課題文n-ro631 マサオは,そのとき自分の仕事を手伝ってくれた友人の名前を忘れていません。

解説
マサオは忘れていません: Masao ne forgesis または Masao memoras といいます。forgesis は点動詞ですから,繰り返される行為や時に関係のない事柄について述べるとき以外は,-as の形を取りません。

参考:
Mi ofte forgesas s^losi la pordon.(わたしはよく戸締りを忘れます)
Oni ne forgesas sian unuan amon.(初恋は忘れないものです)

「忘れていない」という現在の状態は ne forgesis または memoras で表わすと覚えておきましょう。
そのとき自分の仕事を手伝ってくれた友人の名前を: la nomon de sia amiko, kiu tiam helpis lin en lia laboro のようにいうのがよいでしょう。手伝ってくれた友人が何人もいる場合には la nomon de siaj amikoj, kiuj ...といいます。人の名前(本名)はひとつですから,理論的には de siaj amikoj 前の nomon を nomojn とするのはおかしいのですが, 実際には下に挙げる旧約聖書に見られる用例のように, nomon も nomojn も使われています。

参考:
la nomon de iliaj dioj ne citu(彼らの神々の名を唱えてはならない。ヨシュア記 23:7)
gravuru sur ili la nomojn de la filoj de Izrael(その上にイスラエルの子たちの名を刻まなければならない。出エジプト記 28:9)
訳文は2例とも日本聖書協会の訳によります。

「友人」は la amiko(j) ではなく,sia amiko または siaj amikoj としましょう。*kiu(j) helpis sin en sia laboro* とするのは誤りです。si はいちばん近い動詞の主語を再示するので,sin, sia は kiu(j)を指す, つまり友人を指すことになってしまうからです。
si, sia の用法については,トップページの「中級者コーナー」の「si, sia の用法」をご参照ください。

訳例
Masao memoras la nomon de sia amiko, kiu tiam helpis lin en lia laboro.


課題文n-ro632 Annaは友だちに彼の辞書を2,3日貸してほしいと頼みました。

解説
Annaは友だちに頼みました: Anna petis sian amikon -i または Anna petis sian amikon, ke li -u のようにいいます。peti al iu という使用例もありますが,peti は他動詞ですから,peti iun のほうをお勧めします。demandis を使った訳がありましたが,これは誤りです。英語の demand は「要求する」と意味ですが,エスペラントの demandi は「質問する」という意味です。

彼の辞書を貸してほしい: prunti al s^i sian vortaron または ke li pruntu al s^i sian vortaron といいます。prunti, pruntu は pruntedoni, pruntedonu としても同じです。prunti al si lian vortaron は誤りです。 li を使うか,si を使うかはいちばん近くにある動詞(ここでは prunti または pruntu) という行為をする人(ここでは Anna の友だち)との関係で決まるので,prunti al si の si は Anna の友だちを指し,lian vortaron の lian は 「Anna の友だちの」ではなく,「ほかの男性の」という意味になります。日本語では明示されていませんが,「貸してほしい」というのは「わたし(Anna)に」という意味ですから,al s^i を入れていわなければなりません。

2,3日: この「2,3日」は「「2,3日の間」という意味ですから,por du au^ tri tagoj または du au^ tri tagojn といいます。-n を付けるのは前置詞代用の対格です。por の代わりに dum を使うのはよくありません。「の間」を表わす前置詞 dum, por の使い分けは,関係する動詞が「線動詞であるか,点動詞であるか」によって決まります。「線動詞のときは dum」, 「点動詞のときは por」と覚えておきましょう。 ここで使う prunti, pruntedoni は点動詞ですから por を使っていいます。

訳例
Anna petis sian amikon prunti al s^i sian vortaron por du au^ tri tagoj.
Anna petis sian amikon, ke li pruntu al s^i sian vortaron por du au^ tri tagoj.


課題文n-ro633 マサオは,友だちといっしょに自分のほうへやって来る少年を見ました。(「友だち」は少年の友だち,単数)

解説
マサオは見ました: Masao vidis という訳がほとんどで,rigardis が2例,ekvidis が1例でした。vidi は「見ている」,rigardi は「眺めている」という意味の線動詞ですから,ここでは ekvidi がよいでしょう。ekvidi は rimarki per la vido(見て気づく)という意味の点動詞です。これは scii, ekscii などについてもいえることですが,ヨーロッパのエスペランチストたちは,こういう場合には vidi を使う人が多いのは,彼らには線動詞,点動詞の機能の違いの認識が希薄なことと関係があるようです。

友だちといっしょに自分のほうへやって来る少年を: knabon venantan al li kun sia amiko または knabon, kiu proksimig^is al li kun sia amiko などのようにいうのがよいでしょう。knabon, kiu venis al li kun sia amiko の knabon, kiu venis は 「やって来る少年を」ではなく,「やって来た少年(すでにマサオの傍にいる少年)を」という意味を表わすので,「やって来る少年を」は knabon, kiu estis venanta といわなければなりません。estas -anta という代わりに -as を使うことはできますが,estis -anta の代わりに -is を使うことはできません。

参考:
"Kion Akio faras nun?" "Li skribas leteron." (このskribasはestas skribantaの代用)
「アキオはいま何をしているの」 「手紙を書いているよ」
"Kion Akio estis faranta tiam?" "Li estis skribanta leteron."
「アキオはそのとき何をしていたの」 「手紙を書いていたよ」

knabo, kiu venas という訳が多く寄せられましたが,この venas は estis venanta としなければなりません。Mi vidis, ke ...のような文の ke 以下は名詞節といいますが,名詞節の時制は主節(ここでは Mi vidis)の時制に関係なく決まるので,Mi vidis, ke knabino ludas pianon(わたしは女の子がピアノを弾いているのを見ていました)のようにいうことができますが,kiu で導かれる形容詞節では主節の時制の影響を受けるので,「わたしはピアノを弾いている女の子を見ました」は Mi vidis knabinon, kiu estis ludanta pianon のようにいいます。このestis ludanta を estas ludanta や ludas に置き換えることはできません。

knabon に冠詞を付けるのはよくありません。課題文の「少年」はマサオが少年と友だちとを見分けていることからすると,マサオが知っている少年だと思われますが,聞き手または読み手にとっては初めて聞く(読む)少年を指しているので無冠詞にしなければなりません。つまり,この knabo は unu el la knaboj konataj de Masao(マサオが知っている少年のひとり)を指しているのです。

knabon venantan al si は誤りです。si は venantan の意味上の主語を再示するので,ここでは knabo を指すからです。

訳例
Masao ekvidis knabon venantan al li kun sia amiko.
Masao ekvidis knabon, kiu estis venanta al li kun sia amiko.


課題文n-ro634 アキオは勧められたコーヒーを一口飲んで,「おいしい」といいました。
解説
アキオは「おいしい」といいました: Akio diris, "Bongusta!" のようにいえばよいでしょう。感嘆符(!)はピリオド(.)にすることもできます。

勧められたコーヒーを一口飲んで: 「勧められたコーヒーを」は la kafon prezentitan al li のようにいうのがよいでしょう。無冠詞の kafon を使った訳が多く寄せられましたが,ここでは冠詞を付けて la kafon といいましょう。この表現は la(tiun) kafon, kiu estis prezentita al li (彼に勧められた,そのコーヒーを)と同じ意味ですが,このように書き換えてみると,なぜ kafon に冠詞を付けるのかが分かりますね。「勧められた」には prezentitan を使うのがよいでしょう。prezentitan al li の al li が付いている訳は1例だけでしたが,この al li が入っていないのはよくありません。日本語では勧められたのはアキオであることは自明のことなので,わざわざ「彼に」とは言わないのが普通ですが,エスペラントでは明示する必要があります。例えば,日本語で「本当のことを教えてください」というところを,エスペラントでは Bonvolu diri al mi la veron のように al mi を入れて言わなければならないのと同じです。al li であって al si でないことにも留意してください。al si とすると直前の prezentita の意味上の主語(アキオにコーヒーを勧めた人)を指すことになるので,「コーヒーを勧められたアキオ」を指すには al li としなければなりません。inviti にも「勧める」という意味がありますが,この語は inviti iun trinki kafon(人にコーヒーを飲むように勧める)という形で使われる語ですから,*invititan kafon* ということはできません。rekomenditan kafon は,例えばコーヒー店で「このコーヒーがおいしですよ」(お買いになるにはこれがお勧めです)という場合にはぴったりの表現ですが,訪問した家で「どうぞ」という言葉とともに前に置かれるコーヒーを指していうときは,prezentitan kafon というのがよいでしょう。

訳例
Akio trinketis la kafon prezentitan al li kaj diris, "Bongusta!"


課題文n-ro635 マサオは勧められた椅子に座る前に,Petroに会釈しました。
解説
マサオはPetroに会釈しました: Masao kapsalutis Petron といいます。klinsaluti という語もありますが,この語は「上体を前に倒して挨拶する」ことを表わす表現ですから,「会釈する」というときは「頭を前に傾けて挨拶する」という意味のkapsaluti を使うほうがよいでしょう。kapsaluti, klinsaluti はどちらも他動詞で直接目的語を取るので,al Petro ではなく Petron としましょう。対格の-nが付いた語,例えば katon は「ネコを」,viron は「男を」というように覚えていると,kapsaluti Petron が「Petroを会釈する」というおかしな表現に感じられて,Petron を al Petro としたくなりますが,kapsaluti は他動詞ですから al Petro は誤りで Petron が正しいのです。

勧められた椅子に座る前に: antau^ ol sidig^i sur la seg^o prezentita al li というのがよいでしょう。antau^ ol sidig^i は antau^ ol li sidig^is と同じ意味ですが,主節(Masao kapsalutis Petron)と従属節(antau^ ol li sidig^is sur la seg^o prezentita al li)の主語が同じ人なので,こういう場合は li sidig^is が sidig^i と簡略化されるのが普通です。prezentita al si とするのはよくありません。この形の si は 文の主語(Masao)を再示するのではなく,近くにある prezentita の意味上の主語(椅子を勧めてくれた人)を指すので,ここでは li(=Masao)を使っていわなければなりません。 sidig^i sur la seg^o は sidig^i sur la seg^on ということもできます。前者が「座っているという状態の起点」を表わすに対して,後者は「座るという行為,座る場所への体の移動」を表わしているという違いがあります。ただし,ザメンホフは LINGVAJ RESPONDOJ の中で,対格よりも主格のほうが simpla であるからという理由で seg^o を勧めています。 「勧められた」に rekomendita,proponita を使うのはよくありません。rekomendi は「推薦する,勧告する」 というような意味ですし,proponi は「(商品などを)試用してみてください(よければ購入してください)と頼む」という意味です。 Antau^ Masao sidig^is は誤りですから,Antau^ ol Masao sidig^is としましょう。antau^ は前置詞ですから Masao sidig^is という節(主語+動詞)の前に置くことはできません。

訳例
Masao kapsalutis Petron, antau^ ol sidig^i sur la seg^o prezentita al li.


課題文n-ro636 アキオは花子に彼女の写真を一枚持ってきてくれるように頼みました。

解説
アキオは花子に頼みました: Akio petis Hanako-n ...-i または Akio petis Hanako-n, ke ... のようにいいます。民族語の影響で peti al iu を使う人もいますが,peti は他動詞ですから peti iun の形を取るのが正しいので,al iu でなく iun を使っていうことをお勧めします。Hanako の対格は Hanakon や Hanako-n, Hanako'n でよいでしょう。

彼女の写真を一枚持ってきてくれるよう: Akio petis Hanako-n ...-i という構文のときは alporti al li sian foton または alporti al li unu el siaj fotoj となり,Akio petis Hanako-n, ke という構文を使うときは, s^i alportu al li unu el siaj fotoj となります。unu el siaj fotoj は sian foton とすることもできます。「彼女の写真」というのは,「彼女が写っている写真」という意味と「彼女が所有している写真」あるいは「彼女が撮った写真」という意味がありますが,sia(j) foto(j) はこの三つの意味のどれにも対応することができるので,ここでは sia(j) foto(j)でよいでしょう。ザメンホフが著した Fundamento de Esperanto に収められている Ekzercaro の§32 に La fotografisto fotografis min, kaj mi sendis mian fotografaj^on al mia patro(写真屋さんがわたしの写真を撮ってくれたので,わたしはわたしの写真を父に送りました)という文が載っています。日常の会話などでは,fotografaj^o の代わりに短縮形の foto がよく使われます。 sia を s^ia とするのは誤りです。alporti する人(花子)の写真ですから sia を使っていいます。

訳例
Akio petis Hanakon alporti al li sian foton.
Akio petis Hanako-n, ke s^i alportu al li unu el siaj fotoj.


課題文n-ro637 マサオは誰かが後ろから自分に近づいてくるのに気づきました。

解説
マサオは...に気づきました: Masao rimarkis, ke ... のようにいえばよいでしょう。

誰かが後ろから自分に近づいてくる: iu proksimig^as al li de malantau^e または iu estas proksimig^anta al li de malantau^e のようにいいます。「後ろから」を de dorse というのはよくありません。demalantau^e は de malantau^e と2語に書きましょう。de malantau^o は「マサオの後ろ」であることを示すために冠詞を付けて de la malantau^o とします。proksimig^as は alproksimig^as としても同じです。ke iu alproksimig^is とするのはよくありません。この ke 以下は名詞節ですが,名詞節の場合は,主節(ここでは Masao rimarkis)の動詞を基準にして名詞節の動詞の時制が決まるので,alproksimig^as(正確にいえば estas proksimig^anta) としなければなりません。つまり,「近づいてくる」ことに気づいたのであって,「近づいてきた(「近づく」という行為の完了)」に気づいたのではないからです。

参考:
Mi ekvidis, ke knaboj kuras.(わたしは少年たちが走っているのを見ました。)
Mi ekvidis knabojn, kiuj kuris.(わたしは走っている少年たちを見ました。)

「自分に」は al li とします。proksimig^anta al si とすると,この si は「近づいてくる人」を指すことになります。

訳例
Masao rimarkis, ke iu proksimig^as al li de malantau^e.


課題文n-ro638 わたしは自分が思っていることを,エスペラントでうまく表現できません。

解説
わたしはうまく表現できません: mi ne povas bone esprimi といえばよいでしょう。「うまく」に bele を使うのはここでは適当ではないでしょう。課題文の「うまく表現する」というのは,「いいたいことをきちんと伝えることができる」という意味ですから,多少口ごもったり,言い直したりすることがあってもよいわけですが,bele を使うと elokvente や flue と同じように, 「非常にうまく」という,課題文から考えられる水準よりもはるかに高い能力についての話になります。通訳を職業とする人の場合であれば lerte であることが求められるでしょうが,ここでは bone を使うのがよいでしょう。「的確に」という意味の trafe を使っていうこともできます。

エスペラントで: en Esperanto または per Esperanto といいます。

自分が思っていることを: 直訳すれば tion, kion mi pensas となります。この tion を省略して kion mi pensas とすることもできますが,もっと簡潔にして min だけにすることもできます。同じような表現には tion, kion mi diras(わたしの言っていること)を min だけで表わす C^u vi komprenas min?(わたしの言っていることが分かりますか)などがあります。

訳例
Mi ne povas bone esprimi min en Esperanto.


課題文n-ro639 あなたはマサオが言っていることは正しいと思いますか。

解説
あなたは...と思いますか: C^u vi pensas, ke ...? というのが普通です。*pensas tion prava* のようにいうことはできません。opinii は opinii ion ia の形で使うことができますが,pensi にはこのような用法がありません。

マサオが言っていることは正しい: Masao estas prava または Masao pravas とういうのが簡潔な表現です。tio, kion Masao diras, estas prava ということはできますが,estas prava, kion Masao diras は誤りです。kion Masao diras は estas prava の主語になることはできません。英語の関係代名詞 what は主格,目的格が同じ形ですから,例えば,The result was what I had expected(結果はわたしの予想した通りであった)ということができますが,エスペラントでは*La rezulto estis kion mi antau^vidis* ということはできないので,La rezulto estis tio, kion mi antau^vidis といわなければなりません。つまり,tio, kio や tion, kion のように tio と kio の格が同じ場合には,tio を省略することができますが,tio, kion などのように tio と kio の格が異なる場合には tio を省略することはできないという点が英語の what とエスペラントの kio との相違点です。

参考:
I thanked him for what he had done for me.(わたしは彼がわたしにしてくれたことに感謝しました)
Mi dankis lin pro tio, kion li faris por mi.(*pro kion li faris ...*とはいえない)

「意見が正しい」というときの「正しい」には,estas prava または pravas を使っていうのがよいでしょう。prave diras も使えますが,「言っている」を diris と過去形にするのはよくありません。過去の会議などでの発言を指しているのではないからです。justa は「他人に対して公正な」というような意味ですから,この語を使うのはここでは適当ではありません。。

訳例
C^u vi pensas, ke Masao estas prava?


課題文n-ro640 情熱こそがわたしたち運動に欠かすことができないものなのです。

解説
情熱こそが: 日本語の「こそ」はひとつの事柄を特に強調する助辞ですから,エスペラントでは ja を使っていえばよいのですが,ja は強調する語句の直前に置かれるので,「情熱こそが」というのは,ja pasio というのがよいでしょう。pasio ja estas necesa は pasio ja necesas と同じで,「必要である」ということを強調する表現ですから,「情熱がまさに必要である」という日本語に当たります。pasio に冠詞を付けたり,ja の代わりに ec^ を使うのはよくありません。 ec^ は「〜でさえも」という意味です。

欠かすことができないものなのです: estas nemalhavebla または nemalhaveblas というのが,いちばんぴったりした表現です。*nemankebla*という語はありません。-ebl- は他動詞に付く接尾辞ですから,manki という自動詞に付けるのは誤りです。ただ慣用的に irebla(通ることができる)のように,自動詞に-ebl-が付いている語があります。上に述べたように manki は自動詞ですから *manki pasion* のようにいうことはできません。 「欠かすことができない」は nepre necesa, estas nepre bezonata のようにいうこともできます。

わたしたち運動に: 「欠かすことができない」に ne povas manki を使った場合には al nia movado となりますが,malhavebla を使ったときは por nia movado を使っていうのが普通です。

訳例
Ja pasio estas nemalhavebla por nia movado.