「愛知りし者」

人々は
幾千万の昼の中に
いったい何を見てきたのだろう
人々は
幾千万の夜の果てに
いったい何を想ってきたのだろう

人が愛を知ってから
幾千万回の落日があった
そしてそれと同じ数の
夜、そして夜明けがあった
その時間の中で
その時代の中で
人は人を憎み
人は人を愛し
人は人と歩いてきた

夜の星を見て
泣いた人の数も数え切れない
なのに
私たちの先祖は
心をなくした人間を
つくってしまった

最初に仲間を愛したけものが
最初に仲間を憎んだことは
いまさら言うべきことでもないが
最初に仲間を愛したけものが
最初に愛を失わないと
誰が断言できようか

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