課題文n-ro211 Petro からもらった花瓶はどれですか。

解説
Petro からもらった花瓶: la vazo(,) kiun vi ricevis de Petro または la vazo(,) kiun Petro donacis al vi や la vazo(,) kiu estis donacita al vi de Petro などのようにいうことができます。課題文の日本語には,もらった人が誰であるか明示されていませんが,この課題文のようにいえば聞き手を指していると取るのが普通ですから,al vi を入れるのがよいでしょう。estis donata は estis donita とします。estis -ata は「〜されつつあった」という受け身の過去進行形を表します。
Kiun florvazon Petro donis al vi? のようにいうこともできますが,Kiun florvazon vi estis donacita de Petro? は誤りです。英語ではこの形が可能ですが,エスペラントではこの形はありません。

「花瓶」は florvazo ということができますが,花瓶を前にして課題文のような質問をするときは,vazo というのが普通です。これは,例えば,掛け時計だけを前にしていうときは「どの時計が...」というのが普通で,わざわざ「どの掛け時計が...」とはいわないのが普通であるのと同じです。

どれですか: Kiu estas ...? といいます。上に挙げたように Kiun vazon ...? の形を使っていうこともできます。

訳例
Kiu estas la vazo(,) kiun vi ricevis de Petro?
Kiu estas la vazo(,) kiun Petro donacis al vi?
Kiu estas la vazo donacita de Petro al vi?


課題文n-ro212 タナカ先生,先生の講座ではどの教科書を使っておられますか。 

解説
タナカ先生: s-ro(sinjoro) Tanaka または大学などの高等教育の先生にたいしては prof.(profesoro) Tanaka, 博士号を持っている先生に対しては d-ro(doktoro) Tanaka のようにいいます。instruisto Tanaka はよくありません。instruisto は敬称ではないので,「タナカ教師」というような感じになります。

先生の講座では: en via kurso が一般的でしょう。kurso は大学の講座から市民対象の講習会まで広い範囲で使われます。kurso の代わりに lekcio を使っていうこともできますが,この語は高等教育で行われる講義を指すので,s-ro Tanaka と呼びかけてからこの語を使うと不自然な感じを伴うことがあります。prelego も「講義」の意味で使えますが,この語には学問的な講演という意味もあります。

どの教科書を使っておられますか: kiun lernolibron vi uzas または kiu lernolibro estas uzata などのようにいうことができます。何冊かの教科書を前にして話している場合は,libro だけで十分です。kia lernolibro は「どの教科書」ではなく,「どんな教科書」という意味ですから,ここでは不適当です。「使っておられますか」は uzas を使えばよいでしょう。

訳例
S-ro Tanaka, kiun lernolibron vi uzas en via kurso?
Profesoro Tanaka, kiu libro estas uzata en via kurso?


課題文n-ro213 トルストイ(Tolstojo)の何を読みましたか。

解説
トルストイ(Tolstojo)の何を: kiujn verkojn de Tolstojo または kiujn el la verkoj de Tolstojo のようにいうことができます。kiun verkon de Tolstojo としたのが応募訳の半数を占めましたが,普通は kiujn と複数形で尋ねるのがよいでしょう。例えば,Mi nun legas verkon de Tolstojo.(いまトルストイを読んでいるんですよ)と相手が言ったときは,Kiun el liaj verkoj vi legas?(何を読んでいるのですか)のように,単数形の kiun を使っていいますが,これまでに読んだ作品のことを尋ねる場合に単数形を使っていうと,相手が読んだ作品をひとつと決めているようで失礼な感じを聞き手に与えます。この文は英語でいうと,Which of Tolstoy's works have you read? のようにいいますが,which は単複同形で,この which は複数形ですからエスペラントでは kiujn となります。
「何を」というのは,ここでは「どの作品を」という意味ですから, kio を使うのはよくありません。トルストイは長編小説,短編小説のほか評論などの作品もありますから,verkojn を使っていうのが無難です。novelon は「短編小説を」という対象を限定した質問になります。

読みましたか: vi legis。日本語には主語が明示されていませんが,vi を入れることが必要です。

訳例
Kiujn verkojn de Tolstojo vi legis?
Kiujn el la verkoj de Tolstojo vi legis?


課題文n-ro214 ハルオはどの手袋を買おうかと迷っています。

解説
ハルオは迷っています: Haruo hezitas, Haruo s^ancelig^as, Haruo estas sendecida, Haruo estas hezita, Haruo ne decidig^is などのようにいうことができます。問題はこの主節を「どの手袋を買おうか」という従属節にどのようにつなぐかということで,上に挙げた主節のあとに kiujn gantojn ... を置くのはよくありません。詳しくは次の「どの手袋を買おうか」の中で説明します。

どの手袋を買おうか: kiujn gantojn li ac^etos または sendecida や ne decidig^is の後では kiujn gantojn li ac^etu とするのがよいでしょう。mansakojn は「手提げ鞄,ハンドバッグ」のことで「手袋」ではありませんが,複数の方から寄せられたことからみると,どこかに「手袋」の訳語として mansakoj が出ているのでしょうか。

さて,この従属節を主節とつなぐには,どうすればよいかということですが,上に挙げた Haruo hezitas などの後に,そのままつないで Haruo hezitas kiujn gantojn li ac^etos のようにいっても通じる表現です。ただし文法上は正しいとはいえないので,Haruo hezitas pri tio, kiujn gantojn li ac^etos や Haruo ne decidig^is pri tio, kiujn gantojn li ac^etu のようにいうのがよいでしょう。heziti 〜-i の形は可能なので,Haruo hezitas kiujn gantojn ac^eti のようにいうこともできます。これは Haruo hezitas ac^eti tiujn gantojn(ハルオはその手袋を買うのをためらっている)の tiujn gantojn を kiujn gantojn に変えると,Haruo hezitas ac^eti kiujn gantojn となりますが,疑問詞は文,節,句の先頭に置くという規則に従って kiujn gantojn ac^eti という語順にして,主節につなぐと Haruo hezitas kiujn gantojn ac^eti となる,というふうに説明することができます。ここでは「買う」という行為がまだ行われていないので,ac^etas ではなく ac^etos としましょう。
なお,主節と従属節をつなぐときは ke を使いますが,疑問詞があるときは ke を使いません。

訳例
Haruo hezitas kiujn gantojn ac^eti.
Haruo hezitas pri tio, kiujn gantojn li ac^etos.


課題文n-ro215 わたしたちは,まず何をなすべきかについて討議しました。

解説
わたしたちは〜について討議しました: ni diskutis pri 〜 というのがよいでしょう。ekzamenis はここでは不適当です。diskuti は pri を伴って自動詞として使われるのが普通ですが,diskutataj demandoj(討議中の諸問題)のように,他動詞として使われることもあります。

まず何をなすべきか: kion ni devas fari antau^ c^io, kion ni devas fari unue のようにいうことができます。antau^ c^io と unue の位置は ni や devas, fari の前に置いてもよいのですが,kion の前に置くのはよくありません。疑問詞は節の始めに置きましょう。従属節の主語が主節の主語と同じなので,動詞を不定形にして kion fari antau^ c^io(unue) のようにいうこともできます。kiun を使うと選択肢が決まっていて,その中のどれを最初にするべきについて討議したことになります。
「なすべき」を ni estos farenda とするのは誤りです。farenda は kio estas farenda(なすべきことは何か)のように,「物や事柄」について使われる語で,人について使うことはできません。
kion ni necesas fari のようにいうことはできません。necesi は「物や事柄」を主語にして使われる語で,人を主語にして使うことはできません。

比較:
Necesas helpo por ili.(彼らには援助が必要です)
Ili bezonas helpon.(彼らは援助を必要としています)

訳例
Ni diskutis pri tio, kion ni devas fari antau^ c^io.


課題文n-ro216 最初にこの部屋へ入ってきたのは誰と誰ですか。

解説
最初に: ここでは la unuaj を使っていうのがよいでしょう。「ほかの誰よりも先に」というときは助数詞を使います。unue は同一人物の行為の順序を表します。(実際にはこの説明通りでない使い方を見ることがありますが,文法上はこのように区別すべきなので,書くときは比較の例文のように区別することをお勧めします。)

比較:
Li la unua eniris en la c^ambron.
彼が最初にその部屋に入りました。(ほかの人は彼の後に入った)
Li eniris unue eniris en la c^ambron kaj due en la najbaran.
彼は最初その部屋に入り,次に隣の部屋に入りました。

この部屋へ入ってきた: envenis en c^i tiun c^ambron。envenis c^i tiun c^ambron ということもできます。en c^i tiu c^ambro は en c^i tiun c^ambron としなければなりません。eniris は「入って行った」ことで,「入ってきた」とは違います。

比較:
Haruo rimarkis ke Petro envenis en la c^ambron.
ハルオは Petroが部屋に入ってきたことに気づきました。(ハルオがいたのは部屋の中)
Haruo vidis ke Petro eniris en la c^amborn.
ハルオは Petroが部屋に入って行ったのを見ました。(ハルオがいたのは部屋の外)

誰と誰ですか: kiuj というのがよいでしょう。kiu kaj kiu という直訳はよくありません。あるイタリア人に見せたら,一読しただけでは意味がつかめず,わたしの説明を見てやっと分かったそうです。彼は「わたしは kiu kaj kiu を見たときは何のことか分からなかった。よく考えてみれば絶対にこの表現は不可能とはいいきれないとは思うが,奇妙な表現という印象を受ける」と書いてきました。
「誰と誰」という表現は二人を指すことがありますが,二人であることを明示したいときは,Kiuj du la unuaj envenis en c^i tiun c^ambron? あるいは Kiuj estis la unuaj du, kiuj envenis en c^i tiun c^ambron? または Kiuj du, kiel la unuaj, envenis en c^i tiun c^ambron? のようにいえばよいでしょう。Kiuj estis la du personoj, kiuj la unuaj envenis en c^i tiun c^ambron? のようにもいえますが,この personoj は省略することができます。

訳例
Kiuj la unuaj envenis en c^i tiun c^ambron?


課題文n-ro217 「このことを知っているのは誰と誰ですか」「わたしとあなたのほかは,マサオとKarloです」

解説
このことを知っているのは誰と誰ですか: 「誰(複数形)がこのことを知っているのですか」という構文にして,Kiuj scias c^i tion? または Kiuj scias c^i tiun aferon? などのようにいうことができます。scii(を知っている) は scii pri(について知っている) の形でも使われます。

参考:
Neniu scias c^ion.
何でも知っている人なんていません。
Mi ne estas kristano, sed mi scias pri kristanismo.
わたしはキリスト教徒ではありませんが,キリスト教のことを知っています。

わたしとあなたのほかは: krom vi kaj mi というのがよいでしょう。日本語の語順のまま krom mi kaj vi とするのはよくありません。日本語と違ってエスペラントでは,人称代名詞を並べるときは vi, li/s^i kaj mi の順にいうのが普通です。文脈によっては vi kaj mi の代わりに ni を使ってもよい場合もありますが,ni は vi kaj mi よりも広い意味でも使われます。
escepte vin kaj min を使うのは,ここではよくありません。krom には inkluzive de(を含めて)という意味と ekskluzive de(を除いて)という二つの意味があります。ここでは「わたしとあなたが知っている」のは当然であることを前提にしているのですから,「を含めて」という意味で krom を使っていますが,escepte には「を含めて」という意味はありません。
krom にはこのように相反するふたつの意味があるため,「を含めて」という意味で使われるときは ankau^ がいっしょによく使われます。

比較:
Krom Masao tie estis ankau^ lia amiko.(=Tie estis ne nur Masao sed ankau^ lia amiko.)
そこにはマサオのほかに彼の友人もいました。
C^iuj krom Masao scias pri tio.(=Escepte de li c^iuj scias pri tio.)
マサオのほかはみんなそのことを知っています。

マサオとKarloです: ankau^ Masao kaj Karlo だけでもよく,ankau^ Masao kaj Karlo scias pri g^i のようにいうこともできます。ankau^ を付けるのは上に述べた理由によります。「です」を直訳して Estas Masao kaj Karlo とするのはよくありません。返事はたいてい質問と同じ動詞を使っていうことが多いのですが,会話ではよく動詞が省略されます。tiun aferon を受けていうときは tion ではなく g^in を使いましょう。
英語では "Who went with you?"という質問に対して "Masao did." のように代動詞を使って答えることができますが,エスペラントではこのような言い方はないので,"Kiu iris kun vi?"には "Masao iris."のように同じ動詞を反復して答えます。

訳例
"Kiuj scias pri c^i tiu afero?"
"Krom vi kaj mi ankau^ Masao kaj Karlo (scias pri g^i)."


課題文n-ro218 きのうの会議には,Aさん以外は委員全員が出席しました。

解説
きのうの会議には...出席しました: c^eestis en la hierau^a kunsido などのようにいうことができます。c^eestis c^e ... または c^eestis -n の形も使われます。何の会議のことを話しているのかは,聞き手に分かっているはずですから,冠詞を付けて la hierau^a kunsido といいます。会議によっては konferenco も使うことができますが,ここで konferenco の意味を確かめておきましょう。

konferenco: renkontig^o de kompetentuloj, kiuj interkonsilig^as pri kelkaj difinitaj gravaj aferoj

各国の首脳が一堂に会して開く「サミット」は,英語の summit(または summit conference)からできた外来語ですが,エスペラントでは kulmin-konferenco といいます。
la hierau^a komitato のようにいうことはできません。日本語の「委員会」にはふたつの意味があって,「××委員会」のような組織の意味と,「委員会を開く」というときのような会議の意味とがありますが,エスペラントでは委員で構成される「委員会(組織)」をいうときは komitato, 委員が集まって開く「委員会(会議)」は komitat-kunsido などのようにいいます。ここでは kunsido だけでよいでしょう。

Aさん以外は委員全員が: c^iuj komitatanoj krom s-ro A のようにいうことができます。「委員」は komisaro(=speciala komisiito) 使っていうこともできますし,「以外は」は escepte de としても同じです。tuta komitatano や tutaj komitatanoj は誤りです。英語では,ひとつの都市についていうとき all the city, the whole city はどちらも可能な表現ですが,エスペラントでは la tuta urbo(全市)ということはできても,la ciu urbo とはいえません。c^iuj urboj ということはできますが,これは「すべての都市」という意味でひとつの都市についての表現ではありません。

比較:
La tuta urbo nin bonvenigis.
全市挙げて私たちを歓迎してくれました。
En c^i tiu libro oni povas legi informojn pri c^iuj urboj en Japanio.
この本では日本のすべての都市についての情報を読むことができます。

tuta は, en la dau^ro de tutaj tri tagoj(丸三日間)のような場合のほかは,冠詞を伴って単数名詞の前に付くのが普通です。(この tutaj は plenaj に置き換えて,plenaj tri tagoj としても同じです。)

訳例
En la hiera^a kunsido c^eestis c^iuj komitatanoj krom s-ro A.


課題文n-ro219 会のメンバー全員が,わたしの意見に賛成しました。

解説
会のメンバー全員: c^iuj membroj de la societo。「会」は societo のほか,grupo を使える場合もありますが,societo には規約があるのが普通であるにに対して,grupo はもっとゆるやかな集まりを指します。kunsido は,ここではよくありません。kunsido は「会議」のことで,c^iuj membroj de la kunsido とはいいません。kunsido の場合は,c^iuj c^eestantoj de la kunsido(その会議の出席者全員)のようにいいます。c^iuj は無冠詞で使われるので,la c^iuj membroj のようにはいいません。

わたしの意見に賛成しました: aprobis mian opinion, konsentis kun mia opinio などのようにいえばよいでしょう。aprobi は他動詞ですから,aprobi al や aprobi por ではなく, aprobi -n の形を取ります。aprobi -n が「に賛成する(あることについて,それでよいという判断を下す)」という行為を表すのに対して,esti por は「に賛成している」という状態を表します。文脈によって誤解されるおそれがないときは,「賛成する」の意味で esti por を使うこともできるでしょうが,一般的にいえば,「賛成する」という行為をいうときは aprobi を使うほうが無難です。aprobis は「いまも賛成している」ということを暗示しますが,estis por は「賛成していた」という過去の状態を表すので,「いまは賛成していない」ということを暗示する場合もあります。

訳例
C^iuj membroj de la societo aprobis mian opinion.


課題文n-ro220 委員のうちの数人は,わたしの提案に反対しました。

解説
委員のうちの数人は: kelkaj el la komitatanoj というのがよいでしょう。kelkaj komitatanoj(数人の委員は)も,反対したのは委員数人であるという事実を伝える点では同じですが,日本語の「委員のうちの数人」と「数人の委員」との違いと同様,微妙なニュアンスの差があります。
kelkaj de la komitatanoj の de は誤りで,el を使います。kelkaj da membroj はkelke da membroj とすれば,kelkaj membroj とほぼ同じ意味になりますが,これだけでは何のメンバーか不明ですから,de la komitato を付ける必要があります。
kelkaj membroj el la komitatanoj は 「委員のうちの何人かのメンバーは」という不自然な表現ですから,kelkaj membroj de la komitato(委員会の何人かのメンバーは)としましょう。kelkaj iuj en la komitatanoj のようにいうことはできません。

わたしの提案に反対しました: malaprobis mian proponon または kontrau^is mian proponon や kontrau^is al mia propono。

訳例
Kelkaj el la komitatanoj malaprobis mian proponon.