ナルミズ沢








8月2日 晴れ

昨年もナルミズ沢を予定したが、白毛門沢のお誘いがあったので、今年に持ち
越した。「天国の詰め」とはいかなるものか。そして「地獄の下山」とは…

午前0時に出発の予定だったが、直前に集合場所を変更したりしたものだから
1時間遅れる。現地到着も遅くなり、自分にしてはちょっと遅いぞと思う出発
となる。(自分のせいだけど…)

最初は白毛門の登山道を歩く。登山道が白毛門方向へ登るところで踏み跡を辿っ
て沢に下りる。河原で沢装備を整えて遡行開始。いきなり連続する美しい渓相
に、写真が止まらない。東黒沢出合までにかかった時間を去年の白毛門沢のタ
イム(48分)と比べると倍かかっている。去年は出発前に駐車場で沢装備を
整えたのを差し引いても、時間かかりすぎ。分かっていても、その先も渓の美
しさに惑わされ、写真撮りまくりで、多分、標準タイムよりもかなりかかった
のではないかと思われる。

東黒沢は困難なところはなかったが、詰めあがったコルが背の高い笹薮に覆わ
れていて、尾根だかコルだか地形がよく分からない。踏み跡もテープもなく、
時間も余裕ないので、ロスを出さないためにもGPSに頼って藪漕ぎしてコル
を乗っ越す。沢地形に入ると足元に細い溝が現れ、下りて行くのに従って枝沢
を集めて沢になっていった。沢の下りでは小さな滝を下りるのに2回細引きで
懸垂する。ウツボギ沢まで下り、宝川に出る。

二俣にはテントが張られていて、学生らしい集団がいて、上半身裸で河原で寝
ていたり、テント場を共有するのは厳しいなぁという感じだった。今回、計画
では2泊3日で出し、この辺りにテントを張る予定だったが、1泊2日で行く
つもりで大石沢出合まで進むことにしていたので、そのまま先へ進む。

二俣付近、赤いコースマークがあって登山道が並行していたが、沢を進んでい
ると、途中からなくなった。登山道は沢から離れて上の方を行っているのだろ
う。沢は宝川に出てからは川幅も広くなり、大きな滝はないが、淵が大きく深
い。大体はへつって行けるが、無理なのは巻くしかない。泳げるメンバー同士
なら泳いで突破できそうな淵だが、自分が泳げないので、巻き道を探す。登山
道に上がると、慰霊碑があった。1995年の遭難の慰霊碑で、日付をみると
8月2日。静かに一礼を捧げて先へ進む。

このまま登山道を進めば大石沢に出るし、時間も時間だし、その手もありだな
と思ったりする。しかし沢も気になる。設楽さんはもっと気になっているみた
いなので、適当な所から沢に下りる。その後も大きくて深い淵が現れ、キレイ
だけど辟易気分。それでも設楽さんの突破にも奮起しながら足が着くギリギリ
で淵に入ったり、深い淵の脇の悪いヘツリをこなす。

やがて所どころにテントが張れそうな場所が出てくるが、取り敢えず大石沢出
合までは行ってみる。しかしガレた沢の出合に張れそうな場所はなく、目をつ
けておいた高台の草地のある所まで戻る。

高台に上がると焚火の跡もあり。テントを張り終わるころに雨が降り始める。
テントに入るとあり得ないくらい暑く、中で火を使うことなど考えられなかっ
た。参ったなぁ〜と思いながら様子を見ていると、そのうちに雨が止んだ。河
原に下りて焚き火をしながら夕飯にすることを提案するが、18時を過ぎて今さ
らの焚き火に設楽さんは乗り気でない様子…。

しかし河原に下りれば流木はあちこちにあり、比較的早く火が付いた。火が付
けば設楽さんもやっぱ焚き火ですねぇ〜といった感じになり、簡単な夕食を終
えて20時くらいに就寝。

(タイム)
7:42 駐車場〜8:55 ハナゲの滝〜9:18 東黒沢出合〜13:10 コル〜14:45 ウツボギ沢出合〜
16:40 大石沢出合〜16:50 テント場



8月3日 晴れ

今日の行程は長くなりそうなので、2時半に起床。やっぱりテント内は暑いの
で河原に下りて朝食にする。

大石沢出合から先は、川幅も狭まり、それまでのような大きな淵もなくなり、
快適な遡行となる。高巻きで沢に下りる際に1回ロープを出して懸垂する。や
がて陽が昇り、稜線に向かってナメ床が続く。これが「天国の詰め」なのだろ
う。途中に現れた小さな深いプールで設楽さんが沢の名残を惜しむ。

沢が草に埋もれると遡行終了。沢装備を解いて縦走に切り替える。草原と池塘
と1本の踏み跡。そのままコルまで行くかと思ったら笹薮出現。ガサガサと笹
薮を鳴らしてコルに出る。清水峠の小屋の赤い屋根が見えた。大烏帽子岳はパ
スして笹薮の尾根を登る。深くなる笹薮をかき分け、笹が下に向いて滑りやす
い尾根をトラバースし、JPとのコルに下る。笹が深くて間違って尾根の右へ
下りてしまうが、ルートは左。登り返してルート修正。JPの登り返しも最初
はひざ下くらいの笹薮が、登って行くと背丈くらいになり、暑いしうんざり。
やっとのことでJPの縦走路に出る。

ここから朝日岳までは緩やかな縦走路。朝日岳から一旦下り、笠ヶ岳までいく
つかのアップダウンを繰り返す。笠ヶ岳からもアップダウンありの縦走路を歩
いて白毛門へ。登山道脇で寝ている人と賑やかな若者2人。若者2人は白毛門
沢を登ってきたらしいが、途中でルートを間違えたため、遅くなってしまった
とのこと。先に下山にかかる。

陽が照ったり陰ったりの天気だったが、水は順調に消費して登山口までギリギ
リといったところ。設楽さんが途中で水切れを起こす。こちらも分けるほどの
量が無い場合、どうしたらいいのだろうと考えた。1口2口分ずつしかなくて
も分け合うのか、相手が行動不能になった際に自分が下りて補給の水を調達す
るために自分の水を温存するのか。

結局、お互い無事に下りたので、補給に走る必要はなかったけど。

下山している途中から気になっていたのは温泉の営業時間だったが、湯テルメ
谷川が20時半まで営業しており、温泉で汗を流して乾いた服に着替える。あ
とは高速を走って帰宅は朝の4時。大変だったけど充実した山行だった。

(タイム)
4:41 テント場〜4:47 大石沢出合〜9:07 遡行終了〜9:40 コル〜11:37 JP〜12:27 朝日岳
〜14:01 笠ヶ岳〜15:11 白毛門〜18:19 駐車場