課題文n-ro221 出席者のうちの一人だけが,あなたの意見に同意しませんでしたね。

解説
出席者のうちの一人だけが: nur unu el la c^eestantoj が普通のいい方です。c^eestintoj は「出席した人たち」という意味ですが,会議が散会したあとでも c^eestantoj を使ってかまいません。c^eestantoj には冠詞を付けます。ここでは聞き手には何の出席者を指しているのかが,当然分かっているはず,ということもありますが,一般に「〜のうちの」というときには el の後の名詞には,冠詞または miaj, tiuj など名詞を限定する語を付けていいます。

参考: Unu el miaj amikoj estas lingvisto.
    わたしの友達のひとりは言語学者です。

あなたの意見に同意しませんでした: ne konsentis kun vi または ne konsentis vian opinion のようにいえばよいでしょう。「ある人の意見に同意する」は konsenti kun iu の形で表すことができます。opinio を使っていうときは konsenti ies opinion のように,kun を使わずに konsenti -n の形でいうのが普通です。

ね: 相手に確認するときには, 文末に c^u ne? を付けていいます。この文のように否定文の後に付けるときは c^u? を付ける人がいますが,この形は増える傾向にあるようです。注意しなければならないのは,肯定文の後では c^u? を使わないということです。c^u ne? は肯定文,否定文の区別なく使うことができるので,相手に念を押すときには,いつも c^u ne? を使うとおぼえておいてもよいでしょう。否定文の後では c^u jes? を使う人もいますが,これは少数派です。
この課題文の「ね」が確認の意味でなく,単に軽く添える「ね」の意味であれば,c^u ne? を付けなくてもかまいません。

訳例
Nur unu el la c^eestantoj ne konsentis kun vi, c^u ne?


課題文n-ro222 その3匹の子犬のうちのどれをマサオにあげるのですか。

解説
その3匹の子犬のうちのどれを: kiun el tiuj tri hundidoj のようにいえばよいでしょう。tiuj は la を使っていうこともできますが,子犬を指差していうときは,tiuj を使っていうほうが自然です。
広辞苑で「こいぬ」を引くと,「小犬,子犬」という漢字を挙げて,「小さい犬,犬の子,いぬころ」と定義されていますが,エスペラントでは「体の小さい犬」は hundeto(malgranda hundo, 小型犬), 「犬の子(まだ成犬になっていない犬)」は hundido(juna hundo, 幼犬)と区別していいます。ここでは juna hundo の意味で「子犬」という漢字を使ったのですが,広辞苑に載っているように,日本語では「小犬」,「子犬」を区別しないようなので,寄せられた訳文の hundetoj は減点の対象にしていません。

マサオにあげるのですか: vi donos al Masao, vi donacos al Masao。「あげるつもりですか」という意味を表すのなら,vi pensas doni, vi intencas doni のようにいうことができますが, vi planas doni の plani は「計画している」というような意味で,ここでは大げさすぎる表現に感じられます。
この課題文では文頭に kiun を置くので,c^u は使いません,ki-vorto(kia, kiam, kie kio, kiu などのように ki-で始まる疑問詞 )が文頭に置かれる場合は,c^u は使わない,とおぼえておきましょう。ただし,c^u で始まる文の中に ki-vorto が使われことはあります。

参考: C^u vi jam decidis kiun el la tri hundidoj vi donos al Masao?(あの3匹の子犬のうちのどれをマサオにあげるのか,もう決めましたか)

訳例
Kiun el tiuj tri hundidoj vi donos al Masao?


課題文n-ro223 どちらの靴のほうが値段が高いのですか。

解説
どちらの靴: kiuj s^uoj というのが,いちばん簡潔で,実際の会話では,このようにいうことが多いでしょう。kiu paro da s^uoj や kiu el tiuj du paroj da s^uoj は正確な表現ですが,kiu el tiuj du s^uoj はよくありません。「靴」は複数形で使われ,du s^uoj は「2足の靴」を表しません。kiu el c^i tiuj s^uoj は1足の靴の,どちらの片方かを尋ねるときの言い方です。

参考: Kiun el la s^uoj vi metis sur la banans^elon?(どちらでバナナの皮を踏んだの)

のほうが値段が高い: estas pli altprezaj。altprezaj は altaprezaj という形もあります。 multekostaj を使っても同じです。主語が kiu paro da ... や kiu el tiuj paroj da ... のように単数形のときは,estas pli altpreza(multekosta) のように形容詞も単数形になります。kara prezo は日エスに載っていますが,これは誤りです。kara は altpreza という意味なので,estas pli kara ということはできますが,kara prezo を使っていうことはできません。それに「靴」と「高価」という名詞を estas でつなぐことはできません。これは,例えば「その少年は正直です」という場合,「少年」と「正直」とをつないで La knabo estas honesteco ということができないのと同じです。正しくは La knabo estas honesta と言わなければなりませんね。

訳例
Kiuj s^uoj estas pli altprezaj.


課題文n-ro224 強盗 はどの入り口から入ってきたのですか。

解説
強盗は: la rabisto を使います。rabisto は「rabi することで生計を立てている人」のことですが,rabi は「暴力や脅しによって他人の所有物を取り上げて自分の物にする」という意味です。s^telisto は 「s^teli することで生計を立てている人」を指して使われますが,s^teli は「他人の物を代価を払わなかったり,または所有者の許可なしに自分の物にする」という意味で,日本語では前者を「強盗」,後者を「泥棒,窃盗」と呼ぶのが普通です。ただし,日本語の「強盗」,「泥棒,窃盗」は人を指すだけでなく,その行為を指しても使われますが,エスペラントでは人を指すときは rabisto, s^telisto, 行為を指すときは rabo, s^telo と区別します。rabisto には冠詞を付けます。聞き手にとっては自分が見た強盗について話されていることが,明らかであるからです。強盗が二人以上いたのなら,la rabistoj となります。

どの入り口から: tra kiu pordo といえばよいでしょう。pordo には「ドア,戸,出入り口」という意味があります。pordo の代わりに enirejo を使っていうこともできます。
de kiu enirejo はよくありません。de は「ある点または面を起点として,そこから」という意味を表すので,ここでは不適当です。ここでは「どの入り口を通って」ということを尋ねているのですから,tra kiu pordo(enirejo) といわねばなりません。el を使うのもよくありません。el は「〜の中から」という意味ですから,el kiu c^ambro(どの部屋から) ということはできますが,el kiu pordo(enirejo) ということはできません。

入ってきた: envenis がよいでしょう。eniris は「入って行った」という意味ですから,ここではよくありません。penetri は「深く入り込む」という意味で,「抵抗を排して」という意味も含むので,入り口でガードマンなどが制止しようとしたのを押し切って侵入した場合にはぴったりの表現です。enpenetri は penetri の強調形です。

訳例
Tra kiu pordo envenis la rabisto?


課題文n-ro225 開いていた窓から小鳥が1羽,部屋の中へ飛び込んできました。

解説
開いていた窓から: tra la malfermita fenestro というのがよいでしょう。冠詞を付けるのは,話題にしている部屋の窓であることを示すためです。無冠詞では「どこかの窓」という感じになって不自然です。malferminta や malfemanta は誤りです。日本語では能動形のようになっていても,エスペラントでは受動形にしなければならない場合があることに注意してください。例えば,「わが愛する祖国」は mia amata patrujo であって,mia amanta patrujo ではありません。

小鳥が1羽: unu birdeto でよいのですが,birdeto だけでも1羽であることを表せます。「小鳥」は birdo でなく birdeto を使うのがよいでしょう。la birdeto のように冠詞を付けるのは,ここではよくありません。完全に対応している訳ではありませんが,日本語の「が」は無冠詞,「は」は冠詞付きになることが多いということはいえるでしょう。

部屋の中へ: en la c^ambron。al la c^ambron は誤りです。al は「の中へ」という意味を表しませんし,al の後に対格(-n)の名詞などが置かれることはありません。話し手のいた部屋のことですから,冠詞を付けていいます。無冠詞だと,どこかの部屋の話になってしまいます。

飛び込んできました: enflugis を使っていうのがよいでしょう。plong^i は j^eti sin en akvon(水に飛び込む),salti は movig^i de unu loko al alia loko, ne tus^ante la lokon inter tiuj(ある場所からほかの場所へ跳んで移動する)という意味ですから,ここではどちらも不適当です。

訳例
Tra la malfermita fenestro enflugis unu birdeto en la c^ambron.


課題文n-ro226 カナリアはこの窓から逃げて行きました。

解説
カナリアは: la kanario。初めて話題にするときの表現「カナリアが」だったら無冠詞ですが,「カナリアは」という言い方はすでにカナリアのことが話題になっていて,聞き手が初めて聞く「カナリア」ではないときの表現ですから,冠詞を付けていいます。

この窓から: tra c^i tiu fenestro。de や el を使うのは誤りです。de は「ある点,またはある面から」という意味ですから,例えば,窓ガラスにとまっていた蝶が飛び立ったときに La papilio ekflugis de la fenestro ということはできますが,ここでは「この窓を通り抜けて」という意味ですから,de c^i tiu fenestro を使うことはできません。el は「の中から」という意味で,el la c^ambro のようにいうことはできますが,「窓」そのもにには空間がないので el c^i tiu fenestro のようにいうことはできません。断熱や防音の目的で二重になっている窓がありますが,「その二枚の窓の間から」という意味なら,例えば El inter la du fenestroj elrampis vermo(二枚の窓の間から虫が這い出して来た)のようにいうことができます。

逃げて行きました: forflugisを使っていうのがよいでしょう。ekflugi(飛び立つ) はここでは不適当です。elflugi は eliri, flugante(の中から飛んで出て行く)という意味なので,el la kag^o(籠から)とか el la c^ambro(部屋から)などの前に付くのは自然ですが,tra c^i tiu fenestro の前では少し不自然です。実際の会話では,elflugis tra c^i tiu fenestro と聞けば,聞き手は elflugis の後に el la c^ambro を補って理解するので,意味は十分通じますが,ここでは forflugis を使うほうが無難です。

「逃げる」に eskapi は使えますが,fug^i はここでは不適当です。eskapi は liberigi sin el katenoj(束縛から逃れて自由になる)という意味ですが,fug^i は forkuri por savi sin de dang^ero(危険からのがれるために逃げる)という意味です。

訳例
La kanario forflugis tra c^i tiu fenestro.


課題文n-ro227 油はこの穴から漏れたのです。

解説
油は: la oleo。ここでは冠詞を付けましょう。日本語で何かを初めて話題にするときは「〜が」といいますが,すでに話題になっている物や事についていうときは「〜は」といいます。ここでは,油が漏れていることが話題になって,どこから漏れているのかを調べていて,その場所が分かったときの会話であることが想像できますね。

この穴から: tra c^i tiu trueto とするのがよいでしょう。truo でもよいのですが,「漏れた」という語感は小さな穴であったことを暗示するので trueto のほうがよいでしょう。brec^o を使っていうこともできますが,kavo は「底のある穴,くぼみ」を指して使われるのが普通なので,ここでは不適当です。
「から」に el を使うのは,ここではよくありません。el は「の中から,の内部から」という意味ですから,土塀などのようにかなり厚い物にあいている穴の場合は,例えば Vermo elrampis el la truo(穴の中から虫が這い出てきた)のようにいうことはできますが,薄い鉄板やプラスチックなどで作られている容器の穴の場合には,「穴そのものの内部から」ということはありえないので,el la trueto という表現もありえません。ここでは容器の中に入っていた油が,容器の穴を通って漏れたということをいっているのです。下の例文で el と tra の違いを確認してください。

比較:
Oleo likig^as el la dukto.(油がパイプから漏れている)
Oleo likig^as tra brec^o de la dukto.(油がパイプの割れ目から漏れている)

漏れたのです: tralikig^is または likig^is を使っていえばよいでしょう。likis を使うのは誤りです。liki は容器を主語にして Tiu sitelo likas(そのバケツは漏りますよ)などのように使う語です。ぽとりぽとりと漏れている様子をいうときは Oleo tragutas tra la trueto(穴から油がぽとぽと漏れているよ)のようにいうでしょう。eskapi は英語の escape などにある「ガスや水などが漏れる」という意味はなく,「危険から逃れる」という意味ですから,ここでは不適当です。

訳例
La oleo tralikig^is tra c^i tiu trueto.


課題文n-ro228 この穴から覗くと,内部が見えます。

解説
この穴から覗くと: 直訳すると se vi enrigardos tra c^i tiu truo などのようになります。もちろんこれでもよいのですが,この文は「この穴を通して(内部が見えます)」のような簡潔な表現で表すことができるので,その構文を取れば tra c^i tiu truo あるいは tra c^i tiu trueto だけで十分です。
このような構文になれておくと,例えば,「この岡に登ると海が見えます」という文を,Se vi supreniros sur c^i tiun monteton, vi povos vidi la maron という直訳の形でなく,Sur la supro de c^i tiu monteto vi povas vidi la maron という簡潔な文で書くことができます。また,「植物園に行けばたくさんの熱帯植物を見ることができます」は,Se vi iros al botanika g^ardeno, vi povos vidi multajn tropikajn plantojn と直訳するよりも,Vi povas vidi multajn tropikajn plantojn en botanikaj g^ardenoj のようにいうほうが自然な表現で,外国人にも分かりやすいでしょう。
per enrigardi のようにいうことはできません。sen のように不定形の動詞の前に置くことができる前置詞もありますが,per はほとんどすべての前置詞と同様,名詞または代名詞の前にしか置くことができません。
de c^i tiu truo の de は誤りです。de は起点を表しますが,「穴から覗く」というのは「穴を起点として」という意味ではなく,「穴を通して」という意味です。
trarigardi は rigardi de la komenco g^is la fino(最初から最後まで目を通す)という意味で trarigardi libron(本を読み通す)などのように使うのが普通ですから,「覗く」という意味では enrigardi を使うのがよいでしょう。

内部が見えます: vi povas vidi la internon。povas は povos としてもよいし,povas や povos を使わないで,vi vidas, vi vidos としてもよいでしょう。-as を使うと,時に関係なく「いつでも」ということを表し,-os を使うと「これから行う動作」についていうことになります。ここで使う povi は能力ではなく,可能性のことです。
「内部」を主語にして la interno estas videbla または la interno videblas ということもできます。
「内部」は eno より interno を使うのがよいでしょう。eno は日本の貨幣の単位「円」に使うのが普通です。

訳例
Vi povas vidi la internon tra c^i tiu truo.
La interno videblas tra c^i tiu truo.


課題文n-ro229 そのふたつの石の間から,ミミズが一匹這い出してきました。

解説
そのふたつの石の間から: el inter tiuj du s^tonoj。文脈によっては tiuj の代わりに la を使っていうこともできますが,指で指し示しながら「その」というときは tiuj を使うのが普通です。c^i tiuj は話し手のすぐ傍にあるものを指すときの表現ですから,少し離れたところにあるものを指す「その」には tiuj を使いましょう。
「の間から」は el inter を使っていいます。inter だけでは「の間に」とか「の間で」というような意味ですから,elrampis(這い出してきました)などと共に使うのは不自然です。tra la interspaco de tiuj du s^tonoj は tra la interspaco inter tiuj du s^tonoj という形が普通ですが,「そのふたつの石の間の隙間を通って」という意味になります。

ミミズが一匹: tervermo または lumbriko。「一匹」を強調するときは unu を付けます。la lumbriko のように冠詞を付けるのはここではよくありません。「ミミズ(というもの)」という総称の意味を表す場合には,初めて話題にするときでも冠詞を付けますが,会話で初めて話題にするときは,聞き手にとって既知のミミズを指すとき以外は,無冠詞の tervermo または lumbriko を使いましょう。聞き手にとって既知のミミズを指すときは日本語では「みみずは」というのが普通ですね。

這い出してきました: elrampis を使っていえばよいでしょう。

訳例
El inter tiuj du s^tonoj elrampis lumbriko.


課題文n-ro230 わたしが家を出たとき,屋根の上から何かが落ちてきました。

解説
わたしが家を出たとき: Kiam mi eliris el mia domo というのがよいでしょう。hejmo はここではよくありません。この文では屋根のことが出てきますが,la tegmento de mia domo ということはできても,la tegmento de mia hejmo とはいわないからです。建物としての「家」は hejmo でなく domo を使っていうのが普通です。家とdomo, 家庭とhejmo が完全に対応しているわけではありませんが,作文では,家屋としての「家」には domo を使い,hejmo は「家庭」という意味に使うのがよいでしょう。「(の中から外に)出た」という意味に forlasis を使うのはよくありません。
ここでいう「家」は「わたしの家」のことですから,mia domo を使っていうのがいちばんよいでしょう。外国人でも,イタリア人は la domo を使う人が多く,ドイツ人やイギリス人は mia domo を使う人が多いなど母語の影響による違いがありますが,冠詞を所有代名詞(mia, lia など)の代わりに使うのは,体の部分(kapo, mano など)や,身に付けているもの(衣服など)についていう場合に限るのがよいので,ここでは mia domo を使うことをお勧めします。

屋根の上から: de sur la tegmento。tegmento に冠詞を付けるのは mia domo の屋根であることを示すためです。ここでは de la tegmento(屋根から)を使っても通じますが,「屋根の上から」を正確に表現すると de sur la tegmento となります。降り積もった雪などのように「屋根に載っていた物」が落ちたことをいう場合は de super la tegmento でなく de sur la tegmento を使っていいましょう。super は「その物から離れて上に」という意味です。de sub は「の下から」という意味ですし,el は「の中から」という意味ですから,どちらもここでは不適当です。de supre は「上から」という意味で,Gutoj da akvo falis de supre(上から水滴が落ちてきた)のように使うことはできますが,supre は副詞ですから de supre la tegmento のように使うことはできません。

何かが落ちてきました: io falis。elfalis は「の中から落ちた」という意味なので,ここでは不適当です。

訳例
Kiam mi eliris el mia domo, io falis de sur la tegmento.