n-ro31 あのカギはまだ見つかりませんか。

解説
この文は「カギ」を主語にしても書けますし, vi や oni を主語にしても書くことができます。

「カギ」を主語にすると, 「まだ見つかりません」は ankorau~ ne estas trovita となります。ankorau~ ne trovig^is が2例ありましたが, trovig^i は「見つかる」という意味ではなく, ekzisti(存在する)というで使われるので, ここで使うのは誤りです。

vi(oni)を主語にすると, ankorau~ ne trovis la s^losilon(まだカギを見つけない)となります。ザメンホフ流にいうと ne trovis ankorau~ la s^losion となりますが, いまでは ankorau~ ne trovis ... という語順のほうが普通です。trovig^i は上に述べたように「(物が)ある,(人が)いる」という意味ですから, vi を主語にしていうときは trovi(見つける)を使っていいます。

日本語でいうと, 「(あなたは)まだカギを見つけませんでした」という過去形でなく, 「まだ見つけていません」という現在形になるので, ankorau~ ne trovas としたくなりますが,trovi は点動詞なので, 「まだ見つけていません」は ankorau~ ne trovis と -is の形を取ります。前回にも書きましたが, 点動詞は1回きりの完結した行為を表すときは, -as や -anta, -ata の形を取らないで, -is, -os, -inta, -onta, -ita, -ota の形を取ります。

「まだ見つけることができない」というのは povi を使っていうことができますが, povi は線動詞なので -as の形を取って ankorau~ ne povas trovi ... となります。
訳例
C^u la s^losilo ankorau~ ne estas trovita?
C^u vi ankorau~ ne trovis la s^losilon?


n-ro32 その店は月曜日は閉まっていますよ。

解説
そんなに難しい課題文ではないと思ったのですが, 満点が少なかったのは, -ata, ita の理解が十分でないからでしょう。
「 閉まっています(閉められています)」は, ここでは estas fermita ではなく, estas fermata を使っていいます。「月曜日は閉まっています」というのは「月曜日は定休日」ということですから, 「毎月曜日には閉められる」という「反復される行為」ですね。

前回(n-ro30)の解説の終りのほうで, 「点動詞は『反復』を除いて, 1回きりの完了した行為を表すときには -as や -anta, -ata の形を取らないで, -is, -os, -inta, -ita, -onta, -ota の形で使われます」と書いたのですが, この『反復』を読み落とさないでください。「反復される行為」は -ita ではなく, -ata で表されます。

「閉まっています(閉められています)」は, ここでは fermig^as(閉められます)を使っていうこともできます。fermig^i も点動詞ですから, 1回きりの完了した行為を表すときには -as や -anta, -ata の形を取りませんが, 反復を表すときは -as の形を取ります。
訳例
La butiko estas fermata lunde.
Tiu butiko fermig^as c^iulunde.


n-ro33 わたしの店は水曜日は開けないのですが, 来週の水曜日は開けます。

解説
「私の店は水曜日は開けない」は mi ne malfermas mian butikon(vendejon) merkrede, mia butiko(vendejo) ne estas malfermata merkrede, mia butiko(vendejo) ne malfermig^as merkrede のようにいえばよいでしょう。
merkrede は en merkredo, c^iumerkrede, c^iun merkredon ということもできます。

c^iu は名詞だけしか修飾することができませんから, c^iu merkrede と2語に書くのは誤りで, 必ず c^iumerkrede と1語に書かなければなりません。
je la oka(8時に)などのように時刻についていうときは je を使いますが, 曜日についていうときは en を使いましょう。
malfermi, malfermig^i はいずれも点動詞ですが, ここでは「水曜日には開けない, 開かない」という反復について述べるのですから, -as, -ata の形を取ることができます。

「来週の水曜日は」は en la venonta merkredo, merkrede en la venonta semajno などのようにいうことができます。venontmerkrede は誤りではありませんが, 発音しにくいですね。「来週の水曜日」,「来週」というのは特定されるので, venonta merkredo, venonta semajno の 前には la を付けましょう。

「開けます」は mi を主語にして malfermos, mia butiko(vendejo) を主語にして estos malfermita, malfermig^os といいます。ここでは1回きりの行為ですから, -as, -ata の形を取ることはできません。estas malfermota は「(まさに)開かれようとしている」という現在の状態を表すので, en la venonta merkredo のような未来を表す表現といっしょに使うことはできません。
訳例
Mia butiko ne estas malfermata merkrede, sed en la venonta merkredo mi malfermos g^in.
Merkrede mia vendejo estas fermata, sed mi malfermos g^in en la venonta merkredo.
Mi ne malfermas mian butikon c^iumerkrede, sed en la venonta merkredo mi malfermos g^in.
Mia butiko ne malfermig^as c^iumerkredo, sed estos malfermita en la venonta merkredo.


n-ro34 わたしがホールに入ったとき, コンサートは始まるところでした。

解説
「わたしがホールに入ったとき」は kiam mi eniris en la halon といいます。eniris en la halon は eniris la halon ということもできます。また, ここでは halon のかわりに koncertejon を使ってもよいでしょう。
en la halo は「ホールの中で」という意味で, 「(外から)ホール(の中)に」というのは en la halon としなければなりません。al la halo は「ホール(の入口)まで」という意味で, 中に入ったことを表しません。al la halon は誤りで al の後に -n が来ることはありません。

halo には la を付けましょう。 コンサートについて話すとき, その会場を示す halo には la を付けることが必要です。la を付けないと, 話題にしているコンサートとは関係のない, どこかのホールを指すことになります。

「コンサート」は koncerto でよいのですが, これにも la を付けましょう。この課題文だけ見ると, コンサートは初めて話題にでたように見えますが, 普通の会話で, いきなり「わたしがホールに入ったとき, コンサートは始まるところでした」と切り出すことはないでしょう。「きのうコンサートに行ったのですが...」などのように言ってから, この課題文のような話になるのが普通ですね。だから, la koncerto というのが自然な表現になります。

「始まるところでした」は estis komencig^onta または estis komencota としましょう。「始まるところでした」というのは, ホールに入ってから始まるまでにほんの短い時間が経ったことを示す表現ですが, g^uste komencig^is は「ホールに入った瞬間に始まった」ことを表し, j^us komencig^is は「ホールに入るほんの少し前に始まっていた」ことを表します。estis malfermita や estis komencanta も「すでに始まっていた」ことを表します。j^us estis komencota は g^uste estis komencota としましょう。
訳例
Kiam mi eniris en la halon, la koncerto estis komencig^onta.
Kiam mi eniris en la halon, la koncerto estis komencota.


n-ro35 わたしが見たとき, その少年は川に飛び込もうとしていました。

解説
「わたしが見たとき」の「見た」は ekvidis を使っていいますが, ここでは「気づいた」という意味の rimarkis も使えるでしょう。
寄せられた訳文は2例を除いて, ほかはすべて vidis が使われていましたが, これはよくありません。
これがなぜ不自然な文であるかを考察してみましょう。

例えば,
Kiam Hanako vidis la viron, li eniris en la domon.(ハナコが見ていると, その男はその家に入りました。)
という文は自然な文です。ハナコは「その男が家に入った」という行為の一部始終を見ていたことを表す文です。
ところが,
Kiam Hanako vidis la viron, li estis enironta en la domon.(ハナコが見ていると, その男はその家に入ろうとしているところだった。)
という文は不自然に感じられますね。これは動詞のアスペクトが関係しているのですが, 日本人にはこの文の不自然さが直観的に分かるはずです。
この vidis を ekvidis にして,
Kiam Hanako ekvidis la viron, li estis enironta en la domon.(ハナコが見たとき, その男はその家に入ろうとしていた。)
とすると自然な文になります。

この課題文のように文の中に knabo と li が出てくる場合は knabo を先に出していいましょう。

「川に飛び込もうとしているところでした」は estis sin j^etonta en la riveron, estis plong^onta en la riveron, estis saltonta en la riveron などのようにいえばよいでしょう。estis g^uste saltos のように -is -os という形はありません。
訳例
Kiam mi ekvidis la knabon, li estis sin j^etonta en la riveron.


n-ro 36 わたしがその店に入ろうとしたとき, 誰かがわたしの肩をたたきました。

解説
「わたしがその店に入ろうとしたとき」は kiam mi estis enironta en la butikon(vendejon) といえばよいでしょう。enironta のかわりに ekironta を使っていうこともできます。al tiun butikon は誤りです。前回の解説の中で述べたように, al の後に -n が来ることはありません。

「〜の中に入る」は eniri en 〜n というのが普通ですが, eniri の後はいつも en が置かれるかというと, そうではなくて al が来ることもあります。例えば, 「わたしは(部屋の)中に入ってAさんのところに行った」だったら mi eniris al s-ro A のように言うことができます。
「誰かがわたしの肩をたたきました」は iu frapetis al mi la s^ultron, iu frapetis min sur la s^ultron がよく使われますが, iu frapeti mian s^ultron としてもよいでしょう。frapetis min c^e la s^ultro は誤りではありませんが, 普通は上のように表現します。iu だけで人を指すことができるので, iu homo のように言う必要はありません。 frapeti al mi s^ultron は s^ultron のまえに la を付けます。frapetis は軽くたたいた感じですが, 強くたたいた場合は frapis を使います。
訳例
Kiam mi estis enironta en la butikon, iu frapetis min sur la s^ultron.
Kiam mi estis ekironta en la butikon, iu frapetis al mi la s^ultron.
Kiam mi estis enironta en la butikon, iu frapis mian s^ultron.


n-ro 37 その事故の2時間後に, わたしは彼が亡くなったことを知りました。

解説
「その事故の2時間後に」は du horojn post la akcidento というのが普通ですが, post du horoj (ek)de la akcidento としても通じますし, post la akcidento du horoj jam pasis というように表現することもできます。
「彼が亡くなったことを知りました」は eksciis lian morton または eksciis ke li mortis といえばよいでしょう。ekscii ke li estis mortinta とすれば, 「彼が亡くなった」のが「(わたしが)知った」ときより前であったことを明示できますが, エスペラントでは eksciis ke li mortis としても文脈から li mortis のほうが eksciis より時間的に前であることが明らかなので誤りではありません。英語では got to know that he died ではなく, got to know that he had died としなければなりませんね。
「知りました」に sciis を使うのはよくありません。scii は「知っている」という意味なので, この語を使うと, 「2時間後には知っていました」という意味になって, 知ったのはもっと早かったことを暗示します。ekkonis ke はよくありません。koni, ekkoni は koni 〜n, ekkoni 〜n の形で使われ, koni ke, ekkoni ke の形では使われません。
訳例
Du horojn post la akcidento, mi eksciis ke li mortis.
Du horojn post la akcidento, mi eksciis lian morton.


n-ro38 出発の2時間前に, わたしは Berta にeメールを送りました。

解説
「出発の2時間前に」は du horojn antau~ ekiro(starto, ekvojag^o) というのが普通です。antau~ du horoj ol mi ekiris も通じる言い方ですが, antau~ du horoj de mia vojag^o はよくありません。antau~ du horoj de という表現は使われませんし, vojag^o は旅行の始まりから終りまでの全過程を表すので, この課題文の場合は「旅行の始まり(出発)」を明示する表現 ekiro, starto, ekvojag^o などを使っていうのがよいでしょう。

「eメールを送りました」は sendis(ekspedis) retleteron(retpos^taj^on, retpos^tan mesag^on, e-mesag^on)などのように言えばよいでしょう。sendis retpos^ton のようにいうのはよくありません。retpos^to, e-pos^to は「パソコン通信網やインターネット上で情報のやりとりをするシステム」のことですから, そのシステムを送ることはできません。sendis mesag^on retpos^te ということもできますし, 文脈で分かる場合は単に mesag^on ということもあります。日本語でも「メールを送る」といいますね。
la interretan mesag^on のように la を付けるのはよくありません。読む人(聞く人)に「ああ, あのメールのことか」と分かっているメールではないからです。
訳例
Du horojn antau~ mia ekiro, mi sendis mesag^on al Berta.


n-ro39 わたしはこの3日間に約40通のメールを受け取りました。

解説
「この3日間に」は dum la lastaj tri tagoj, dum c^i tiuj tri tagoj。dum のかわりに en la dau~ro de や en を使ってもよいでしょう。lastaj には la を付けます。
en には下の例文のように「あることをするのに必要な時間」を表す働きがあることも覚えておきましょう。

Mi forgesos c^i tiujn vortojn en tridek minutoj.
(わたしはこれらの単語を30分もしたら忘れてしまうでしょう。)
Esperanto en kvar semajnoj(エスペラント4週間[本のタイトル])

「約40通の」は c^irkau~ kvardek が普通です。c^irkau~ を使うと「40通前後(38-42通くらい)」を表しますが, preskau~ は「40通近い(37-39通)」ことを表すので, 状況によっては c^irkau~ を使ったほうがよいことがあります。40 は kvardek と1語に書きます。
訳例
Mi ricevis c^irkau~ kvardek retpos^tajn mesag^ojn dum c^i tiuj 3 tagoj.


n-ro40 わたしはこの本を3時間足らずで読み終えました。

解説
「3時間足らずで」は en malpli ol tri horoj(朝霧, 岩田, EKO, Ken) としましょう。en preskau~ tri horoj とした訳文が大部分を占めましたが, この表現を使うと「3時間近くかかって」という感じになります。「3時間足らずで読み終えました」と「3時間近くかかって読み終えました」では, 意味合いに微妙な差がありますね。
辞書では preskau~ = ne multe malpli ol と定義されているので, preskau~ と malpli ol の意味には大差がないように思えますが, malpli ol が negativa な意味を伴うのに対して, preskau~ は pozitiva な意味を伴います。

次の例文を見てください。
Mi antau~supozis ke mi bezonos preskau~ ses horojn por fini la laboron, sed mi povis fini g^in en malpli ol kvin horoj.
(わたしはその仕事を終えるのに6時間近くかかると思ったが, 5時間足らずで終えることができた。)

この en malpli ol kvin horoj を en preskau~ kvin horoj とすると, 文が不自然だと感じる人が多いでしょう。日本語でも「6時間近くかかると思ったが, 5時間近くかかって終えることができた」という文よりも,「6時間近くかかると思ったが, 5時間足らずで終えることができた」という文のほうが自然なと感じがしますね。

アメリカやヨーロッパの人に preskau~ と malpli ol との使い分けを聞いてみると, はっきりと使い分けているにもかかわらず, その理由を説明できない人が多いのは, 日本人でもなぜ「6時間近くかかると思ったが, 5時間近くかかって終えることができた」という文よりも,「6時間近くかかると思ったが, 5時間足らずで終えることができた」という文のほうが自然だと感じるのかと外国人に聞かれたとき, うまく説明できない人が多いのと同じでしょう。
malpli ol en tri horoj は en malpli ol tri horoj としましょう。nur dum tri horoj は誤りです。nur を使うと「3時間しかかからなかった」という意味になりますし, dum は「あることをするのに必要な時間」を示しません。

「読み終えました」は ellegis, finlegis, tralegis のようにいうことができます。fini は fini -i の形はでなく, fini -on の形で使われるのが普通です。エス和では tralegi に「通読する」という訳語が与えられていますが, 「通読する」は「ざっと目を通す」という意味で使われることが多いのに対して, tralegi は「始から終りまで読む」という意味で,「ざっと読み通す」場合と「全部を精読する」場合の両方を含んでいます。
訳例
Mi tralegis c^i tiun libron en malpli ol 3 horoj.