課題文n-ro661 マサオはわたしが退院する3日前に,見舞いに来てくれました。

解説
マサオは見舞いに来てくれました: Masao vizitis min というのがよいでしょう。『日本語エスペラント辞典』には viziti konsoli が載っていますが,普通はこのようにいわずに viziti を使っていいます。vizitis min の代わりに venis al mi とするのは文法上の誤りはありませんが,veni は話し手のところへやって来るという意味だけですから,ここでは「見舞う」という意味を表わす viziti を使いましょう。『エスペラント日本語辞典』では viziti の訳語の中に「見舞う」が載っていますし,『新選エス和辞典』の viziti の訳語にも「(見舞・参観などに)行く」と載っています。

わたしが退院する3日前に: tri tagojn antau^ ol mi elhospitalig^is または tri tagojn antau^ mia elhospitalig^o のようにいいます。tri tagojn は je tri tagoj の je を省略して, tagoj を tagojn としたものですから,もちろん, ここでは je tri tagoj antau^ ol mi elhospitalig^is または je tri tagoj antau^ mia elhospitalig^o のようにいうこともできます。このように前置詞を省略して対格(-n)にすることを,「前置詞省略の対格」といいますが,時刻を表わすのには je, 日付,月,年などには en を使うという慣用が確立していますし,あらゆる場合に前置詞を対格に置き換えてよいという訳ではないので,省略に慣れるまでは前置詞をつけていうのがよいでしょう。ただし,この課題文の「...前に」という表現などは, 対格の形でよく使われますので,この形で覚えておきましょう。

訳例
Masao vizitis min tri tagojn antau^ ol mi elhospitalig^is.
Masao vizitis min tri tagojn antau^ mia elhospitalig^o.


課題文n-ro662 あす,わたしは市立病院へ友だちを見舞いに行くつもりです。
解説
あす: morgau^ を使っていいます。位置は文頭,文末,文中のいずれでもよいのですが,日本語の「あす」の後についているコンマに引きずられて Morgau^, とした訳が4例もありましたが,これはよくありません。日本語の読点やコンマの使い方とエスペラントのコンマの用法は同じではないので,注意してください。

わたしは市立病院へ友だちを見舞いに行くつもりです: mi vizitos mian amikon en la urba hospitalo のようにいうのがよいでしょう。「...するつもりです」は intenci を使っていうこともできますが,未来のことについていうときは,たいてい -os を使っていうことができます。 「入院中のある人を見舞いに行く」というのは viziti を使って viziti iun en hospitalo というのが普通です。「市立病院」は la urba hospitalo というのがよいでしょう。冠詞を付けるのは,話し手の住んでいる市の市立病院を指していっているからです。municipa を使うのは誤りではありませんが,この語は「地方自治体に属する,関係する」という意味ですから,「市立の」という意味だけでなく,「町立の」という意味でも使われます。
「市立病院へ」に引かれて al la urba hospitalo のように al を使った訳が数例ありましたが,ここでは en を使って en la urba hospitalo いいます。mian amikon en la urba hospitalo は mian amikon, kiu estas en la urba hospitalo の kiu estas を省略した表現です。

訳例
Morgau^ mi vizitos mian amikon en la urba hospitalo.


課題文n-ro663 「市立病院へは誰を見舞いに行ったのですか」 「兄の連れ合いです」
解説
市立病院へは: ここでは「市立病院に入院している」という意味ですから,en la urba hospitalo といいます。話し手や聞き手が住んでいる市の「市立病院」を指しているので冠詞を付けます。

誰を見舞いに行ったのですか: Kiun vi vizitis といいます。vizitas としたのは,うっかりミスでしょう。Kiun vizitis vi という語順は普通ではないので,上に挙げた語順にしましょう。

兄の連れ合いです: この場合では La edzinon de mia frato といえばよいでしょう。この文は Mi vizitis la edzinon de mia frato の Mi vizitis を省略した表現ですが,くだけた会話ではこのような省略が行われるのが普通です。edzino には冠詞を付けます。無冠詞にすると複数の妻のうちの一人を指すことになります。世界には複数の妻を持つことが認められている文化があるので,誤解されないように冠詞を付けていいましょう。これは vidvino(未亡人)についてもいえることです。
「兄」は mia pli maljuna frato などのようにいうこともできますが,エスペラントには日本語の「兄」,「弟」を表わす語はなく,年齢が上でも下でも frato といいます。pli を付けずに mia maljuna frato, mia ag^a frato のようにいうと,「年上の男きょうだい」ではなく,「年をとった男きょうだい」という意味になるので,ここでは誤りになります。

訳例
Kiun vi vizitis en la urba hospitalo?" "La edzinon de mia frato."


課題文n-ro664 「何を買ったの」 「ノート2冊と鉛筆3本,消しゴムひとつだよ」
解説
何を買ったの: Kion vi ac^etis? といいます。Kiujn や Kiujn el ili を使うのはよくありません。kiujn は複数の物の中の「どれとどれを」という意味です。kio は複数形がないので,複数の物を指していうときにも使うことができます。

参考:
kio estas bonaj reguloj (よい規則とはどんなものであるか) Zamenhof訳 La revizoro(検察官),p.77

ノート2冊と鉛筆3本,消しゴムひとつだよ: Du kajerojn, tri krajonojn kaj unu pecon da skrapgumo のようにいうのがよいでしょう。これは Mi ac^etis を省略した表現ですから,挙げる名詞にはそれぞれ-nを付けていわなければなりません。「消しゴム」は frotgumo ともいいますし,文房具の話をしているときであれば gumo だけでもよいのですが,「消しゴムひとつ」を *unu gumo, unu skrapgumo, unu frotgumo* のように unu を付けるのはよくありません。gumo は物質名詞なので,「ひとつ,ふたつ,...」と数えることができません。「ひとつ」といいたいときは unu peco da を付けていいますが,ここでは Mi ac^etis の目的語なので対格にして unu pecon da を付けます。何も付けない gumon, frotgumon, skrapgumon は誤りではありませんが,課題文のように「ノート2冊と鉛筆3本」に続けていうときは,unu pecon da gumo. unu pecon da frotgumo, unu pecon da skrapgumo のようにいうほうがよいでしょう。

訳例
"Kion vi ac^etis?" "Du kajerojn, tri krajonojn kaj unu pecon da skrapgumo."


課題文n-ro665 「来年の大会はどこであるの」 「京都だけど,場合によっては大阪になるかも」
解説
来年の大会はどこであるの: Kie okazos la venontjara kongreso? または Kie oni okazigos la venontjaran kongreson? のようにいえばよいでしょう。venontjara kongreso には冠詞を付けましょう。聞き手に分かっている大会を指しているからです。「来年」を la sekvanta jaro というのはよくありません。la sekvanta jaro は「来年」ではなく「その翌年」という意味です。『日本語エスペラント辞典』には「来年」の訳語として*sekvanta jaro が載っていますが,これは誤りです。『日本語エスペラント辞典』で調べた訳語は,『エスペラント日本語辞典』で確認しましょう。

参考:
Masao kaj Helena geedzig^is en la jaro 2000, kaj en la sekvanta jaro al ili naskig^is filino.(マサオとHelenaは2000年に結婚し,その翌年女の子が生まれました)

kie は en kiu loko という意味ですから,*En kie というのは誤りです。「大会」が「日本エスペラント大会」を指している場合には,Japana Esperanto-Kongreso の略称 JEK を使っていうこともできますが,*la JEK ように冠詞を付けるのはよくありません。略称には冠詞を付けません。

京都だけど: G^i okazos en Kioto, sed といえば正確な表現ですが,会話では G^i okazos を省略するのが普通です。*Estos en Kioto は誤りです。sed はここでは au^ も使われます。

場合によっては大阪になるかも: eventuale en Osako のようにいえばよいでしょう。eventuale は lau^okaze としても同じです。

訳例
"Kie okazos la venontjara kongreso?" "En Kioto, au^ eventuale en Osako."


課題文n-ro666 「その男は前からあなたに近づいてきたの,それとも後ろから」 「前からだよ」
解説
その男は前からあなたに近づいてきたの,それとも後ろから: C^u la viro proksimig^is al vi de antau^e au^ de malantau^e? のようにいいます。de antau^ や de malantau^ を使うのは誤りです。antau^, malantau^ は前置詞ですから,名詞か代名詞の前に置いて使い,単独で使うことはありません。antau^e. malantau^e は副詞ですから単独でも使うことができます。Bone!(よし!)などはその一例です。「前から」「後ろから」を deantau^e, demalantau^e のように一語にするのはよくありません。ただし,dekomence(始めから)のように一語で使われる語もありますが、この語は de komence と2語に書いても誤りではないので、慣れるまではなるべく2語に書くことをお勧めします。

前からだよ: De antau^e といいます。De antau^o のようにはいいません。

訳例
"C^u la viro proksimig^is al vi de antau^e au^ de malantau^e?" "De antau^e."


課題文n-ro667 マサオは後ろへ倒れて,頭に怪我をしました。
解説
マサオは後ろへ倒れて: Masao falis malantau^en kaj のようにいうことができます。malantau^en は dorsen または sur la dorson のようにいうこともできます。「倒れる」は falig^i ではなく,fali といいます。

頭に怪我をしました: vundis al si la kapon または vundis sin je la kapo のようにいいます。vundis sian kapon のようにいうのは誤りではありませんが,エスペラントではこのような場合,まず誰に対する行為であるかを述べてから,その部分(箇所)を述べるという表現方法をとることが多いのです。例えば「彼の服を掴む」というのは,kapti lin je la vesto といい方がよく使われます。もちろん kapti lian veston も誤りではありません。kaj sia kapo vundig^is の sia は lia としなければなりません。sia は主語に付くことはできません。

訳例
Masao falis malantau^en kaj vundis al si la kapon.


課題文n-ro668 Anna は割れたガラスで右の手首に怪我をしました。
解説
Anna は右の手首に怪我をしました: Anna vundis al si la dekstran manradikon のようにいえばよいでしょう。「手首」は pojno を使っても同じです。 「右の手首に」の「に」に al を使うのは誤りです。

割れたガラスで: per rompita vitro のように per を使うのはよくありません。per は「を使って」という意味ですから、Anna vundis al si la dekstran manradikon per rompita vitro のようにいうと、「割れたガラスを使って自分の手首を傷つけた」という自傷行為(リストカット)を意味することになります。la rompita vitro のように冠詞を付けると、聞き手の知っている「割れたガラス」を指すことになるので、ここでは誤りです。pro を使っていうのは誤りとはいえませんが、この前置詞もこの場合にぴったりという訳ではないので、ザメンホフは s^i vundis al si la fingrojn je rompita glaso(彼女は割れたグラスで指を傷つけました)のように je を使っています。
この文は訳例に挙げた訳のように vitro を主語にしていうこともできます。

訳例
Anna vundis al si la dekstran manradikon je rompita vitro.
Rompita vitro vundis la dekstran pojnon de Anna.


課題文n-ro669 わたしは大勢の聴衆の前であがってしまいました。
解説
わたしはあがってしまいました: mi perdis la tranklvilecon のようにいうのがよいでしょう。trankvileco に付いている冠詞は,「いつもは持っている冷静さ」を指すための冠詞です。下記の無冠詞の参考例と比べてください。

参考:
mi povas havigi al vi trankvilecon(わたしはあなたに平穏を与えることができます。Fabeloj de Andersen 3, p.414)

この trankvileco は聞き手が持っていないものを指しているので,無冠詞になっています。
もうひとつ例を挙げましょう。この例は抽象的なものではなく,具体的な物を指しています。

比較:
Anna makulis la jupon.(アンナはスカートを汚しました)

この jupo を無冠詞にすると,アンナがはいていたスカートではなく,別のスカート(例えば手に持っていたスカート,または横に置いてあったスカート)を汚したという意味になります。 「あがる」には farig^i nerva なども使えますが,panikig^i は大げさすぎますし,nervozig^i は「いらだつ」という意味ですから,ここでは不適当です。kulisotimo(kulistimo)は「舞台や演壇に立つ前に感じる不安」 を指す語ですから,聴衆の前に立って感じる緊張を指す表現としては不適当でしょう。

大勢の聴衆の前で: antau^ la granda au^skultantaro のようにいうことができます。「大勢の聴衆」は multe da au^skultantoj, multaj au^skultantoj のようにいうこともできます。冠詞を付けるかどうかについていえば,実際の場面でこの表現が無冠詞で使われることは考えられません。この話をする前には,例えば「先日,講演を頼まれましてね」などというような会話があるはずで,聞き手には「聴衆」というのが,そのときの聴衆であることが分かっているからです。

訳例
Mi perdis la trankvilecon antau^ la granda au^skultantaro.


課題文n-ro670 そのルールをみんなに分かるように説明してください。
解説
そのルールを: 「野球のルール」,「ゲームのルール」などというときの「ルール」は reguloj と複数形で使っていいますが,そのルールの中の一つ,例えば野球でいえば「投手はセットポジションでは静止の状態を1秒以上続けなければならない」という規則を指すときは単数の regulo を使います。課題文ではどちらの場合であるか分からないので,単数形でも複数形でもよいことにしました。目的語なので -n 付けます。

みんなに分かるように: por ke c^iuj komprenu g^in(ilin) のようにいうのがよいでしょう。regulo を使ったときは g^in を使い,reguloj を使ったときは ilin を使います。g^in を使う場合には por ke c^iuj g^in komprenu のような語順になることがありますが,これはリズムの関係と komprenu を文末に置いて強調するためです。kompreni は他動詞ですから普通は目的語を伴います。C^u vi komprenas?(分かりますか)などのように,目的語を省略して使われる「絶対用法」というのもありますが,ここでは g^in(ilin) を付けていうのがよいでしょう。 「ように」に kiel を使うのは,ここでは誤りです。「...するように」というときは por ke を使っていいます。動詞が -u の形を取ることに注意してください。

説明してください: Bonvolu klarigi または Bonvolu ekspliki といえばよいでしょう。

訳例
Bonvolu klarigi la regulojn, por ke c^iuj komprenu ilin.