課題文n-ro261 あなたは,ここにある花の中で,どれがいちばん美しいと思いますか。
解説
今回の課題文は難しいと書いてこられた方がおられましたが,次のように考えると,そんなに難しくありません。
pensi, opinii などを使って,「その花を美しいと思う」というときは,pensi(opinii) tiun floron bela ということができます。つまり pensi ion ia または opinii ion ia の形でおぼえておくと,いろいろな場合に応用することができますし,今回の課題文でもこの形を使っていうことができます。
まず,pensi を使って「わたしはこの花がいちばん美しいと思います」という文を書くと,
Mi pensas tiun floron la plej bela. となりますね。
この文の主語を Vi に変えて疑問文にすると,
C^u vi pensas tiun floron la plej bela? となります。
次に,「その花」を「どの花」に変えると,tiun floron が kiun floron になりますが,疑問詞は文頭に置くという決まりと,疑問詞で始まる文には C^u を付けないという決まりがあるので,
Kiun floron vi pensas la plej bela? となります。
ここでは「ここにある花の中で」という文ですから,上の Kiun floron を Kiun el c^i tiuj floroj に変えます。el tiuj, kiuj trovig^as c^i tie のように正確に説明する必要はないでしょう。逆の場合についていえば,el c^i tiuj floroj を日本語にするときに「これらの花の中で」というのは,いかにも翻訳調なので,「ここにある花の中で」とか「ここに置いてある花の中で」のように訳すほうが,こなれた訳文になります。el のところに en を使うのは誤りです。一面に咲いている花の中にいることをいう「花の中に」であれば, el ではなく inter floroj などのようにいうので,「の中に」がいつも en ではないことに注意してください。
なお,ここでは plej bela ではなく,冠詞を付けて la plej bela としなければなりません。無冠詞の plej bela は「いちばん美しい」ではなく,「とても美しい」という意味を表します。
lau^ via opinio を使って,「あなたの考えでは(どれがいちばん美しいですか)」という構文にしていうこともできます。lau^ via opinio の代わりに,lau^ vi を使っても同じです。また,文末ではなく,
Kiu el c^i tiuj floroj, lau^ vi, estas la plej bela?
のように文中に挿入することもできます。
訳例
Kiun el c^i tiuj floroj vi pensas la plej bela?
課題文n-ro262 あなたは,あそこに置いてある花瓶の中で,どれがいちばん高価だと思いますか。
解説
この課題文は,前回の解説の中で述べた pensi(opinii) ion ia の形を使っていうことができます。「あそこに置いてある花瓶の中で」は el tiuj vazoj というのが,いちばん簡潔な表現です。vazo は「いろいろな種類の器」のことですが,花瓶を見ながらいうときや,花瓶を指しながらいうときは,vazoj だけで十分です。vazo は florvazo の上位概念を表す語ですが,何かを指していうときは,上位概念を指す語を使っていうほうが,自然である場合が多いのです。日本語でも,このように上位概念の語を使うことがあります。例えば,時刻を尋ねられて,自分の腕時計を見ながら答えるときは「わたしの腕時計では」とはいわないで,「わたしの時計では」といいますね。しかし,そうでない場合もあります。例えば,黒板の前で「黒板の字が見えますか」というのは,日本語では少しもおかしくありませんが,エスペラントで C^u vi povas vidi la literojn sur la nigra tabulo? というと,エスペラントに慣れた耳には少し滑稽に聞こえます。この nigra は不要なのです。
「あそこに置いてある」は metitaj tie や surmetitaj tie を使っていうこともできますが,簡潔ないい方では tiuj で表すことができます。la florvazoj, kiuj estas metanta は誤りです。meti は「を置く」という動詞ですから,metanta を使うと,何かを置くという行為をflorvazo が行なっているという意味になります。tieaj vazoj は冠詞を付けて la tieaj vazoj としましょう。vazoj, florvazoj には冠詞を付け,metita, surmetita は vazoj, florvazoj に合わせて -j を付けます。
「高価な」には altapreza, multekosta, kara を使っていえばよいでしょう。altapreza は altpreza の形でも使われます。
訳例
Kiu el tiuj vazoj vi pensas la plej multekosta?
課題文n-ro263 あなたは,散歩にいちばん向いているのは,どの靴だと思いますか。
解説
課題文n-ro261, 262で取り上げた構文の練習を続けています。
あなたは,どの靴だと思いますか: Kiujn s^uojn vi pensas でよいでしょう。Kiun paron を使っていうこともできますが,Kiun s^uon または Kiun el tiuj s^uoj とすると,左右一揃いでない片方だけの靴を指すので,ここでは不適当です。靴や手袋,靴下,めがねなどは,片方だけを指すとき以外は,複数形を使っていいます。
比較:
Kie estas miaj gantoj? (ぼくの手袋はどこにあるの)
Kie estas mia ganto? (ぼくのグローブはどこにあるの)
(注:普通の手袋の片方も mia ganto を使っていいます。)
散歩に: por promeno または por promenado。動詞の不定形を使って por promeni としてもよいでしょう。
いちばん向いている: 「向いている」には bonaj, g^ustaj, komfortaj, konvenaj, oportunaj, tau^gaj が寄せられました。いずれも使えますが,いちばんよく使われるのは bonaj でしょう。この語は幅広く使われる,たいへん便利な形容詞です。注意しなければならないのは,ここに使う形容詞は複数形の s^uoj を修飾するのですから,名詞に合わせて複数形になるということです。Kiun paron で始まる文のときは,形容詞もそれに合わせて単数形になります。「いちばん」がついているので,la plej を付けて最上級の形にします。
訳例
Kiujn s^uojn vi pensas la plej bonaj por promeno?
課題文n-ro264 あなたは,どちらの表現のほうがよいと思いますか。
解説
どちらの表現: 「どちらの表現」は kiu esprimo ですが,ここでは動詞の目的語になっているので,対格にして kiun esprimon となります。日本語では二つの表現を比べるときには「どちらの表現」といい,三つ以上の表現についていうときは「どの表現」といいますが,エスペラントではどちらの場合にも kiu または kiun を使っていいます。kiun el ambau^ esprimoj や kiun el la du esprimoj も使えますが,ambau^ は無冠詞,du の前には冠詞を付けます。話題の範囲を示す el の後の名詞には,冠詞または ambau^, tiuj, miaj などのような,名詞を限定する語が付く,とおぼえておきましょう。
のほうがよいと思います: pensas la pli bona または opinias la pli bona というのがよいでしょう。形容詞の比較級には,普通は冠詞を付けませんが,対象が二つの場合には冠詞を付けます。これは,二つの中で他方より程度が高いということは,比較している対象の中で一番程度が高いといういうことですから,最上級と同じである,と考えれば納得できますね。ただし,R.Corsettiによると,ヨーロッパでは,対象を目の前にしていうときは,冠詞を付けないこともよくあるそうです。
他方よりもよい,ということを明示するために ol la alia を付けていうこともできますが,二つの中で「もう一方の」といえば特定の一つのものを指しているのは明らかですから,この alia には冠詞を付けます。
訳例
Kiun esprimon vi opinias la pli bona?
課題文n-ro265 あなたは,わたしを誰だと思っているのですか。
解説
今回の課題文は,n-ro261-264で取り上げた pensi(opinii) ion ia の形を使っていうことをできませんが,どういう形でいえばよいかということを考えるときの論理の進め方は同じです。
まず,「あなたは,わたしをマサオだと思っているのですか」という文を作ってみると,
C^u vi pensas(,) ke mi estas Masao?
という文になります。(ke の前のコンマは付けても付けなくてもかまいません。)
この Masao を「誰」に変えると,
C^u vi pensas(,) ke mi estas kiu?
となりますが,このままでは正しいエスペラント文ではありません。エスペラントでは疑問詞は文頭に置くという規則があるので,kiu を文頭に移動しなければなりませんが,「疑問詞を使う疑問文では c^u を使わない」という規則もあるので,c^u を削除して
Kiu vi pensas(,) ke mi estas?
とします。これが完成した文です。
英語では Who do you think that I am? といいますが,現代の英語では接続詞の that を省略して Who do you think I am? というほうが普通です。しかし,エスペラントでは ke を省略しないと憶えておきましょう。エスペラントでも早口で話す場合には s^ajnas ke などの ke が脱落することがありますが,この課題文の場合の ke は付けましょう。
Kiu mi estas, vi pensas(opinias)? でも誤りではありませんが,国際的に普通に使われているいい方は,訳例に挙げた表現です。
C^u vi pensas ... の形の質問に対する返事は Jes か Ne ですから,Jes, Ne で答えることができないこの課題文では,この形は使えません。
「誰」には kio ではなく,kiu を使っていいます。kio は職業などを尋ねるときに使われる語です。
訳例
Kiu vi pensas(,) ke mi estas?
課題文n-ro266 あなたは,あれを何だと思いますか。
解説
Kio vi pensas(,) ke tio estas? というのがよいでしょう。例えば C^u vi pensas(,) ke tio estas pasero?(あなたはあれをスズメだと思いますか)という文の pasero を kio に変えると,C^u vi pensas(,) ke tio estas kio? という文ができますが,疑問詞は文頭に置かなければならないので,kio を文頭に移して C^u を削除すると,Kio vi pensas(,) ke tio estas? という文になりますね。Kiu vi pensas, ke tiu estas? は「あの人は誰だと思いますか」と尋ねる意味になります。何かを指して「あれ」というときはは,tio を使っていいましょう。同じものが並んでいるときに,その中のひとつを指していうときや,物ではなく人を指していうときには tiu を使っていいます。
参考:
"Kiu el tiuj vazoj plej plac^as al vi?"(どの花瓶がいちばんお気に入りですか)
"C^i tiu."(これです)
kio を人について使うのは,その人の職業を尋ねるときです。
参考:
Kio estas s-ro Aoki?(青木さんの職業は何ですか)
Li estas instruisto.(教師です)
なお,Kio estas tio?(あれは何ですか)という質問に答えるときは, それが花であれば Tio estas floro. といいます。英語では What is that? に対する返事は That is ... ではなく,It is ... と答えますが,エスペラントでは G^i estas ... ではなく,Tio estas ... といいます。Kio g^i estas? のように,tio の代わりに g^i を使う人もいますが,tio を使うことをお勧めします。
訳例
Kio vi pensas(,) ke tio estas?
課題文n-ro267 あなたはハルオがなぜわたしたちの提案を断ったのだと思いますか。
解説
なぜ: kial または pro kio を使えばよいでしょう。
わたしたちの提案を断った: rifuzis nian proponon と malakceptis nian proponon とした訳文がほとんどでした。rifuzi と malakcepti は同じで,どちらも日本語の「拒絶する,きっぱりと断る」という語感を伴う語ですから,ここでは使うことができますが,提案した相手に対して使うのは,注意する必要があります。何かを断るときの丁寧な言い方は,下に挙げる表現を参考にしてください。上から下へ次第に丁寧さを増した表現です。
参考:
Mi rifuzis la proponon. (わたしはその提案を拒絶しました。)
Mi ne akceptis la proponon. (わたしはその提案を断りました。)
Mi ne povas akcepti la proponon. (わたしはその提案をお受けできません。)
Mi volus ne akcepti la proponon.(できればそのご提案をお受けしたくないのですが。)
Haruo rifuzis al ni la proponon のようにいうのはよくありません。
rifuzi には次の三つの意味がありますが,rifuzi al iu ion の形が使われるのは,下に挙げた(2)の意味の場合です。
(1) 人からの提案や与えられる物を拒絶する
Mi rifuzis lian helpon.(わたしは彼の援助をきっぱりと断りました。)
(2) 人に与えることを拒絶する
Mi rifuzis al li la permeson uzi la c^ambron.(わたしは彼にその部屋の使用許可を与えませんでした。)
(3) (動詞の不定形を目的語にして)〜することを拒む
Mi rifuzis iri tien kun li.(わたしは彼といっしょにそこへ行くことを,きっぱりと断りました。)
訳例
Kial vi pensas(,) ke Haruo ne akceptis nian proponon?
課題文n-ro268 あなたはKarloがあの手紙をどこへ隠したと思いますか。
解説
どこへ: kas^i を meti ion en [malantau^, sub] ion por ke oni ne povu vidi g^in(何かを人から見えないようにある物の中[うしろ,下]に置く)というように,隠す場所への移動の意味に取れば kien を使っていうこともできますが,普通は en io とか malantau^ io, sub io などのように,隠す場所は -n を付けない形が使われます。ザメンホフの用例には,la virino rapide kas^is la mang^aj^on en sian bakfornon(女の人はいそいで食べ物をオーブンに隠しました)がありますが,たいていは la infano kas^is sian vizag^eton en la faldoj de la vesto de la patrino(子どもは顔を母親の服のひだの中に隠しました)のような形です。
kie は en kiu loko という意味なので,en kie のようにはいいません。al kiu loko もよくないので,en kiu loko としましょう。
次のようなお便りが寄せられました。
「いま取り上げられている構文について私たちの学習会で聞いてみましたが,難しい,わかりにくい,という感想でした。Kiu vi pensas ke mi estas? よりも Kiu estas mi laux via penso? の方がわかりやすいというのです。読んだ順に理解しようとすると分かりにくくなるからだと思います。文頭の疑問詞の後にもコンマをつけて,vi pensas などを挿入句のようにしたら分かりやすくなるように思います。」
lau^ vi とか vi pensas を文末に付けたり,文中に挿入句として入れてもよいのですが,Kiu vi pensas ke mi estas? では日本語の「あなたは私を誰だと思いますか」と同じように,pensi が述語動詞として文中で重要な位置を占めているのに対して,文末や挿入句として使われる vi pensas は,いわば付け足しになってしまうので,述語動詞より軽い感じを伴います。それに, 疑問詞+vi pensas(opinias) ke ...? は,ごくありふれた表現ですから,外国人との会話や文通の中で相手が使ったときに分からないと困ります。この講座ではn-ro265から毎回この構文を取り上げてきましたから,みなさんはもう難しいとは感じられないと思います。言語の学習には,このような反復による慣れというのが重要なのですね。
訳例
Kie vi pensas(,) ke Karlo kas^is la leteron?
課題文n-ro269 あなたは Petro がいつまで日本にいると思いますか。
解説
あなたは思いますか: 疑問詞+vi pensas(,) ke の構文には,もうすっかり慣れたのではないでしょうか。ke を入れないのはよくありません。(n-ro265の解説をご覧ください。)この pensas のところには,ほかの動詞が置かれることもあります。
参考: Kiun el la du vi volas, ke mi liberigu al vi?(おまえたちは,二人のうちのどちらを釈放してほしいのか。マタイ伝,27:21)
いつまで: g^is kiam を使っていうことができます。
Petro が日本にいる: この「いる」というのは「滞在している」という意味ですから,resti または restadi を使って Petro restos(restados) en Japanio といえばよいでしょう。「日本」は Japanujo を使う人もいます。国名は語頭に大文字を使うのが普通です。現在形の restas はよくありません。この文では未来のあるときまでの滞在について話しているのですから,未来形の restos を使います。日本語では「滞在しています」という表現を現在の意味でも未来の意味でも使うことができますが,エスペラントでは 未来のことについては -os を使っていうのが正しいので,注意することが必要です。
比較:
Petro nun restas c^e mi.(Petro はいまわたしのところに滞在しています。)
Petro restos c^e mi g^is la fino de la monato.(Petro は月末までわたしのところに滞在しています。)
訳例
G^is kiam vi pensas(,) ke Petro restos en Japanio?
課題文n-ro270 あなたは,このバイクをいつまでに修理してほしいのですか。
解説
いつまでに: g^is kiam とするのがよいでしょう。g^is の代わりに antau^ を使うのは,ここではよいでしょうが,このふたつは同じ意味ではないので注意してください。
比較:
Redonu al mi la libron antau^ dimanc^o. あの本は日曜日前に返してください。(遅くとも土曜日中に)
Redonu al mi la libron g^is dimanc^o. あの本は日曜日までに返してください。(遅くとも日曜日中に)
このバイクを: c^i tiun motorciklon または c^i tiun motorbiciklon。
わたしに修理してほしい: volas(,) ke mi riparu または deziras(,) ke mi riparu のようにいいます。riparos とした訳が半分くらいありましたが,deziri, voli, admoni(忠告する), konsili(助言する), ordoni(命令する), peti(頼む), postuli(要求する) などに続くke節(ke 主語+動詞)の動詞は -u の形を取ります。(先週の解説の中で,この -u の形の例文 Kiun el la du vi volas, ke mi liberigu al vi?(おまえたちは,二人のうちのどちらを釈放してほしいのか。[マタイ伝,27:21]を参考として挙げておきました。)
このうち adomoni, konsili, ordoni に続くke節の動詞は -u の代わりに devas -i を使うことができます。
参考:
Li ordonis(,) ke mi iru tien. = Li ordonis(,) ke mi devas iri tien.(彼はわたしがそこに行くように命じました。)
devi は devos ではなく, devas であることに注意してください。「行く」という行為は命じられた時点では未来の行為ですが,「行かなければならない」いう義務は命令を受けた時点で生じるので,devas という現在形を使います。
ke mi finu ripari ということもできますが,ripari は「修理の全工程を完了する」ことを表す語ですから ke mi riparu だけで十分です。
訳例
G^is kiam vi deziras(,) ke mi riparu c^i tiun motorciklon?