課題文 n-ro51 どの目盛りまで水を入れましょうか。

解説
「どの目盛りまで」は g^is kiu streketo といいますが, 寄せられた訳文は g^is kiu skalo と g^is kiu grado が大部分を占め, 正しい訳はありませんでした。物差しや温度計などについている「目盛り」を skalo といいますが, そこに刻まれている短い線のひとつひとつは streketo といいます。
grado は「度合い, 程度」で g^is kia grado(どの程度まで)のように使われます。
参考:
G^is kia grado mi envers^u akvon?(どのくらいまで水を入れますか)

「どの目盛りまで」でなく「どこまで」という意味の g^is kie という表現も使えるでしょう。
「水を入れましょうか」は mi envers^u akvon とするのがよいでしょう。「(わたしが)〜しましょうか」は c^u mi 〜u ですが, ここでは g^is kiu streketo という疑問詞を含む句で始まる文なので c^u を付けずに g^is kiu streketo mi envers^u の形を取ります。mi 〜u を mi 〜us, mi 〜os とするのはよくありません。「入れる」に eniri を使うことはできません。eniri は「入る」という意味です。

訳例
G^is kiu streketo mi envers^u akvon?


課題文 n-ro52 この計量カップのいちばん下の目盛りまで水を入れてください。

解説
「この計量カップのいちばん下の目盛りまで」を直訳した g^is la plej malsupra streketo de c^i tiu mezurglaso がいちばん多く寄せられました。もちろん, これで十分通じますし, 文法的にも誤りはありませんが, エスペラントでは水を何に入れるのかを明示して「水をこの計量カップに入れてください, いちばん下の目盛りまで」という構文にするほうが外国人には分かりやすいでしょう。朝霧訳とPigu訳がこれに近い形でしたが, どちらも en c^i tiun mezurglason が文末に置かれていましたので, これを envers^i のすぐあとに置くほうがよいでしょう。

「いちばん下の」は la plej malalta ではなく, la plej malsupra を使っていいます。この plej を付けないと「いちばん」という意味が抜けてしまいます。

「水を入れてください」は envers^u akvon ですが, ここでは上に述べたように「この計量カップに」をすぐあとに続けるので, envers^u akvon en c^i tiun mezurglason としましょう。la akvon とするのはよくありません。akvo は la akvo en la puto(この井戸の水)のように限定されている場合をのぞいては冠詞を付けません。

mezurglaso には -n を付けることが必要です。「水を〜(の中)に注ぎ入れる」は envers^i akvon en 〜n の形で表します。
bonvolu envers^i のようにいうのは, 非常に丁寧な表現です。

訳例
Envers^u akvon en c^i tiun mezurglason g^is la plej malsupra streketo.


課題文 n-ro53 このコップの縁まで水か湯を入れてください。

解説
「このコップの縁まで」は直訳すると, g^is la rando de c^i tiu glaso ですが, 前回の解説で述べたように「このコップに(〜を入れてください), 縁まで」という構文のほうが自然なので, g^is la rando を文末に置きましょう。la rando の la は必要です。コップのことを言っているときに, そのコップの縁を指すときは la rando と言います。tiu rando は誤りです。g^isrande は g^is la rando と同じ意味ですが, g^isplene は「縁までいっぱい」という意味ではありません。plena, plenigi の用例を見てみましょう。

参考:
esti plena g^is la mezurstreko(目盛りの線まで入っている)
esti plena g^is la rando(縁まで入っている)
plenigi mezurglason g^is la mezurstreko(計量カップの目盛りの線まで入れる)
plenigi mezurglason g^is la rando(計量カップの縁まで入れる)

「水か湯を」の「水」を辞書で引くと akvo が出ていますし, 「湯」を引くと varma akvo が出ていますが, これをそのまま並べて akvon au~ varman akvon とするのはよくありません。日本語では「液状の水素と酸素の化合物」を温度によって「水」と言ったり, 「湯」と言ったりしますが, エスペラントでは「液状の水素と酸素の化合物」を温度に関係なく akvo と言います。PLENA ILUSTRITA VORTARO DE ESPERANTO では bani という語を Restadi en akvo au~ alia likvaj^o, por lavi, ripozi au~ kuraci と説明していますが, この説明を日本語に訳すとき akvo を「水」と訳して「水やその他の液体の中に...」とするとおかしいですね。この akvo は「水または湯」と訳さなければなりません。

akvon varman au~ malvarman という表現は akvon au~ varman akvon よりはよいといえるかもしれませんが, やはり不自然な表現です。「水か湯」というのはエスペラントでは akvo と言えばよいのです。

訳例
Envers^u akvon en c^i tiun glason g^is la rando.


課題文 n-ro54 この薬は必ず水か白湯(さゆ)で飲んでください。

解説
「薬を飲む」というのは preni medikamenton というのが一般的です。「水薬」を飲むときは trinki を使えますが, ここでは「水か白湯で飲んでください」というのですから, 水薬ではないでしょう。preni は粉薬, 錠剤, 水薬などどんな薬に対しても使える表現です。uzi や havi を使っていうのはよくありません。生薬を指すときは drogo を使っていいます。(「薬草」は drogherbo といい, medikamentherbo とはいいません。)

「必ず」は nepre を使っていえばよいでしょう。prenu の前に置いた訳文が多かったのですが, 「必ず水か白湯で」を強調するには kun akvo の直前に置いたほうがよいでしょう。c^iam を使っても近い意味を表せます。
「水か白湯で」は kun akvo としましょう。akvo だけで「水, 白湯」を表します。pura akvo の pura は付けなくてもかまいません。certe kun pura varma akvo とすると水はだめで白湯に限るという意味になります。per akvo はよくありません。akve も無理でしょう。

訳例
Prenu c^i tiun medikamenton nepre kun akvo.


課題文 n-ro55 この粉末は水では溶けないので, 湯で溶いてください。

解説
「水では溶けない」は ne solvig^as en malvarma akvo, ne solveblas en malvarma akvo のように言えばよいでしょう。「水」はここでは akvo ではなく malvarma akvo と言わなければなりません。fandi は「熱を加えて溶かす」という意味で, fandi neg^on,buteron, vakson, metalon のように使われますから, ne fandas en akvo のように言うのは誤りです。

「水で」の「で」は en がよいでしょう。en malvarman akvon とするのは誤りです。en 〜n は「〜中へ」という意味か, あるいは「〜の状態に変える」という意味を表します。

参考:
vers^i vinon en glason(ワインをグラスにつぐ)
rompi glason en pecetojn(グラスを粉々に割る)
traduki novelon el la japana en Esperanton(小説を日本語からエスペラントへ翻訳する)

kun を使うのはよくありません。
参考:
Solvu en varma akvo c^i tiun blankan pulvoron kun tiu flava.
(この白い粉をその黄色い粉といっしょに湯で溶いてください。)

「湯で溶いてください」は solvu g^in en varma akvo と言いますが, この g^in は la pulvoron の代わりに使われている語なので省略しないで入れて置きましょう。varmita akvo とは言いません。 varmigita akvo とは言うことはできますが, 「湯」を指すときは varma akvo と言うのが普通です。

C^i tiu pulvoro estas nesolvebla en akvo malvarma, sed en varma は分かりにくく不正確な表現です。この構文で言う場合は, c^i tiu pulvoro estas solvebla en varma akvo, sed ne en malvarma akvo と言うのがよいでしょう。

「粉末」は薬とは限りませんから, medikamento を使うのはここではよくありません。

訳例
C^ar c^i tiu pulvoro ne solvig^as en malvarma akvo, solvu g^in en varma akvo.


課題文 n-ro56 風呂の湯が熱すぎたので, 水の栓を開けました。

解説
「風呂の湯」は la bano という1語で表せます。la akvo en la bankuvo(banujo) を使って言うこともできますが, この akvo は en la bankuvo(banujo)で限定されているので la を付けましょう。bankuvo(banujo) も冠詞を付けるのが普通で, 付けない場合を想定するほうが難しいでしょう。 初めて話題にするときでも, 状況によって限定されるからです。例えば, 家族の中とか宿泊先での会話とすれば, 聞き手にはいま話し手が出てきた風呂場の浴槽であることは自明のことだからです。あるいは少し前のことについて別の場所で話したとしても, いきなり課題文のような発言をすることはないでしょう。例えば,「わたしがいちばん初めに風呂に入ったんですがね...」などのように導入部があるはずですね。banejo は「浴室」のことですから, ここでは浴槽を指す bankuvo または banujo を使いましょう。

「熱すぎた」は tro varma というのが普通です。「〜すぎる」は tre ではなく tro を使って言いましょう。varmega を使うと, かなり高温の湯を思い浮かべるでしょう。varma akvo estis tre varmega と言うのは不自然な表現です。バックナンバーの課題文n-ro53の解説をお読みください。

「水の栓を開けました」は elkranis malvarman akvon または malfermis la kranon de malvarma akvo などのように言えばよいでしょう。「水」はここでは akvo ではなく, malvarma akvo と言わねばなりません。malfermis la krano de malvarma akvo の krano は malfermis の目的語ですから, kranon としなければなりません。 malfermis kranon だけでは不十分なので, malfermis la kranon de malvarma akvo としましょう。

訳例
C^ar la bano estis tro varma, mi elkranis malvarman akvon.


課題文 n-ro57 ヤカンの湯が沸騰していますよ。

解説
「ヤカンの湯」は la akvo en la bolpoto といいます。「ヤカン」は poto, bolilo でもよいでしょう。akvo は en la bolpoto で限定されているので, 冠詞をつけます。ただし, bolas akvo en la poto という文は akvo が無冠詞ですが, 誤りではありません。これは akvo bolas en la poto と書き直してみると分かりますが, en la poto は akvo を限定している形容詞句ではなく, bolas を修飾している副詞句なのです。la akvo bolas en la bolilo が不自然に聞こえるのは, この形では en la bolilo が akvo を修飾していないと感じられるからです。

bolas la akvo en la poto と bolas akvo en la poto とは, もちろん同じ意味ではありません。前者は「ヤカンの(中の)湯が沸騰している」, 後者は「湯がヤカンの中で沸騰している」という意味です。akvo en bolpoto estas bolanta という形では en bolpoto は akvo を限定していると取るのが普通ですから la akvo としないと不自然です。bolpoto にも la を付けましょう。聞き手に分かっている bolpoto を指して言っているからです。

la akvo de la bolpoto の de は en にしましょう。bolis は「沸騰していた(が, もう沸騰していない)」(estis bolanta) の意味に取られるでしょう。bolig^is は ekbolis と同じで, この語の場合は -is でよいのですが, j^us などをつけて言うほうが自然でしょう。

訳例
Bolas la akvo en la poto.


n-ro58 ナベの湯が沸騰したらガスを止めてください。

解説
「ナベの湯が」は la akvo en la marmito(kuirpoto, kaserolo)でよいのですが, la akvo を使わずに la marmito, kuirpoto, kaserolo だけで表すこともできます。日本語でも「ヤカンが沸騰している」というような言い方をすることができますね。

参考:
El g^iaj nazotruoj eliras fumo, kiel el bolanta poto au~ kaldrono.
その鼻の穴からは沸騰しているナベから(出る湯気)のように煙が出てくる。(ヨブ記, 41-20)

marmito(kuirpoto) は, 蓋付きで左右に anso(持つところ)が付いているナベを指して使われます。kaserolo は, 長い柄の付いた, 底の平らな深いナベを指します。akvo を使っていうときは akvo の前に la を付けましょう。聞き手にはどの湯のことか分かっているからです。

「沸騰したら」は bolos を使っていいましょう。「沸騰したら」の「した」という日本語の表現にひかれて, bolis とするのは誤りです。
なお, boli は文脈によって「沸騰する(沸点に達する)」と訳されたり「沸騰している」と訳されたりしますが, 前者の意味であることを明示したいときは ekboli を使っていいます。

「〜したら」は, ここでは se でなく, kiam を使いましょう。未来のできごとについて述べるとき, se が不確実なことについていうのに対して, kiam は確実なことについていうときに使います。ここでは話し手は湯がまだ沸騰していないことと, やがて沸騰することを知っているのですから, kiam bolos la akvo ... のように言います。

比較:
Transdonu c^i tiun libron al Haruo, kiam li venos.
ハルオが来たら, この本を渡してください。(ハルオが来ることは確実という意味を含んでいる。)
Transdonu c^i tiun libron al Haruo, se li venos.
ハルオが来たら, この本を渡してください。(ハルオが来るかどうか分からない, という意味を含んでいる。)

「ガスを止めてください」は fermu la gason というのが普通ですが, ここでは estingu la fajron(火を消してください)と言ってもよいでしょう。

訳例
Kiam (la akvo en) la kuirpoto bolos, fermu la gason.


n-ro59 雨が降ったら明日の集会は月末まで延期されます。

解説
「雨が降ったら」は se pluvos ですが, ここでは「明日雨が降ったら」というふうにも言えるので, そのときは se pluvos morgau~ となります。なお, ここでは kiam でなく se を使いましょう。kiam は, あることが起こることは疑いないが, それがいつ起こるか分からないときに使います。

「明日の集会」は la morgau~a kunveno でよいでしょう。政治的な公開の集会なら mitingo を使っていうことができます。明日の集会はひとつとは限りませんが, ここでは聞き手(読み手)にはどの集会のことをいっているのか分かっているはずですから, la をつけていいます。se pluvos morgau~ で始めてあれば morgau~a は不必要で la kunveno または la mitingo といいます。kunsido を「集会」の意味で使うのはよくありません。kunsido は「あることについて討議するための正式の会合, 会議」の意味で使い, 会則や規約などによらない会合, 集会などには kunveno を使うのがよいでしょう。hodiau~a を使ったのはうっかりミスですね。

「月末まで」は g^is la fino de la kuranta monato, g^is c^i tiu monatfino などを使っていえばよいでしょう。無冠詞の monatfino は「ある月末」の意味になりますから, ここでは c^i tiu(tiu c^i)か la を付けましょう。

「延期されます」は prokratig^os, estos prokrastita または oni prokrastos というのが普通です。prokrasti は「〜を延期する」という他動詞ですから, la kunveno prokrastos というのは誤りです。estos prokrastota もよくありません。esti -ota は「〜されようとしている」という意味ですから, estos -ota は「未来のある時点で〜されようとしている」という意味を表します。estas prokrastota は「今まさに延期されようとしている」という意味になります。

訳例
Se pluvos morgau~, la kunveno prokrastig^os g^is la fino de la kuranta monato.
Se pluvos morgau~, oni prokrastos la kunvenon g^is la monatfino.


n-ro60 図形に五つの辺と五つの角があれば, その図形は五角形です。

解説
「図形」は figuro といいます。grafiko, bildo, desegno は, ここでは不適当です。

「五つの辺と五つの角があれば」は figuro を主語にすれば, se figuro havas kvin laterojn kaj kvin angulojn となります。この se は kiam にしても同じです。この課題文のような「一般的真理」について述べるときは, kiam, se のどちらを使ってもよいのです。なお, 「辺」に linio, 「角」に pinto を使っていうのはよくありません。se la figuro と figuro に冠詞を付けるのもよくありません。havos は havas としましょう。一般的真理は常に -as の形を使っていいます。

「五つの辺と五つの角を持つ図形は五角形です」と書き換えて figuro, kiu havas kvin laterojn kaj kvin angulojn, estas kvinangulo と書くこともできますが, この figuro は 冠詞を付けて la figuro としても同じです。figuro kun kvin lateroj kaj kvin anguloj estas kvinangulo というようにも書けますが, この場合は無冠詞の figuro にしましょう。la figuro とすると特定の図形を指して言っていることになります。「五角形」は pentagono ということもできます。

Se figuro で始めた文で, もう一度その図形を指していうとき, tiu figuro, la figuro のようにいうのは誤りではありませんが, g^i を使っていうほうがスマートです。

訳例
Se figuro havas kvin laterojn kaj kvin angulojn, g^i estas kvinangulo.
La figuro kiu havas kvin laterojn kaj kvin angulojn estas pentagono.