課題文n-ro371 日本人にとって,エスペラントの発音は英語に比べると何倍もやさしい。

解説
日本人にとって: por japanoj と言うのがよいでしょう。por japano と単数形で言うと,「日本人はだれでも」と言う意味合いが強くなりますが,「エスペラントの発音が英語よりやさしい」と思わない日本人もいるでしょうから,ここでは複数形の japanoj を使っておきましょう。kiel japanujo は誤りです。por japanoj は文頭でも文末でも構いませんが,文頭に置いたときに Por japanoj の後にコンマを付けることはしないのが普通です。

エスペラントの発音: la prononco de Esperanto と言います。prononco は de Esperanto で限定されているので,冠詞を付けます。「エスペラント」は esperanto と小文字だけで書く人もいますが,Esperanto と書くのが一般的です。la Esperanta lingvo とも言えますが,このときは冠詞を付けましょう。

英語に比べると: ここでは「英語の発音よりも」と考えると,ol la prononco de la angla lingvo となりますが,la prononco の反復を避けて ol tiu de la angla lingvo となります。lingvo が省略されて la angla で「英語」を表すことがあります。無冠詞の angla や Angla はよくありません。

何倍もやさしい: multoble pli facila のように言うことができます。「何倍も」の解釈によって multoble が kelkoble や pluroble になります。「やさしさ」を倍数表現するのは論理的でないと考えられた方がみえましたが,エスペラントでも下記のような用例がありますから,multoble pli facila のような表現は安心して使ってください。

tasko multoble pli malfacila (何倍も難しい仕事)
esti trioble pli c^arma (3倍も魅力的である)

訳例
Por japanoj la prononco de Esperanto estas multoble pli facila ol tiu de la angla.


課題文n-ro372 Anna は数学が英語より数倍苦手です。

解説
が数倍苦手です: estas kelkoble pli malforta en と言うのがよいでしょう。「〜が苦手です」は estas malforta en 〜を使って言うのが普通ですが,注意しなければならないのは,この表現は人を主語にして使うと言うことです。matematiko を主語にして matematiko estas kelkoble pli malforta と言う訳がいくつか寄せられましたが,これは誤りです。matematiko を主語にして estas kelkoble pli malfacila と言う訳も何例か寄せられました。これは文として誤りではありませんが,「数倍難しい」は「数倍苦手です」と同じではありません。ここでは esti malforta en (が苦手である)を使って言うのがよいでしょう。

数学が英語より: 「数学」は matematiko と言います。冠詞を付けた用例もありますが,必ず付けなければならないと言うわけではありません。ここでは「数学に弱い」と言う意味ですから en (la) matematiko と言います。「英語より」は en (la) matematiko との比較の対象ですから,ここでは ol en la angla lingvo とします。lingvo は省略できます。

訳例
Anna estas kelkoble pli malforta en matematiko ol en la angla lingvo.


課題文n-ro373 必修課目の中で,あなたが苦手な課目は何ですか。

解説
必修課目の中で: el la devigaj lernobjektoj または el inter la devigaj lernobjektoj と言うのがよいでしょう。「必修課目」は,ここでは「すべての必修課目」を指しているので devigaj lernobjektoj には冠詞を付けます。「課目」に leciono を使うのはよくありません。leciono は「授業の1回」を指します。「の中で」に en を使うのは誤りです。日本語の「の中に」とか「の中で」を表すとき,エスペラントでは en, el, inter などを使い分けなければなりません。

参考:
Kio trovig^is en tiu skatolo?
その箱の中には何が入っていたのですか。
Trovig^as du c^inoj inter niaj klubanoj.
わたしたちメンバーの中には中国人がふたりいます。
C^u iu el vi bonvolus veni kun mi?
(あなたたちの中の)どなたかわたしといっしょに行っていただけませんか。

あなたが苦手な課目は何ですか: 「あなたが苦手な課目」は viaj malfortaj lernobjektoj と言えますが,このように複数形で言うのが普通です。日本人がエスペラントを使うときに間違えやすい文法の問題点は,冠詞と数です。単数形を使って尋ねると,相手の苦手課目がひとつであると決めている形になるので,不自然な質問に感じられるのです。上の「参考」に挙げられている最後の例文に単数形の iu が使われているのは,「誰かひとり」を念頭において話していて,聞き手もそのつもりで聞いているからです。
「どの課目が苦手ですか」と尋ねるときは,en kiuj lernobjektoj vi estas malforta と言いますが,el la devigaj lernobjektoj(必修課目の中で)を入れると lernobjektoj が二回出てくるので,kiuj lernobjektoj の lernobjektoj を省略して En kiuj el la devigaj lernobjektoj vi estas malforta? と言うのが普通です。

訳例
En kiuj el la devigaj lernobjektoj vi estas malforta?


課題文n-ro374 あなたたちのサークルの会員の中に外国人はいますか。

解説
あなたたちのサークルの会員の中に: 「あなたたちのサークル」は via rondo, via klubo, via grupo などを使って言うことができます。一人の「会員」は membro ですが,この課題文の「あなたたちのサークルの会員」は,全員を対象にしているので冠詞付きの複数形にして la membroj de via rondo(klubo, grupo) とします。同じ「あなたたちのサークルの会員」と言う表現でも,次の例文のように冠詞を付けない単数形を使って言う場合もあります。この membro は unu el la membroj と同じ意味です。

参考:
C^u Masao estas membro de via rondo?(マサオはあなたたちのサークルの会員ですか)

la membroj de via rondo(klubo, grupo)の代わりに,viaj rondanoj, viaj klubanoj, viaj grupanoj を使って言うこともできます。「会員」には ano(ここでは複数形の anoj)も使えます。
「サークルの会員の中に」は inter la membroj de via rondo(klubo, grupo), inter viaj rondanoj(klubanoj, grupanoj)と言うこともできますし,「あなたのサークル(の中)に」と言う意味の en via rondo(klubo, grupo)を使って言うこともできます。この inter と en の使い分けに注意してください。

外国人はいますか: 「外国人」は alilandano または eksterlandano ですが,ここでは複数形で言います。fremdulo には「よそ者」というニュアンスがあるので,使わないほうがよいでしょう。

訳例
C^u trovig^as alilandanoj inter la membroj de via rondo?


課題文n-ro375 金属はすべて硬いのではなく,中には柔らかいのもあります。

解説
金属はすべて硬いのではなく: ne c^iuj metaloj estas malmolaj と言うのがよいでしょう。「すべてのAがBではない」と言うときは,ne c^iuj Aj(Aの複数形) estas Bj と言います。c^iuj metaloj ne estas malmolaj とすると,「すべての金属は硬くない,金属はすべて硬くない」と言う意味になります。ここで使われる c^iuj は形容詞ですが,下の参考に挙げた用例のように代名詞として使われる c^iuj も ne c^iuj の形で同じように部分否定(すべてが...と言うわけではない)として使われます。

参考:
Vi ne c^iuj estas puraj. みんなが清いのではない。(ヨハネ伝,13:11, 訳文は「共同訳」による)

ne c^iuj のところに ne c^iu や ne c^iaj, ne tute, ne c^iam を使うのはよくありません。
metalo は「金属」という物質を表すときは単数形ですが,種類を表すときは複数形を使うことができるので,ここでは ne c^iuj metaloj と複数形で言いましょう。「硬い」は malmola(ここでは malmolaj)を使って言うのが普通です。dura は mal- の付く語を嫌う人たちによって導入された新語で,とくに詩の中で使われることが多いようです。

中には柔らかいのもあります: inter ili trovig^as molaj などのように言うことができますが,kelkaj estas molaj と表現することもできます。「中には」に en を使うのは,ここでは誤りです。

比較:
Inter c^i tiuj minaj^oj trovig^as senutilaj^oj.(これらの鉱石の中には何の役にも立たないものもあります)
En c^i tiu minaj^o estas entenata iom da oro.(この鉱石の中には少量の金が含まれています)

なお,「金属はすべて硬いのではない」と「中には柔らかいのもある」を sed でつないだ訳文が多く寄せられましたが,sed でつなぐと不自然な文になります。sed は前に述べたことと反対のことを述べるときに使われる接続詞ですから,例えば「金属はたいてい硬い」と言う文に続けて「しかし,中には柔らかいのもある」と言うときは sed を使うことができますが,この課題文は「金属はすべて硬いのではない」と言っているのですから,それに続けて「しかし,中には柔らかいのもある」と言うと日本語でもおかしいですね。ここでは接続詞を使うのなら kaj を使って言うのがよいのですが,訳例に挙げた訳のようにセミコロン(;)でつなぐこともできます。日本語では句点と読点しかないので,日本人はエスペラント文を書くときもピリオドとコンマしか使わない人が多いのですが,エスペラントにはピリオドとコンマの中間にセミコロンがあるのですから,これをうまく使うとエスペラントらしい文になることがあります。

訳例
Ne c^iuj metaloj estas malmolaj, kaj trovig^as molaj inter ili.
Ne c^iuj metaloj estas malmolaj; kelkaj estas molaj.


課題文n-ro376 わたしたちのサークルの会員がみんな講習会の指導ができるわけではありません。

解説
わたしたちのサークルの会員がみんな...できるわけではありません: ne c^iuj membroj de nia rondo povas ... と言えばよいでしょう。「できる」は povas のほか kapablas や estas kapablaj を使って言うこともできます。「わたしたちのサークルの会員」は上に挙げたように membroj と nia rondo を de で結ぶのがよいでしょう。

講習会の指導: ここでは「講習会を指導する」と言うように動詞を使いますが,povas, kapablas, estas kapabalaj に続けて置くので不定形(-i)の形にして,gvidi kurson とします。kurson は無冠詞で使います。冠詞を付けて言うのは,例えば,いくつかのエスペラントのサークルが集まって講習会を開こうという話になり,具体的な計画がまとまった段階で,さて講師は誰にするかと言うときの発言として「わたしたちのサークルの会員がみんな,その講習会の指導ができるわけではありません」と言うのなら la kurson を使いますが,そういう場合以外の発言としては無冠詞の kurson を使いましょう。

訳例
Ne c^iuj membroj de nia rondo povas gvidi kurson.


課題文n-ro377 すべての鳥には羽(はね)がありますが,すべての鳥が飛べるわけではありません。


解説
すべての鳥には羽(はね)があります: c^iuj birdoj havas flugilojn とします。plumoj, plumaro はここでは誤りです。日本語の「はね」にはいくつかの意味がありますが,この課題文の「はね」は「翼」を指しています。plumo は鳥のからだ一面に生えている毛のことです。flugilojn の -j や -n が欠落している訳がいくつかありましたが,うっかりミスでしょう。flugilojn に冠詞を付けるのは,ここでは誤りです。c^iuj specaj birdoj のように言うことはできません。日本語では「すべての+種類の+鳥」と言う語順が許されますが,エスペラントでは,形容詞A+形容詞B+名詞と並べて「AがBを修飾し,(A+B)がひとまとめになって名詞を修飾する」と言うことはできません。

すべての鳥が飛べるわけではありません: ne c^iuj birdoj povas flugi でよいのですが,前節で birdoj が使われているので,birdoj を省略した訳が多く寄せられました。意味が通じると言う点では全く問題はありませんが,下の訳例に挙げた訳のように ili を使って言うと birdoj の反復が避けられますし,意味が明確になります。ne c^iuj de g^i は ne c^iuj el ili としましょう。

訳例
C^iuj birdoj havas flugilojn, sed ili ne c^iuj povas flugi.


課題文n-ro378 あの女の人たちはみんなエスペランチストですが,全員が流ちょうにエスペラントを話せるわけではありません。

解説
あの女の人たちはみんなエスペランチストです: tiuj virinoj c^iuj estas esperantistoj または la virinoj c^iuj estas esperantistoj と言えばよいのですが,c^iuj を estas の後に置いて tiuj virinoj estas c^iuj esperantistoj または la virinoj estas c^iuj esperantistoj とすることもできます。c^iuj の位置が違う用例を下に挙げておきます。(いずれも聖書からの引用で, 訳文は日本聖書協会の訳です。)

Ni c^iuj estas filoj de unu homo.(われわれは皆,ひとりの人の子です。創世記 42:11)
Tio estas c^iuj filoj de David.(これらはみなダビデの子である。歴代志上,3:28)

c^iuj el tiuj virinoj estas esperantistoj または c^iuj el la virinoj estas esperantistoj のように言うこともできます。esperantistinoj を使って言うのは誤りではありませんが,一般的には男女を区別しないで esperantistoj と言うのが普通です。

全員が流ちょうにエスペラントを話せるわけではありません: ili ne c^iuj povas paroli Esperanton flue のように言うことができます。paroli Esperanton は paroli en Esperanto としても同じですし,flue の位置は,paroli の前または後に置くこともできます。flue の代わりに facile を使っても,ここではほとんど同じです。強いて言えば,flue は「流ちょうに,よどみなく」と言う日本語に近く,facile は「らくらくと,すらすらと」と言う表現に近いと言えるでしょう。flue, facile はどちらも「文法,用語,発音ともに水準以上の話し方で」と言う意味を暗示します。ili c^iuj ne povas flue paroli ...は「全員が流ちょうに話せない(流ちょうに話せるのは一人もいない)」と言う意味になります。

訳例
Tiuj virinoj c^iuj estas esperantistoj, sed ili ne c^iuj povas paroli Esperanton flue.


課題文n-ro379 わたしは,マサオの言うことがいつも正しいとは限らないと思います。

解説
マサオの言うこと: 直訳すれば tio, kion Masao diras ですから,この言い方を使ってもよいのですが,ここでは Masao だけで十分です。Masao estas prava と言えば「マサオが言っていることは正しい」と言う意味になります。
tio, kion Masao diras の tio は,ここでは省略することができません。tio を省略できるのは,tio, kio ... または tion, kion ... のように,tio と kio の格(kazo)が同じ場合に限ります。英語では kio も kion も what で,この what は名詞節の主語にも目的語にもなることができますが,エスペラントでは kion が主語になることはできません。

参考:
Ne forgesu (tion) kion mi diris al vi.(わたしがあなたに言ったことを忘れないでください)
Don't forget what I told you.

Tio, kion li diris al vi, estas vero.(彼があなたに話したことは本当のことです)
What he told you is true.

上の例文の中で Ne forgesu (tion) kion mi diris al vi の tion は省略することができますが,Tio, kion li diris al vi, estas vera の Tio は省略できません。

いつも正しいとは限らない: ne c^iam estas prava または ne c^iam pravas のように言えばよいでしょう。

と思います: pensas でよいのですが,opinias を使って言うこともできます。s^ajnas al mi は発言者にあまり自信のない表現になります。この課題文のような否定文は,英語では I don't think のように主節で否定を表すのが普通ですが,エスペラントでは主節(Mi pensas)ではなく従属節(Masao ne c^iam pravas)で否定を表すことができます。もちろん Mi ne pensas ke Masao c^iam pravas(わたしはマサオの言うことがいつも正しいとは思わない[正しくないこともあると思う])のように,主節で否定を表す形も可能です。

訳例
Mi pensas, ke Masao ne c^iam estas prava.


課題文n-ro380 この現象は世界のどこででも見られるものではありません。

解説
この現象は: 「この現象」を主語にする場合は c^i tiu fenomeno ですが,この文は「この現象」を目的語にして言うこともできるので,その場合は c^i tiun fenomenon と対格(-n)になります。主格にすると,この文では文頭に主語を置く形が普通ですが,対格にすると語順はかなり自由になって,文頭,文中,文末のいずれでも置くことができます。強調の度合いは文頭,文末,文中の順に弱くなります。ただし,これは書く場合のことであって,会話では強調したい語句は強く発音されることで分かるので,書き言葉のように語順によって強調の度合いが決まるわけではありません。例えば,ある現象が話題になっていて,「その現象は」と話し出すときは La fenomeno ...と文頭に置きますが,これは強調するために文頭に置いたのではなく,ほかの人の話を受ける形で文頭に置いたのですから,この語は弱く,やや早口で発音されます。

(この現象は)世界のどこででも見られるものではありません: (c^i tiu fenomeno) povas esti videbla ne c^ie en la mondo または oni povas vidi (c^i tiun fenomenon) ne c^ie en la mondo などのように言うことができます。povas esti videbla は videblas と言う動詞に置き換えることもできます。vidi の代わりに observi(観測する,観察する)を使って言うことはできますが,rimarki(気づく)は不適当でしょう。この文の意味を伝えるには,ne を c^iam の直前に置かなければなりません。ne estas videbla c^ie en la mondo と言うと,estas videbla nenie en la mondo(世界のどこでも見られない,見ることができるところはどこにもない)と言う意味になります。ne c^ie と en la mondo を離した文が見られましたが,ne c^ie en la mondo と続けるのがよいでしょう。

訳例
Oni povas vidi c^i tiun fenomenon ne c^ie en la mondo.