ツアイスズームアイピース8.4-25mm

全体の印象

ツアイスズーム8.4-25mmはスポッティングスコープ用のアイピースに2インチアダプターを付けたもので,ドイツAPMから344ユーロで購入。為替レートで換算すると,送料込みで5万円弱。このアイピース(2インチアダプターなし)の日本での価格は実売で46000円程度なので,特に安いわけではないが,2インチアダプターが手に入らないので海外から購入した。全体の印象は,ツアイスの名に恥じない高級感のある造りで,ズームリングの回転は非常にスムース,トルク変動も皆無。また,いずれの焦点距離でもアイレリーフが十分に確保され覗き易い。ちなみにSMCペンタックスズーム8-24mm(定価59800円)は,回転トルクが若干重く,望遠鏡側の締め付けネジを強く締め付ける必要がある。しかし,全体の造りの高級感と精密さにおおいては,両者は同じようなレベルで,レンズに施されたコーティングもみるからに反射の少なそうな高品位感が漂う。

20-25mm

25mm時の見掛けの視野は48度で,最新の広角アイピースを見慣れた目にはやや狭く感じる。それでも,通常のオルソ並以上の視野は確保されている。ミード25cmF10のシュミカセで使用すると,周辺まで星像には大きな破綻はないが,若干の像面歪曲とアスが感じられ,極周辺では焦点位置が異なり,像面の湾曲が認められる。ウイリアムオプティクス8cmF6.25のセミアポに取り付けるとこの現象が顕著になり,視野の70-80%より外側では星像の肥大がやや気になり,視野の90%より外側ではほとんど実用にならない。通常,安物のオルソでもここまで顕著な変化は起こらないが,法外なくらい高価な某社の超広角アイピース以外の超広角アイピースでは,多かれ少なかれこのような現象は見られるので,特にこのアイピースがダメ,といったことではない。また,この現象は主鏡に起因するものかもしれない。ちなみに,SMC PENTAX Zoom 8-24mmでも,収差の出方はやや異なるが24mm域では性能はあまり冴えない。

16-12mm

見かけの視野は55-60度くらいまで広がり,広角といっても差し支えないくらいの視野の広がりを感じる。ミード25cmF10のシュミカセでは周辺まで星像に大きな破綻はなく,こと座のダブルダブルは,中心でピントを合わせた状態でも極周辺を除いて良く分離するので,像面の湾曲や非点収差は良く補正されていると思われる。ウイリアムオプティクス8cmF6.25のセミアポに取り付けても,星像は周辺まで良好で,25mm域とは見違えるくらいの星像を示す。

8.4-10mm

見かけの視野は60-68度程度まで広がり気持ちが良い。ミード25cmF10のシュミカセでは,周辺まで星像に問題はなく,極周辺でも十分なシャープさが保たれている。ウイリアムオプティクス8cmF6.25のセミアポに取り付けても,星像は周辺まで良好。このアイピースは,短焦点側の星像が最も良い。

総評

たいへん上質なコーティングが施されているためか,何れの焦点域でもコントラストは良好で,ゴーストやフレアの発生も皆無に近い。それだけに,前述の25mm領域の周辺像の甘さはたいへん残念な結果であった。しかし,これも対象物の導入用と割り切れば,20mmより短焦点側では文句なしに高性能なので,その役割は十分に果たせると思う。このズームアイピースと25cmシュミカセでみる球状星団は特に素晴らしく,いったん導入してから,徐々に倍率を上げていくと,周辺の星から徐々に中心付近の星が分離してくる様子が手に取るようにわかる。惑星の観望では,シーイングとの兼ね合いで,いちばん良く見える倍率を選択することも可能。SMCペンタックスズーム8-24mmとこのツアイスズームでは,25mm域ではペンタックスにやや部があるが,全般的な光学性能はほぼ互角,見かけの視野の広さでツアイス優位,ということでどちらが優れているかということは判断出来ない。