角川スニーカー文庫
うーん、なんか、非常におもしろいシリーズになっていますね。時代的に、「妖魔夜行」のほうは、2004年に出版ですが、ストーリーそのものは、1991年に出たものですから、いわば、90年代バブルな時代から、バブル崩壊、そして、インターネット時代、携帯電話の普及っていう、最近の、この激動の10年間をまたいでの作品ってことになりますか。その意味では、「百鬼夜翔」は、21世紀に入ってからってことになりますので、時代はすっかり新しくなった、ということになります。
グループSNK というゲーム関連クリエータ集団による、テーブルトークRPGの世界設定で、いろいろな作家さんが、短編を中心に書くというもの。世界設定は共通で、登場人物も共通ということもあって、同じ土俵で、いろいろな作家さんのそれぞれのテイストが楽しめるというのもおもしろいですね。オタク関係とか、トンデモ本関係でも有名なSF作家の山本弘氏などが、かなり積極的に多数の作品を出されています。
ってことで、私は、最初に、「百鬼夜翔」の一番最後に出た「水色の髪のチャイカ」からスタート。結局、「夜翔」のほうを、なんとなくだんだんさかのぼる感じで、全部読んだあと、秋葉原あたりで、まず、「夜行」のほうを、数冊、そのあと、引っ越して、引っ越し先の大きな本屋で、全部あったので、持っていないのを全部買って、がんがん読みました。おもしろいです。
では、まあ、適当にレビューから行きますか。
妖魔夜行
妖怪とは、人の強い「想い」から生まれる。ってことで、多くの人が、「そういうのがいるかもしれない」と思うと、そういう妖怪が実際に存在してしまう。で、最初のうちは、「人がそう思っている」通りの行動をとるような形で存在するが、しばらくすると、自覚をもって、独立した行動がとれるようになる、というのがまず妖怪の定義です。
このシリーズに登場する妖怪たちは、それこそ伝承、伝説の中に登場する、非常に古い時代からの妖怪もいれば、電子ネットワーク時代にふさわしい非常に新しい妖怪も登場します。じゃあ、神様、仏様の類は?っていうのは、最後に答えとして与えられています。
非常におかしな珍妙な妖怪が多数登場します。で、今の時代、人がたくさんいて、妖怪たちも、人々との間で、いろいろ関わりをもつことになるので、妖怪たちは、ネットワークをつくって、お寺や、バー、骨董品店などを拠点に、互いに交流し、また、妖怪たちが、人間に悪さをしたりするようなことがあれば、人間の警察などとも協力して、そういう妖怪に絡む事件を解決したり、ということもやる。
「妖魔夜行」では、主に渋谷にある「うさぎの穴」というバーを拠点にする妖怪たちを主人公にしていて、その他、神戸とか、世界各地とか、いろいろなところにも話を飛ばして、なかなかおもしろい構成になっています。
ってわけで、一冊ずつ。
- 真夜中の翼
-
- 真夜中の翼
- まずは、山本弘の作品。バー「うさぎの穴」にあつまる非妖怪の少女が登場する巻。毎晩、自分の濃厚なエロシーンがテレビに映ることで悩んでいた守崎摩耶が、その悩みを、「うさぎの穴」のメンバーにうち明けるところからスタート。「うさぎの穴」のマスターの娘で、化け狸のかなたと友達になり、結局、自分の欲望が生んだ夢魔の存在を知る。で、やがて、夢魔を操ることができるようになるまでの話。
最初っから、やっぱりこれはおもしろいと思わせる作品で、良かったです。これが妖怪か、というような。以降、摩耶はとっても重要なキャラクターになって、最後も活躍しますから、この作品は読んでおくべきでしょう。
- 幽霊列車
- 夜の終電が終わったあとの地下鉄を走るおかしな古風な幽霊列車に友人をつれていかれた大学生が、同じく、兄をつれていかれた少女とともに謎を解き、そこに最後、うさぎの穴のメンバーが登場する、というもの。比較的たんたんとした話ながら、妖怪もののおもしろさをついた作品でした。
- 血の望み
- 摩耶の通う進学塾で、望みをかなえる代わりに血を吸うという妖怪が現れる話で、なかなか怖いです。ちょっと印象薄いけど。
- 悪夢再び
-
山本弘の長編。公園で、少女たちを血祭りにあげる凶悪な妖怪と、うさぎの穴のメンバーたちが戦う話、っていうことで、なんか悪いんですけど、長編って、読むのに時間がかかるので、ついついこの話は、あんまり回数読んでいません。怖いです。はい。
- 真紅の闇
-
- 真紅の闇
- うーん、これは、怖いですね。「首酒」の話。ようするに、美人の首を酒につけ込んだもの。その美人に惚れ込んだ男なら、その酒は、ものすごいうまい酒になるというもので、家族崩壊で、ホームレスになった男が、自分の元妻や娘を首酒にしようとする、っていうあたりで、なかなか怖い話です。
- 大都会の陥穽
- うーん、これまたこういう妖怪がいるのか、と思うような、まあ、そのやたらモテそうな男をみつけては、その男が女と遊ぶのをじゃまする、というやっかいな妖怪が、うまれたばかりの妙な妖怪と合体してしまう、という話。どんどん男が女にふられる姿はなんとも痛ましい。ちょっとコミカルな話。
- さようなら地獄博士
- 30過ぎても、まだ特撮映画などに狂っているそういう男が、少年時代のヒーローもので悪役だった地獄博士を演じていた俳優と出会い、しかし、その地獄博士は、そのヒーローものと同じようにして、主人公を怖がらせる、っていうか。
実はその俳優自体が、妖怪で、子供をさらう怖い妖怪だった、という話。やっぱり山本弘の作品はオタクネタが多い。
- 悪魔がささやく
-
- 見飾り
- 日本人の「ブランド志向」が生み出した妖怪が、ブランドもののバッグとともに日本にやってきて、税関の女性職員にとりついて、ひたすらおかしなファッションで街を歩き回るという話。神戸を舞台にした作品。
- 妖刀
- よーするに、怨念のこもった刀を手にした大学教授が、それによって、しらないうちに、大学での政治的な敵をばったばったと、という話。
- 悪魔がささやく
- エクソシストの話。南米で、エクソシストとして、悪霊を退治してまわっている神父。日本に呼ばれ、摩耶にとりついた夢魔を払うように頼まれ、摩耶をとことん痛めつけるが、実際は、その神父自身が、妖怪にとりつかれていた、という話。このあたりで、山本弘の、一種のアンチ宗教的な思想がかなり濃厚に出てくるように思う。宗教心自体が、一種の妖怪を生み出す、というあたり。これが、後の「戦慄のミレニアム」シリーズへの伏線になっていると思う。最後に、これがきっかけとなって、摩耶は家を離れ、自活を始める。
- 鳩は夜に飛ぶ
-
- 鳩は夜に飛ぶ
- 平和のシンボル、白い鳩、に対して、反平和のシンボル?なのは、黒い鳩?ってことで、黒い鳩ににらまれて、なぜか仲違いするカップル、殺し合う友人たち、という現象に対して、うさぎの穴のメンバーたちが挑む。
- 闇に吼える虎
- 会社での営業成績も最悪な独身の営業マン。金曜の夜になると、一人、酔いつぶれるために酒を飲む。しかし、彼が酒でつぶれたあと、かならず、その夜の街には、虎があらわれ、そして人々がおびえる。その営業マンは、そのあと二日酔いからさめると、非常にリフレッシュしていて、月曜は大変機嫌がよい、という話。結局、この営業マンが虎を呼びだし、鬱憤をはらしていた、というのがオチ。
なんかこういう話こそが、いかにも、現代の妖怪って感じがする。
- 影の国の鈴音
- ふたたび、山本弘のオタク系の話題。ゲーム制作会社において、ゲーム開発担当者が死んだ。「大きなバグがあった」というようなメッセージを残して。ゲーム開発に潜む、マーフィーという妖怪とうさぎの穴との戦い。パソコンオタクの大樹(そろばんの妖怪)が、大活躍する。ちょっと社会的な内容をもった話。おもしろいですね。
- 獣魔めざめる
- 半妖怪のチェイス
- 実は、この作品はそうとうなお気に入り。「おつり妖怪」の堂花ちゃんが登場。人が、「お釣りをまちがってほしい」とか「お釣りで得iしたい」という想いから生まれたという堂花ちゃんが、美容院を経営する髪の毛の妖怪聖良(せいら)のもとで、経理担当したもんだから、お釣りを間違えまくって、たいへん。そんな彼女が、うさぎの穴をよる出て、家に戻るときに、悪徳タクシーにつかまり、実はそのタクシーも妖怪で、という話。これは、「え?そんな妖怪がいるのか」と思うようなおもしろい作品で、なかなかナイスなコミカル系。
- 歪んだ愛情
- うーん、クレーンゲームでの景品のぬいぐるみに宿った妖怪が、クレーンゲームをする少女に仕返しをしようとするのを、テディベアの妖怪が、っていう話。あんまりちゃんと読んでないかも。
- 獣魔めざめる
- 本来人間同士の争いには不干渉を貫く妖怪たちであったが、第二次大戦中に、一人の妖怪が、軍に入り、そして、妖怪としての兵器になった、という話で、戦後、地中にうもれていた彼が復活し、すっかり日本的でなくなった日本を嘆いて、新宿の街で大暴れをする、、、で最後には、アメリカの空母を襲い、そこに摩耶たちも乗り込んで、大変な騒ぎになる、という話。
- 闇より帰りきて
-
友野詳による、長編。これも長編なので、一度読んだだけなんだけど、ようするに、蛇の下半身をもつ、濡れ女未亜子の過去にさかのぼり、彼女が放浪する話、というのは話が単純すぎるだろうか。うーん、長編はやっぱり読むのに時間かかるから。
- 影と幻の宴
-
- ナイトメア・ゲーム
- あ、この作品、あんまりストーリーはっきりしていない。けがが元で、プロ野球選手をやめた男と、そのピッチャーとして投げたいという気持ちが妖怪となったのが織りなす、そういう話。
- 蹄の守護者
- 競馬の話ですね。蛇が二匹出てくるっていうか。そういえばこの本はあんまり読んでいないな。なぜだろう。
- 影と幻の宴
- あ、これは何回か読んでみたんですが、おもしろいです。映画研究部と、映画館の人たちとの交流の中で、どんどん人が死んで、、でも、実は、映画研究部の人たちは最初から、もう死んでいた、っていうあたりで、かなり本格的なホラーです。
- 私は十代の蜘蛛女だった
-
山本弘の短編三部作。かなりコミカル系で、スポーツ格闘系少女が、朝起きたら、下半身が蜘蛛になっていて、なんでも、エッチなことを考えると体が蜘蛛になってしまう、というもの。一応、短編が三つの形式だが、全部山本弘の作品。
- 私は十代の蜘蛛女だった
- ってことで、まずは、勇ちゃんが蜘蛛女になって騒動が起こる顛末を描いたもの。いかにもいかにもな親父と、母親との関係(離婚している)、それと一人娘の勇ちゃんが、蜘蛛になっても、二人とも、ほほえむようななんともいえない、なんだかおもしろい話。
- ロックンロール蜘蛛女VSハイテク・ミイラ
- 題名がいまいちよくわからないが、人体冷凍保存を違法でやっている会社の研究所に蜘蛛女勇ちゃんが入り込んで、そこで、ミイラ化した冷凍死体の妖怪にでくわして、戦うという話。
- 私は緑の地獄からきた怪物と結婚した
- 処女だけに有効という、足につける紐のおまじないで、なぜか怪物のすむ隠れ里(異空間)へつれていかれて、怪物の妻になる、っていう話。結局、そのおまじないのグッズを売っていたのが、世界征服をたくらむ新興宗教で、しかも、河童にだまされていた、というなんだか奇妙な話。
でも、どの話も、蜘蛛女でなければならない必然性に欠けるように思うが。
この作品、それなりに好きで、3回くらい読んだ。
- 暗き激怒の炎
-
- 月下の逃亡者
- うーん、あまりにも陰惨な感じで、ちょっと怖いっていうか、趣味じゃないっていうか、犬神筋がどうのこうのという、犬神をあやつる一族の間の戦いのような。
- 暗き激怒の炎
- かなりひねりの入った作品。集団でレイプされた女たち、一人を残して他は、全員焼死したが、彼女だけは、一人、窓から飛び降り、けがをしつつも助かった、っていう話から、レイプされた女たちの怨念をはらすフューリーという妖怪が絡むという話。結構ひねりがきいていて、最後はなかなかすごいエンディングとなるのだが。
- 邪念の群れ
- うさぎの穴のメンバーがいつも利用しているフォルクスワーゲン(実は妖怪)が主人公の作品。そのワーゲンを愛用していた人物の孫が、ワーゲンをもとめてうさぎの穴にやってくるところから始まる。ちょっと話が唐突な感じもする。
- しかばね奇譚
-
- 悪意の連鎖
- この話は、非常におもしろいっていうか、なんていうか、ようするに、不幸の手紙が妖怪化する、という話。不幸の手紙が、横書きで、だんだんと字の来たなさから、内容がどんどん伝言ゲームのように変化して、「不幸」が、つまって「棒」になってしまったことで、この手紙を送った人たちを中心に、「棒に襲われる」という事件が。なかなかウィットに富んだ、結構好きな話。
- 背中あわせの幸運
- カジノで遊んでいるときに、ふいにでった女性。一緒にいたら、カジノでどんどん勝ちまくり。ところが、そのあと不幸のどん底で、どんどん借金が膨らむ。実は、幸運の女は、不幸の男と一緒にいたのだった、という二人の表裏一体の妖怪の話。
穢
- しかばね奇譚
- 有名な作家の作品集にも載っていない、幻の作品「屍奇譚」。その作品を手に入れたいと思うその作家のファンクラブ、研究会のメンバー(彼らも作家や評論家)が、その作品を手にいれた、というメッセージの後、必ず心臓発作で死ぬという事態に。そして、その作品はまた行方不明に、というもの。結局、その作品を読むと、作品の中にとりこまれて、死んでしまう、というものなのだが。なかなかおもしろい作品でした。
- 眠り姫は夢を見ない
-
- いつも見られている
- 線の細い、人からいつもどうみられているかを気にしている男。彼の周りの女性たちが、彼とつきあった後死んでしまう。彼に疑いが。実は、彼は二面女という妖怪だった。本人も気がつかないうちに。という話。
- やぶれざる英雄
- コミックのヒーローが妖怪化し、喧嘩をしているところに入り込んでは両方をぶちのめして、去っていく、というもの。最後のおちはあっけないっていうか。
- 眠り姫は夢を見ない
- 電車の事故?あるいは飛び込み自殺未遂で植物状態の少女が、同じ姿の生き霊のような形で、他の少女たちを飛び込み自殺へと誘うが、実は、臓器売買に絡む妖怪の事件だったという話で、結構怖い話。うーん、趣味じゃないけど、なかなか表現がすごいですかね。
- 穢された翼
- 五グラムの願い
- パチンコネタ。パチンコにのめり込んだ主婦たちが、なぜか失踪。そこに、パチンコ屋を回り歩く、パチンコ妖怪がからんで、結局、古い妖怪化したパチンコ台に主婦たちは閉じこめられていた、と言う話。
- 人形使いの黒い箱
- この話好きだなぁ。ゲーム世界と、実世界がまざってしまう。まざっても、高速に動く格闘戦士たちは、ポリゴンがどんどん荒くなって、というようななんともいえないところが良い。最後に河童の兄妹とかも登場の、、、。うーん、なかなか奇想天外な話です。私としてはかなり好きな部類。
- 穢された翼
- 漫画家になりたい少女。超能力をもつという彼女がテレビ番組に登場する、ってことで、その撮影の段階で、彼女の超能力が暴走し、っていうあたりは、ありきたりなんだけど、それが実は超能力じゃあなくて、妖怪だったというか。同じような夢魔をもつ摩耶も活躍して、一件落着なんだけど、白いカラスねぇ。結構おもしろいですね。
- 迷宮の化身
-
高井信の長編。うーん、なんか、話の進み方が、たんたんとしていて、いまいちのめり込めない。しかも、最後のほうは、どうも話が単純すぎるように思うし。妙な趣味やら、やたら太りたがる女性たち、という奇妙な現象から、一人の妖怪の出現となるんですが、なんか、話がどうも、前振りが長いわりには、最後があっけないっていうか。
- 戦慄のミレニアム(上下)
-
ついに、妖魔夜行の最終シリーズってことで、最後の締めは、山本弘による長編。上下二冊。
結局、妖怪の設定、人の想いが妖怪を生む、っていうことなら、神様、仏様はどうなんだろうっていうと、それも、人の信仰心から神様はいるし、天使もいるし、同じように悪魔もみんないる、ってことで、さらに、UFO も「いるんじゃないかな」と思う人々の想いによって、登場しちゃって、それが、いろいろなものとからんで、話は、ついに、うさぎの穴の崩壊へとつながる、、、。
うーん、霧香さん、死んじゃった。それに結構大好きだった、文子ちゃんも死んじゃった。マスターも死んだし、、、。悲しい限りです。
まあ、山本弘作品は、それなりに一貫して、このエンディングへ向かっていたように思います。で、登場人物たちの活躍はなかなかすばらしい。アリッサもかわいいし、摩耶ちゃんも世界を飛び回って大活躍。
ニコラ・テスラの機関が実は妖怪化していて、過冷却状態で、神様が登場とか、妙な物理的な話もからみあっていたり、UFO の中では、IBM のパソコンを使っているとか、おもしろい話もいっぱい。山本弘色の強い作品ですね。
まあ、エンディングがああなるのはしょーがないでしょうか。で、この作品で、妖魔夜行の話は完全に終了してしまいました。
- 幻の巻
-
これまで、文庫になっていなかった短編を纏めたものだけど、案外このシリーズはおもしろいです。
- まぼろし模型
- ようするに、オタクな人が、幻のアイテムを求めていると、突然、そういうアイテムがたくさんおいてある店をみつける。で、いろいろ欲しいとおもって、持ち金が少ないから、お金をたくさんもって行こうとすると、その店がちっとも見つからない。そういう、想いからうまれた、模型屋の妖怪の話。おもしろいですね。山本弘のオタク度がわかる作品。
- 虚無に舞う言の葉
- 墨沢文子、古本屋を営む妖怪と、その彼氏である銀杏の木。で、人の心を乱し、言葉を通じなくさせる携帯電話の妖怪?と彼女との戦い。私としては、文子さん大好き萌えなんで、この作品はなかなか好きです。
- 未完成方程式
- プロの雀士の話。数学的な方程式でなんとか麻雀で勝つ方法を見つけようとする彼が、なかなか勝てないのは、数学で勝たせようとする妖怪がついていたから?っていうおかしな作品。
- 狐高
- 女性たちの、やせたいという願いを叶えるようで、最後にはやせすぎで死にいたらしめる、痩せ女という妖怪と、狐女との戦い、かな?
- どっきり!私の学校は魔空基地?
- いわゆる、TRPGのリプレイ。妖魔夜行の設定によるゲームを再現したもの。はちゃめちゃなんだけど、こういうのがTRPGらしいが、詳しいことはわかりません。
百鬼夜翔
さて、妖魔夜行のシリーズが終わり、うさぎの穴が、「戦慄のミレニアム」で崩壊して、メンバーのかなりがちりじりになってしまったので、今度は、あらたに、妖怪が経営しているスーリエ・ルージュというホテルを拠点にしたネットワーク「紅い靴」(フランス語では、スーリエ・ルージュになるけど)の妖怪たちの話です。ホテルのオーナーは、当然、紅い靴の歌に登場する少女。舞台は、横浜の港。中華街などには、中国の妖怪もいて、いろいろ発展しそうな感じ。妖魔夜行では、人間として、守崎摩耶が登場しましたが、このシリーズでは、波田洋大(はだひろお、あるいはヨーダイ)が人間として登場。彼が祖父からもらった万年筆が、妖怪で、という設定。
うさぎの穴のメンバーの生き残りの一部は、その名もバロウズという組織をつくっていて、外国語学校などをしつつ、妖怪たちが人間にとけ込めるように教育をする妖怪向け教育機関となっていて、そこの卒業生たちが、スーリエ・ルージュの支配人とか、経理とか、そういう仕事をしている、という設定。妖怪も国際化して、インド系とか、インドネシア系とか、ヨーロッパ系の魔女とか、いろいろ。かなりの国際化と、それから、インターネット時代を象徴するような、ネットワークの妖怪なども登場で、だいぶ妖魔夜行とは違う雰囲気の作品になっています。
まあ、まだ5冊しか出ていないので、それに長編もないし、ってことで今後どうなるか、楽しみですが。いまんところ、私の感覚としては、妖魔夜行ほどのパワーがちょっと感じられない気がします。
- 夜からの招待
-
- 夜からの招待
- まずは、最初の作品。怪人ダークアイと、妖怪万年筆をもつヨーダイとの戦いに、紅い靴のメンバーがかかわって、っていうあたり。出だしとしては、なかなかおもしろい作品になっています。
- 幸運の方程式
- 自分の不幸を占いばかりに頼る女性。結果として、妖怪にとりつかれ、不可解な爆発事件が頻発、それを、なんとか解決しようとする招き猫妖怪の話。
- 闇に縛られ、夜に迷い
- うーん、すごいいろいろなことが、いろいろ起こるのでストーリーがかなり複雑怪奇なものになっていて、一言ではいえませんが、でっかい手がだいだらぼっちとか、なんだかよくわからない作品です。迫力はすごいんだけど。
妖魔夜行最後の「戦慄のミレニアム」の結果として起こった第二次関東大震災と、それによって、妖怪が出現しやすくなった時代っていうことで、なにやら、もうすごいです。
- 白昼の冥路
-
- 真夜中のらくがき
- 落書きが妖怪になってしまう、という話で、落書きによって、クラスメートたちが、どんどん死んでいき、っていう怖い話。いや、なかなか怖いです。
- 月夜旅行
- このひかりちゃんが登場するあたりで、妖魔夜行とはかなり違う感じがしますね。学園ドラマ化しつつあるっていうか。彼女は魔女です。で、ブラウニーという妖精が登場するあたりも、なんともいえません。ほのぼの系ですが、それなりに怖いのかも。
- 白昼の冥路
- この話、あまりにも陰惨な感じで、一回しか読んでません。怖いです。うーん、怖い。ホラーだ、、。
- 黄昏に血の花を
-
- 横浜上空、異常あり
- 戦闘機妖怪ですか。しかも、ジャンボジェットに喧嘩を売るというすごい話。ろくろっくびの桐子さんが活躍の話です。なるほどねー、って感じ。これもまた妖怪の姿なんでしょう。
- 白と黒の番人
- 港の管理をたくされた少年の妖怪、もとは、麻薬追放などのキャンペーンのキャラクターが妖怪となったもの、らしいが、彼が外国から入ってきた麻薬にからむ妖怪とともに、ちょっとした事件を起こすというもの。
- 黄昏に血の花を
- 妖魔夜行には登場しなかったような、人間の側で、妖怪退治をする人々と、それが高じて、ほとんど妖怪になった女性を、インドネシア出身の妖怪兄妹が追うっていう話。
- 蛇心の追走
-
- 蛇心の追走
- 古い伝承の蛇となった女の妖怪の話と、現代のインターネットでのエログロサイトとの絡みで、釣り鐘に襲われて身を焦がされる女性の怖い話です。うーん、怖い。
- 運命はかく扉をたたく
- ひかりちゃんと、クラスメートの夏美ちゃんの話。オーケストラ部に残る、幻の楽譜とそれにまつわる妖怪の話で、ひかりちゃんと夏美ちゃんのどってことないけど、本人たちには深刻な仲違いのようなものがモチーフになった、学園ものの作品。
- 苦しみの代償
- あんまり読んでいないのですが、自然破壊のようなものとからんだ話とでもいうのでしょうか。ダムに大きな蜘蛛?うーん、なんだかなんともいえない作品です。
- 水色の髪のチャイカ
-
- 屍の夜
- 秋口ぎぐる作品。秋口ぎぐるといえば、むちゃくちゃなよくわからないストーリー展開で、怒濤のごとく、発展し、よくわからないままに終わるようなすごい作品があるんですが、この作品はそういう中ではかなりふつうの作品です。とはいえ、死体が山のようにでてきて、もう、臭いっていうか、なんともぐちゃぐちゃなスプラッタものにはなっていますね。なんとも怖いっていうか、怖さ麻痺状態な作品。
- 盗まれた町
- 家族も、そして、同じマンションの住民も、みんなが無口で暗くなって、愛想がなくなって、どうしたことか、と悩んでしまった、もともと人間だった妖怪の寺尾。スーリエ・ルージュの従業員。で、結局、夜を好む生まれたばかりの妖怪の仕業で、というなんだかよくわからないけど、おわっちゃう作品。
- 水色の髪のチャイカ
- この作品は、なかなか好きなんです。いろいろな世界が、いろいろな感じで、まざっていて、チャイカ自身の気持ちとか、いろいろなものが、交錯している中での話。この作品があったから、百鬼夜翔も読む気になったし、だから妖魔夜行も読む気になったというもの。いやあ、なかなかおもしろい。人形、フィギュアとか、そういうのに込める思い、ゆがんだ人形への愛情などがからんだ、怖いし、おもしろいし、なんともいえない作品でした。
やっぱり、山本弘作品が好きなのかな。
Last modified: Tue May 7 01:05:19 JST 2002