3月21日(土) 晴れ 八ヶ岳東面の赤岳東稜、旭岳東稜をトレースした頃、北アルプスの明神岳東稜に凝っていたことも あり、それらを合わせて「東稜三部作」と名付けたところ、花村さんから「そこは権現岳東稜だろう」 とツッコミが入った。 何となく、自分の技量以上のルートの気がして気後れして数えることができない一方で気になって いたそのルートを、今年の初めに松野さんが口に出したところから山行決行が決まった。 最初、2月最後の週末に行くつもりだったが天気が思わしくなかったため、土曜日に日帰りで偵察 山行に切り替えた。駐車場から見る権現岳は真っ白で、これでは天気が良くても無理だったねと心 を慰めながら東稜に取りつき、尾根を少しトレースして帰った。 この偵察山行で、暗いうちに行動開始しても問題ないと判断し、当初の計画を変更して旭岳東稜 取付き付近をベースに日帰り装備でアタックすることにした。 美し森駐車場には下見のときには1台も車はなかったが、今回は登山者らしい車がたくさんあった。 自分たちが支度をしている間にも続々と車が入ったきた。みんなベテランに見え、どこに行くのか 聞かれませんようにと思いながら駐車場を後にする。 鹿の死骸が気になる林道を地獄谷へと歩き、緩んだ雪で沢の渡渉に苦労するのではないかと心配 したがそれほどでもなく、無事に出合小屋まで。ガチャガチャと登攀装備を鳴らして出発する人々を 見送りながら休憩する。そこからもう少し奥に入った旭岳東稜取付付近にテントを張る。竹ペグを忘 れるも、四方に木があるところに張って事なきを得る。 テントを張った後は、取付きの様子を見に行く。下見の時と違って谷にはトレースがあり、谷から見上 げる権現岳は黒々としている。 ゴルジュを抜けた先の斜面のトレースは消えていたが明日行動するのに問題はないだろうと尾根には 上がらずに来た道を戻る。戻る途中で登って行く人にもすれ違う。 テントに戻った後は水汲みに行く。なかなか水のところに下りられるところがなくて、出合小屋の少し 下まで戻る。水づくりの必要がなくなったため、気象通報までのんびりお昼寝。 (タイム) 7:25 駐車場〜10:00 出合小屋 〜10:30 テント場 3月22日(日) 晴れ 午前2時起床、4時前にヘッドライトを点けて出発する。この前にテントの傍を通過して行った足音も あった。昨日は緩んで踏み抜きもあったトレースはしっかり固まって歩きやすい。昨日の午後、テント で惰眠をむさぼっているときに、ツルネの方へ行った人がわざわざ自分たちのテントに声をかけて 「熊を見たので注意してください!」と忠告して行ったので、念のため、冬でも何故か持っていた熊除 けの鈴を鳴らしながら進む。トレースはゴルジュ先の斜面にも続き、ステップの深さから昨日の苦労 がうかがえた。急斜面の途中に大穴が開いていて、抜け出す苦労を想像してげっそりした。 尾根に乗ってすぐは細い尾根が続き、登りながら見回せば、隣の旭岳東稜や天狗尾根、真教寺尾根 の方にもヘッドライトの灯りが見えた。間もなく(2200m付近)尾根が広がりテントを張れそうな所も 出てくるが、先行者のテントはまだない。さらに30分くらい登ったところでやっと2張のテントが間を空 けて張ってあった。 樹林を抜けて明るくなった場所で休憩していると男性2人組が追い越して行った。その2人が岩峰手 前のトラバースを前にロープを出す準備をしていた。自分たちもここからロープを出すことにした。支 度をしているともう一つのテントの男女2人組(男性はおそらくガイド)が追いついてきて、そのまま先 へ行った。 1ピッチ目、自分からスタート。トラバースしているとあっという間に「ロープ半分!」のコール。ダケ カンバの生える草付に入り、先行者の少し下でピッチを切る。2ピッチ目、草付の急な傾斜を松野さ んがリードしていく。先行者と同じ木を使ってビレイしていて、楽しそうに話していた。 ここから先、先行者のリードは先頭の男女2人組の後に付いているらしいが、ビレイ点が限定されて いるのか、途中で待機している様子。待っている間に別の男性2人組が登ってきた。先の男性2人組 は正面の草付を登ってバンドに出ていたが、先頭の男女2人組は左側を登って岩の取付まで上がっ ていて、そのトレースを使って後の男性2人組も岩の取付きに上がって行ってしまい、何だかごちゃご ちゃしてきた。待ち時間4時間で撤退という実績もあるルートらしいから気持ちは分からんじゃないけ ど、自分はマイぺでいきたい。 結局、正面の草付を上がってバンドに出たところで40分程待ち、バンドを回り込んで岩の取付きに 出ると後からきた2人組が待機していた。この2人が後ろから来るのが嫌なので、先を譲る。案の定、 先のセカンドがまだいるのに登って行き、同じ支点でセルフを取ってセカンドがスタートするときに 自分のセルフをくぐらせていた。知らない人とあの距離は嫌だ。 上のリードのビレイ解除のコールを機にやっとスタート。岩の取付きでは1時間弱の待ち時間。下か ら見るより傾斜を感じたが、岩に雪は全くないし、ちょっと登りにくいと思うところはあったが経験値の 範囲で、ハーケン2つのビレイ点まで登る。松野さんが登ってきて3ピッチ目終了。2時間かかった。 4ピッチ目、松野さんリード。左上して凹角に入り50mいっぱいロープが出た。 セカンドでスタート。ちょっと細かいな、と思いながら登っていると、誰か懸垂で下りてきた。 !?なんで!? 一番最初に行った男女2人組だ。松野さんのところまで登って行くと這い松でビレイしていた。ちゃん とした支点もあったが懸垂で使われていて使えなかったとのこと。自分も途中、支点の回収のとき、 懸垂のロープに押さえつけられてカラビナが取りにくかった! あとちょっと待てばいいのにね〜と言いながらもう一段登り、ロープを回収して終了。景色を楽しみ ながら大休止。 あとは雪稜を辿って縦走路と合流、権現岳に至る。山頂からは登った岩場がよく見えた 山頂から旭岳の方へ縦走路を戻る。長い梯子を下り、旭岳、ツルネへの登り返しをこなしてツルネ 東稜を下る。熊鈴も付ける(結構ビビッてる)。トレースがあり、先行者の後を追っていたら下る尾根 を間違えた。ルートを回復してテントに戻り、テントを撤収して15時。ずっしりと重くなったザックを背 負って駐車場に戻った。 (タイム) 3:55 テント場〜4:16 東稜取付き〜6:48 1P目〜7:05 2P目〜7:40 3P目〜9:41 4P目〜 10:24 ロープ回収〜11:25 権現岳〜12:36 ツルネ〜14:20-15:00 テント場〜17:04 駐車場 |