TANZUTSU

 TOWA Astronomical Scope TANZUTSU シリーズ


20世紀の終わり頃、とあるメーカーによって造られた少々変わった天体望遠鏡

その名も、、”TANZUTSU”、、!!

カタディオ・オプティクス(風味)を大衆機に持ち込もうとした意欲作(?)
普通の反射式と異なるケレン味たっぷりの外観は眺める楽しみもアリ!

( TOWA TANZUTSU CT-50 )


* * * オモロイトコロ * * *

 その壱 ・ TANZUTSUとは!? 

20世紀の終わりごろ、、、
今はもうなくなってしまった日本の望遠鏡メーカー:”東和光器”が少し変わった望遠鏡を造っていました、、

その名も、、”TANZUTSU”

”TANZUTSU”とは”短筒”のことで、元々は”抱えて放つ口径の大きな火縄銃”のことです

反射望遠鏡は主鏡で一旦光軸を折り返す為、同口径の屈折望遠鏡より全長を短くすることができます
また、レンズよりも凹面鏡のほうが口径の大きなモノを作りやすいことから、
大口径で性能の良い(f値の大きい≒明るい)望遠鏡を安く造ることができます

この反射望遠鏡の長所を活かして、より”太く”&”短く”をコンセプトに造られたのが”短筒”でした
”短筒”には、他の反射望遠鏡と大きく異なる特徴があり、コレによりとてもケレン味のある外観をしていました

通常の反射望遠鏡は先端が空間解放していて、ココに斜鏡を支持するスパイダーがあるのですが、
”短筒”にはスパイダーがありません!代わりに鏡筒先端にカバーガラスがあり、このガラスが斜鏡を支持しています
その為、”短筒”は反射式でありながらガラスで塞がれた”一つ目”の珍しい顔(筒端)をしています

     

しかし、、この”TANZUTSU”、、どうも正式なモデル名ではないようです
製品名でもなく、また型式名でもないため、銘板やカタログ上には”TANZUTSU”というタグがありません!
”一つ目顔”モデルの先端ベゼル(上写真)にあるレタリングの一部に”TANZUTSU”と有るだけです
折角、、面白いコンセプトの基に、それを体現する製品を造りながら、、それを主張しないのが不思議です

勝手な想像ですが、、”TANZUTSU”は開発者のコンセプトではあったものの、、
、、販売企画(戦略)までをコンセプトに乗せることがができなかったのではないかと想像します。
その結果、、唯一ベゼルに”ネーム”を残せたものの、、カタログ上にはそれが反映されなかったのかと、、

それでも、、その特徴的な外観のおかげで、一部の人間には凄いアピールを発揮したようです!(特に海外では)
私もその一人で、、そのスゴそうな外観と”ネーム”に惹かれてしまいました^^)


 その弐 ・ なんちゃってカタディオ・オプティクス!? 

”短筒”もう一つの特徴カタディオ・オプティクスを名乗っていることです!
先端ベゼルに”CATADIOPTRIC”とレタリングがあります

カタディオ・オプティクス望遠鏡とは、”反射式”と”屈折式”の”長所”を併せ持ち!、、
、、且つ、、両方の”短所”を改善した、、ある意味で”道具として最も進化した望遠鏡”です

屈折式のように密閉した鏡筒を持ち、>>優れた対環境性(ダストや湿気に強い!)
反射式よりも更に短く、、>>取り回しの良さと優れた収容性(機動性が高い!)
良好な収差特性を実現する、>>絶対性能はTOPクラス(高性能!)
元々は、、戦場で小型で耐久性があり、かつ高性能な光学装置が必要だったことから開発された方式だそうです

ただ、、”反射式”と”屈折式”のイイとこどりに成功した替りに、、とても高価になってしまいました、、
(出自が兵器である技術ではよくあるパターン、、高性能&高耐久>>コスト度外視!)
巷では、、”カセグレン方式”と言われるタイプがこの代表で、、高級機だけが用いる方式です
凹面鏡の収差歪を改善する為に光学系の途中に凹レンズを配置しており(普通は先端部)、、
多くの場合、、鏡筒内を1.5往復する光路をもっていて、屈折式のように鏡筒終端から接眼します
代表的なのは、、”セレストロン”(サイトロン?)の製品などです

”短筒”は、この上級機だけに用いられるカタディオOP入門機や中級機で実現しようとしたのです!

さすがに、、上級機と同じ構造を取ることには無理があったようですが、、
それでも、、”密閉した鏡筒”を実現し、、!
且つ、、接眼筒の先端部に凹レンズを配置して収差の改善を試みています!
入門機や中級機で上記2点を実現したのは”かなりの頑張り!”だと思います!

     
     接眼筒先端の補正レンズ>>張り合わせ凹レンズ

因みに、、”CATADIO・OPTICS”ではなく、、”CATADIOPTRIC”、となっているのは、、、
”1.5往復する光路”ではなく、反射式と同じ”1往復の光路”で、、、
鏡筒先端側の横から接眼するあたりからの遠慮(?)から、
カタディオ・オプティクス(風味)ということではないかと想像しています(笑)

密閉式の鏡筒は”ダスト耐性”が秀逸なので、屋外に長時間設置できて重宝しています


 その参 ・ ”TOWA” と ”Tasco”?! 

興味深いモノづくりをしていた東和光器さんですが、その存在はあまりメジャーではかったようでした
というのも、東和光器さんは、どちらかというと他社へのOEMが多く、、
、、自社販売にはあまり注力していなかったようで、、その為、認知度が低いようです

勝手な想像ですが、、モノ作るのは上手だけれど、、営業はあまり得意(好き)じゃなかったのかと思います
(、、どちらかというと自分自身もそういう傾向なので、、親近感が湧きます(笑)

それでも製品を自社ブランドで販売する場合は”TOWA”のバッジ(銘板)をつけていました
また、OEMとは別に海外輸出ブランドとして、”Tasco”というバッジになっているモノもあります
基本的にはこの”TOWA”と”Tasco”が東和光器の正規品だと思われます

      
     東和光器・最終期の”短筒系”:MMC−80         ”Tasco”バッジのCT−30(123T)

その他にも、、OEMでいろいろな他メーカーのブランドになっているものがあり、
中には、取扱い商社(商店)のブランド名になっているものまであるようです

また極めつけは、、海外でデッド・コピーされたモノも出回っていて、一見、”短筒”なのだけれど、、
大概、非常に作りが悪く、キモである凹レンズが省略されているケースもあるそうです
(未確認情報ですが、、”TANTUTU”と書いてあるらしい、、、)
(日本人じゃないと”短筒””タンヅツ”とは読めないから、、”タンツツ”になっちゃったのかな!?)
 

非常に残念なことに、、東和光器さんは、、現在は会社がありません
90年代の中ごろに、会社活動を停止されてしまいました、、

中国製の爆安望遠鏡が大量に輸入されるようになり、、
国内メーカーは上級機やプロ機の分野にシフトすることで生き残ったようですが、、
入門機や中級機を主力にしていた東和さんにはかなり厳しい状況だったのだと想像します

面白いモノづくりをされていただけに、、とても残念に思います!


 ペリスコープの謎! 

もともと特徴的な外観の”短筒”シリーズにあって、特に異彩を放つのが中級機・CT−50です
それは、、同シリーズ中、唯一、ペリスコープ型のファインダーを装備しているからです!

上位機種も下位機種も通常の照準器タイプのファインダーを装備しているのですが、、
中位機のCT−50だけが格納式の反射鏡を用いたペリスコープ型のファインダーを採用しています

   
     CT−50のペリスコープ型ファインダー

このペリスコープは、本体の斜鏡と同じように調整ビスによる3点支持になっている第一ミラーと
ダイアル(写真の銀色のツマミ)操作で鏡筒内に突出する(!)可動式の第二ミラーによって、
望遠鏡本体筒内にファインダーの光軸を確保する仕組みになっています

   
     鏡筒内に迫り出したペリスコープの第二ミラー
     未使用時は影をつくらないように鏡筒側面に格納される

望遠鏡本体の光軸とファインダーの光軸をできるだけ近接させることを狙ったギミックかと思います
構造的にみて、、一眼カメラのミラー・シャッターを模しているのだと想像します

しかし、、このギミックは何故かCT−50だけにしか装備されていません!!!

コストに制約がある下位機種(CT−30)ではコこの手の装備は省かれるのが当然としても、、
上位機種(CT−70、CT−75)にも採用されていないのです!
ベース部の部品などは鋳造の成形品を用いており、かなりコストがかかっていることが判ります

何故、、わざわざコストをかけて開発したギミックを、中級1機種にしか搭載しなかったのか?!?

それは、、、恐らくこのギミックが失敗作だったから!?、、ではないかと想像します

実のところ、、このファインダーはとても使い難いシロモノです!
像が小さくて、、なによりもとても暗いのです!

かなりのコストと期待を掛けて開発したのはいいけれど、、出来たモノはイマイチだった、、、
本来は、中級機以上には全部装備して開発費用を償却する予定だったけれど、、
あまりにも、、出来が悪くて上位機種には付けられなくなってしまった・・・
しかし、製品化しなければ、せっかく作ったモノが無駄になってしまう、、、

苦肉の策として、、絶対的な性能が要求されない中級機に載っけて全てがムダになるのを避けた、、、
、、というようなストーリーだったのではないかと想像します(あくまでも想像デス!)

使い難いのはホントウですが、、個人的にはこのギミックは嫌いではありません(笑)
コンセプトそのものはとても前向きだと感心するほどで、、
設計者の意欲的な試みであったことは間違いないと思うのです

また実際に、、”他に例を見ない”という点においてホントウに珍しいギミックです


* * * マニアックな話 * * *

 短筒四兄弟 !?! 

90年代に販売展開していた”短筒”シリーズにはカタログ上に4モデルがありました

   大短筒  >>> CT−75  : D=153、 F=1300

          >>> CT−70 ( 75と本体は同じ、付属装備の違いらしい(詳細不明))

   中短筒  >>> CT−50  : D=114、 F=1000

   小短筒  >>> CT−30  : D= 76、 F= 600

   短筒改 >>> MMC−80 : D= 80、 F= 800

比較的目にする機会があったのは入門機種のCT−30で、時折、雑誌等に広告が出ていました
私が”TANZUTSU”を知るきっかけもコノCT−30の広告でした

    
     こんな感じの広告でした、、(これは小短筒の箱の写真)

それから、、10年以上が経ってからコノ”小短筒”(CT−30)を探していたら、、
とある業者さんから、、”うちにあるヨ!”と連絡をもらい、、譲ってもらったのが”中短筒”(CT−50)でした

その後も引き続き、、正規の”小短筒”を探索していた処、、
今度は別の方から、、”そのようなモノを持っている”と伺い、、譲ってもらったのが”短筒改”(MMC−80)でした

探していた小短筒には縁がなかったのですが、お蔭でよりレアなモノを入手することができました
その後、探索もしなくなった頃になって、ネットオークションで念願の”小短筒”(CT−30)を入手できました

   
    入門機  ”TANZUTSU”  CT−30(123T)

さすがにもう”大短筒”を求めようとは思いませんが、、機会があれば一度見てみたいと思います
”大短筒”は当時のチラシや広告にもほとんど登場せづ、”TOWA”さんのカタログでしか存在を知りません!
ホントウに現物が販売されたのかどうか???に思ってしまうほどです

また、番外機種のMMC−80”TANZUTSU”ではありませんが、、
同じTOWAブランドの”CATADIOPTRIC”ということで短筒亜種として並べてみました

MMC−80は”TANZUTSU”と異なり”1.5往復する光路”
鏡筒終端からの接眼を実現した割とまともなセミ・カセグレン望遠鏡になっています
そして、一眼カメラの望遠レンズとしても使用できるようになっており、、
本来そちらがメインターゲットだったのではないかと思わせる仕上げになっています
   >>> 黒の半艶消しのボディとかは、接合時のカメラとのマッチングを意識しているのだと思います

市販200mm望遠並みの長さで800mm&10万円しない!、、旨く売っていたら会社はやっていけたかも!?

   
     MMC−80(手前) と CT−50(奥)

現在はウチには、、CT−50、CT−30、MMC−80が現存しています
( CT−50はかなり壊れていたのでレストアしての復活です)