課題文 n-ro41 彼がその数学の問題を1時間足らずで解いたということを, ほとんど誰も信じていません。

解説
「その数学の問題を」は la matematikan problemon または la problemon de matematiko とします。demando を使うのはよくありません。外国語や地理, 歴史などの問題は demando といいますが, 数学や物理などの問題は problemo といいます。

比較: solvi matematikajn problemojn(数学の問題を解く)
respondi demandojn pri la angla lingvo(英語の問題の解答を書く)

「1時間足らずで」は en malpli ol unu horo としましょう。en nur unu horo(わずか1時間で)は, 1時間かかったことを意味するので, 1時間かからなかったことを意味する「1時間足らずで」と同じではありません。

「ほとんど誰も信じていません」は preskau~ neniu kredas といいます。neniu preskau~ kredas は「誰もほとんど信じていません(完全に信じている人はひとりもいません)」という意味で, preskau~ neniu kredas(ほとんど全員が信じていませんが, ひとりくらいは信じている人もいます)とは少し意味が違います。preskau~ c^iu ne kredas は preskau~ c^iuj ne kredas としましょう。preskau~ neniam の neniam は neniu に, preskau~ homoj ne fidas は preskau~ c^iuj ne kredas になおしましょう。fidi は「信頼する, 信用する」という意味で, ここで使うのは不適当です。kredis としたのは, うっかりミスですね。

訳例
Preskau~ neniu kredas, ke li solvis la matematikan problemon en malpli ol unu horo.


課題文 n-ro42 「日本には何週間ご滞在の予定ですか。」「3週間の予定です。」

解説
「何週間」は kiom da semajnoj といいます。dum kiom da semajnoj と表現することもできますが, この dum はつけなくてもよいので, 普通は kiom da semajnoj といいます。dum kiom da semajnoj の kiom da semajnoj は 主格で, dum のない kiom da semajnoj はここでは kiom da korespondantoj vi havas? の kiom da korespondantoj と同じように対格です。da は前置詞なので, その後には常に主格が置かれるため, kiom da 〜 は同じ形で主語になったり目的語になったりすることができます。 同じことは iom da 〜, tiom da 〜 ついてもいうことができます。
「日本に」は en Japanio とします。 c^e Japanio はよくありません。場所についていうとき, 一般的にいって広い範囲には en を使い, c^e ni(= en nia lando)のような場合を除いて c^e は使われません。

「滞在する」は resti, restadiを使うのよいでしょう。log^i は log^i en hotelo などの場合には「泊まる, 滞在する」の意味ですが, log^i en Japanio, log^i en Tokio のように 国名や都市の名とともに使われると, 「そこを生活の場所とする」という意味が強くなるので「住む」という語感に近くなります。旅行者に対する質問としては resti, restadi を使うほうがよいでしょう。

「予定」は plani, projekti, intenci などをを使っていうこともできますが, ここでは訳す必要はないでしょう。restos, restados で十分です。もし「滞在するつもりですか」の「つもり」に近い表現を入れたいときは, "Kiom da semajnoj vi pensas resti en Japanio?" のようにいえばよでしょう。この pensi は intenci と同じ意味ですが, 語感としては intenci より軽い感じがします。restadas と -as の形にするのはよくありません。restadas とすると「滞在していますか」という現在までの滞在期間を尋ねることになります。

「3週間」を por tri semajnoj とするのは, ここではよくありません。期間を表す dum, por は動詞のアスペクトによって使い分けられ, 点動詞とともに使うときは por, 線動詞とともに使うときは dum を使います。(線動詞, 点動詞についての説明は, ここをクリックしてください。)
resti, restadi は線動詞なので, dum を使っていいます。

比較: ekvojag^i por tri semajnoj (3週間の旅に出かける)(ekvojag^i は点動詞)
vojag^i dum tri semajnoj (3週間, 旅をする)(vojag^i は線動詞)

訳例
"Kiom da semajnoj vi restos en Japanio?"
"Mi restos tri semajnojn."


課題文 n-ro43 この本を1週間貸してくださいませんか。

解説
「〜を貸す」はここでは, 「わたしに」ということですから prunti al mi 〜n, pruntedoni al mi 〜n のようにいえばよいでしょう。al mi 〜n の語順は 〜n al mi としてもここでは同じです。

「1週間」はここでは por unu semajno とします。前回の解説に書いたように, 期間を表す dum, por は動詞のアスペクトによって使い分けられ, 点動詞とともに使うときは por, 線動詞とともに使うときは dum を使いますが, prunti, pruntedoni は点動詞です。 「点動詞, 線動詞」がよく分からないというご質問がありましたので, 簡単に説明しておきましょう。

ある継続している動作, 状態を線で表し, その両端を点で示すことにします。時間の流れを左から右へ進む線で表すと, 例えば「帽子をかぶっている」という状態を表す線の左端は「帽子をかぶる」という動作を示す点になり, 右端は「帽子を脱ぐ」という動作を示す点になります。単語で示すと, surmeti c^apon(帽子をかぶる), surhavi g^in(かぶっている), demeti g^in(脱ぐ)となります。この線で表した動詞(surhavi)が線動詞で, 両端の点で表した動詞(surmeti, demeti)が点動詞です。
すべての線動詞には, その始まりを示す点動詞と終りを示す点動詞がありますが, 始まりを示す点動詞には, そこから始まる状態を示す線動詞があるとは限りません。上に挙げた例の surmeti で始まる状態は surhavi ですが, pruntedoni(貸す)から始まる状態の「貸してある」や, pruntepreni(借りる)から始まる「借りている」に当たる線動詞はないので, mi estis pruntedoninta libron al li(彼に本を貸してある)とか, mi estis depruntinta libron de li(彼から本を借りている)のように言わねばなりません。ただし estis 〜inta の形は重い感じがするので, mi pruntedonis libron ... とか mi depruntis ibron ... の形で代用するのが普通です。

「〜してくださいませんか」は c^u vi bonvolus 〜i というのがいちばんていねいな表現です。日本語では否定形の疑問文になっているので, c^u vi ne bonvolus 〜 と言いたくなるかもしれませんが, エスペラントでは否定形の疑問は相手に jes の答えを期待する厚かましさを感じさせるニュアンスを伴うので避けましょう。

訳例
C^u vi bonvolus pruntedoni al mi c^i tiun libron por unu semajno?


課題文 n-ro44 この種のコウモリは3か月冬眠します。

解説
「この種のコウモリ」は c^i tiu specio(speco) de vesperto でよいでしょう。生物の「種」は specio というのですが, speco も specio の意味で使われます。日本語から考えると vesperto de c^i tiu speco と書きたくなるところですが, そのようにはいいません。tiuspeca vesperto ということもできます。la speco de vesperto の la は c^i tiu または tiu c^i のほうがよいでしょう。
vesperto は vespera besto という意味を持つラテン語源の単語です。「コウモリ」などという単語はあまり使わない語でしょうが, vespero と結びつけておぼえておくと忘れないでしょう。

「3か月」は, ここでは dum tri monatoj とします。英語では for three months というので, それにひかれて por tri monatoj とするのはよくありません。英語では動詞のアスペクトに関係なく期間を for で表すので, 動詞のアスペクト(点動詞, 線動詞)によって dum と por を使い分けるエスペラントのほうが難しいといえますが, 点動詞か線動詞か分からなくて, dum, por のどちらにするか迷ったときは, tri monatojn のように対格にすればよいでしょう。

訳例
C^i tiu speco de vesperto vintrodormas dum tri monatoj.


n-ro45 世界でいちばん大きい都市はどこですか。

解説
「世界でいちばん大きい都市」は la plej granda urbo en la mondo というのが普通です。el la mondo は en la mondo としましょう。比較の範囲(主語がその中に含まれる集団, 空間の範囲 = 単数形の名詞)は en で表します。

比較:
Li estas la plej bona lernanto en mia klaso.(彼はわたしのクラスでいちばん良くできる生徒です。)
Li estas la plej bona el miaj klasanoj.(彼はわたしの級友の中でいちばん良くできます。)

「どこですか」を直訳して kie estas la plej granda urbo ...? とするのは, ここでは誤りです。kie estas ... ? とすると「世界でいちばん大きい都市はどこにありますか」という意味になるので, 返事は「アメリカにあります」のような答えになるでしょう。

「世界でどの都市がいちばん大きいですか」と言い換えることもできますが, その場合は kiu urbo estas la plej granda en la mondo?となります。

訳例
Kiu estas la plej granda urbo en la mondo?


課題文 n-ro46 ロンドンでは最初にどこを見物するつもりですか。

解説
「ロンドンでは」は en Londono でよいのですが, 日本語の語順そのままに En Londono から始めるのではなく, 疑問詞で始めるのが普通です。会話では En Londono と言ってしまってから kiun lokon ...と疑問詞を続ける場合がないとはいえませんが, やはり疑問詞で始めるのが標準的な言い方です。kiun lokon en Londono も誤りではありませんが, この形は「ロンドンのどこを」という感じになります。

「最初に」は unue でいいし, antau~ c^io も使えます。

「どこを見物するつもりですか」の「どこ」は, ここでは kiun lokon, kiun vidindaj^on, kion などを使って言うのがよいでしょう。kien を使って kien vi iros のように言うのはよいのですが, kien vi vizitos とすると不自然だと感じる人があるでしょう。viziti は名詞, 代名詞を目的語に取る他動詞なので, viziti tien のように副詞といっしょに使うのは非標準と考えられます。(英語の visit には自動詞の働きもあるので visit there の形も見られます。)
「見物する」は vizitos でよいでしょう。vizitos に por rigardi を付けてもよいのですが, viziti には iri en iun lokon por trarigardi という意味があるので, viziti だけで「見物する」という意味があります。「〜つもり」は -os だけでも表せますし, intencas, planas などを付けてもよいでしょう。
vidi には「〜が見える」という意味があるので, kion vi vidos unue en Londono? とすると, 「ロンドンでは最初に何が目につくでしょうか」という意味に取れるので, vidiを使うときは kion vi volas vidi ... のように言うのがよいでしょう。kiun vi unue vizitos は「最初に誰を訪問するつもりですか」の意味になります。

訳例
Kiun lokon vi unue vizitos en Londono?
Kien vi iros unue por rigardi en Londono?
Kion en Londono vi unue vizitos por rigardi?


課題文 n-ro47 「ここはどこだろう。」「たぶん, もうA市に入っているよ。」

解説
「ここはどこだろう」は kie ni estas? というのがよいでしょう。kie estas ni? という語順でもかまいません。kie estas c^i tie? とはいいません。c^i tie は副詞ですから, この文は文法的に誤りといえます。ここでは ni を使いましたが, ひとりしかいないときの独り言だったら kie mi estas? という文になります。

「たぶん」には probable, vers^ajne, kredeble, supozeble などを使っていうことができます。eble を使うのはよくありません。eble は「もしかすると, かもしれない」という程度の低い蓋然性を表す副詞です。日本に12年ほどいて去年アメリカに帰ったJoel Brozovskyさんは, 在日中に日本人の eble の使い方はおかしいと感じていたそうです。わたしとのメールのやりとりの中で, エス和や和エスなどの影響で eble を「たぶん」の意味に使う人が多いことを説明したら, 「それで分かった」とお礼をいわれました。

「 もうA市に入っている」は ni jam eniris en la urbon A, ni jam estas en la urbo A などのようにいうのがよいでしょう。jam estas en la urbo A のように主語抜きの文は会話ではよくありますが, 書くときは主語を書いたほうがよいでしょう。
「A市」を A urbo と書くのはよくありません。英語では Nagoya City のように書くことができますが, これをそのまま Nagoya Urbo とするのはエスペラントでは非標準の書き方です。Urbo Nagoya や Nagoya-Urbo と書かれているのを見かけることもありますが, la urbo Nagoya と書くようお薦めします。

訳例
"Kie ni estas?" "Probable ni jam estas en la urbo A."


n-ro48 「ここから入ってもいいですか。」「申し訳ありませんが, ここは店員専用です。」

解説
「ここから入る」を eniri de c^i tie とした訳がいちばん多かったのですが, これはよくありません。de は「移動の起点」を示す前置詞ですから foriri de c^i tie(ここから立ち去る) のように使うことはできますが, eniri とともに使うのは不自然です。日本語で考えると「ここから(de c^i tie)から入る(eniri)」は自然な表現ですが, ヨーロッパの人に eniri de c^i tie の意味が分かるかどうかを尋ねてみましたが, 分からないという返事が返ってきました。余談ながら, この c^i tie も副詞です。前置詞は副詞や副詞句(sur la tablo など)の前に付いて, de sur la tablo(テーブルの上から)のように使われることもあります。
trapasi c^i tien もよくありません。c^i tien のように場所を表す副詞に -n を付けるのは, veni c^i tien.(ここに来る)のように, 移動先を表す場合で, 動詞(ここでは trapasi)の目的語になることはできません。

ここでは eniri tra c^i tiu pordo(この入口を通って入る) のようにいうのがよいでしょう。日本語を直訳するのではなく, この対話が行われている状況をイメージして, その場にふさわしいエスペラントの表現を見つけましょう。
「申し訳ありません」は, ここでは mi bedau~ras というのが, いちばんよいのですが, pardonon, pardonu を使ってもよいでしょう。mi bedau~ras と pardonon, pardonu とは, 本来別の意味を持っているので, 厳密にいえば両者を使い分けるべきなのですが, 例えば英語の I'm sorry と Excuse me が混同されて使われるように, ヨーロッパやアメリカでも mi bedau~ras と pardonon, pardonu が混同されて使われているようです。

「店員」は komizoj, vendistojなどのようにいうのが一般的です。servisto は 「召使」, butikisto は「店主」の意味で使われるので, ここでは不適当です。komizoj, vendistoj には la か niaj を付けることが必要です。何も付けないと, その店の店員だけでなく, どこの店員でもよい, つまり店員という職業の人なら誰でも, そこから入れることになります。

訳例
"C^u mi povas eniri tra c^i tiu pordo?"
"Mi bedau~ras. La pordo estas nur por niaj komizoj."


課題文 n-ro49 「もしもし, そこからは出られませんよ。」

解説
「もしもし」は, ここでは pardonon または pardonu を使うのがよいでしょう。momenton は頼まれたことがすぐにできないときなど, 「ちょっとお待ちください」と相手を待たせるときに使う表現で, 人を呼び止めるときの表現ではありません。Lo, halo! は電話で使う「もしもし」に当たる言い方で, 書くときは Lo! Ha lo! のように Ha と lo を 離して書きます。halo と書くと「ハーロ」という発音になって「大広間, ホール」を意味します。知らない人に話しかけるときは pardonon または pardonu と言います。sinjoro や sinjorino を付けてもよいでしょう。
hej は PLENA ILUSTRITA VORTARO によると interjekcio uzata por kurag^igi, por instigi al gajo ktp ですから, ここでは不適当でしょう。

「そこからは出られません」は vi ne povas eliri tra tiu pordo, vi ne povas eliri tra tiu loko, vi ne povas eliri lau~ tiu vojo などのようにいうことができるでしょう。こういう場合は oni ではなく vi を主語にして言うのが普通です。tiu loko ne estas elirejo のようにいってもよいでしょう。

訳例
"Pardonon. Vi ne povas eliri tra tiu pordo."


課題文 n-ro50 その水の入っていないコップをここに置いてください。

解説
「その水の入っていないコップを」は la glason sen akvo, tiun glason sen akvo, la senakvan glason, la glason kiu ne entenas akvon のようにいうこともできますが, このように直訳せずに la malplenan glason というのが, いちばん自然な表現です。

「〜をここに置いてください」は metu 〜-n c^i tien, bonvolu meti 〜-n c^i tien と言えばよいでしょう。この c^i tien の -n を付けなかった訳文がありましたが, metiする場所を示す語には -n を付けます。al c^i tie でも通じますが, c^i tien のほうがよいでしょう。

参考:
meti glason sur la tablon(コップをテーブルの上に置く)
meti c^apelon sur la kapon(帽子を頭にかぶる)
meti ringon sur la fingron(指輪を指にはめる)

訳例
Metu tiun malplenan glason c^i tien.