課題文n-ro651 このゴルフ場は会員制になっていますが,きょうは一般に開放されています。

解説
このゴルフ場は会員制になっています: c^i tiu golfejo estas ekskluzive uzata de la membroj のようにいえばよいでしょう。*tiu c^i golfejo estas membreca sistemo* のようにいうことはできません。また,*fermitaj membroj* のようにいうこともできません。ekskluziva や fermita は societo, klubo などのような「組織,団体」を修飾することはできますが,人を修飾することはできないからです。klabo を使うのはここでは誤りです。英語の club はエスペラントでは, klubo(政治,社交,娯楽など共通の目的で集まった人々の団体) と klabo(ゴルフでボールを打つ棒)という二つの異なる語になっているのでご注意ください。

きょうは一般に開放されています: 「一般に開放されている」というのは estas malfermita al la publiko といいます。publiko には冠詞を付けます。集合名詞に付いて総称を表わすというのは冠詞の機能のひとつです。
「...に開放されている」というのは *estas malfermita por ...* ではなく,estas malfermita al ... といいます。malfermata を使うのはよくありません。
「...されている」という現在の状態を表わすには,その動詞が点動詞の場合には estas -ita, 線動詞の場合には estas -ata となります。

比較:
C^iuj fenestroj estas malfermitaj.(すべての窓が開かれています。)
Manjo estas amata de siaj gepatroj.(Manjoは両親に愛されています。)

訳例
C^i tiu golfejo estas ekskluzive uzata de la membroj, sed hodiau^ g^i estas malfermita al la publiko.


課題文n-ro652 この区域は免許を持っているハンターだけが,自由に立ち入ることができます。
解説
この区域: c^i tiu areo を使っていえばよいでしょう。zono も使えますが,この語は隣接地域との境界が明確な地域という感じが強い語です。tereno は 「特定の用途のための敷地,用地」を指す語で,tereno por urba biblioteko(市立図書館建設用地)などのように使われます。teritorio は「領土,(行政区画としての)地域」という意味ですから,これらの語はここでは不適当です。

免許を持っているハンターだけが,自由に立ち入ることができます: 直訳すれば,nur licencitaj c^asistoj povas(rajtas) libere eniri のようになりますが,「自由に立ち入ることができる」には estas malfermita al という表現が使えるので,これを使うと下の担当者訳のように簡潔にいうことができます。「免許を持っているハンター」は,licencitaj c^asistoj といいます。冠詞を付けるのはよくありません。japanaj esperantistoj ofte uzas la esprimon ...(日本のエスペランチストは...という表現をよく使う)などのように,漠然と人,物などを指していう場合には,無冠詞の複数形を使うのが普通です。

訳例
C^i tiu areo estas malfermita nur al licencitaj c^asistoj.


課題文n-ro653 わたしはこの石鹸で顔を洗います。

解説
わたしは顔を洗います: mi lavas al mi la vizag^on というのがよいでしょう。mi lavas la vizag^on でもよいのですが,エスペラントでは体への行為を表わすときは,まず全体をいってから部分をいうという表現方法が一般的です。例えば,「わたしは彼の手をつかんだ」は,Mi kaptis lin c^e la mano のようにいいます。もちろん Mi kaptis lian manon といってもよいのですが,上に挙げた表現のほうが,いわば「よりエスペラント的」ということができるでしょう。lavi sin は「体を洗う」という意味になるので,体の部分を洗うときは lavi al si la kapon(manojn, piedojn,...)などのようにいいます。ただし,al si の si は主語が三人称のときに限られるので,実際に使うときは主語に合わせて al mi, al ni, al vi の形になります。lavas の -as は,ここでは習慣を表わしているので,kutimas lavi のようにいわなくても習慣について話していることは分かりますが,kutimi を使うことが誤りというわけではありません。

この石鹸で: per c^i tiu sapo といいます。kun を使うのは誤りです。英語では with を使いますが,with はエスペラントの kun と per に対応しているので,「...で,...を使って」というときは,per を使っていわなければなりません。

訳例
Mi lavas al mi la vizag^on per c^i tiu sapo.


課題文n-ro654 肉はどの包丁で切るのですか。
解説
肉は: ここでは「切る」の目的語になっているので,対格にして viandon としましょう。「どれが肉切り包丁ですか」という意味の一般的な質問であれば,無冠詞の viandon を使っていいますが,目の前にある肉を指して「この肉はどの包丁で切るのですか」という質問であれば,tiun viandon または la viandon といいます。「肉が好き」,「肉は食べない」などというときには無冠詞,単数の viandon を使っていいます。

どの包丁で切るのですか: これも状況によって表現が変わりますが,「あなたは肉を切るときはどの包丁を使うのですか」という意味の質問であれば,Per kiu tranc^ilo vi tranc^as といいますし,「わたしは今から肉を切るのですが,どの包丁を使えばよいのか分からないので,教えてください」という意味の質問であれば,Per kiu tranc^ilo mi tranc^u というのがよいでしょう。Per kiu tranc^ilo vi tranc^as というときの tranc^as は「いつも切っている」という習慣を表わす表現ですから,これを *Per kiu tranc^ilo mi tranc^as* とすると,「わたしはいつもどの包丁で切っているのでしょうか」というクイズの問題のようになってしまいます。*Per kiu tranc^ilo mi tranc^os*(わたしはどの包丁で切るのでしょうか)もやはりおかしな表現です。*Per kiu tranc^ilo mi devas tranc^i* の devas tranc^i(切らなければならない)も適切な表現ではありません。「包丁」は tranc^ilo だけで十分です。包丁が並べてある前での質問としては,kuiraj^a tranc^ilo のようにいわないで,tranc^ilo というのが普通です。実際の会話では,包丁を前にしての質問であれば下の訳例のように, Per kiu だけでも使われます。この kiu は代名詞で,kiu tranc^ilo の kiu は形容詞です。

訳例
Per kiu tranc^ilo vi tranc^as viandon?
Per kiu vi tranc^as viandon?


課題文n-ro655 ハンドルは両手で握りなさい。
解説
ハンドルは: ここでは「ハンドルを」という意味なので,stirilon, stirradon, direktilonのように対格の形で使います。課題文のような文が使われる状況は,例えば,自動車の運転の仕方を教えるとき,あるいは片手で運転している人に対して注意する場合などがありますが,いずれにしても聞き手には分かっているハンドルを指していう指示ですから,冠詞を付けていいます。

両手で握りなさい: 「握る」は teni を使っていいましょう。preni は「握る,掴む」という動作を表わす点動詞ですから,ここでは「握っている」という状態を表わす線動詞の teni を使っていいます。「両手で」は per ambau^ manoj といいます。c^iuj の前には冠詞を付けませんが,ambau^ は c^iuj du という意味ですから,ambau^ の前に冠詞を付けるのはよくありません。「両手で」は per ambau^ manoj といいます。「を使って」という意味の「で」は per で表わします。kun や en を使うのは誤りです。

訳例
Tenu la stirilon per ambau^ manoj.


課題文n-ro656 わたしが屋根に上がるまで,ハシゴを持っていてください。
解説
ハシゴを持っていてください: Bonvolu teni la eskalon のようにいえばよいでしょう。「ハシゴ」には s^tupetaro も使えます。teni は「支え持っている」という線動詞ですから,Dau^rigu teni のようにいう必要はありません。subteni は「(重力に抗して)下から支えている」という意味ですから,人がのっているハシゴを動かないように teni することはできますが, subteni するようなことはできません。

わたしが屋根に上がるまで: g^is mi grimpos sur la tegmenton というのがよいでしょう。grimpi はここでは「手足を使ってよじ登る」という意味ですが,grimpi eskalon malsupren といえば「ハシゴを使って降りる」という意味を表わします。
「...するまで」は g^is ... を使っていいます。g^is には前置詞としての機能だけでなく,従属接続詞としての機能もあるので,g^is kiam ... のようにいう必要はありません。g^is mi starig^os sur la tegmenton の tegmenton は -n を削除します。starig^i は移動を表す動詞ではないからです。g^is で導かれる節の時制は,ここでは -os を使います。「上がる」という行為は,この会話をしている時点から見れば未来のことであるからです。英語ではこういう場合には現在形を使いますが,エスペラントでは未来形を使うことに注意してください。

訳例
Bonvolu teni la eskalon g^is mi grimpos sur la tegmenton.


課題文n-ro657 この家の屋根に上るには,どうしてもハシゴが要ります。
解説
この家の屋根に上るには: por supreniri sur la tegmenton de c^i tiu domo のようにいいます。grimpi も使えますが,grimpi sur la tegmenton というと,「屋根の上によじ登る」という表現になるので,ここでは supreniri を使っていうほうがよいでしょう。「屋根に上る」というのは「屋根の上に移動する」という意味ですから,sur la tegmento ではなく sur la tegmenton としなければなりません。se mi grimpos のように se を使うのは,ここではよくありません。se は「もし,...するとすれば」という仮定,条件を述べる場合に使われる接続詞です。la tegmenton de c^i tiu domo の de c^i tiu domo が欠落している訳が2例ありました。状況によっては la tegmenton だけでも,どの屋根を指しているのか分かることもあると思いますが,課題文の訳としては減点の対象になります。

どうしてもハシゴが要ります: ni nepre bezonas eskalon などのようにいうこともできますが,nepre necesas eskalo というのが簡潔な表現です。「どうしても」は,ここでは「必ず」と同じ意味で使われているので,ni certe bezonas eskalon のようにいうこともできます。absolute も使えますが,話し言葉としては,nepre や certe のほうがよく使われるでしょう。「ハシゴ」には s^tupetaro も使えます。c^iel は en c^ia maniero(あらゆる方法で)という意味ですから,ここでは使えません。eskalo に冠詞をつけるのは誤りです。冠詞を付けるのは,聞き手がそれと分かる「あのハシゴ」を指す場合に限ります。

訳例
Nepre necesas eskalo por supreniri sur la tegmenton de c^i tiu domo.


課題文n-ro658 あなたは今年の日本エスペラント大会に参加しますか?
解説
あなたは...に参加しますか: C^u vi partoprenos en ...? といいます。en ... を *al ...*とするのはよくありません。「東京に行く」を iri al Tokio というように,日本語の「...に」が al で表わされることもありますが,「...に参加する」というのは partopreni en ...とおぼえておきましょう。

今年の日本エスペラント大会: la c^i-jara Japana Esperanto-Kongreso というのがよいでしょう。c^i-jara の代わりに en c^i tiu jaro を使って, la Japana Esperanto-Kongreso en c^i tiu jaro のようにいうこともできますし,en c^i tiu jaro の代わりに en la kuranta jaro または en la nuna jaro を使っても同じです。de c^i tiu jaro のように de を使っても通じますが,de は多義語なので en を使っていうのがよいでしょう。この en は okazigota en ...(...に開催される予定の)という表現の okazigota を省略したと考えれば分かりやすいですね。 c^i-jara の前に冠詞が付いていない訳が応募訳の三分の一もありましたが,聞き手にはそれと分かっている大会を指しているのですから,冠詞が必要です。冠詞を付けなかった方は,c^i tiu の前には冠詞を付けないということとの混同があったのでしょうが,tiu は指示形容詞ですから冠詞を付けないのです。英語の the の語源的が that であるように,エスペラントの la はラテン語の illa(tiu)ですから,tiu の前に la を付けると tiu の重複になるので tiu の前に冠詞を付けないのですが,c^i-jara(今年の) は hodiau^a(きょうの)などと同じように使われる形容詞ですから,冠詞を付けることができるのです。もちろん,c^i-jara が常に冠詞を取るというわけではないのは,hodiau^a がいつも冠詞付きで使われるわけではないのと同じです。

参考:
la Biblio en hodiau^a gaela lingvo(現代ゲール語で書かれている聖書)

訳例
C^u vi partoprenos en la c^i-jara Japana Esperanto-Kongreso?


課題文n-ro659 この翻訳は今年中に完成させたいと思っています。
解説
この翻訳は: ここでは「完成させたい」の目的語になるので,c^i tiun tradukon といいます。traduko は「異なる言語で言い換えること」という意味だけでなく,「翻訳作業(tradukado)」,「翻訳作品(tradukaj^o)」という意味でも使われます。

今年中に: g^is la fino de la kuranta jaro などのようにいえばよいでしょう。「今年」は la nuna jaro や c^i tiu jaro を使っていうこともできます。g^is の代わりに antau^ を使って,antau^ la jarfino のようにいうと不正確な表現になります。g^is la jarfino は12月31日の夜12時までを指しますが,antau^ la jarfino は12月31日の日付に変わる前,つまり12月30日の夜12時までを指すので,丸一日の差があります。

参考:
Bonvolu redoni al mi c^ion g^is dimanc^o. 日曜日までに全部返してください。(遅くとも日曜日に)
Bonvolu redoni al mi c^ion antau^ dimanc^o. 日曜日前に全部に返してください。(遅くとも土曜日に)

la c^i tiu jaro のように冠詞をつけるのは誤りです。前回の解説の中で「tiu は指示形容詞ですから冠詞を付けないのです」と書いておきましたが,それを読み落とされたのですね。

完成させたいと思っています: mi volas kompletigi, mi deziras elfari, mi intencas finfari, mi pensas elfari などのようにいうことができます。 deziri は「...したいと思う」という意味ですから,*mi pensas, ke mi deziras ...* のようにはいいません。pensi は ke ...の前に置かれると「...であると思う」という意味ですが,不定形(-i)の動詞の前に置かれると「...しようと思う」という意味になります。

訳例
Mi pensas kompletigi c^i tiun tradukon g^is la fino de la nuna jaro.


課題文n-ro660 わたしは Karloが来る5分前にそこに着きました。
解説
わたしはそこに着きました: mi venis tien のようにいうのがよいでしょう。alveni を使っていうこともできますが,alveni は *alveni ien の形ではなく alveni al io の形で使われるので,mi alvenis al tiu loko のようにいいましょう。atingi も使えますが,*mi atingis tien というのはよくないので,mi atingis tiun lokon のようにいいます。

Karloが来る5分前に: kvin minutojn antau^ la alveno de Karlo または kvin minutojn antau^ ol Karlo venis といいます。kvin minutojn は je kvin minutoj といっても同じです。antau^ は前置詞ですから,antau^ la alveno de Karlo のように名詞の前に置くことはできますが,Karlo venis のような文(ここでは文中の文なので「節」と呼びます)に置くことができないので,節の前では antau^ ol という形にして使われます。
エスペラントの語順はかなり自由ですが,「5分前に」を表わす kvin minutojn antau^..., または kvin minutojn antau^ ol ...の語順は固定化しているので,この形でおぼえておけば「...時間前に,...日前に,...年前に」などというときに役立ちます。

訳例
Mi venis tien kvin minutojn antau^ la alveno de Karlo.
Mi venis tien kvin minutojn antau^ ol Karlo venis.