課題文n-ro501 Mariaは三人の子どもの母親です。

解説
三人の子どもの母親: patrino de tri infanoj というのが普通です。infano には「(大人に対する語としての)子ども」という意味だけでなく,「(親に対する語としての)子ども」という意味がありますから,gefiloj を使っていう必要はありません。filoj を使うと「息子」だけになるので,女の子を含む場合には使えません。la patrino de tri infanoj のように冠詞を付けるのはよくありません。これは la patrino, kiu havas tri infanojn の場合も同じです。「三人の子どもの母親」というのは,世の中に数多くいて,特定の母親を指す表現ではないからです。これがもし「あの三人の子どもの母親」であれば,特定される一人の母親を指すので la patrino de tiuj tri infanoj のようにいいます。patrino de siaj tri infanoj のようにはいいません。

訳例
Maria estas patrino de tri infanoj.


課題文n-ro502 これはZamenhof博士が書いた手紙のコピーです。

解説
これは: c^i tio または tio c^i というのがよいでしょう。物を指して c^i tiu, tiu c^i を使う人もいますが,国際的に高い評価を得ている文法解説書PAGや,独自の用語を使って解説している新しい文法書PMEGでは,物を指すときは tio, 人を指すときは tiu というように区別しています。『エスペラント日本語辞典』の tiu の指示代名詞の用例は,すべて人を指している用例ばかりで,物を指す用例はひとつも載っていません。tio の用例のひとつ Kio estas tio?(それは何ですか)と,tiu の用例のひとつ Kiu estas tiu?(あれはだれですか)は,tio と tiu の違いを示す対照的な例文です。

Zamenhof博士が書いた手紙: letero skribita de d-ro Zamenhof または letero, kiun d-ro Zamenhof skribis または letero, kiun skribis d-ro Zamenhof のようにいいます。letero に冠詞を付けた訳が応募の約半数を占めましたが,これは誤りです。いま話題にしているのは,Zamenhof が書いた数多くの手紙の中の,ある一通についてであり,聞き手が初めて目にする手紙であるからです。「博士」は doktoro と書くこともありますが,人の名前に付ける敬称としは d-ro と書くことが多いようです。民族語の影響で D-ro と書く人もいますが,エスペラントでは d-ro と小文字で書くのが普通です。skribita per d-ro Zamenhof の per は道具,手段を表す前置詞ですから,ここでは行為者を表す de を使っていわなければなりません。

参考:
portreto desegnita de Picasso per krajono = portreto, kiun Picasso desegnis per krajono(ピカソが鉛筆で描いた肖像画)

コピー: fotokopio というのが正確な表現ですが,ここでは kopio も使えます。kopio はさまざまな複製品を指す語ですが,コピーを見せながらの会話ですから,誤解を生じる恐れはありません。文書などのいわゆるゼロックス式のコピーを表す fotokopio は,foto と kopio の合成語ではなく,fotokopi という語根(radiko)の語です。「印画」という意味の fotokopio の語根は kopi で, 語幹(radikalo)は fotokopi です。

訳例
C^i tio estas kopio de letero skribita de d-ro Zamenhof.
C^i tio estas kopio de letero, kiun skribis d-ro Zamenhof.


課題文n-ro503 これがあなたのおっしゃっていたZamenhof博士の手紙ですか。

解説
あなたのおっしゃっていたZamenhof博士の手紙: 「あなたのおっしゃっていた」が「Zamenhof博士」にかかるのか,「手紙」にかかるのかが分からなくて戸惑ったと書き添えてこられた方がありました。出題の意図は「手紙」にかかっているつもりでしたから,「あなたのおっしゃっていた,Zamenhof博士の手紙」のように書くべきでした。la letero de d-ro Zamenhof, pri kiu vi parolis と書くと,pri kiu vi parolis が letero を修飾するようにも取れるし,Zamenhof を修飾するようにも取れますが,ここではこの表現でまったく問題がありません。なぜなら聞き手には自分が話題にした手紙のことですから,letero にかかっていることは当然分かっているからです。letero には冠詞が必要なのも,聞き手に分かっている「手紙」のことだからです。la letero を tiu letero とすると,kiu で導かれる形容詞節が letero を修飾していることが明示されます。上で述べたようにここでは la を使っても聞き手に誤解されることはありませんが,文によっては tiu を使って先行詞をはっきりさせる必要があることもあるので,そのときは tiu を使うとよいでしょう。なお,この課題文のような場合には pri kiu vi parolis を付けて説明せずに,la letero de d-ro Zamenhof だけでも十分です。言い換えれば,冠詞を付けるだけで「あなたのおっしゃっていた(Zamenhof博士の手紙)」というような意味を聞き手に伝えることができる,ということです。冠詞にはそのような重要な情報を伝えることができるのですが,それだけに不要な冠詞が付いていると,聞き手(読み手)を非常に混乱させるということも知っておきましょう。pri kiu vi parolis の parolis のところに diris を使うのは誤りです。diri は diri al iu ion,または diri ion al iu や diri al iu, ke の形で使われ,diri pri io のように使われることはありません。kiun vi diris とするのも誤りです。「あなたがおっしゃっていた手紙」を la letero, kiun vi diris ということができないのは,diri が「〜をいう」という意味であるからです。diri adiau^ とはいえますが,diri la leteron といえないのは,日本語でも「さよならをいう」とはいえても「手紙をいう」とはいえないのと同じです。pri kiu vi parolis は kiun vi menciis といっても,ほぼ同じ意味になりますが,pri kiu vi temis は誤りです。temi は havi kiel temon(主題として持っている)という意味ですから,La artikolo temas pri la utileco de internacia lingvo.(論文は国際語の有用性に関するものです)のように使うことはできますが,人を主語にして使うことはできません。kiu のところに kio を使った訳が数例寄せられましたが,これは誤りです。kio は io, tio, c^io, nenio を受けたり,前に置かれた文節全体を受ける場合に使われる関係詞ですから,letero を受けることはできません。

訳例
C^u c^i tio estas tiu letero de d-ro Zamenhof, pri kiu vi parolis?


課題文n-ro504 きのう届いたマサオの手紙には,もう返事を出しましたか。

解説
きのう届いたマサオの手紙: tiu letero de Masao, kiu alvenis hierau^ または la letero de Masao, kiun vi ricevis hierau^(きのうあなたが受け取ったマサオの手紙)のようにいえばよいでしょう。alvenis を使った訳で la ではなく tiu を使ったのは kiu alvenis が letero に掛かっていることを,はっきり示すためですが,この文では聞き手にそのように誤解される恐れはほとんどないので,tiu のところに la を使ってもかまわないでしょう。ただ,tiu ... kiu という形が必要な場合もあるので,この形を覚えておくと役に立つことがあるかもしれません。
la leteron alveninta de Masao の alveninta は leteron を修飾しているので,leteron に合わせて alvenintan としなければなりません。ricevis el Masao, venis el Masao の el は de にしましょう。el は「〜の中から」という意味です。kiu のところに kio を使った訳がありましたが,これは誤りです。前回の解説の中で述べたように,kio は io, tio, c^io, nenio を受けたり,前に置かれた文節全体を受ける場合に使われる関係詞です。

もう返事を出しましたか: C^u vi jam respondis または C^u vi jam respondis al のようにいうことができます。respondi は他動詞なので,直接目的語として対格の leteron を取りますが,respondi al の形で使われることもあります。文法的に説明すれば,直接目的語を明示しない respondi は absolute uzata verbo(絶対用法の動詞)ということになりますが,ここではこの問題に深入りしないでおきましょう。「返事を出す」は sendi respndon ということもできますが,sendi la respondon のように冠詞を付けるのは誤りです。聞き手にとっては初めて聞く respondo であるからです。

訳例
C^u vi jam respondis tiun leteron de Masao, kiu alvenis al vi hierau?


課題文n-ro505 何か分からないことはありませんか。

解説
何か分からないこと: io, kion vi ne povas kompreni または io nekomprenebla のようにいえばよいでしょう。文の中で目的語になる場合には,訳例に挙げた訳のように -n を付けます。io nekomprenebla に近い表現は io, kion vi ne povas kompreni ですが,この ne povas kompreni は ne komprenas としてもよいでしょう。ion nekomprenatan, ion nekomprenitan で表したい意味は, ion nekompreneblan というのが普通です。ion, kiun vi ne komprenas の kiun は ion, kion vi ne komprenas としなければなりません。io を受ける関係詞は kiu ではなく kio です。ただし,io に形容詞が付いているときは,関係詞の kio は kiu になります。

参考:
g^i estas la sonoj de io granda, kiu nun naskig^as.
それはいま生まれつつある,ある偉大なものの響きであります。(第一回世界大会におけるd-ro Zamehofの演説から)

「何か」は iu ではなく,io を使っていいます。iu が代名詞として単独で使われるときは「物」ではなく,「人」を指すのが普通です。ion, ke vi ne povas kompreni の ke は誤りです。

ありませんか: C^u vi ne havas または C^u ne trovig^as のようにいうことができます。課題文が否定形の疑問文なので,ne を入れてありますが,肯定形でいっても実用上はほとんど同じです。ただ,否定形の疑問文は肯定の答えを期待しているときに,よく使われるということはいえるでしょう。

比較:
C^u vi ne estas s-ro Aoki?(青木さんではありませんか。たぶん青木さんだと思っているときの質問)
C^u vi estas s-ro Aoki?(青木さんですか。青木さんであるという自信がないときの質問)

訳例
C^u vi ne havas ion, kion vi ne povas kompreni?
C^u vi ne havas ion nekompreneblan?


課題文n-ro506 彼を驚かせるような何かおもしろいことはありませんか。

解説
彼を驚かせるような何かおもしろいこと: io amuza, kiu surprizos lin のようにいうことができます。「ありませんか」に havi を使った場合には io amuza は ion amuzan となります。amuza の代わりに interesa を使っていうこともできます。amuza は「おもしろがらせる,愉快な」という意味の「おもしろい」ですが,interesa は「知的な興味を引く」という意味の「おもしろい」という意味です。plezura は plezuriga とするほうがよいでしょう。kiu のところに kio を使うのは誤りです。io だけなら kio で受けることができますが,io amuza, io interesa などのように形容詞が付いているときは kiu を使わなければなりません。
「驚かせる」は surprizi または mirigi を使っていうのがよいでしょう。surprizi は「予期されていないことで驚かせる,びっくりさせる」ことを表し,mirigi は「珍しいことや,すばらしいことで驚かせる」ことを表します。サプライズパーティ(びっくりパーティ)の場合であれば,surprizi を使っていうのがぴったりです。surprizas, mirigas ではなく,未来形の surprizos, mirigos を使うことに注意してください。surprizi, mirigi は,どちらも点動詞ですから,1回きりの行為についていうときに -as の形で使われることはありません。
surprizos lin, mirigos lin は lin surprizos, lin mirigos という語順のほうが好まれる傾向が見られますが,これは,人称代名詞(mi, vi, li, s^i, など)は,弱く発音されるのが普通なので,文末に弱音がふたつ並ぶのを避けたいというリズム上の問題です。

ありませんか: C^u vi ne havas ...? または C^u ne estas(trovig^as) ...? のようにいえばよいでしょう。

訳例
C^u vi ne havas ion amuzan, kiu lin surprizos?


課題文n-ro507 ほかに何か買いたいものはありませんか。

解説
ほかに何か買いたいもの: 「ほかに何か」というのは io alia というのが一般的ないい方です。alia io とはいいません。エスペラントでは名詞に形容詞を付けるときは,たいてい「形容詞+名詞」という語順を取るのが普通ですが,io, c^io, nenio, iu, c^iu, neniu のような代名詞の場合は形容詞が後に置かれます。ただし,名詞の場合は「名詞+形容詞」という語順にしてもかまいませんし,とくに形容詞がいくつも付く場合には,名詞の後に付けるほうが好まれることがあります。
「(ほかに何か)買いたいもの」は,関係詞 kiu を使って,kiun vi volas ac^eti というのがよいでしょう。volas の代わりに deziras を使っていうこともできます。kio を使うのは誤りです。io だけなら io, kion vi volas ac^eti のようにいいますが,形容詞(ここでは alia)が付いているので,kiu を使わなければなりません。

ありませんか: C^u ne estas ...? または C^u ne trovig^as ...? というのがよいでしょう。C^u vi ne havas ...? を使った訳が半数以上ありましたが,ここで havi を使うのは誤りです。havi は「持っている」というのが原義ですから,C^u vi havas ion, kion vi volas vendi?(何か売りたいものがありますか[何か売りたいものを持っていますか])という文なら分かりますが,C^u vi havas ion, kion vi volas ac^eti?(何か買いたいものを持っていますか)というのは意味不明の文になります。「...がありますか」というのは, C^u vi havas ... ? という表現で表すことができる場合がありますが,内容によっては havi が使えないことをおぼえておきましょう。

この課題文は C^u vi ne volas ac^eti ion alian? としても,ほぼ同じ内容を相手に伝えることができます。

訳例
C^u ne estas io alia, kiun vi volas ac^eti?


課題文n-ro508 わたしたちの仕事を手伝ってくれる人は,ほかに誰かいませんか。

解説
ほかに誰かいませんか: C^u ne estas iuj aliaj のようにいえばよいでしょう。「手伝ってくれる人」が一人でよければ,iu alia といいます。estas は trovig^as を使っていうこともできます。「ほかに」に alie を使うのは誤りです。alie は「ほかのやり方で」という意味です。        

わたしたちの仕事を手伝ってくれる人: iuj aliaj または iu alia を受ける関係詞 kiuj または kiu を使って kiu(j) helpos nin en nia laboro のようにいいます。helpas を使った訳が数例ありましたが,現在手伝ってもらっているのではなく,これから手伝ってもらうのですから,-as ではなく,-os を使っていいましょう。povas helpi ということは可能です。「手伝える条件がある,手伝える能力がある」というのは,未来のことではなく現在のことであるからです。
helpos nian laboron のようにいうのはよくありません。『日エス』の見出し語「手伝う」には 「父の仕事を手伝う」の訳として helpi laboron de [al] la patro が載っていますが,これはよくありません。helpi は helpi ion ではなく helpi iun en io, helpi iun -i, または helpi al iu en io, helpi al iu -i というように使うと覚えておくのがよいでしょう。

訳例
C^u ne estas iuj aliaj, kiuj helpos nin en nia laboro?


課題文n-ro509 あきびんを部屋の外へ出すのを手伝っていただけませんか。

解説
あきびんを: la malplenajn botelojn といいます。冠詞を付けるかどうかは,状況によります。あきびんが置かれている部屋の中での発話であれば,目の前にあるびんを指していることは明らかなので,冠詞を付けていいます。同じ状況の中で無冠詞の複数にすると,その部屋のあきびん全部ではなく,そにうちの何本かを指すことになります。ただし,ほかの場所にいる人に応援を頼みに行った状況であれば,無冠詞でいうことになります。いずれにしても botelo は複数形にしましょう。1本のあきびんを運び出すのに手伝いを求めることはないと考えるのが普通であるからです。vakajn を使った訳が寄せられたのは,『日エス』に「空きびん」の訳として vaka botelo が載っているためだろうと思いますが,vaka botelo というのは誤りです。「あきびん」は malplena botelo といいますから,ここでは複数形の対格 malplenajn botelojn を使いましょう。

比較:
vaka taksio(客の乗っていないタクシー,空車)
malplena kamiono(積み荷を積んでいないトラック)

vaka c^ambro(空き部屋)
malplena c^ambro(家具などが何も置かれていない部屋)

『エス日』では malplena c^ambro に「空き部屋」の訳語が当てられていますが,これは上に挙げたように「家具などが何も置かれていない部屋」の意味に使うのがよいでしょう。Plena Ilustrita Vortaro では malplenaを Enhavanta nenion au^ preskau^ nenion と定義しています。

部屋の外へ出す: elporti el la c^ambro のようにいうのがよいでしょう。elporti は「運び出す」という意味ですから,この課題文にぴったりの表現です。「外へ出す」に elmeti(見せる), ellasi(排出する), elpreni(抜き取る)を使うのは, いずれもよくありません。

手伝っていただけませんか: C^u vi bonvolus helpi al mi ...? または C^u vi povus helpi min ...? などのようにいえばよいでしょう。-us は -os にしてもよいのですが,-us を使っていうほうが丁寧な表現になります。C^u vi ne bonvolus helpi al mi のように否定形の疑問文にすると,「手伝っていただけるのでしょうね」という期待を匂わせた,少しあつかましい感じを聞き手が感じるおそれがあります。

訳例
C^u vi povus helpi al mi elporti la malplenajn botelojn el la c^ambro?


課題文n-ro510 このゲームには,からのマッチ箱が五つ要ります。

解説
このゲームには: por c^i tiu ludo というのがよいでしょう。ただし,この課題文は「このゲーム」を主語にしていうこともできます。その場合には「このゲームは五つの空のマッチ箱を必要とする」という構文になります。「ゲーム」に matc^o を使うのはよくありません。この語は「スポーツの試合」を指す語です。

空のマッチ箱が五つ: kvin malplenaj alumetujoj といいます。vakaj を使うのは誤りです。「マッチ箱」は skatoloj de alumetoj を使っていうこともできますが,この de を da とすると,五箱分のマッチ棒を指すことになります。kvin da というのは誤りです。da は数量を表す名詞(deko, cento など)に付くことはできますが,数詞(unu, du, tri ...)に付くことはできません。almetujoj が2例ありましたが,alumetujoj の alu- は前置詞の al とははっきり区別して「アルー」のように発音しておぼえましょう。

要ります: 「五つの空のマッチ箱」を主語にした場合は estas necesaj, necesas または estas bezonaj, estas bezonataj といいます。c^i tiu ludo necesas というのは誤りです。c^i tiu ludo を主語にしたときは c^i tiu ludo bezonas といわなければなりません。人を主語にしたときは oni(ni, vi) bezonas といいます。C^i tiu ludo necesas や oni necesas は誤りです。

訳例
Necesas kvin malplenaj alumetujoj por c^i tiu ludo.
Ni bezonas kvin malplenajn alumetujojn por c^i tiu ludo.