「暗渠時流」

ただ一つの伝説として
もうはるかな思い出として
僕らは
時の流れを知っている
コンクリートの上に
チョークを使って
描くことこそできないが

あの日僕は
横笛を吹きながら
街を行く者を見た
それがどんな意味を持っていたのか
知りはしないが

空蝉の世のならいとして
人はいつしか
時におわれるのだ
その流れすら
知りはしないのに

そんなすべてが
時の流れの表層で
演じられている
三文芝居
ただ
幕は下りないと
それだけで
現実と名づけられている

地下を流れる
「時間」
のきしみが
君には聞こえないか

ただ一つの伝説として
もうはるかな思い出として
僕らは
時の流れを知っている

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