「春寒」

消え残った冬のかけらが
窓から忍び込む
指先のタバコが
一瞬ふるえる
何かを思い出したのではない
ただ寒さなのだ
そう自分を言いくるめて
軽く深呼吸をする
寒さの手が伸びてきたら
身をかわすことだ
夜と目が合いそうになったら
目を閉じてしまうことだ
始まったばかりの春が
通り過ぎてしまうまで
私の友ではない春が
通り過ぎてしまうまで

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