課題文n-ro511 この赤い紙は何枚要るのですか。

解説
この赤い紙: 「この赤い紙」は c^i tiu rug^a papero といえますが,ここでは c^i tiu を使うことができないので,c^i tia rug^a papero といいましょう。(c^i tiu が使えないのは,この課題文では da の後に置かれるからです。) papero(紙)は物質を表す名詞ですから,数で数えることができないため,複数形で使われることはありません。例えば「2枚の紙」のように枚数を表すときは, du folioj da papero といわなければなりません。(ただし,「文書,書類」という意味の papero は複数形で使われます。)「2枚の赤い紙」を du folioj da rug^a papero ということはできますが,「この赤い紙を2枚」というときに,du folioj da c^i tiu rug^a papero ということはできません。da の後に冠詞や tiu などの付いた名詞を置くことはできないとおぼえておきましょう。

何枚要るのですか: Kiom da folioj da ... estas bezonataj? または Kiom da folioj da ... vi bezonas? あるいは Kiom da folioj da ... estas necesaj? などのようにいえばよいでしょう。Kiom da ... や folioj da ... の da を de とするのは誤りです。folioj da papero は paperfolioj と1語でいうこともできます。

Kiom da folioj necesas c^i tiu rug^a papero? のようにいうことはできません。Kiom da c^i-rug^a paperfolioj estas necesaj? は,c^i-rug^a を c^i-rug^aj とすれば文法上の誤りはなくなりますが,c^i-rug^aj はよくありません。「この赤い紙」の「この」は,「紙」にかかっているのであって,「赤い」に掛かっているのではないからです。

訳例
Kiom da folioj da c^i tia rug^a papero vi bezonas?


課題文n-ro512 あなたはこの濃いコーヒーを毎朝3杯飲むのですか。

解説
この濃いコーヒーを3杯: tri tasojn da c^i tia forta kafo といいます。c^i tia は c^i tiel または tiel とすることもできます。c^i tia forta kafo の tia が kafo を修飾するのに対して,c^i tiel forta kafo の tiel は forta を修飾するという違いはありますが,ここではどちらを使っても実用上の差異はないと考えてよいでしょう。tasojn を glasojn とするのはよくありません。glaso は「コップ」を指す語です。「濃いコーヒー」は densa kafo ではなく forta kafo といいます。kafojn は誤りです。「コーヒー」は,ひとつ,ふたつと数えることができない名詞で,このような名詞は物質名詞と呼ばれて,複数形になることはありません。kafon というのも誤りです。da の後に対格(-n)が置かれることはありません。

毎朝: en c^iu mateno または c^iumatene といいます。c^iumatene を c^iu matene と2語に書くのはよくありません。c^iu は形容詞ですから matene(副詞)を修飾することはできません。英語では every morning と2語に書きますが,この morning は対格の名詞ですから every という形容詞を付けていうことができるのです。エスペラントでも c^iun matenon というときは2語に書きます。

飲む: trinkas を使っていえばよいのですが,prenas も使えます。preni は「薬(錠剤,粉末,液体)を飲む」というときにも使えますが,trinki は「薬を飲む」というときは,水薬の場合であっても使えません。

訳例
C^u vi trinkas tri tasojn da c^i tia forta kafo c^iumatene?


課題文n-ro513 この薬は食事の30分前に飲んでください。

解説
この薬は: ここでは「この薬を」という文にするのがよいので,c^i tiun medikamenton となります。medicino は「薬」ではなく「医学」を意味します。英語の medicine は「薬」と「医学」の両方の意味がありますが,エスペラントでは medicino(医学), medikamento(薬)と別の単語を使っていいます。

食事の30分前に: tridek minutojn antau^ la mang^o または je tridek minutoj antau^ la mang^o といいます。tridek minutoj は duonhoro としても同じですし,mang^o は mang^ado としても同じです。もし,この薬を飲むのが1回きりのことであれば,tridek minutojn antau^ ol vi mang^os ということができますが,そうでない場合には antau^ ol vi mang^as または,上に挙げた訳のようにいいます。mang^o, mang^ado には冠詞を付けましょう。「食事の30分前に」の「食事」は「毎食」と理解されるのが普通です(そうでない場合は「朝夕」などの言葉が入ります)から,c^iu mang^o(mang^ado)と訳してもよいのですが,その c^iu の代わりに冠詞を使っていうことができます。

飲んでください: Prenu といいます。Bonvolu preni や Bonvole prenu というのはよくありません。Bonvolu や Bonvole は「どうか〜してください」という感じの表現ですから,この課題文のように事務的な表現には使われません。以前よく見かけたコカコーラの広告に Drink Coca-Cola というのがありましたが,これは「コカコーラをお飲みください」のように訳される文で,「コカコーラを飲め」と訳される文ではありません。エスペラントの prenu も「飲め,飲みなさい,飲んでください,お飲みください」のように,状況によって訳し分けられる表現です。

訳例
Prenu c^i tiun medikamenton je tridek minutoj antau^ la mang^o.


課題文n-ro514 会場には遅くとも開会の10分前にお入りください。

解説
会場にお入りください: Bonvolu eniri en la kunvenejon のようにいえばよいでしょう。この課題文では,何の会場であるか分かりませんが,何かを審議する会議についていっているのであれば,kunsidejon, 大会であれば kongresejon などのようにいいます。いずれも相手に分かっている会場を指していっているのですから冠詞を付け,ここでは -n を付けます。Eniru を使った訳が大部分を占めましたが,ここでは「(遅くとも開会の10分前に)入ってください」と頼んでいるのですから,Bonvolu eniri というほうがよいでしょう。集会の案内状や,会議の招集状などに Eniru ... と書くと,礼儀を欠いた感じを与えます。(前回の課題文「この薬は食事の30分前に飲んでください」は,薬の用法に関する指示であって依頼ではないので,Bonvolu を付けずにいうのが普通です。)

遅くとも開会の10分前に: 「遅くとも」は plej malfrue ですが,ここでは「少なくとも」という意味の almenau^ または ne malpli ol を使っていっても同じような意味を表すことができます。almenau^ と ne malpli ol は数量について使うときは全く同じ意味で,どちらも数詞の直前に置いて使われるので,ここでは almenau^ dek minutojn antau^ la malfermo または ne malpli ol dek minutojn antau^ la malfermo となります。このように almenau^, ne malpli ol が dek にかかっているのにたいして,plej malfrue は dek minutojn antau^ la malfermo という句全体にかかっている,という違いがありますが,伝えたい情報の内容は同じです。「開会」は malfermo ですが,冠詞を付けます。la malfermo de la kunveno または la malfermo de la kunsido のようにいうこともできますが,kunveno または kunsido にも冠詞が必要です。無冠詞にすると,聞き手に関係のない集会,会議を表すことになります。

訳例
Bonvolu eniri en la kunvenejon plej malfrue dek minutojn antau^ la malfermo.
Bonvolu eniri en la kunvenejon almenau^ dek minutojn antau^ la malfermo.


課題文n-ro515 あの本は遅くともこの月末にはお返しします。

解説
あの本はお返しします: 「あの本は」の「本」は「お返しします」の目的語ですから,対格にして la libron といいます。この発話の前には,「あの本はいつ返してくれますか」のような問いかけか,またはその本が話題になった会話があったはずですから,冠詞か tiun を付けて, Mi redonos al vi la libron といいます。al vi は la libron の後に置いて Mi redonos la libron al vi ということもできますが,どちらかに al vi を付けましょう。日本語では,借りた人に対してわざわざ「あなたにお返しします」とはいわないのが普通ですが,エスペラントでは al vi を付けていうのが普通です。「お返しします」というのは未来の行為ですから,redonas を使うのは誤りで,redonos としなければなりません。

遅くとも: plej malfrue を使っていいましょう。almenau^ や ne malpli ol には「遅くとも」という意味はありません。ただし,前回の解説の中で述べたように,数詞の前に付く場合には,例えば「遅くとも3日前に」は「少なくとも3日前に」と言い換えることができるので,almenau^ や ne malpli ol を使っていうことができますが,今回の課題文のような場合と混同しないように注意しましょう。plej malfrue en と g^is については,下の記述の中で説明します。

この月末には: en la fino de c^i tiu monato または en c^i tiu monatfino などのように訳せますが,ここでは en la monatfino ということもできます。日本語でも「遅くとも月末には」といえば,話をしている月の末日であることを指すのが普通ですが,エスペラントでも会話で la monatfino といえば,話をしている月の末日であることを指すのが普通です。前置詞は en を使うのがよいでしょう。antau^ la fino de c^i tiu monato は「この月末前に」という意味です。例えば,5月であれば「5月31日前に(遅くとも5月30日中には)」という意味になりますから,ここでは使えません。plej malfrue g^is la monatfino のようにはいいません。日本語では「遅くともこの月末までに」ということができるので,これを直訳すると plej malfrue g^is la moantfino となりますが,g^is は plej malfrue en と同じ意味で使うことができるので,plej malfrue g^is というと,同義の表現を重ねることになります。なお,g^is は plej malfrue en と同じ意味で使うことができるといっても,それぞれの持つ語感は同じではなく,日本語の「遅くとも」と「までに」と似たような違いがあるので,「遅くとも」には plej malfrue, 「までに」は g^is を使っていうのがよいでしょう。la fino de c^i-monato の c^i-monato は c^i tiu monato としましょう。c^i- は形容詞や副詞に付いて c^i-monata(今月の), c^i-kune(同封して)などのように使われることはありますが,名詞に付くことはない,とおぼえておくのがよいでしょう。

訳例
La libron mi redonos al vi plej malfrue en la fino de c^i tiu monato.


課題文n-ro516 この辞書は遅くとも年末までに返してください。

解説
この辞書は: ここでは redoni(返す)の目的語になるので,c^i tiun vortaron と対格にします。相手にはすぐそれと分かる辞書を指していっているのですから,la vortaron としてもよいでしょう。

遅くとも年末までに: plej malfrue en la jarfino または plej malfrue en la fino de c^i tiu jaro のようにいえばよいでしょう。plej malfrue g^is という表現がよくないことは,前回の解説の中で述べておいたのですが,今回も3例ありました。g^is には plej malfrue en という意味があるので,plej malfrue g^is というと,plej malfrue plej malfrue en という同義の句を重ねた奇妙な表現になります。「遅くとも」は plej malfrue で, 「年末までに」は g^is la jarfino だから,「遅くとも年末までに」は plej malfrue g^is になる,というように日本語の枠内で考えると,国際的には通用しない表現になります。plej malfrue en la jarfino(遅くとも年末に)と g^is la jarfino(年末までに)は,「守ってほしい最終返却日は年末」という情報を伝える点では同じですが,表現は違うので,ここでは plej malfrue en を使っていうほうがよいでしょう。

返してください: Bonvolu redoni al mi とういことができます。友だちに対しての発話であれば, Redonu al mi といってもよいでしょう。al mi は vortaron の後に入れてもよいのですが,al mi を入れないのはよくありません。Bonvolu redoni min c^i tiun vortaron のようにいうことはできません。エスペラントでは間接目的語(al mi など)に対格形の目的語を使うことはできません。

訳例
Bonvolu redoni al mi c^i tiun vortaron plej malfrue en la fino de c^i tiu jaro.


課題文n-ro517 彼の返事があなたに届くのは,早くても月末になるでしょう。

解説
彼の返事があなたに届く: lia respondo alvenos al vi のようにいうのがよいでしょう。alvenos al vi は atingos vin とすることもできますが,alveni を使っていうほうが一般的です。atingi al vi は誤りです。atingi は他動詞ですから前置詞を入れずに対格(-n)の直接目的語を取ります。
vi ricevos lian respondon としても,伝えたい内容は伝わりますが,vi akceptos lian respodon とするのはよくありません。akcepti は「承諾して受け取る」という意味なので,「手紙を受け取る」などというときには使われません。

比較:
Mi ricevis lian invitilon.(わたしは彼の招待状を受け取りました。)
Mi akceptis lian inviton.(わたしは彼の招待に応じました。)

早くても: plej frue といいます。

月末に: en la fino de c^i tiu monato といいます。今月の末であることが分かる状況であれば,en la monatfino だけでもよいでしょう。

この課題文は,Estos plej frue en la monatfino, ke lia respondo alvenos al vi のようにいうこともできます。

訳例
Lia respondo alvenos al vi plej frue en la fino de c^i tiu monato.


課題文n-ro518 待っていたHelenaの返事が,けさになってやっと届きました。

解説
待っていたHelenaの返事: atendata respondo de Helena または respondo de Helena, kiun mi atendis といいます。respondo に冠詞を付けるのはよくありません。冠詞を付けるのは,聞き手(読み手)にもそれと分かる返事についていう場合に限ります。日本語では「待っていた」といいますが,エスペラントでは atendita ではなく atendata といいます。atendata respondo というのは respondo, kiu estas atendata または respondo, kiu estis atendata のどちらの意味にも取れる表現で,どちらの意味を表すかは文脈によりますが,ここでは後者の意味で使われています。

比較:
ponto tiam konstruata (当時建設中であった橋)
ponto nun konstruata(現在建設中の橋)
ponto konstruita en la lasta monato(先月架けられた橋)

けさになってやっと: nur hodiau^ matene または nur c^i-matene などのようにいうのがよいでしょう。finfine を使うのは誤りではありませんが,この語が動詞(ここでは alveni)にかかるのに対して,nur は hodiau^ matene(c^i-matene)にかかるので,「けさになってやっと」というような表現のときは,nur を使っていうことをお勧めします。apenau^ を使うのはここではよくありません。apenau^ は「かろうじて,どうにかこうにか」という意味です。

届きました: alvenis al mi というのがよいでしょう。日本語には入っていませんが,al mi を入れていいます。atingis min も使えますが,atingis al mi は誤りです。

訳例
Atendata respondo de Helena alvenis al mi nur c^i-matene.


課題文n-ro519 1950年代にはこの表現が広く使われていました。

解説
1950年代には: en la 1950-aj jaroj と書くのが一般的です。-aj のハイフンは書かない人もいます。1950-aj は mil-nau^cent-kvindekaj と読み,アラビア数字(ここでは1950)を使わずに書くときもこのように書きます。ハイフンを入れずに mil nau^cent kvindekaj と書くのはよくないとされていますが,ザメンホフにも Georgo Vas^ington estis naskita la dudek duan de Februaro de la jaro mil sepcent tridek dua.(Fundamento de Esperanto)があるので,ここでは減点の対象にはしませんでした。ただし,いまではハイフンを入れて書くのが普通ですから,書くときはそれに従うことをお勧めします。
2000年になるまでは1950年代を指して la 50-aj jaroj(50年代)が よく使われましたが,いまでは単に la 50-aj jaroj ではなく, la 1950-aj jaroj というのがよいでしょう。

この表現が広く使われていました: c^i tiu esprimo estis vaste uzata のようにいうのが普通です。ここで使われている「広く」には vaste を使っていいます。vaste が面積の広さについていうのに対して larg^e は幅の広さについていう語なので,「広く使われる」というように比ゆ的に使われる場合でも,larg^e ではなく vaste が使われます。「使われていました」は estis uzata といいます。estis uzita は誤りです。uzita は jam ne uzata というような意味ですから,estis uzita は「もはや使われていなかった」という意味になってしまいます。「広く」には g^enerale や populare を使っても意味は通じますが,populara には konata, uzata de la popolo という意味があるので,c^i tiu esprimo estis populara としても,課題文に近い意味を表すことができます。

この文は en la 1950-aj jaroj を文頭に置いていうこともできますが,そのときは En la 1950-aj jaroj estis vaste uzata c^i tiu esprimo のような語順が好まれる傾向があります。

訳例
C^i tiu esprimo estis vaste uzata en la 1950-aj jaroj.


課題文n-ro520 わが国の現在の出生率は,1950年代よりも低い。

解説
わが国の現在の出生率: このまま訳すと la nuntempa naskokvanto de nia lando となるのですが,ここでは,En nia lando la naskokvanto de la nuna tempo(わが国では現在の出生率は)とするのがよいでしょう。なぜかというと,この課題文は「現在の出生率」と「1950年代の出生率」とを比較する文であるからです。説明を簡単にするために,「現在の出生率」と「1950年の出生率」とを比べる場合について述べます。
前者を la nuntempa naskokvanto とすると,後者は la naskokvanto de la jaro 1950 となって,naskokvanto を2回使っていわなければなりませんが,前者を la naskokvanto de la nuna tempo と訳しておくと,後者を tiu de la jaro 1950 のように tiu を使っていうことができるので,naskokvanto の重複を避けたスマートな文にすることができます。la nuntempa naskokvanto を使った文で tiu を使った訳がありましたが,これは誤りです。 この tiu は naskokvanto だけを指すのではなく,la nuntempa naskokvanto を指すので,la nuntempa naskokvanto を使ったあとで tiu de la jaro 1950 というと, *la nuntempa naskokvanto de la jaro 1950* という意味不明の文になってしまうからです。ただ,この課題文では問題はもう少し込み入っていて,la naskokvanto de la nuna tempo を使っても,その後で tiu を単数形で使うことはできません。詳しくは「1950年代よりも」の説明の中で述べます。nuntempa の代わりに nuna を使うこともできますが,どちらも冠詞が必要です。 la nuna tempo は la nuntempo といっても同じです。tiu の代わりに tio や g^i を使うのはよくありません。

低い: malalta を使った訳が多かったのですが,ここでは malgranda を使いましょう。「出生率」はエスペラントでは naskokvanto といって,kvanto として取り扱うので,英語の birth rate(出生率) が high(alta), low(malalta) でいうのに対して,granda, malgranda と表現するのが普通です。natalitato は専門用語なので,外国人でもラテン系の言語を母語に持つ人以外ではこの語を知らない人が多いでしょう。

1950年代よりも: ol tiu de la 1950-aj jaroj のような訳がありましたが,「出生率」は毎年計算されて発表されるので,ol tiu de la 1950-aj jaroj という表現はありえません。このことに気づかれて ol tiuj de la 1950-aj jaroj とされた方がありましたが,この表現も比較の対象とするには,ここでは不正確な表現ですから,ol iu ajn el tiuj de la 1950-aj jaroj とするのがよいでしょう。

訳例
En nia lando la naskokvanto de la nuna tempo estas pli malgranda ol iu ajn el tiuj de la 1950-aj jaroj.