5月3日(土) 計画段階では、テント装備を担いでT峰尾根に向かい、ルート上で幕営する予定だった。 無敵の天気予報に思われたのが、直前に5日の天気が怪しくなった。作戦変更に備え、 ツェルトを荷物に追加した。 八方尾根の駐車場で仮眠してゴンドラ乗り場に向かう。往復割引は3日間のみ。予備日 を使う可能性は低いと思ったが、200円の違いなら万が一への保険で片道で購入する。 ゴンドラからリフトに2回乗って登山道を歩くが、雪がない。夏山並みに登山者が多い。 風が強くて帽子を飛ばされ這い松の中に拾いに行く。八方池の辺りまで来ると不帰の嶮 が見えてくる。 |
唐松沢への下降に利用する支尾根が延びる2361ピークまでに、テント装備はピーク ににデポして日帰り装備でルートに出ることで意見はまとまっていた。 明日は暗いうちに出発するので、テント設営後、ルートの偵察に行く。 下降点を確認して支尾根を下りる。雪が緩んで大穴が開くような所もあり明日が思いや られる。200mくらい下ったところで戻る。戻る途中から雨が降り出してカッパを濡らし、 テント内も濡れてしまった。 雨は夕方まで降り続け、風は明け方まで強かった。 (タイム) 8:38 リフト終点〜9:25 八方池〜10:50 2361ピーク 5月4日(日) 同じ場所にもう1張テントがあり、自分たちより先に出て行った。昨日つけたトレースから 下りていくと、先行者のトレースはすぐに沢を下降していた。気温が下がったので、雪は 固く締まり順調に尾根を下降する。2100m辺りから沢を下降して唐松沢に下りる。 |
そのまま唐松沢を横切りT峰尾根に取りつく。 |
高度を上げて行くと、自分たちとは違う沢を下降している別のグループが見えた。 尾根に上がるといきなりの藪こぎと木登り。足元は落ちているので結構きわどい。一旦藪 を抜けたところで先行チーム(3人)に追いつく。ロープを出している。後ろから後続チーム (2人)も追いついて来る。 ロープを踏まないよう注意しながら3人組を追い越し、雪が緩んできた雪壁と藪と木登りを こなして2062ピークに出る。 ピークから下り、雪をつなぎながら登り返す。 |
雪のない所は、岩混じりの藪を登り、雪稜の向こうに断壁が見えてきた。先行する2人組が すでに基部にいる。 |
近くに行って「……。」。これってフツーにゲレンデにあってもおかしくないような岩場では ないか?2人組は左の凹角の方へ下りて行った。リーダー坂野は正面突破する気満々 の様子。フォローでも登れるか不安だったが仕方ない。 ロープを着けてリーダー坂野がスタートした。 |
抜けの部分がフタをするように被さっていて、どう抜けるのか見ていると、おもむろに左足を 大きく開いて凹角の外に出し、左のカンテに足をかけて抜けていった。 なにぃ!? フォローは松野さんが先にスタート。現実的なムーブのお手本をお願いする。プロテクション は、最初のスノーバー以外、すべて松野さんのロープにセットされており、さすがリーダー、 メンバーの力量をよく把握しておられると感服する。 松野さんはルーフの下に斜めに身体を差し込み、じりじりと上がって抜けて行った。 いよいよ自分の番。3人組が追いついてきて見学している。いやだなぁと思いながら登り始 める。抜けの部分で松野さんのようにやってみるが足がうまく取れず、腕の力が尽きてあえ なくテンションかける。何度かトライしても身体を上げることができず、角張った岩にロープが あまりこすれると切れるのではないかと不安にもなる。腕の力で上がるのは無理と思い、左 の壁にアイゼンの前爪がひっかる程度のスタンスを見つけて立ち込み何とか越えることが できた。 ビレイ点は岩が不安定で、左の凹角を3人組が登ってきており落石は落とせない。 2ピッチ目。落石に注意しながら出だしの岩を越え、短いが痩せた雪稜と岩場を越えて雪壁 を登る。 3ピッチ目。ブッシュを抜けて雪稜。1か所岩場があり、足場が取りにくく登りにくかった。 |
4ピッチ目。シュルントの開いた雪壁を越え、傾斜の強い草付のブッシュ。 5ピッチ目。ブッシュを抜けて雪壁を登る。 6ピッチ目。雪の斜面をトラバースして雪稜に出てロープを回収して休憩。断壁基部からおよ そ4時間経過していた。6ピッチ中、5ピッチをリーダー坂野がリード。お疲れさまでした。 |
そこから雪稜を登り、山頂直下の最終ピッチへ。 |
ブッシュの中の傾斜の強い草付を登り、短い雪壁を越えるとT峰のピークをを背にビレイする リーダー坂野がいた。すぐ近くに排出されているウ○コの残骸にに気をつけながらピークに抜 けT峰尾根終了。 ロープの回収、休憩をした後、U峰へと向かう。主稜線に雪は少なく、アイゼンを外す。夏道を 辿って行き、雪が出てきたところで再びアイゼンを着ける。 |
下部の雪の斜面を抜け、再びアイゼンを外し、上部の斜面に出たところでまたアイゼンを着け る。先行チームがロープを出しているのが見えていたし、傾斜もあるのでロープをどうするだろ うと思いながら着け終わって振り返ると、リーダー坂野は既に斜面を半分くらいトラバースして 進んでいた。松野さんと、ロープがどーだこーだ言われる前に行ったに違いないとヒソヒソ言い ながら後に続く。 |
U峰北峰の手前で、シュルントの開いた岩場混じりの雪稜でロープを出していた2人組に追い つく。リーダー坂野はロープを出すか聞いておきながら、様子を見ると言ってそのまま登って いってしまった。 北峰に抜け、緩やかな稜線を歩いて南峰へ。V峰とのコルにテントが1張あった。V峰の巻き は夏道。しかし凍結箇所もあるのでアイゼンは履いたまま進む。 |
そして唐松岳山頂に到着。先に着いていた2人組に写真を撮ってもらう。 |
唐松岳からはだらだらと下り、丸山ケルンを越えた先のテント場へと戻った。 (タイム) 4:00 テント場〜5:00 唐松沢〜6:00 尾根に上がる〜8:14 断壁基部〜12:25 6ピッチ目終了〜 14:50 T峰〜16:27 U峰北峰〜17:57 唐松岳〜19:04 テント場 5月5日(月) 昨夜は10時か12時くらいから風が強まり、朝は雪が降っていた。テントを撤収し、南風の強風 に吹かれながら稜線を進む。散々人が歩いているから何の心配もしていなかったが、2150m 付近の尾根が左右に開き、ルートが左に向きを変えるところで一時ルートを見失う。視界不良 時の八方尾根は油断できない。その後は雪もなくなり濡れた石に滑らないよう気をつけながら リフト乗り場まで戻り、雨に降られることもなく車に戻ることができた。 下山後の温泉で、柴田・高倉チームに遭遇した。 (タイム) 7:40 テント場〜8:59 リフト乗り場 |