である。デジカメでの撮影は従来のフィルムでの撮影にほぼ近く,撮影後のカメラ処理も可能である。スキャナーによる取り込みは構造上、デジタル・カット・アウトでしか利用できない。


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