課題文 n-ro1 きょうから新しいエスペラントの講座が始まりました。

解説
「きょうから」を de hodiau~ とした訳例が半数くらいありましたが, この表現は komencig^i のような点動詞(瞬間を表す動詞)といっしょに使うことはできません。

「〜から始まる」といういい方は, 日本語特有の表現で, これをそのまま逐語訳すると日本人以外には奇妙に聞こえるでしょう。

比較
Pluvas de la tagmezo. (正午から雨が降っています。)
Ekpluvis je la tagmezo. (正午から雨が降りだしました。)

estas komencataという訳文がありましたが, 点動詞は1回きりの行為については -as や -ata は使うことができません。

La butiko estas malfermata je la deka c^iutage, sed g^i estis malfermita je la nau~a hodiau~. Ankau~ morgau~ g^i estos malfermita je la nau~a.(その店は毎日10時に開くのですが, きょうは9時に開きました。あすも9時に開きます。)

la nova kurso と冠詞を付けた訳文がありましたが, 初めて話題にするときは無冠詞にしましょう。
訳例
Hodiau~ komencig^is nova kurso de Esperanto.


課題文 n-ro2 あすは10時から会社にいます。

解説
「会社」を kompanio とした訳文が応募の大部分を占めていましたが, kompanio は「営利行為を目的とする組織体」のことであって, 場所を表す語ではありません。

したがって「会社に行く」を iri al la kompanio のようにいうことは出来ませんし, この課題文のような場合にも kompanio を使っていうことはできません。oficejo, laborejo, fabriko などを使っていいましょう。
「います」は estos, restos を使うのがよいでしょう。estos, restos は線動詞ですから,「10時から」は de を使っていいます。
訳例
Morgau~ mi estos en mia laborejo de la deka.
Morgau~ mi estos en mia oficejo de la deka.


課題文 n-ro3 いまから会社を出て, そちらに行きます。

解説
「いまから」は nun または tuj を使っていうことができます。
ここでは nun も tuj もほとんど同じ意味になります。

Venu nun. = Venu tuj. (すぐいらっしゃい。)

「行きます」は, ここでは forlasi を使っていうのがいちばんよいでしょう。eliri は「ある場所(ここでは会社)から外に出る」という意味ですから, 「ある場所から出て, どこかへ別の場所へ行く」というときは forlasi を使うのがよいでしょう。forlasi は forlasi -n の形で使いますが, 点動詞ですから一回きりの行為については -as の形では使いません。forlasis または forlasos の形で使われます。ここでは forlasos の形をとります。

「そちらに行きます」は「相手のところへ行く」という意味に取れば venos al vi のようにいえばよいでしょう。相手のところ, または 相手がいるところへ行くのは iri ではなくて veni を使っていいます。vizitos vin を使ってもよいでしょう。
もし話の内容が「相手のいるところ」でなく, どこかほかのところであれば, iros tien といいます。iras とすると, すでにそちらに向かっていることになります。
訳例
Mi tuj forlasos mian oficejon por veni al vi.


課題文 n-ro4 あなたの来月のコンサートきっと行きます。

解説
「来月の」は en la venonta monato または venontmonata を使っていうのがよいでしょう。
la sekvanta monato は「翌月(ある月の次の月)」, la venonta monato は「来月(今月の次の月)」のように使い分けるのがよいと思います。

「行きます」に iros を使った訳文が半数を越えましたが, 前回書いたように会話の相手がいるところへ行くのは veni を使います。

「コンサートへ行く」は, ふつう iri al koncerto といいますが, 会話の相手がそのコンサートの関係者(主催者, 奏者, 歌い手, 照明係, など)の場合は veni を使います。
ロックコンサートなどでは, 舞台と客席が一体となって盛り上がるということも珍しくないので, partopreni を使いたくなる気持ちも分かりますが, 「コンサートに行く」はやはり iri (veni) al koncerto というのがよいでしょう。
訳例
Mi certe venos al via koncerto en la venonta monato.


課題文 n-ro5 わたしはあした, あなたのところへ行くか, それとも彼のところへ行くか, まだ決めていません。

解説
「まだ決めていません」は ankorau~ ne decidis というのが普通です。
decidas が数例ありましたが, decidi は点動詞ですから, 1回きりの行為については -as の形はなく, -is または -os です。 -os を使うと未来のある時点でまだ決めていないだろうという意味になるので, ここでは -is を使います。
decidi とその目的になる節(主語+動詞)は, 肯定文では ke, 否定文では c^u でつなぎます。

Mi decidis ke mi faros tion. (わたしはそれをすることに決めました。)
Mi ne decidis c^u mi faros tion. (わたしはそれをするかどうか決めていません。)

ki- で始まる疑問詞は, 肯定, 否定のどちらにもつくことができます。

Mi decidis kiun libron mi legos. (わたしはどの本を読むか決めました。)
Mi ne decidis kiun libron mi legos. (わたしはどの本を読むか決めていません。)
(注) ke, c^u, kiun の前にコンマを付ける人もあります。

decidi とその後に続く節の主語が同じときは, 節の動詞は -os になり, それ以外のときは, -u になります。

比較:
Mi decidis ke mi iros tien. (=Mi decidis iri tien.)
(わたしはそこへ行くことに決めました。)
Mi decidis ke vi iru tien.
(わたしはあなたにそこへ行ってもらうことに決めました。)
Mi decidis ke li iru tien.
(わたしは彼をそこへ行かせることに決めました。)

「あなたのところへ行く」は venos al vi で, 「彼のところへ行く」は iros al li ですから, venos, iros の使い分けに注意しましょう。
vizitos を使って vizitos vin au~ lin のようにいうこともできますが, veni, iri, viziti は同じ意味ではありません。
訳例
Mi ankorau~ ne decidis, c^u mi morgau~ venos al vi au~ iros al li.


課題文 n-ro6 わたしはそこへ自分で行くか, それとも彼に行ってもらうか, まだ決めていません。

解説
この課題文は decidi の後に続く文(英文法でいう節)の動詞の形がポイントでした。
ここでは主節(Mi ankorau~ ne decidis)の主語が mi ですから, 従属節(c^u mi ...)では mi iros と li iru のように, 主語によって -os と -u が使い分けられます。

従属節の主語を mi だけにすれば, -os だけの形になります。petos ke li iru は petos lin ke li iru としないと, 誰に頼むのかが分かりません。mi petos s^in ke li iru(彼を行かせるように彼女に頼む)という場合もあるからです。

decidi は点動詞なので, 1回きりの行為については -as を使うことはありません。

下の例のような反復する行為には -as が使われます。

Li tuj decidas c^ion. (彼は何事も即決する。)

c^u mi iros tien au~ li iru tien のように, tien を繰り返してもよいのですが, この繰り返しを避けるには c^u tien mi iros au~ li iru のように tien を前へ置くのが分かりよいでしょう。
訳例
Mi ankorau~ ne decidis c^u mi mem iros tien au~ li iru tien.(Kazuyo)
Mi ankorau~ ne decidis, c^u mi mem iros tien au~ irigos lin.(松川)


課題文 n-ro7 どの靴を買うのか, まだ決めていないのですか。

解説
「どの靴を」は kiujn s^uojn といいますが, kiun s^uon と単数形を使った訳がありました。靴や靴下, 手袋など二つを一組として使うものを指すときは, s^uoj, s^trumpetoj, gantoj のように複数形で使うのが普通です。

比較: Kie estas miaj s^uoj? (靴が左右とも見つからないときの質問)
Kie estas mia s^uo? (靴の片方が見つからないときの質問)

kiun paron da s^uoj のようにいうこともできますが, これは「どの一足を」という意味で, この課題文の場合は kiujn s^uojn のほうが一般的な言い方といえるでしょう。

比較: Mi ac^etis du parojn da s^uoj. (靴を2足買いました。)

C^u vi ankorau~ ne decidis c^u vi ac^etu kiun paron da s^uoj? の c^u vi ac^etu kiun paron da s^uoj のように c^u と ki-のつく疑問詞(ここでは kiun)が同じ節(主語 + 述語)の中でいっしょに使われることはありません。また ac^etu もよくないので, この文を正しい文に書き直すと C^u vi ankorau~ ne decidis kiun paron da s^uoj vi ac^etos? となります。(ただし, paron da s^uoj は s^uojn とするほうが一般的であることは上で述べた通りです。)

kiajn s^uojn は「どんな靴を」という問いかけになるので, ここでは不適当です。

ところで, この課題文のような質問に対してと返事をするときに, 日本語ではまだ決めていないとき「ええ」と答えますが, この「ええ」を直訳して "Jes" で答えると, 「いいえ, もう決めました」の意味にとられることがあるので注意しましょう。ヨーロッパ語ではこのような否定疑問文の答え方が, 日本語と反対だからです。どちらのほうが正しいとか, 正しくないとかの問題ではなく, 誤解を与えないためには, Jes とか Ne だけでなく, "Ne. Mi hezitas inter c^i tiuj kaj tiuj." (ええ。こちらにしようか, あちらにしようかと迷っているのです)と, 誤解のないようにはっきりと伝えることが必要です。

訳例
C^u vi ankorau~ ne decidis, kiujn s^uojn vi ac^etos? (河童, 松川, Kazuyo, Ken, Lernantacxo, Sakatsu, TAKAHAS^I)


課題文 n-ro8 ハルオがあなたのところへひとりで行くと決めているのか, それともアキオといっしょに行くと決めているのか, わたしは知りません。

解説
「わたしは知りません」は mi ne scias と言います。konas を使った訳がありましたが,koni は koni 〜n の形で使われるだけで, koni, ke ... とか koni c^u ... のような形で使われることはありません。

mi ne scias, ke ... も数例ありましたが, この表現は「わたしは〜ということを知らない」という非論理的な表現になるので, ne scias ke は主語が一人称のときは使わないと覚えておきましょう。

×Mi ne scias ke li estas esperantisto.
(わたしは彼がエスペランチストであることを知りません??)
○Mi ne sciis ke li estas esperantisto.
(わたしは彼がエスペランチストであることを知りませんでした。)
○Mi ne scias c^u li estas esperantisto.
(わたしは彼がエスペランチストであるかどうか知りません。)
○Mi ne sciis c^u li estas esperantisto.
(わたしは彼がエスペランチストであるかどうか知りませんでした。)
○Li ne scias ke mi estas esperantisto.
(彼はわたしがエスペランチストであることを知りません。)

「行く」はここでは聞き手のところへ行くことを言っているのですから, iri でなく veni を使って言わねばなりません。
「ひとりで」は sola を使って言いましょう。sole は「〜だけ」と言う意味で使われます。unuope は「個別に, 一人ずつ」というような意味なので, ここではよくありません。

「ひとりで行くと決めているのか, それともアキオといっしょに行くと決めているのか」の中では, 「行くと決めているのか」が繰り返されているので, そのように繰り返した訳文もありましたが, エスペラントでは次の訳例のようにこの繰り返しを避けたほうが, すっきりした文になります。

訳例
Mi ne scias, c^u Haruo decidis veni al vi sola au~ kun Akio.


課題文 n-ro9 あなたは彼がまだ仕事を終えていないことをご存じですか。

解説
今回のポイントは「まだ仕事を終えていない」の表現でした。日本語の「終えていない」の「いない」に引っ張られると, -as の形を使って ne finas としたくなりますが, fini は点動詞ですから1回きりの行為については -as の形をとることはありません。

finas と finis のどちらにするか迷ったときには, 次のように考えてみても答えが分かるでしょう。
「まだ〜を終えていない」の反対は「もう〜を終えた」ですが, これをエスペラントで書けば jam finis 〜n となります。ところで中学校の英語の問題に「次の文を否定文になおしなさい」というのがありますが, そのとき時制は変えませんね。現在形の肯定文は否定文にしても現在形ですし, 過去形の肯定文は否定文にしても過去形です。
さて, 「もう〜を終えた」を否定文にすればよいのですから, jam finis 〜n の 時制 -is はそのままにして, ankorau~ ne finis 〜n の形にすればよいのです。
もちろん動詞のアスペクト(点動詞, 線動詞)を正しく理解しておれば, このような回りくどい説明は必要がないのですが, アスペクトの理解が十分でない学習者, 例えば, 中学生などにするの説明としては役に立つでしょう。

finos, finig^is がそれぞれ1例ずつありましたが, finos は「未来のある時点で終えるだろう」という意味ですし, finig^i は自動詞で「終わる」という意味ですから, 「仕事を」という目的語を取ることができません。
「仕事を」は ここでは laboron でも taskon でもよいのですが, sian か la をつけていいましょう。li ankorau~ ne finis lian laboron の lian は誤りで, 主語の li を再示しているのですから sian を使わなければなりません。

訳例
C^u vi scias ke li ankorau~ ne finis sian laboron?
C^u vi scias, ke li ankorau~ ne finis sian taskon?


課題文 n-ro10 わたしは彼がもうそこに住んでいないことを知りませんでした。

解説
「彼がもうそこに住んでいない」は li jam ne log^as tieというのが一般的な言い方です。 ne log^isとした訳がありましたが, これは誤りです。「〜していない」は点動詞ではne 〜isになりますが, 線動詞ではne 〜asになります。log^iは線動詞なので, ne log^asとしなければなりません。ne log^isとすると, 「住んでいなかった」という意味になります。ne estis log^antaも ne logisと同じ意味で, ここでは誤りです。

比較: Li ankorau~ ne eksciis la sekreton.
Li ankorau~ ne scias la sekreton.

上の文はどちらも「彼はまだその秘密を知らない」という意味ですが, eksciiは点動詞なので -is の形を取り, sciiは線動詞なので -asの形を取っています。

この課題文では mi ne sciisとli jam ne log^as tieというふたつの文がkeで結ばれていますが, mi ne sciisのほうを主節, ke li jam ne log^asのほうを従属節と呼びます。

この課題文のようにke以下が「〜ということを」という意味を表して, 主節の動詞の目的語になっている場合は, 主節の時制に関係なく(つまり主節の動詞が -asでも -isでも -osでも), 従属節の「〜している」は -as, 「〜していた」は -isでよいのです。

これは keや疑問詞で導かれる従属節の動詞の時制が, 主節の時制の時点から見た時制を取るためです。(英語では, この文をI did not know that he did not live there any longer と書きますが, これは従属節の時制を主節の時点からでなく, この文を書いた, あるいは話した時点を基準にするためです。)

しかし, 主節と従属節が関係詞で結ばれている場合は, 表現方法が変ることに注意してください。
Hierau~ mi vidis la longan vicon de la homoj kiuj atendis buson.
(きのう, わたしはバスを待っている人の長い列を見ました。)

この文で「バスを待っている人」の「待っている」がatendasではなく, atendisになっていることに注意してください。このkiuj以下の従属節はhomojを修飾していますが, このように関係詞で導かれる従属節の時制は, その文を書いた(話した)時点を基準にして決まるのです。

比較:
(1) Mi ne sciis kiun lingvon li parolas.(わたしは彼が何語を話しているのか分かりませんでした。)
(2) Mi ne komprenis la lingvon kiun li parolis. (わたしは彼が話している言葉が分かりませんでした。)

(1)のkiunは疑問詞なので, 従属節の動詞は主節の動詞の時制が表す時点から見た時制を取ってparolasの形を取り, (2)のkiunは関係代名詞なので, 従属節の動詞の時制は, この文を書いた(話した)時点を基準にしてparolisになっているのです。

「そこに」をen tie, tienとした訳がありましたが, これは誤りで, tie, kie, c^ie, ieなどにはenは付けませんし, log^iのように移動を表さない動詞のあとでtienのように -nをつけることはありません。

訳例
Mi ne sciis ke li jam ne log^as tie.