今週の北条氏政(大河ドラマ『江 姫たちの戦国』)

  だからー、清水紘治は「朝の連続テレビ小説」には合わないって言ってるのに……!といいたくなる大河ドラマ50作目。2回のみのゲスト出演。ところで清水さんは過去4回、2年連続て大河ドラマに出ているのですが、「江」への出演で来年の「清盛」に出演の可能性はいかほど跳ね上がったのか、と愚かな現実逃避をしてしまう今日この頃。

清水紘治の役柄:後北条氏四代目当主、北条氏政。従四位下、左京大夫。「江」に登場した時点では息子・氏直に家督を譲っていますが作中での立場は不明。秀吉に臣従しない諸大名がどう描かれていたかわかりませんが、氏政は関東一円を治める老獪な戦国大名、という感じでしょうか。老獪というのは演技と雰囲気からくるイメージであって、実態は定番のやられ役北条のテンプレにすぎませんが。
  くだらない「ご飯に味噌汁を二度かけたのを父親が云々」エピソードなどによって無能扱いされている氏政ですが、ざっくり見てもあの時期、相模の国の領土を広げている氏政がそんなに無能とは思えませんが。内政面優秀そうだし。地元大名なので、つい贔屓目で見てしまいます。というか、この人って某吉田茂の孫首相と印象がかぶる。けなすエピが超絶くだらないことばっかりなところとか、時期が悪くて何もかも責任負わされてるところとか…。


第22話「父母の肖像」

  家人に「私が泣いてても放っておいて」と言いおいて久々に大河ドラマを見る。……えーと、どこから話せばよいものか。話のテーマ、スケール、キャラクターの造形、演技、全てが大河ドラマというよりは朝の連続テレビ小説。というよりも、もはやコント。戦国時代の衣装をつけて45分使ってコント、これが今年の大河のコンセプトなのか?役者がどうこうではなく、脚本・演出の段階で崩壊していると思う。NHKには、もはや歴史物ドラマを作ろうという気がないのだろう。
  大阪からの距離が幸いしてコントな人達とは今回一切関わらずに済んだ北条家。なかんずくゴーイングマイウェイでいつもの容赦ない演技を展開する清水様。まぁ、そりゃそうですわね、完全に別撮りなのですから。予告編でコントのようなシーンばかり抜粋されているから清水さんが浮いているのだろう、と思っていたら本編を45分見てもやはり浮いていたという落ち。北条氏政なのに思いっきり「くせ者風」でしたな(笑)あんなに眼光鋭く凄んでみせなくても……。気位の高そうなご隠居様でした。「百姓あがりが偉そうに」と嘲るシーンに「KING OF ZIPANGU」の松永久秀を思い出したりして。いやー、もうかっこよかったこと!ここだけ大河ドラマみたいだった!(嘘。北大路家康は大河っぽいと思う。あと奈良岡大政所とか)今回の氏直は抗戦派なんですね。というか「そんなことどうでもいい」と思ってそう。脚本家が。
  とにかく合戦描写がないと評判の大河ドラマなので、北条攻めは一回限りと決めてかかっていたところ、まさかの次週持ち越し。……清水さんの出番が多くなるのは嬉しいが、これをもう一週見るのは辛い…。予告編に氏政の鎧姿が出てきたのでこのままフェードアウトではなさそうです。前にも書きましたが秀吉が淀を呼ぶシーンをやりたいだけだと思うので、多少ひっぱる可能性はあるかと。次回は一夜城でもやってみせるんですかね、江の発案で(笑)


第23話を見る前に

  清水紘治の北条氏政に「かっこいい」「迫力ある」ときゃーきゃー騒いでいたのが落ち着いて、気づいたことを幾つか。

・清水紘治の演技の種類
 清水紘治は大河ドラマではどちらかというと抑えたシブい演技をすることが多いという印象があり、今回は役柄もあって鷹揚(というか偉そう)路線か渋めか、どちらかだろうと思っていたのですが、案に相違して大河では稀に見る本気演技でしたな。2回で退場ゆえ飛ばしていらしたのかしらと愚考。いや、いつも大河ドラマで手を抜いているというわけではないのですが、清水さんは時折周囲とのバランスというか、周りのテイストをさらっと無視して容赦ない演技を叩き込んでくることがあり(「ウルトラマンダイナ」の怪獣戯曲とか)、今回はそういう感じがありありと……。というか、清水さんはメインキャストの演技を見ていないんじゃないだろうか。北条家パートって完全に別撮りっぽいんだけど。

・「江」における「大河ドラマっぽさ」  このドラマにおいては「大河ドラマっぽさ」はベテラン俳優のかもし出す雰囲気にかろうじて残っているにすぎない。北大路欣也あたりは、もう手癖でできるような時代劇っぽい演技をしていればそれで済むわけで、始まったばかりの頃に一度見た回に較べると明らかに加減しているように見える。何を加減しているのかはわかりませんが。家康が出てくるシーンが「かつて大河ドラマと呼ばれていたもの」っぽく見えるのは雰囲気でそう見えるだけであって、別にそこだけセリフがまともだというわけではない。それでも「秀吉と家康を同じ画面に出すなよ」というくらいの格差はある。大竹しのぶはうまい女優だが決して時代劇風の演技をする女優ではないので、もったいなくは見えても初期家康ほど浮くことはなさそう。奈良岡朋子の大政所はわずかな豊臣家のシーンでも浮いていた。しょうもないドラマですね、本当に。
 北条パートだって清水さんの演技がいかにもそれっぽかったから誤魔化されましたが(笑)台詞だけきちんと追ったら別に褒められたシーンではありません。秀吉は書状で結局何を言ってきたのかもよくわからない有様。おそらく脚本家センセイはホンを書き上げてから出来上がった映像を見るまで現場にはノータッチだと思われますが、映像化された北条パートを見て「何じゃこりゃー!!」となっているのではないかと思うと心配です(嘘)だって北条家パートだけ他から切り貼りしたみたいなんだもの。そういえば服がシックなダーク系なのもよかった。

・秀吉をどう描きたいのか?
 全然わからん。とりあえず天下人の器量ある男に描く気はゼロと見た。それならそれで構わないが、主人公である江と秀吉をどういう関係にしたいのか。二人の父の仇で憎いのか、結局は喧嘩するほど仲がよい、なのか。茶々出産待ちのコントを見ていると後者にしか見えないが、それなら一回45分かけて秀吉と姉の仲を許す許さないで大揉めしていたのは何なのか。私が見た第2回(か3回)では、いきなり秀吉に飛びかかるという蛮行に及んでいたと記憶するが(サルはお前だ)、現状でなお養父であり関白である秀吉に対するあの態度は何なのか。
 このドラマで小牧・長久手の戦いから家康の帰順というか臣従をどういう見方で描いていたのか私は知りませんが(まぁ、描いていないような気もしますが)、このドラマでは秀吉の天下統一はどういう方向性で捉えられているのでしょうか。信長はよくて秀吉はダメ?九州平定は?北条氏政に清水紘治をキャスティングしているというのは、たぶん北条は悪者扱いなんでしょう(笑)だったら秀吉はもっと正義ヅラしてなくていいの?それとも「戦の好きな」ダメな男達が馬鹿な合戦をして女はそれに苦しめられているのです、とそういう見方なのでしょうか。

・予告編
 鎧姿の氏政様が「何じゃ、あれは…」と驚いたというよりは呆れたという感じで一言。石垣山城の天守閣でどつき漫才をする秀吉と江を見たに違いない(←千里眼かよ)。あまりの馬鹿らしさに全てに絶望して降伏を決めて切腹なさるといい。できれば開始後10分ぐらいで頼む(笑)そうすれば私は心置きなくテレビを消すことができるから。

・私の願うこと
 願わくは、今週、江が小田原城に乗り込んで北条を降伏させたりしませんように。これだけが私の願いです。いや「これだけ」ではないか。色々あるけれど、慎ましく(?)三つにしておく。
 ひとつ、江が小田原城に乗り込んだりしない
 ひとつ、氏政様がコントキャストとからまない(秀吉は淀とイチャイチャでもしてればいい)
 ひとつ、よく聞くとたいしたことないセリフだけど雰囲気で大河ドラマっぽく見えるという清水マジックをもう一度(笑)



第23話「人質秀忠」

この成瀬がストーリーや主演女優のためにドラマコントを見ていると思っているのか!
私は『清水紘治のため』にこのドラマコントを見ている!『清水紘治のため』ただそれだけのためだ!

  「スルーされるのが勝ち組とされる」と言われる大河のおそろしさを思い知りました。氏政様はともかく、氏直の扱いがひどかった。石垣山城をみてがっくり膝をつくとか、ひどい。あれで速攻降伏したみたいなナレーションでしたな。ばーかばーか(←おい)氏直ファンの方は本当に本当にお気の毒でございました……。というか北条父子の生死も定かではなかったのですが?なんか(予想通り)すごい簡単に済ませられた小田原の陣ですが、あれだったら、一回にまとめておいて欲しかった……。そうすれば一話見てそれで済んだのに。先週は朝ドラの「近所に住んでいるヒロインの喧嘩相手の変なおじさん」レベルの秀吉に、清水紘治演じる北条氏政が負けたら腹が立つだろうなぁと思ったのですが、腹を立てるほどのこともなかった。何故、小田原の陣をわざわざ扱ったのか。……あ、そうか。江と二番目の夫と三番目の夫を一堂に会させたかっただけですか(笑)
  本日の氏政様の出番。鎧に陣羽織で偉そうにしてました(笑)日の丸の扇子持ってたー(笑)秀吉軍の数を見ておろおろしている息子を叱ったり。物見を出せ、と命令したり。三つ鱗の入った陣羽織、氏直ではなくて氏政が着ていたのはいいんだろうか。もう1カットは、石垣山城を見て一言。本当に一言だけ(笑)でもちゃんとアップの表情だけで演技する清水さんはすごいなぁと思って見ていました。なんか、ファンとして涙が出た。まぁ、本当なら先週の時点で「我が北条の力を思い知らせてくれよう…!」という状況判断には問題があるでしょう、実際のところ。地方で粋がっているヤンキーのような若造君とか、お家大事至上主義な誰かとかをあてにするのはおすすめできない。しかし繰り返すが天下の形勢が描写されず、秀吉が当時の勢力にふさわしい人物として描かれていないので、あまりそういう風には見えないのです、作中で。清水紘治ファンとしてはなおさらだ(笑)人品・知性・風格・迫力、どれをとっても氏政の圧勝だろうが!…まぁ、悪そうなのは認めますけど(笑)別に岸谷秀吉だってよい人には見えまいよ。
  清水紘治が北条氏政役というのは無関係に、一応、三代前からの東京人で「地元大名」は後北条氏、と思っている身としてはしょぼい小田原の役に猛抗議したい。思っているというか、まさに氏政の楽市掟書に端を発する地元イベントもあったりして、後北条氏以外にどこが地元大名なのか(徳川家?江戸時代?何ソレ、美味しいの?)。中途半端に北条親子を登場させておいて、ナレーションで済ますなら最初からナレーションだけで済ませればいいのに。

  普通のみどころ。奈良岡大政所の秀忠への「ありがとうなぁ」の一言。秀次の出番全部。この人、すごく上手いですね。前回もいいと思ったけど。ダメすぎたところ、三成が突然利休に難癖つけ出すところ。前回までおどおど解説係やってたくせに人格変わってます?秀吉と利休も突如対立しだす、しかも茶碗の趣味がどうこうとか、表面的なことに終始。利休も大人げなく喧嘩売るなよ、人格変わってます?利休切腹なんて規定事項なんだから前から伏線を引いてくださいよ。やっつけみたいに前の回になって慌ててやらないで。


まとめ

  この長時間コントを3週見てよかったこと。清水紘治がかっこよかったこと(笑)もう少しきちんと書くと、清水さんの最新作を見て「かっこいい!」「素敵!」と大騒ぎできたこと。大騒ぎしたのかよ、というと、した。しましたよ(作品の出来はこの際おいておく)。いやー、かっこよかった。氏政の側室になりたいと思うくらいかっこよかったよ!(←氏政にも選ぶ権利があります)まぁ、完全に絵ヅラ的なかっこよさなんですけれども。作品内における北条氏政の立ち位置とか、そこから求められる演技が云々とかの問題ではなく。たとえば、状況判断としては分がよくないにもかかわらず、上杉・武田と渡り合って来た北条家の過去を誇るあまり秀吉に膝を屈するのを潔しとしない頑なで気位の高い老人、という役ならば、清水紘治は十二分にその役柄を演じてみせたと思いますよ?でも、作品内における北条氏の位置づけがされていないから、本当に雰囲気と絵ヅラだけでそれらしく見せることになってしまう。…かっこよかったけど(笑)
  閑話休題。ここしばらく昔(15年前から30年前ぐらい)の作品を続けて見たので失礼ながら「さすがに清水さんもお年を召したものよ」と若干の寂寥感を覚えていたこと、何よりもようやく見た「秘密の花園」が理解できずに手に余るという感想に相当落ち込んでいたこともあり、テンションが下がりがちだったのですが、わずか数分の北条氏政登場シーンにこれだけ騒げるならば、わたくしの清水馬鹿っぷりも、清水さんのかっこよさもまだまだ健在ということですわ(笑)何よりも、役者・清水紘治の力量をかみ締められたことが一番の幸せ。