その時、堤の下から呼びかけてくる者がありました。
「おぅアンタ、その他所モンの知り合いかい?とっととソイツ、連れて帰ってくれや…出来たばかりの堤から人柱は抜いちまうし…ロクなことしやがらねぇ…」
声の先では、通りすがりの農民と思しき男が、訝げな視線を私に向けておりました。
「ぶ、無礼者っ!この御方をどなたと…」
「よせ、三郎…」
「いえ、久世の次期当主ともあろう御方が、領民にソイツ呼ばわり等…許されることではありませぬ!」
私は思わず、大きな声で一喝してしまいました。
頼人様が身分を隠されていることを、すっかり忘れていたのでございます。
「ひえっ!?」
「なに?どういうことだ?父上は…俺の留守中には決めぬと申されていたが…」
あわてて平伏する男と、頼人様の険しい声で、私は我にかえりました。
「はい…半月ほど前、一輔殿から書状が届きまして、一読されました大殿は、私に頼人様を迎えに行く様、お命じになりました。
文の詳しい内容は存じませぬが…私が出発する直前、兄上様たちの乗られた牛車が突然…」
そこまで口にしたところで、頼人様が私の言葉を遮りました。
「…そうか、わかった。そういうことか父上…そこまでして…」
頼人様はしばらく黙考しておられましたが、やがて平伏したままの男に声を掛けました。
「狭霧の望みは…"里の者が幸せに暮らせますように"…だった…
細工されたくじで…無理矢理押し付けられた役目と知ってなお、そう願っていた…
そんな彼女に、貴様達は…」
「お、恐れながら…何の役にも立たぬあのような小娘に…」
「!」
頼人様が息を呑む音に続いて、この世のものとも思えぬ大音声が響き渡りました。
「だまれぇっ!」
「ひぃっ!」
私は…頼人様のあのように恐ろしい形相を見るのは初めてでした。
いつも…どこかに余裕を残していた頼人様からは想像もつかぬ…深い哀しみと…激しい怒りと…どうしようもない絶望と…大きな自責の念が…ない混ぜになったお顔でした。
「行くぞ、三郎…家は大騒ぎなのであろう?」
しばらくして私にそう告げて歩き出した頼人様は…もういつもの平静を取り戻しておいでのようでした。
「…」
「は?何かおっしゃいましたか?」
「いや、何でもない…」
私の聞き違えでなければ…頼人様はこうつぶやいておられました。
「狭霧…俺は…どうすれば良い?」
その後、踏鞴の里は…
狭霧の願いが叶うのであれば…頼人との出逢いが…銀糸の力だったということか…
しかし…「踏鞴の社」はヤバかったっす。
まんま、マルチシナリオですからねぇ…(しかも、帰ってこない)
主人公側から見ると、心がHM-12には反映されないことや、彼女の存在そのものが長瀬の悪意の結果だと、事前に知ってしまうようなモノで…
さらに、彼女自身がソレを知っていて、あえて受け入れてることも知ってしまう…
う…わぁ…(涙)