東沢谷に最初に行こうと思ったのは2011年。もう9年前になるのかー。 結局天気が悪くて、奥黒部ヒュッテから読売新道を上がり、裏銀座縦走して 扇沢に下りた。すごく疲れた。次が2016年。翌日からの予報が悪かった ので、奥黒部ヒュッテのおじさんに行ってはならんと言われ、テント装備を 置いて行く条件で、一ノ沢まで偵察して戻った。しつこく2017年、20 18年と計画したが、いずれも天気により、それぞれ五色ヶ原、爺〜針ノ木 縦走とサブプランへの変更となった。 前回計画変更した後、東沢谷の記録を見ていたら、もれなく魚が付いている。 それを見ていたら自分の山行にも魚が欲しくなり、釣竿を購入。しかし廣瀬 リーダーで計画された釣り山行は2年連続で増水や雨に阻まれ、釣り練習の 機会を得られなかった。しかし今年、柴田リーダーと霞沢岳西尾根に行った とき、柴田リーダーが釣りをするという話を聞き、東沢谷の話をすると乗っ てきてくれ、今年こそ!という気持ちになった。 そんなわけで、今年は宮本師匠にも恵まれ、釣りの機会が増え、東沢谷遡行 &釣りの態勢が整い、満を持して山行を迎えた。 9月19日 晴れ 扇沢の駐車場は早朝からほぼ満車。支度をして駅に向かうと既に長蛇の列だっ た。コロナ対策で乗車人数を制限していることもあり、あと少しのところで 7時半の第1便に間に合わず、8時の第2便にて黒部ダムへ。 平の渡しも、12時には間に合わず、14時の便。以前来たときは小屋のお じさんが船頭をしていた記憶なのだが、今回は業者っぽい感じの人々が渡船 をしていた。 奥黒部ヒュッテには17時過ぎに着く。場所を選ぶと、どうしても隣と近接 する位置に張ることになる。隣のテントの人が話しかけて来て、自分たちは 明日早いので…(騒ぐなよ)とクギを刺される。 周囲に気を遣いながら食事を済ませ、8時前には就寝した。 (タイム) 8:31 黒部ダム〜13:13 平ノ小屋〜17:11 奥黒部ヒュッテ 9月20日 晴れ 東沢谷の遡行の成否は、小屋を出て沢に下りてからの最初の渡渉をこなせるか どうか、とか。自分は2016年に一度来ているので、大丈夫だろうと思って いたのだが…。意外な急流。最終的には柴田リーダーの突破で渡渉できたけど。 沢の印象があまりにも違い、気になったので、4年前の写真と見比べてみた。 |
前回は左岸の端を通って上流に向かい、流れの緩い所を渡渉し、対岸の斜面に 取りついた。今回は急流に阻まれて左岸を上流に向かえなかったため、最初の 渡渉に1時間近くかかってしまった。沢に前回はこうだったよ、は通用しない と痛感した。 ともあれ、渡渉してからは高巻き。結構な藪漕ぎをして沢に戻る。これも、前 回はこんなひどい藪漕ぎはなかった…とか、こんなところまで巻いたっけ?な ど、今回の方が大変な気がした。 一ノ沢を過ぎると厄介な高巻きはなくなり、二ノ沢の出合を過ぎたところで行 動終了。 テント設営後、釣りに出かける。9月の最初の釣り山行で、廣瀬元会長直伝の 川虫の提灯釣りを試そうと、最初は川虫を集める。そして、いかにもいそうな 落ち込みに糸を垂らした瞬間に引きがあり、えぇっ!?と思いながら引き揚げ たら大きなイワナが食いついていた。一発目で??? カメラ持ってきてねぇーーー!思わず少し先にいた柴田リーダーを呼び、写真 を撮ってもらう。念願の東沢谷で本当に釣ってしまった…。 しかし釣果はそれっきり。柴田リーダーの釣った2匹と合わせて焚き火が賑や かになった。 (タイム) 5:43 奥黒部ヒュッテ〜11:02 一ノ沢〜12:48 二ノ沢〜13:20 テント場 9月21日 晴れ 出発して1時間もせずに三ノ沢出合。何と、ここまでの間にGPSを沢に落と して流してしまった(涙 地図を出すより安易に正確に現在地が分かるから、 山行中、現在地確認が必要な場所でなくても頻繁に見る癖がついていた。今ま で落としたこともなかったから、流れのある沢の中で無頓着に出し、手が滑っ て沢の中へ…(°□ ° 焦っているのと、水中で距離感が狂い、そこにあるのに 掴めず、やがて落ち込みの方へと流れて行ってしまった…。 気を取り直して先へ。沢が広くなり、周囲の稜線なども見えてくる。この沢は 高巻くような滝はないので、景色と沢を楽しめる。(単調ともいう) 標高2000mを越えると魚がいなくなる、というので、1950mの二俣で 竿を出し、1時間半くらい釣りにいそしむ。釣果はリーダーがテンカラで二匹。 自分も水たまりに落ちていたハエを餌にしてみたが、ハエだけ持っていかれた 気がする。 水流も減り、ますます単調になってくる沢をひたすら遡行。明日の行程を考え るとできるだけ距離をかせぎたいところ。16時を過ぎてテント場を探しなが ら行くが、沢は狭まり、周囲はヤブ。陽が陰ると寒い。17時近くになりリー ダーがヤブの中にテントを張れそうな場所を見つけそこで行動終了。 沢の中や湿った斜面から集めた流木はなかなか火が付かず、1時間くらい粘っ てやっと焚き火になった。寒かったけど、焚き火のおかげで人心地つけてテン トに入ることができた。 (タイム) 6:42 テント場〜7:23 三ノ沢〜10:50-12:26 1950m二俣〜16:51 テント場 9月22日 晴れ 寒い朝だった。濡れたまま外に置いていたスパッツが凍っていた。スパッツの 下に置いていたソックスや靴は凍らなかったけど、宮本師匠は濡れたタイツを 外に置いていたため、凍ったタイツをテントの中で悲鳴を上げながら履いてい た。 沢ももうひざ下くらいの水量なので、全身濡れる心配はなく、ざぶざぶと先へ 進む。少し進むと開けた場所があり、テントが張れそうな感じだったが、自分 たちの4〜5人用となるとちょっとどうかなという感じだったし、何より開け ているので、風が吹き下ろして寒かった。この季節には昨日のテント場の方が 良かった。 沢が開け、自分たちを囲む稜線に陽が当たり、青空によく映えた。何とも言え ない景色の中にいるが、周囲のヤブの中が気になり、熊よけに笛を断続的に吹 きながら進む。 二俣を左に進み、1回ヤブに入り込むが修正し、いよいよ細くなった水流を詰 めあがる。最後は高山植物帯をなるべくダメージの与えないように静かに歩き、 這い松漕ぎを2回して東沢乗越に出た。 硫黄尾根越しの槍ヶ岳がきれいに見えた。やっと東沢谷を詰めてここに立つこ とができた。ここから稜線を歩き、ブナ立尾根を下って高瀬ダムまでコースタ イムで9時間。コースタイム通りでも明るいうちには下山できない。1ピッチ 歩いたところで、自分が車を回収する任務を負って先行する。 時間に余裕があれば絶景の縦走路なのにもったいないなーと、時間は気にしつ つ写真を撮っていたらカメラのバッテリー切れ。予備バッテリーも充電を忘れ ていて使えず、しかも野口五郎岳あたりからガスが湧き始めて展望もなくなり 歩きに集中する。 正時にリーダーと無線交信。烏帽子小屋で最後の交信をしてブナ立尾根を下る。 暗くなるギリギリで登山口に出る。そこから高瀬ダムに向かって河原を歩いて いるうちに暗くなりヘッデンを点ける。高瀬ダムの公衆電話(携帯は圏外。使 えるのは10円玉のみ)でタクシー会社に連絡して七倉まで車道を歩く。 七倉までどれくらいかかるか聞いて19時半の予約にしたのだが、歩き出して 地図のコースタイムを見ると七倉まで2時間?全然間に合わない。早足で歩き ながら遅れたらタクシー会社の人がそう言ったって言おう。長いトンネルが最 後の山ノ神トンネルだと思うけど、まだ時間が早いし、このトンネルを抜けて まだ先にトンネルがあったらどうしようとか不安になる。GPSを落としたこ とがここ一番の痛手となった。帰ったら地図アプリを入れようと決める。 トンネルの出口が見えて来て、そこに見えたのは車のテールライト。間違いな く、予約したタクシーだと確信する。19時半ギリギリでタクシーに乗り込み、 20時に扇沢にて車回収。 残留の磯部さんに連絡してリーダー達とは連絡がついていることを確認する。 リーダーからもメールが入っていて、18時半に烏帽子小屋から下山するとの 内容。返信するとすぐに返事があった。取りあえずお腹が空いていたので食べ 物と、リクエストのあった炭酸飲料を探しに町に出てから七倉へ向かう。 その後、21時過ぎに高瀬ダムまであと2時間半くらいというメールを最後に 連絡が途切れる。高瀬ダムに23時半として、そこから林道をコースタイム通 り2時間かかったとしたら、七倉には1時半か…。帰りの運転のこともあるの で、なるべく仮眠を取ろうとするが、ウトウトもできず、ひたすらゴロゴロし ていた。 1時半を過ぎ、気になって仕方ないので、外に出るのはちょっと怖かったけど 意を決して炭酸飲料を持ってトンネルを歩き始める。しばらく歩いから、何か あって人知れず行方不明になるのも嫌だなと思い、残留の磯部さんにメールを 入れると返事があってびっくりした。まだ起きててくれてた。 それから間もなく、トンネルの先にヘッドライトの明かりが見え、2時に合流。 皆、ケガもなく元気?でよかった。磯部さんにも報告し、長かった山行も無事 に終えることができた。 (タイム) 6:03 テント場〜10:16 東沢乗越〜13:00 野口五郎小屋〜15:28 烏帽子小屋〜 17:44 ブナ立尾根登山口〜18:16 高瀬ダム公衆電話〜19:29 七倉 |