2010.1.17 K.Kotani>
「ピピアめふアニメーション教室」特別講座 39
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月刊近メ像インターネット
2010年1月17日
「ピピアめふアニメーション教室」特別講座 39
「動きの秘密 その8」
動きの秘密 その8
まず、
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の絵をごらんいただきたい。
個人差もあり、絵の大きさにもよるが,例えば2番目の絵では、内側の絵が反時計回りに,外側の絵が時計回りにゆっくり動いて見えるはずである。もちろんこの絵は動いている訳ではない。
これを「錯視」と言い,動きの他、同じ長さのものが違って見えたり,絵の一部の明るさが実際より違って見えたりする現象である。
人間の目というのは、実際には目の前に有るものすべてがはっきり見えている訳ではなく,文字を文字として認識できるのは視界の中心の本の一部にすぎない。あとはぼやけて見えているのだが,視界のあちこちをきょろきょろした結果を脳の中で統合して「はっきりした風景」を頭の中で作り出しているのである。
この、いろいろな要素を統合して、ひとつの風景にする、という脳の作用の結果、特定のパターンの絵が「止まっているのに動いていたり」、「実際の形・色と違って見えたり」する訳である。
昔,モンキー・パンチという漫画家がテレビのCMのアニメを受注して,自分で動画を全部描いてアニメーターの大塚康生氏に見てもらった事が有る。大塚氏が「キャラクターの大きさがおかしい。ばらつきがある」と指摘したところ、モンキー・パンチ氏は「そんなはずはない。ちゃんと狂わない様に物差しで測って大きさはそろえてある。」と言った。大塚氏が計ってみると,たしかにキャラクターの大きさは狂っていなかった。
実際の人間が演技して撮影する場合,人間の大きさは変わらないから,画面の上での大きさも、カメラからの距離が変わらない限り変化しない。
アニメーションのキャラクターの場合,プロポーションにかなり無理のあるケースがあり、例えばドラえもんが腕組みをしたり、正座をしたりすると、あの手足の太さと短さでは無理なので,手が伸びたり,足が伸びたりする。
実際の人間にかなり近いプロポーションのキャラクターの場合でも,超広角で撮ったような遠近感の誇張された形で描かれたり,手足が伸び縮みして作画されるケースはまれではない。
ベテランのアニメーターは、「作画」→「撮影」→「動きチェック」のプロセスを繰り返し繰り返し体験しており、「こう作画すればこう見える」という事を体で覚えている。また、一部の作画パターンは様式化されて、ルーティン化された作品制作に生かされている。(斜め下からの走りのフォローの8の字動き、目の光の動きによる涙の表現など) この「動きの蓄積」があったが故に,商業アニメでの2D・セルアニメの時代が長く続いたとも言えるだろう。
逆に,実写の人物をトレースして動かす「ライブ・アクション」のアニメキャラクターに妙な違和感を感じるのは,本来人間の感覚に合わせて伸び縮みするはずのキャラクターが律儀にリアルサイズを守ったまま動いているからとも言える。初期のCGのキャラクターが自然でなかったのもそういう点もあるだろう。
実写映画やテレビドラマの動きををおかしい、と思わないのは,「実写自身」だからであろう。
また、手足を伸び縮みさせない人形アニメで、フルアニメに近い動きをするキャラクターに感じる違和感もそうなのかもしれない。この問題に答えるべく,人形アニメの大家 川本喜八郎氏の作品の数々が、限定された動きによるストイックな表現に徹しているのは、作家としての本能的にその点に気付いている為かもしれない。
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