課題文n-ro681 ビールの空き缶は,この箱に入れてください。

解説
ビールの空き缶は: ここでは「入れる」の目的語になるので,「ビールの空き缶を」を意味する対格(-n)の形にして,malplenajn ladskatolojn de biero のようにいいます。malplenajn のところに vakajn を使うのは誤りです。vaka は「空き家,空き部屋,空席」などのように「人のいない」ことを表わす形容詞ですから,「空き缶,空き箱」などを指していうときは,malplena を使います。vaka と malplena の混同は英語を母語とするエスペランチストにも見られます。これは英語の empty がエスペラントの vaka, malplena の両方に対応しているためです。Tekstaro de Esperanto(エスペラント文を集めたネット上の資料集)で検索してみると,vaka skatolo がヒットしますが,これはアメリカのエスペランチストが書いた文で誤りです。この資料集は規範になる文章だけを集めたものではないので,玉石混交であるということは否めません。冠詞を付けるかどうかは状況によります。みんなで缶ビールを飲んだ後で,世話人がいう言葉であれば冠詞を付けますし,その場合は lad-を省略して la skatolojn de biero というでしょう。公園などの表示であれば,無冠詞で書きます。いずれの場合も複数形にします。空き缶ひとつを手に持って,置き場所を探している人に向かっていうときなら,la skatolon といいます。

この箱に入れてください: Bonvolu enmeti en c^i tiun keston などのようにいえばよいでしょう。「〜を...の中へ入れる」というのは,enmeti 〜 en ...n といいます。enmeti(meti) ion ien(en ion)と覚えておきましょう。薬の袋に書く「飲み方の指示」などは,Bonvolu を付けずにいうのが普通ですが,この課題文では公園などの表示であっても, Bonvolu enmeti のようにいうのがよいでしょう。読む人の善意に頼る呼びかけであるからです。

訳例
Bonvolu enmeti la malplenajn skatolojn de biero en c^i tiun keston.


課題文n-ro682 その空き部屋には,ビールの空き瓶が数本転がっていました。

解説
その空き部屋には: en la vaka c^ambro といいます。la は tiu としても,ここでは同じです。『エスペラント日本語辞典』には malplena の見出し語のところに「malplena c^ambro 空き部屋」が載っていますが,これは誤りです。マンションなどで「家具つきの部屋」が売り出されていますが,こういう部屋は vaka c^ambro(空き部屋)であって,malplena c^ambro(家具など何もない部屋)ではありません。

ビールの空き瓶が数本転がっていました: kelkaj malplenaj boteloj de biero kus^is のようにいえますが,En la vaka c^ambro で書き始める文では,kus^is kelkaj malplenaj boteloj de biero という語順になるのが普通です。場所を示す語句が文頭に置かれると,主部(ここでは kelkaj malplenaj boteloj de biero)と述部(ここでは kus^is)の位置の逆になることがよく起こります。

参考:
La akcidento okazis c^i tie.(事故はここで起きました)
C^i tie okazis akcidento.(ここで事故が起きました)

「転がっていました」を rulig^is というのは誤りです。rulig^i は「回転しながら移動する」という意味です。
kus^as, ladskatolo, boteroj は,うっかりミスでしょう。

訳例
En la vaka c^ambro kus^is kelkaj malplenaj boteloj de biero.


課題文n-ro683 このあたりに空き家はありませんか。
解説
このあたりに: en la c^irkau^aj^o, en la proksimeco, en la najbaraj^o,c^irkau^ c^i tieなどのようにいうことができます。proksime de c^i tiuのtiuはtieとしましょう。

空き家はありませんか: C^u ne trovig^as vaka domo ...?, C^u ne estas vaka domo...? といえますが,ne を付けずに C^u trovig^as ...? または C^u estas vaka domo...? といってもよいでしょう。一般的には否定形の疑問文のほうが,Jes という肯定の返事を期待しているニュアンスを伴います。
「空き家」は vaka domo といいます。malplena domo は「家具などが何も無い家」という意味で,「空き家(誰も住んでいない家)」という意味ではありません。

訳例
C^u trovig^as vaka domo en la proksimeco?


課題文n-ro684 「Carolineって誰ですか」「アメリカの女性大使ですよ」
解説
Carolineって誰ですか: Kio estas Caroline? または Kiu estas Caroline? といいます。「誰」という問いかけは,名前や素性を尋ねるときに使われる語ですが,ここでは名前は分かっているのですから,「どういう人ですか,何をしている人ですか」という意味の質問と取れば,Kio を使います。係累についての質問であれば,Kiu を使っていいます。

参考:
Kiu estas Marta?(Martaって誰ですか)
S^i estas fratino de Andreo.(Andreoの妹ですよ)
(S^i estas la fratino de Andreo? のように,fratino に冠詞を付けると,Andreo には fratino が一人しかいないことを暗示します。)

この課題文の質問と答えをエスペラント文だけ読めば,Kio estas Caroline? のほうが自然な文になります。つまり,日本語の「誰ですか」という質問には「アメリカの女性大使ですよ」という返事も可能ですが,エスペラントでは「何をしている人ですか」と尋ねるときは Kio を使わないと不自然な質問になります。

アメリカの女性大使ですよ: S^i estas usona ambasadorino といいます。S^i estas を省略して,Usona ambasadorino ということもできますが,ぶっきらぼうな感じを与えるので,日本語で言えば,「アメリカの女性大使だよ」という言い方に相当します。。S^i だけを省略して *Estas usona ambasadorino のようにはいわないのが普通です。S^i の代わりに Tiu を使うのはよくありません。S^i は Caroline を指す人称代名詞ですが,Tiu はある人を指す指示代名詞です。

訳例
"Kio estas Caroline?" "S^i estas usona ambasadorino."


課題文n-ro685 誰がこの絵を描いたか知っていますか。
解説
誰がこの絵を描いたか: kiu pentris c^i tiun bildon などのようにいえばよいでしょう。「絵」を表わす語には,pentraj^o, desegnaj^o などがありますが,pentraj^o は「絵の具や筆で描いた絵」を指し,desegnaj^o は「鉛筆やクレヨンで描いた絵」を指します。従って,*desegni pentraj^on とか *pentri desegnaj^on のようにはいいません。bildo には pentraj^o, desegnaj^o が含まれるので,desegni bildon, pentri bildon のようにいうことができます。

知っていますか: c^u vi scias といいます。「...ということを知っていますか」というときは,C^u vi scias, ke ... のように ke を入れますが,上の文のような疑問文を付けるときは ke を入れないでつなぎます。

訳例
C^u vi scias, kiu pentris c^i tiun bildon?(油絵や水彩画などを指していうとき)
C^u vi scias, kiu desegnis c^i tiun bildon?(クレヨンや鉛筆,ペンで描かれた絵を指していうとき)


課題文n-ro686 あなたはこれが本物の真珠かどうか分かりますか。
解説
あなたは分かりますか: C^u vi scias を使っていうことができますが,ここでは訳例にあるように C^u vi povas diri を使っていうこともできます。kompreni は「意味や内容などを理解する」という意味ですから,ここでは使えません。rekoni c^u ..., distingi c^u ..., ekkoni c^u ... のような形で使うことはできません。diveni は「言い当てる」というような意味ですから,ここでは不適当です。

これが本物の真珠かどうか: c^u c^i tio estas vera perlo au^ ne などのようにいうことができますが,au^ ne は削除しても意味が変わりません。vera は reala とすることもできます。la natura perlo のように冠詞を付けるのは,ここでは誤りです。

参考:
C^u c^i tio estas la natura perlo?(これがあなたの言っていた天然真珠ですか)

訳例
C^u vi povas diri, ke c^i tio estas vera perlo?
C^u vi scias, c^u c^i tio estas vera perlo?


課題文n-ro687 この国では英語はほとんど通じないことをご存知ですか。
解説
この国では: en c^i tiu lando というのがよいでしょう。nacio や regno はここでは不適当です。

参考:
lando: 地理的にまとまった領域としての国
nacio: 一定の地域に定住して,ひとつの政府のもとに生活し,歴史的運命を共にする集団成員全体
regno: 国際関係において主権を行使する主体としての国家

英語はほとんど通じない: la angla lingvo preskau^ ne estas komprenata または oni preskau^ ne komprenas la anglan lingvon などのようにいえばよいでしょう。preskau^ ne komprenas は apenau^ komprenas としても,ほとんど同じ意味です。komprenita とするのは誤りですから,komprenata を使います。angla lingvo には冠詞を付けることをお勧めします。lingvo を省略した la angla もよく使われます。
komuniki は他動詞ですから,la angla preskau^ ne komunikas のように使うことはできません。

ことをご存知ですか: c^u vi scias, ke ...といいます。

訳例
C^u vi scias, ke en c^i tiu lando la angla lingvo preskau^ ne estas komprenata?


課題文n-ro688 クリスマスは日本では祝日ではありません。
解説
クリスマス: Kristnasko といいます。la naskig^tago de Jesuo は Kristnasko の説明として使うことはできますが,ここでは Kristnasko を使いましょう。

日本では祝日ではありません: ne estas nacia festotago en Japanio といいます。nacia が付いていない festotago を使った訳が応募訳の大部分を占めましたが,ここでは nacia festotago としなければなりません。日本語の「祝日」には,「祝いをする日」という意味と「国民の祝日」という意味とがありますが,ここでは「国民の祝日」という意味で使われているからです。festotago に冠詞を付けるのは誤りです。 estas ne nacia festotago の estas ne は ne estas というのが普通の語順です。estas ne は estas ne ..., sed ...のような形で使われる場合が多い。

参考:
Kulpa estas ne vi, sed mi.(悪いのはあなたではなく,わたしです。)

訳例
Kristnasko ne estas nacia festotago en Japanio.


課題文n-ro689 日本では祝日が年間15日あります。
解説
日本では: en Japanio といいます。ここでは Japanio havas という形で表わすこともできます。

祝日が年間15日あります: oni havas dek kvin naciajn festotagojn jare または Japanio havas dek kvin naciajn festotagojn jare や trovig^as dek kvin naciaj festotagoj jare あるいは estas dek kvin naciaj festotagoj jare などのようにいうことができます。「年間」は en jaro ということもできます。 「15」は *dekkvin のように1語で書かずに,dek kvin のように2語に書きます。「50」は kvindek と書きますが,「999(nau^cent nau^dek nau^)」までの書き方は次のように覚えておくとよいでしょう。
「15=10+5」のように足し算で表わせる数字は2語に書き,「50=5×10」のように掛け算で表わせる数字は1語に書く。ただし,「1000」以上の表記には,このルールは当てはまりません。例えば,「5000」は「5×1000」ですが *kvinmil と1語に書かずに kvin mil と2語に書くことに注意してください。

「祝日」に ferio を使うのはよくありません。ferio は「休日(業務・授業などを休む日)」という意味の語です。例えば,日本では1月1日から3日まで仕事を休む会社などが多いですが,1月1日は nacia festotago(国民の祝日)で,2日と3日は ferioj です。

訳例
En Japanio estas dek kvin naciaj festotagoj jare.


課題文n-ro690 1万円あれば旅費は足りますね。
解説
1万円あれば足りますね: dek mil enoj sufic^os por ...のようにいえばよいでしょう。sufic^os を sufic^as とするのはよくありません。未来の事柄について述べているのだからです。「1万」を unu dek mil というのは誤りです。「2万」は dudek mil といいますが,「1万」は unu を付けずに dek mil といいます。dekmil-enoj のようにハイフンを入れるのも誤りです。10,000のようにコンマで区切るのは避けましょう。コンマを小数点として使うのがヨーロッパでは普通です。日本語でも「コンマ以下(普通以下)」という表現の「コンマ」は小数点のことです。大きい数字の区切りはコンマを使わずに 10 000 のように空白にするのがよいでしょう。この場合は 0,5(1/2)のように,小数点にはコンマを使います。
se vi havas を使った訳が数例ありましたが,課題文のような場合に se を使っていうのはよくありません。se vi havas は日本語の「もしあなたが持っているなら」という表現に近いのですが,日本語でもこのような場合に「もしあなたが持っているなら」とはいいませんね。「円」には jeno も使われています。 C^u ...?は「...ですか」と尋ねる文ですから,「...ですね」と確認を求める文の訳としては不適当です。文末に c^u ne? 付けていいましょう。会話などで文末に c^u? を付けることもありますが,文末の c^u は 文頭の c^u と同じですから,ここでは不適当です。

比較:
Vi estas Usonano, c^u? = C^u vi estas Usonano?(あなたはアメリカ人ですか)
Vi estas Usonano, c^u ne?(あなたはアメリカ人ですね)

旅費: la vojag^kosto というのがよいでしょう。話し手がこれから旅行するという状況の話であれば,mia vojag^kosto ということもできますし,聞き手のほうが旅行する話であれば via vojag^kosto といえますが,どちらの場合でも la vojag^kosto が使えます。無冠詞の vojag^kosto はよくありません。課題文の「旅費」が指している旅行についての情報は,聞き手には分かっているはずです。どこへ行く旅行であるかが分かっていなければ,課題文のような会話はありえませんね。
por la vojag^kosto というのは正確な表現ですが,por pagi la vojag^on という表現もよく使われます。

訳例
Dek mil enoj sufic^os por la vojag^kosto, c^u ne?