n-ro151 何か温かい飲み物をマサオにあげてください。(動詞の不定形を使って書いてみましょう。)

解説
何か温かい飲み物を: ian varman trinkaj^on のように trinkaj^on を使っていうこともできますが,ここでは不定形動詞の形容詞的用法の練習をするのが目的なので,trinki を使っていえば ion varman por trinki となります。この不定形動詞の形容詞的用法に習熟すると表現の範囲が広がります。(次回の課題文n-ro152も不定形の動詞を使って簡潔に表現することができます。不定形動詞の形容詞的用法についての説明は,ここをクリックしてください。)
io に形容詞が付くときは,後ろの置くのが普通なので varman ion ではなく ion varman としましょう。
なお,libro por legi という表現に出会うと,「本は読むものに決っているのに,なぜわざわざ libro por legi(読むための本)のように por legi を付けるのだろう」と思われるかもしれませんが,動詞の不定形は「これから行われる行為」を示すので,libro por legi は「これから読む本」を表わします。

マサオにあげてください: donu al Masao または bonvolu doni al Masao といえばよいでしょう。al Masao は文末に置いても誤りではありませんが,この文では doni の直後に置くほうが分かりやすい文になります。

訳例
Donu al Masao ion varman por trinki.


n-ro152 わたしにはそこへ行く勇気がありません。

解説
わたしには〜がありません: mi ne havas 〜n が一般的ないい方です。al mi mankas 〜 といういい方もあります。manki は「必要もの,あるべきものがない」という意味に「それを残念に思う」というニュアンスを伴います。「〜」のところには主格の名詞,または代名詞が入るので,al mi mankas 〜n は誤りです。

そこへ行く勇気: ここでは havas の目的語になっているので,‐n を付けて la kurag^on iri tien というのがよいでしょう。無冠詞の kurag^on が多く寄せられましたが,名詞が不定形の動詞に修飾されているときは冠詞を付ける,とおぼえておきましょう。Li havas kurag^on(彼は勇気がある)というときは,無冠詞の kurag^on でよいのですが,「彼はそれをする勇気がある」というときは Li havas la kurag^on fari tion のように冠詞を付けましょう。不定形動詞の形容詞的用法の解説の中で挙げてある例にも la decido fari g^in(それをするという決定)のように冠詞を付けてあります。(ここをクリックしてご参照ください。) c^i tie は「ここ」ですから,「そこ」は tie を使いますが,「そこへ行く」は iri tien と -n を付けていいます。この -n は「移動の方向」を示します。
la kurag^on por iri tien のように por を入れた訳も寄せられましたが,不定形の動詞が直前の名詞の内容を説明している場合は por を付けないのが普通です。por を付けるのは,名詞や代名詞が不定形の動詞の目的語になっている場合です。例えば laboro por fari(なすべき仕事)の場合は fari laboron という関係にあるので,laboro fari ではなく por を入れて laboro por fari とするのです。
PLENA VORTARO に havi la kurag^on por fari ion が Zamenhofの用例として出ていますが,これは Zamenhof の文章の中の文そのものではなく,恐らく辞書の編纂に際してよく行われるように,文の一部を取り出して必要に応じて書きなおしたものと思われ,その際のミスである可能性があります。PLENA ILUSTRITA VORTARO の kurag^i の定義は havi la kurag^on ion fari(何かをする勇気がある)と書かれていますが,このように不定形の動詞が名詞の内容を説明している場合は por を入れないで不定形の動詞を置くのが普通なので,書くときはそのようにするのがよいでしょう。
なお,この課題文は訳例に挙げたように,動詞形の kurag^i を使っていうこともできます。

訳例
Mi ne havas la kurag^on iri tien.
Mi ne kurag^as iri tien.


n-ro153 彼らは助かるという希望を最後までなくしませんでした。

解説
助かるという希望を: la esperon ke ili estos savitaj または la esperon ke ili savig^os ということができますが,ここでは文の主語 ili と ke 以下の主語 ili とが同じ人たちを指すので,la esperon esti savitaj または la esperon savig^i のようにいうことができます。この savitaj の -j を付け忘れないようにしてください。ke ili estos savitaj の形では -j を付け忘れない人でも la espero esti savitaj の形になると,うっかり savita としてしまうことがあるので気を付けましょう。savotaj は savitaj としましょう。-ota は「まさに〜されようとしている」という意味なので,la espero esti savotaj は「まさに救出されようとしているという希望」という意味になります。「助かる」というのは,危険から脱出して安全な状態に置かれるという一連の動作の完結を示す表現なので savitaj を使っていいましょう。la esperon,kiu ili savig^os の kiu は誤りです。

最後まで: g^is la fino といいます。de mateno g^is vespero と同じように,慣用表現として無冠詞の g^is fino も使われますが,論理的には冠詞を付けたほうがよいので,g^is la fino の形でおぼえておくのがよいでしょう。g^is lasta momento は冠詞を付けて g^is la lasta momento としましょう。

彼らはなくしませんでした: ili ne perdis とします。ili ne perdis al la lastan esperon は誤りです。perdi は他動詞ですから perdi 〜n の形で使われます。それに al の後に -n を付けた語が来ることはありません。

訳例
G^is la fino ili ne perdis la esperon savig^i.
G^is la fino ili ne perdis la esperon esti savitaj.
Ili ne perdis g^is la fino la esperon ke ili estos savitaj.


n-ro154 わたしは日本の絵本を何冊か彼に送るという約束をはたしました。

解説
わたしは約束をはたしました: mi plenumis mian promeson。mian promeson は la promeson としてもよいでしょう。plenumis のところを atingis や finis としたり, la promeso estas elfarita とするのは不適当です。

日本の絵本を何冊か彼に送るという約束を: mian(la) promeson sendi al li kelkajn japanajn bildlibrojn または mian(la) promeson ke mi sendos al li kelkajn japanajn bildlibrojn のようにいうのがよいでしょう。sendos を sendu や sendas とするのはよくありません。-as がどのような場合に使われるのかについての詳しい説明は,ここをクリックしてください
「絵本(単数)」は bildlibro または bildolibro のように bild に名詞語尾を付けた合成語も使われます。子音字が続いて発音しにくい場合に,発音しやすいようにするためですが,いつも -o- を入れるというわけではなく,lastatempe(最近), multekolora(多色の)などに見られるように -a- や -e- が入ることもあります。この問題は別のページ(準備中)で解説したいと思います。つなぐ個所の -o- などの有無で誤解されたり,通じなかったりすることはないので,「発音しにくいか,しやすいか」を基準にして差し支えありません。
al li の位置は文末でも構いませんが,人称代名詞(mi, vi, li, s^i, ...など)は,とくに強調したいときのほかは,なるべく文末を避けたほうがよいとされています。これは読んだり話したりするとき,人称代名詞には力点を置かないのが普通なので,力点を置いてはっきり発音したい文末には不向きなためです。
この課題文を,どこから訳したらよいのか分かりませんという質問がありましたが,まず,いろんな修飾語を取り除いた骨組みの構文を考えます。この課題文の場合は「わたしは約束をはたしました」というのが骨組みですから,mi plenumis mian(la) promeson と書いて,次に「どのような約束か」という約束の内容を付け加えます。「〜するという約束」は,上に挙げた訳例のように promeso の後に動詞の不定形(-i)か ke を付けて説明します。この形は la s^anco vidi lin(彼に会う機会), la rajto publikigi siajn pensojn(自分の考えを発表する権利)などのようにいろいろ応用できます。

訳例
Mi plenumis la promeson sendi al li kelkajn japanajn bildlibrojn.


n-ro155 Johanoには,自分の義務を果たそうという強い意志が欠けています。

解説
Johanoには〜が欠けています: manki または malhavi を使っていうのがよいでしょう。注意しなければならないのは,「AにはBが欠けている」という場合,malhavi を使うときはAが主語になるのに対して,manki を使うときはBが主語になるということです。
A malhavas Bn.= B mankas al A.(Mankas al A B. や Al A mankas B.という語順もよく使われます。)
従って,「Johanoには〜が欠けています」は Johano malhavas 〜n または Al Johano mankas 〜 または 〜 mankas al Johano か mankas al Johano 〜 のような訳文になります。
ne havi を使っていうこともできますが,malhavi と ne havi の違いは,malhavi には「必要なものがない」という意味あるのに対して,ne havi は単に「〜がない」というだけであるという点です。
なお,A ne mankas または ne mankas A は「Aが欠けていない」ではなく,「Aがたっぷりある」という意味です。

自分の義務を果たそうという強い意志: la forta(または firma) volo plenumi sian devon または la forta(または firma) volo ke li plenumos sian devon。forta volo,firma volo には冠詞を付けましょう。名詞が不定形の動詞や ke ... に修飾されているときは冠詞または mia, lia, sia ...などを付けます。「意志」はvolo がよいでしょう。intenco も使える場合がありますが,この語には「意図,たくらみ」というような意味もあります。
「という」をどう訳したらよいのか,という質問がありましたが,前回の解説の中で述べたようにエスペラントでは,まず la forta volo(強い意志)といってから,それがどのような意志なのかを volo に続けていいます。例えば la plano vojag^i en Italio は la plano といってから,その内容をいっているので,これを日本語にする場合「イタリアを旅行する計画」と訳してもよいし,「イタリアを旅行するという計画」と訳してもよいわけで,「という」という表現にこだわる必要はありません。

訳例
Mankas al Johano la volo plenumi sian devon.
Johano malhavas la fortan volon plenumi sian devon.


n-ro156 あなたには目標を達成しようとする努力が欠けています。

解説
あなたには〜が欠けています: al vi mankas 〜, mankas al vi 〜, vi malhavas 〜n。mankas を使っていうとき「〜」は主語ですから,mankas al vi la penon や,vi mankas 〜n とするのは誤りです。

目標を達成しようとする努力: la peno atingi vian celon, la klopodo atingi vian celon, la strebo atingi vian celon などのようにいうことができます。vian celon は la celon としてもよいでしょうが,何も付けない celon はよくありません。主語が vi ですから,sian celon は誤りです。
「達成する」は plenumi, efektivigi, realigi なども使っていうこともできます。
peno と klopodo の意味は重なる部分があるので,Esperanta-germana vortaro では peni にも klopodi にも同じドイツ語の訳語を挙げていますし,ギリシア語の penesthai にも peni,klopodi の両方が挙げられているくらいですから,たいていの場合どちらを使ってもよいことが多いのですが,ロシア語の h^lopotj から採られた kolopodo は,ロシア語にある「世話,斡旋,厄介」などという, peno にはない意味を含む多義語なので,「努力」という意味に限定して使うときは peno を使っていうほうがよいでしょう。peno や klopodo には,直後にその内容を示す動詞の不定形が付いているので,冠詞を付けます。このように抽象名詞に動詞の不定形が付くときは,por を入れないのが普通です。(詳しくはここをクリックしてください。)
la klopodo, ke のように ke 以下で「努力の内容」を述べることもできますが,そのときは ke vi atingu la celon ではなく,ke vi atingos la celon としましょう。

訳例
Al vi mankas la peno atingi vian celon.
Vi malhavas la klopodon antingi la celon.


n-ro157 彼はわたしに借りた金を返すという約束をすっかり忘れています。

解説
彼はすっかり忘れています: li tute forgesis, li tute ne memoras のようにいうことができます。tute は komplete という語を使っていっても同じです。「忘れている」という状態は forgesis または ne memoras を使っていいます。forgesi が -is の形を取り memori が -as の形を取るのは,forgesi が点動詞で,memori が線動詞であるからです。(点動詞,線動詞についての説明はここをクリックしてください。) 点動詞は一回きりの行為については -as の形を取ることはありません。forgesas は下記の例文のように繰り返される行為についていうときに使われます。

参考: Li ofte forgesas la nomon de sia sekretario.(彼は秘書の名前をよく忘れる。)

このことについての詳しい説明はここをクリックしてください。
li estas komlete forgesinta は正確な表現ですが,estas -inta という複合時制は重い感じがするので,たいてい -is で代用されます。

わたしに借りた金を返すという約束を: sian(または la) promeson redoni al mi la pruntitan monon。「借りた金を」は la monon depruntitan de mi のようにいうこともできます。depruntitan は動詞の分詞形ですが,形容詞と同じように monon 修飾しているので depruntita ではなく monon に合わせて depruntitan としなければなりません。la monon,kiun li estis depruntinta de mi または la monon, kiun li depruntis de mi ということもできますが,la monon kion mi pruntis al li の kion は誤りです。(kio の用法についてはここをクリックしてください。)
「返す」には repagi を使っていうこともできます。
「返すという約束を」は上に挙げた表現のほか,sian(または la) promeson ke li redonos(または repagos)のような表現もあります。この redonos(repagos)を redonas(repagas)または redonu(repagu)とするのは誤りです。

訳例
Li tute forgesis la promeson redoni al mi la pruntitan monon.
Li tute ne memoras sian promeson redoni al mi la pruntmonon.


n-ro158 彼は2時にここへ来るという約束を忘れているようです。

解説
2時にここへ来るという約束を: sian promeson alveni c^i tien je la dua horo。horo は省略することができます。sian は la にしてもよく,alveni は veni とすることもできます。「ここへ」は c^i tie ではなく,c^i tien ということに注意してください。場所や方位などを示す副詞に -n を付けると方向を表わします。

比較:
Restu c^i tie. (ここに いてください。)
Venu c^i tien.(ここへ きてください。)

彼は忘れているようです: s^ajnas(,) ke li forgesis または li s^ajnas forgesinta などのようにいうことができます。「わたしには彼が忘れているように思われる」という意味で s^ajnas al mi(,) ke li forgesis といういい方もあります。「たぶん忘れている」という意味で vers^ajne, s^ajne, probable を使っていうこともできるでしょう。この語は文頭または forgesis の前に置くことができます。s^ajne は vers^ajne(おそらく)と同じ意味でも使われますが, このふたつの語はまったく同じではなく,s^ajne には「外見上は」という意味があるので,s^ajne sana は「おそらく健康」という意味ではなく,「見かけは健康」という意味です。「〜とわたしは思います」という意味で mi supozas ke li forgesis または mi pensas ke li forgesis ということもできます。forgesis(忘れている) は ne memoras(おぼえていない) としても同じことを表わします。

訳例
S^ajnas ke li forgesis sian promeson veni c^i tien je la dua horo.
Li s^ajnas forgesinta sian promeson veni c^i tien je la dua.
Vers^ajne li forgesis sian promeson veni c^i tien je la dua.
Mi supozas ke li ne memoras sian promeson veni c^i tien je la dua.


n-ro159 彼はタバコを吸わないという約束を破りました。

解説
タバコを吸わないという約束を: sian promeson ne fumi または sian promeson ne fumi tabakon のようにいうことができます。sian は la にすることもできますが,何もつけない promeson はよくありません。「タバコを吸う」は fumi という1語でいうことができるので,「タバコをお吸いですか」と尋ねるのは C^u vi fumas? というのが普通です。ne fumi cigaredon を使うと意味が狭くなって,例えば cigaro(葉巻)などを含まなくなります。sian promeson ne fumi は sian promeson ke li ne fumos のようにいうこともできます。

破りました: rompis を使うのがよいでしょう。malobservis は誤りではありませんが,malobservi は ne fari tion, kion estas ordonita(命ぜられていることをしない)という意味があって,その意味での使用が多いので,ある外国人は わたしへのメールの中で「malobservi sian promeson を見たとき,すぐには意味を汲み取れずにちょっと考えてから,やっと理解できた」と書いてきました。「(約束を)守る」というときも observi より teni などを使うほうがよいでしょう。observi は「観察する」とか「(法律,命令などを)守る」という意味で使われるのが多い語です。

訳例
Li rompis sian promeson ne fumi.


n-ro160 Petroは わたしからお金を借りたことを忘れています。

解説
忘れています: forgesis または ne memoras。forgesas や forgesadas はよくありません。「忘れている」という現在の状態を表わすのに,なぜ forgesis という過去形を使うのかという疑問は,この forgesis は estas forgesinta の代用表現だと考えると,よく分かるでしょう。「現在の状態を表す -is」についての詳しい説明とその用例は,ここをクリックしてください。

わたしからお金を借りたことを: ke li pruntis de mi monon。ke li pruntis monon de mi という語順にすることもできますが,一般的に文体上からは人称代名詞(mi, vi, li, s^i... など)を文末に置かないほうが望ましいので,最初に挙げた語順のほうをお勧めします。pruntis は depruntis, prunteprenis としても同じですが,prunti al で「貸す」,prunti de で「借りる」という意味を表わすことができます。
mono は無冠詞で使います。ただし,la pruntita mono(借りたお金), la mono kiun mi pruntis al li(わたしが彼に貸したお金)のように mono に修飾語句が付くときは冠詞を付けます。
この課題文では不定形を使って forgesis prunti de mi monon のようにいうことはできません。動詞の不定形は未来を表わすことはできますが,過去を表わすことはできません。

比較:
(1) Mi timas fari eraron.(= Mi timas ke mi faros eraron.)
わたしは誤りを犯すことを心配しています。
(2) Mi bedau^ras ke mi faris eraron.
わたしは誤りを犯したことを後悔しています。

上の例文(2)を Mi bedau^ras fari eraron とすることはできません。

「お金を借りたことを」は ke li s^uldas al mi(借金していることを)のようにいうこともできます。s^uldas de mi でなく s^uldas al mi ということに注意してください。

deputi, plunteprenis, manon, memnras は,いずれも誤記ですね。

訳例
Petro forgesis ke li pruntis de mi monon.
Petro ne memoras ke li pruntis de mi monon.
Petro forgesis ke li s^uldas al mi monon.