原まこと氏がまた初音ミクにうたわせてくれました。
「つぼみ、さくら」
あまりの寒さに
二分咲きのまま固まった桜は
年とることを知らぬ
少女アイドル
つぼみの風情を残したまま
寒風に薄く紅差し
清純に微笑む
せめて少しの間
その姿を見続けようと
この花冷えは
遠まわしなやさしさ
二分咲きの華奢な枝の間に
透かし見るのは
少女の水着写真集の
心に刺さる痛々しさ
色白な少女は
少し振るえ
やわらかく咲き
ほら、あそこにも
むこうにも
一分咲き
三分咲き
そしてあと一週間
でも花は咲くのだ
咲き誇り
空を覆い
痛みすら埋め
フェードアウト
「燐寸売りの少女」
12月の冷え切った指先で
言葉を拾い集める
かじかんだ手は不器用で
取り落としてはまたつまみ
大切に手のひらに乗せる
手のひらの中では
積もった言葉がカタカタと震え
見つめる私の首は
かくかくと揺らぎ
世界が凍えているから
言葉を燃やして暖を取ろう
12月の夜に
燐寸売りの少女のように
12月のしびれる舌先で
言葉の味を確かめる
結晶した言葉の角は
なめる舌を切り裂き
ただ鉄の味だけが
口の中に広がる
やがて体温で融けた言葉が
口の中に広がり
緩やかなハーモニーを
奏でることを夢見て
12月の寒さはやがて
睡魔へと変わり
少女と私は幸せに眠る