課題文n-ro591 松の木を見ていたら,カラスが梢(こずえ)にとまりました。

解説
松の木を見ていたら: Kiam mi rigardis pinon または Kiam mi vidis pinon などのようにいいます。「松の木」は pino だけでよいのですが,pinarbo もよく使われます。これは日本語でも「松」と呼んだり「松の木」といったりしますし,英語でも pine または pine tree と呼ぶのと同じです。la pino, la pinarbo のように冠詞を付けるのはよくありません。特定の木を指しているのではないからです。

カラスが梢(こずえ)にとまりました: 「梢」は arbopinto といいますが,ここでは pino, pinarbo が話の始めに出ているので,pinto だけで十分です。話題にした松の木の梢を指していっているのですから,冠詞を付けて la pinto といいます。「梢」は「木の枝」という意味ではなく,現代語の用法としては「木のてっぺん」を指すのが普通ですから,branc^eto でなく訳例のようにいうのがよいでしょう。korvo に冠詞を付けるのはよくありません。「とまりました」は sidig^is, eksidis などが使えますが,haltis を使うのは誤りです。訳例のように alflugis を使っていうと,目に見えるような描写になります。surflugis も使えますが,*surflugis sur la pinto* ではなく,surflugis sur la pinton としましょう。al の後に対格(-n)を置くのは誤りです。

訳例
Kiam mi rigardis pinarbon, korvo alflugis al la pinto kaj sidig^is sur g^i.


課題文n-ro592 あの木の枝にとまっているのはハトでしょうか。

解説
あの木の枝にとまっているのは: ここでは la birdo, kiu sidas sur la branc^o de tiu arbo(あの木の枝にとまっている鳥は)というのが,いちばん分かりやすい表現になります。tiu, kiu sidas ... のようにいうと,tiu はもともと「人」を指す指示代名詞ですから,一瞬の戸惑いがあるかもしれません。多くの場合,状況によってそのよう誤解が起きることはないとは思われますが。

参考:
Tiu, kiu sidas tie,estas mia patro.(あそこに座っているのは,わたしの父です)
Tio, kio kus^as tie, estas mia libro.(あそこにあるのは,わたしの本です)

Kiu estas tiu?(あの人は誰ですか)
Kio estas tio?(あれは何ですか)

sidig^as は「とまる」という意味の点動詞ですから,ここでは sidas(とまっている)を使います。「枝」には pinto でなく,branc^o を使いましょう。branc^o には冠詞を付けます。聞き手には話し手がどの枝を指していっているのか分かっているはずだからです。

ハトでしょうか: estas kolombo? といえばよいでしょう。estas kolobo, c^u ne? といえば「ハトですね」と聞き手の同意を求める表現になります。

訳例
C^u la birdo, kiu sidas sur la branc^o de la arbo,estas kolombo?


課題文n-ro593 クジャクが枝にとまっていたというのは,どの木ですか。

解説
この課題文は「どの木ですか,その枝にクジャクがとまっていたのは」という構文であらわすので,訳例のような表現になります。応募訳のほとんどはpavo に冠詞を付けてありませんでしたが,ここでは「聞き手が見たクジャク」を指しているので,冠詞をつけて la pavo といわなければなりません。この課題文のような文を話し手がいう前には,相手(聞き手)はおそらく次のようなことをいったはずです。
Mi vidis, ke pavo sidas sur branc^o de arbo.(木の枝にクジャクがとまっているのを見ました)
この話を聞いた人がいう質問が,この課題文ですから,pavo には冠詞を付けて la pavo としなければなりません。この la pavo は la pavo, kiun vi vidis(あなたが見たクジャク)という意味を表しています。冠詞の主な働きのひとつは,聞き手にそれと分かるものや人に付けるということです。

訳例
Kiu estas la arbo, sur kies branc^o sidis la pavo?

課題文n-ro594 わたしは毎晩おそくとも11時までには床に入ります。

解説
わたしは床に入ります: mi enlitig^as といいます。enlitig^i は点動詞ですから,一回きりの行為については -as の形をとることができませんが,課題文のように繰り返される行為を表すときは -as の形を取ります。Mi iras en la liton という言い方もできますが,Mi iras al mia lito は「ベッドのところへ行く」という意味ですから,ここでは不適当です。英語の go to bed は iri en la liton または enlitig^i と訳されます。

毎晩: c^iunokte, c^iun nokton, en c^iu nokto のようにいいます。置く位置は文頭,文中,文末のどれでも可能ですが,文中に置くときはどこでもよいという訳ではないので,注意が必要です。下の訳例でいえば,plej malfrue と je la dekunua は,それぞれひとかたまりになっているので,c^iunokte を plej と malfrue の間に入れることはできませんし,je と la の間にも入れることはできません。また,c^iun nokton や en c^iu nokto は一語の副詞 c^iunokte より重い表現なので,Mi c^iunokte enlitig^as ... に比べると,Mi en c^iu nokto enlitig^as ...はゴツゴツした表現に感じられます。c^iuvespere, en c^iu vespero などのようにいうのは,ここではよくありません。就寝する時間帯は vespero ではなく nokto を使って表します。c^iu nokte のように2語に書くのは誤りです。

おそくとも11時までには: plej malfrue je la dekunua horo といいますが,この horo は省略することができるので,実用上はたいてい plej malfrue je la dekunua といいます。「おそくとも」に ne malpli frue ol を使った訳が多かったのは,『日本語エスペラント辞典』にこの表現が載っているからでしょうが,これは英語の not later than の直訳です。意味は通じますが,普通は上に挙げたように plej malfrue を使っていいます。dekunua は dek-unua とも書くことができますが,dek unua と2語に書くのは誤りです。

訳例
Mi enlitig^as plej malfrue je la dekunua c^iunokte.


課題文n-ro595 おそくとも大会開会の30分前には,ここに来てください。

解説
おそくとも大会開会の30分前には: plej malfrue tridek minutojn antau^ la malfermo de la kongreso のようにいいます。tridek minutojn は je tridek minutoj といっても同じですし,tridek minutoj は duonhoro(半時間)ということもできますが,*je tridek minutojn* や *je duonhoron* とするのは誤りです。tridek minutojn antau^ ...や duonhoron antau^ ...の -n はje を省略したときに使われる「前置詞省略の対格」ですから,je と対格がいっしょに使われうことはありません。antau^ la malfermo de la kongreso は antau^ ol la kongreso komencig^os ということもできますが,この antau^ ol を antau^e ol とするのは誤りです。kongreso は聞き手にとって既知の「大会」を指しているので冠詞を付けますし,malfermo はその大会の開会を指しているのですから,これにも冠詞を付けます。『エスペラント日本語辞典』の malfermo のところに「malfermo de kongreso 大会の開会」と載っていますが,このような表現が実際に使われることはあり得ないので,la malfermo de kongreso という冠詞付きの用例を挙げておくほうが学習者にとっては親切です。同じことは『日本語エスペラント辞典』の見出し語「開会」のところにある malfermo (de kunsido)についてもいうことができます。
「おそくとも」は plej malfrue を使っていえばよいのですが,ここでは almenau^(少なくとも)を使っていうこともできます。ただし,plej malfrue と almenau^ とはまったく意味が違いますから,多くの場合には置き換えることはできません。almenau^ tridek minutojn antau^ la malfermo de la kongreso の almenau^ が tridek という語を修飾しているのに対して,plej malfrue は tridek minutojn antau^ la malfermo de la kongreso という句全体を修飾しているという違いがあります。bonvolu veni c^i tien, plej malfrue ...のようにコンマで区切るのはよくありません。

ここに来てください: Bonvolu veni c^i tien といえばよいでしょう。tien の -n を付けない訳が数例ありましたが,ie, c^ie, kie, nenie, tie など場所を表す副詞への移動を表すときは,これらの語に -n を付けます。

訳例
Bonvolu veni c^i tien plej malfrue tridek minutojn antau^ la malfermo de la kongreso


課題文n-ro596 この薬は食事の30分前にお飲みください。

解説
この薬はお飲みください: ここでは「薬」は「飲む」の目的語になるので,medikamenton と対格にして Prenu c^i tiun medikamenton とします。Bonvolu preni ... とした訳が応募の半数以上を占めましたが,ここで Bonvolu を使うのはよくありません。bonvoli は「どうぞ...してください」と相手に頼みごとをするときの表現ですが,この課題文は「依頼」ではなく「指示」する表現です。「指示する」場合だけでなく,相手に勧める場合にも bonvoli は使いません。例えば,「コーヒーをどうぞ」といって相手の前にコーヒーを置く場合には Prenu kafon というのが普通です。これを丁寧な表現を使うつもりで Bonvolu preni kafon というと「どうぞコーヒーを飲んでくださるようお願いいたします」という意味になるので,相手は戸惑うかもしれません。この文が薬の袋に印刷されている指示の場合には Preni c^i tiun medikamenton ...のように不定形が使われることもあります。

食事の30分前に: 「...の30分前に」は je tridek minutoj antau^ ... , または tridek minutojn antau^ ... といいます。「食事」はここでは mang^oj または c^iu mang^o というのがよいでしょう。「食事の30分前に」というときの「食事」は,ある一回の食事を指すのではなく,また特定の一回の食事を指すのでもないので,単数形の mang^o や la mang^o とするのはよくありません。もし「日に一回」の服用を指示するのであれば,例えば「夕食の30分前に」(je tridek mimutoj antau^ vespermang^oj または tridek minutojn antau^ vespermang^oj)のような指示になるはずですね。「ある不特定の一回の食事」を指すときは mang^o を使うので,例えば「食前酒」の定義は alkoholaj^o trinkata antau^ mang^o のようにいうことができます。

訳例
Prenu c^i tiun medikamenton tridek minutojn antau^ mang^oj.


課題文n-ro597 この薬は朝食の30分後にお飲みください。

解説
この薬はお飲みください: Prenu c^i tiun medikamenton といいます。medikamento は物質名詞なので複数形にはなりません。ここでは Bonvolu preni というのはよくありません。前回の解説をお読みください。

朝食の30分後に: tridek minutojn post matenmang^oj というのがよいでしょう。post の代わりに malantau^ を使うのはよくありません。antau^(の前に)は時間的にも空間的にも使うことができますが,malantau^(の後に)は空間的な用法だけで,時間的な用法はないので,時間的な「の後に」には post を使っていいます。ただし,post には時間的な用法だけでなく,空間的な用法もあります。

参考:
Post vi, sinjoro(sinjorino)!
どうぞお先へ(部屋の入り口やエレベーターの前などで,先に入るように相手に勧めるときの言葉)

訳例
Prenu c^i tiun medikamenton tridek minutojn post matenmang^oj.


課題文n-ro598 Karloは3日前に入院しましたが,わたしはその2日前に彼に会いました。

解説
Karloは3日前に入院しましたが: 「Karloは3日前に入院しました」は Karlo enhospitalig^is antau^ tri tagoj または Karlo eniris en hospitalon antau^ tri tagoj といいます。「3日前に」は antau^ tri tagoj といいますが,これを tri tagojn antau^e とするのはよくありません。話している時点を基準にして「3日前に」という時は,antau^ tri tagoj といい,未来や過去のある時点を基準にして「その3日前に」という時には tri tagojn antau^e といいます。『エスペラント日本語辞典』の antau^e の項には tri tagojn antau^e = antau^ tri tagoj という記述がありますが,これは誤りです。antau^ tri tagojn も誤りです。時間について使われる antau^ の後に対格(-n)が置かれることはありません。場所を表す antau^ の後には対格が置かれることがあります。

参考:
Manjo alkuris antau^ min.(Manjoはわたしの前へ走ってきました)

この課題文の「が」に sed や kvankam ..., tamen を使うのはよくありません。日本語の「が」にはいくつもの意味があるので,「が」をすべて sed や tamen と訳すと,論理的に破綻した文になることがあります。この課題文の「が」は「Karloは3日前に入院した」という文と「わたしはその2日前に彼に会った」という文を並列的につなぐ「が」ですから,前節の内容を否定したり,前節と対立する内容を述べるときに使う sed や tamen を使うことはできません。Kvankam Karlo enhospitalig^is ... のようにいうと,「Karlo は3日前に入院したにもかかわらず(わたしはその2日前に彼に会いました)」というような意味になってしまいます。ここでは kaj やセミコロン(;)でつなぐか,またはつながないで,ふたつの文にするのがよいでしょう。

わたしはその2日前に彼に会いました: mi vidis lin du tagojn antau^e といいます。vidis lin は renkontis lin または renkontig^is kun li ということもできますが,renkontis kun li は誤りです。「その2日前に」はここでは du tagojn antau^ lia enhospitalig^o のようにいうこともできますが,du tagojn antau^e(その2日前に) というをおぼえておくと簡潔な表現ができます。antau^ ol lia enhospitalig^o のようにいうのは誤りですから,ol を削除しましょう。『日本語エスペラント辞典』には antau^ ol la unua de majo という例文が載っていますが,これは誤りです。 antau^e は pli frue という意味ですから,du tagojn pli antau^e の pli は削除しましょう。plie du tagojn antau^e のようにもいいません。

訳例
Karlo enhospitalig^is antau^ tri tagoj. Mi vidis lin du tagojn antau^e.


課題文n-ro599 ハルオは一昨日海外旅行に出かけましたが,その数日前にわたしを訪ねてきました。

解説
ハルオは一昨日海外旅行に出かけました: Haruo ekvojag^is eksterlanden antau^hierau^ というのがよいでしょう。antau^hierau^ は文頭または ekvojag^is の前に置くこともできます。「一昨日」は antau^hierau^ と一語で書きます。antau^ と hierau^ を離して書くと「きのうより前に」という意味になって,三日前,四日前なども含むことになります。antau^hierau^ と同じ意味を antau^ du tagoj ということはできますが,du tagojn antau^e とするのは誤りです。antau^ と antau^e の違いは前回の解説をお読みください。「海外旅行に出かける」というのは ekvojag^i eksterlanden といいます。eksterlando は自国以外の地域全体を指すので,la eksterlando と冠詞付きの単数形で使われ,複数形になることはありません。ekvojag^i ととも en la eksterlandon のように使うこともできますが,普通は上に挙げたように eksterlanden の形でよく使われます。vojag^is は「旅行した(旅行を終えて帰って来ている)」という意味ですから,「旅行に出かけた」は ekvojag^is といわなければなりません。

その数日前にわたしを訪ねてきました: Li vizitis min kelkajn tagojn antau^e といいます。kelkajn tagojn を kelktagojn とするのはよくありません。kelktaga libertempo(数日間の休暇)のように使われる kelktaga はよく使われる語ですが,kelktago という名詞形は普通は使われません。詩などでは音節の数の制約のために使われることがあるかもしれませんが,その場合でも kelktago という単数形で「数日」を指すので,kelktagoj と複数形にすると十数日以上の日数を指すことになります。

訳例
Haruo ekvojag^is eksterlanden antau^hierau^. Li vizitis min kelkajn tagojn antau^e.


課題文n-ro600 マサオとHelenaは,最初の出会いから数ヵ月後に結婚しました。

解説
マサオとHelenaは結婚しました: Masao kaj Helena geedzig^is というのがよいでしょう。Masao edzig^is al Helena は「マサオは Helenaと結婚した」という意味で,マサオに力点のある表現になります。Masao edzinigis Helena-n についても同じことがいえます。マサオと Helenaのふたりを同じ比重で扱うには,Masao kaj Helena geedzig^is(マサオと Helenaは結婚した)という表現がよいでしょう。

最初の出会いから数ヵ月後に: kelkajn monatojn post sia unua renkontig^o といいます。日本語の表現に影響されて *post kelkaj monatoj de la unua renkontig^o* というのは誤りです。renkontig^o は renkonto としても同じですし,sia unua renkonto の sia は la とすることもできますが,ilia を使うのは誤りです。ilia とするとマサオとHelenaでなく別の人たち(の出会い)を指すことになります。sia の代わりに冠詞を使うことができるのは,体の部分や身につけている服,またはその部分を表す場合,その人の行為(身体的だけでなく精神的なものも含む)を表す場合です。

参考:
per siaj(la) manoj, el sia(la) pos^o, dum sia(la) pensado, dum sia(la) promenado など

sia amiko を la amiko のように言い換えることはできないので,注意してください。

訳例
Masao kaj Helena geedzig^is kelkajn monatojn post sia unua renkonto.