課題文n-ro701 A市の教育委員会の委員全員が辞任しました。
解説
A市の教育委員会の委員全員: c^iuj membroj de la eduka komisiono de la urbo A といいます。membroj は anoj としても同じですが,membraro と anaro とは同じではないことに注意してください。membraro は "tuto de la membroj de organizaj^o"(組織の構成員全員)を指す語ですが,anaro は "neorganizita grupo"(組織されていない集団,群れ)を指す語ですから,ここでは使えません。
「教育委員会」は eduka komisiono といいます。eduk-komisiono ということもできますが,komitato を使うのはよくありません。komitato は選挙で選ばれた委員で構成されますが,komisiono は上部組織から委嘱された委員で構成されるのが普通です。「教育委員会」の委員は選挙で選ばれるのではないので,komisiono を使っていうのがよいでしょう。ここでは de la urbo A によって限定されているので冠詞を付けます。komisiono は英語の commission(委任,委託,委員会)と同じ語源の語です。

辞任しました: eksig^is というのがよいでしょう。demisiis de や rezignis を使っていうこともできますが,ここでは eksig^is を使っていうほうが簡潔な表現になります。訳例では文頭に置きましたが,文末に置くこともできます。文頭に置く方が「辞任した」ことの強調になります。

訳例
Eksig^is c^iuj membroj de la eduka komisiono de la urbo A.


課題文n-ro702 札幌(サッポロ)市の教育委員会は6人で構成されています。
解説
札幌(サッポロ)市の教育委員会: la eduka komisiono de la urbo Sapporo といいます。urbo の前には冠詞を付けましょう。

6人で構成されています: konsistas el ses personoj といいます。personoj は membroj としてもよいでしょう。英語では consist of といいますが,エスペラントでは *konsisti de ではなく konsisti el といいます。

訳例
La eduka komisiono de la urbo Sapporo konsistas el ses personoj.


課題文n-ro703 今度の土曜日に委員会を開くことを提案します。
解説
今度の土曜日に: en la venonta sabato といいます。英語では「今度の土曜日」 は next Saturday のように無冠詞で使い,the next Saturday のよう冠詞を付けると,過去,または未来のある時点を起点とした「その次の土曜日」を指すことになりますが,エスペラントでは現在の時点を起点にして「次の土曜日」を指すときは la venonta sabato といい,英語の the next Saturday に当たる表現は la sekvanta(または sekva) sabato といいます。つまり,英語では next と the next のように冠詞の有無で区別するところを,エスペラントでは la venonta と la sekvanta(sekva) のように別の語を使って区別するのです。従って,ここで la sekvanta sabato を使うのは誤りです。

参考:
En la lastsabata kunsido ni decidis okazigi laborkunsidon en la sekvanta sabato.(この前の土曜日の委員会では,その次の土曜日に作業部会を開くことが決まりました)

委員会を開くことを提案します: mi proponas, ke ni okazigu kunsidon de la komitato または mi proponas okazigi kunsidon de la komitato などのようにいえばよいでしょう。 komitato は場合によっては komisiono を使っていいます。komitato と komisiono の違いについては n-ro701の解説をお読みください。
proponas ke を使う場合には ke節(keで導かれる節,ここでは ke ni okazigu kunsidon de la komitato)の述語動詞が -u になっていることに注意してください。これを okazigos のように -os としたり,-us を使ったりするのは誤りです。

「開く」に malfermi を使うのはここでは誤りです。「開く」には「開始する」という意味と,「開催する」という意味とがありますが,ここでは後者の意味ですから okazigi を使います。

参考:
La kongreso malfermig^os je la oka en la mateno. 大会は午前10時に開かれます。(開会に続いていろいろな行事が行われ,大会は開会当日だけではなく,複数日にわたることを暗示します)
La laborkunsido okazos en la venonta sabato. 作業部会は次の土曜日に開かれます。(当日だけで終わる会合と考えるのが普通です)

「委員会を開く」というときの「委員会」は「委員が出席して行う会議」を指す語ですから,komitato, komisiono(委員で構成される組織)でなく kunsido de la komitato, kunsido de la komisiono などのようにいわなければなりません。

la komitata kunsido のように冠詞を付けるのは,ここではよくありません。この表現は kunsido de la komitato の意味ではなく,la kunsido de la komitato に取るのが普通ですから,「いま話に出た委員会は」という, 聞き手には既知の会合の意味になります。

訳例
Mi proponas, ke ni okazigu kunsidon de la komitato en la venonta sabato.
Mi proponas okazigi kunsidon de la komitato en la venonta sabato.


課題文n-ro704 「あなたは何人きょうだいですか」 「三人きょうだいです」
解説
あなたは何人きょうだいですか: Kiom da gefratoj vi havas? というのがよいでしょう。fratoj を使うのはよくありません。「きょうだい」は「同じ親(または片親)から生まれた者」(広辞苑)を指す語ですが,fratoはvira ido de la sama patro au^ patrino(Kabe: Vortaro de Esperanto)という意味ですから,この課題文で fratoj を使うと,「男のきょうだいは何人いますか」という質問になります。教師や生徒などのような職業や身分を表わす語では,男女が混じっていても geinstruistoj とか gelernantoj のようにいわずに instruistoj, lernantoj のようにいうことが多いのですが,血縁関係を表わす語 patro, patrino, frato, fratino, kuzo, kuzino,onklo, onklinoなどについていうときは,ge-や-inoを省略することができません。

三人きょうだいです: 「わたしたちは三人きょうだいです」を直訳すると Ni estas tri gefratoj となりますが,このような表現はヨーロッパでもよく聞かれるそうです。ただし,上に挙げたような質問(Kiom da gefratoj vi havas?)に対する答えとしては Mi havas du gefratojn としないと,質問との整合性に欠けるという論理上の問題が生じます。
Mi havas tri gefratojn とするのは誤りで,ここでは du gefratojn としなければなりません。「三人のきょうだいがいる」というのは「四人きょうだいです」ということになるからです。

訳例
"Kiom da gefratoj vi havas?" "Mi havas du gefratojn".


課題文n-ro705 Mac^jo と Hanjo は,まるできょうだいのようです。
解説
Mac^jo と Hanjo は: Mac^jo kaj Hanjo といいます。

まるできょうだいのようです: estus kvazau^ gefratoj, aspektas kiel gefratoj, s^ajnas kiel gefratoj, s^ajnas kvazau^ gefratoj などのようにいうことができます。estas kvazau^ を使った訳が多く寄せられましたが,これは誤りです。kvazau^ は「まるで...であるかのように」という意味ですから,実際はそうでないことをいうときは -us を使っていわなければなりません。s^ajnas kvazau^ gefratoj のようにいうときに *s^ajnus でなく s^ajnas を使うのは,実際に「きょうだいのように見える」からですが,estus kvazau^ gefratoj のように -us を使うのは,実際は「きょうだいではない(ne estas gefratoj)」からです。

訳例
Mac^jo kaj Hanjo estus kvazau^ gefratoj.


課題文n-ro706 最前列に空席はありますか?
解説
最前列に: en la plej antau^a vico または la unua vico といいます。seg^o en la unuaj vicoj というと,「最前列の席」ではなく「前の方の席」を指すことになります。「列」に linio を使うのはよくありません。

空席はありますか: c^u trovig^as vakaj seg^oj, c^u estas liberaj seg^oj などのよういえばよいでしょう。「空席」は neokupitaj seg^oj, liberaj seg^oj などのようにいうこともできます。エスペラントを広めるために単語を覚える負担を少しでも軽くしようという運動がありますが,vaka の代わりに malplena を使おうというのもそのひとつです。malokupita を使うのはよくありません。malokupita の意味は「明け渡された」という意味です。 「空席がひとつありますか」と尋ねる場合を除いて,seg^o は複数形を使って尋ねるのが普通です。

訳例
C^u trovig^as vakaj seg^oj en la plej antau^a vico?


課題文n-ro707 あのふたりの少年のうちの背の高いほうがアキオです。
解説
あのふたりの少年のうちの: el tiuj du knaboj というのがよいでしょう。tiuj の代わりに la を使ってよい状況もありますが,少年たちを指し示していう場合には指示形容詞 tiuj を使っていうほうがよいでしょう。「のうちの」には en ではなく el を使います。

背の高いほうがアキオです: la pli alta estas Akio といえばよいでしょう。la pli alta knabo estas Akio は誤りではありませんが,重複を避けるために knabo を省略するのが普通です。ここでは pli の前に冠詞を付けることが必要です。la plej alta(いちばん高い)という表現のように plej の前に冠詞を付けることは初心者にもよく知られていますが,比較する対象が二つ(二人)のときは,pli の前に冠詞を付けます。二つ(二人)のうちの一つ(一人)のほうが「より高い」ということは,その二つ(二人)の中ではそれが「いちばん高い」ということで「特定される」からです。ただ単に「アキオがハルオより背が高い」というときは, Akio estas pli alta ol Haruo といいますが,比較の対象が el tiuj du(あのふたりのうち)というように du が明示されている場合には la pli alta といいます。

訳例
El tiuj du knaboj la pli alta estas Akio.


課題文n-ro708 あなたたち二人のうち,どちらが年下ですか。
解説
あなたたち二人のうち: el vi du といいます。el vi la du のように冠詞をつけたり,el vi, du のようにコンマで区切るのはよくありません。el vi ambau^ のように du の代わりに ambau^ を使っていうこともできます。

どちらが年下ですか: estas la pli juna というのがよいでしょう。pli juna の代わりに malpli ag^a を使っていうこともできますが,どちらの場合でも冠詞を付けましょう。比べる対象が二つであるときは,比較級の形容詞に冠詞を付けることは前回の解説の中で述べましたが,逆にいえば冠詞付きの pli が使われていることは,比較の対象が二つであることを示しています。例えば, Kiu estas la pli forta el la manoj?(利き腕はどちらですか)のように比較するものが二つであることを明示されていなくても,la pli forta と冠詞が付いているいることで,ふたつのものの比較であることが分かります。

参考:
Kiu estas la plej peza el tiuj aj^oj?(どれがいちばん重いのですか。比べる対象は三つ以上)
Kiu estas la pli peza el tiuj aj^oj?(どちらのほうが重いのですか。比べる対象は二つ)

訳例
Kiu estas la pli juna el vi du?


課題文n-ro709 わたしはあのふたりのどちらも知りません。
解説
わたしは知りません: mi ne konas ということもできますが,この課題文のように「どちらも知りません」というときは,訳例のように mi konas neniun というほうが普通です。
「知りません」に scii を使うのは,ここではよくありません。scii は「知識として知っている」という意味ですから,「ある人を知っている,面識がある」というときは koni を使っていいます。

参考:
Mi ne konas tiun virinon, sed scias, ke s^i estas fratino de Anna.(わたしはあの女の人と面識はありませんが,彼女が Annaの姉さんであることは知っています。)

あのふたりのどちらも(知りません): (konas) neniun el tiuj du personoj というのがよいでしょう。ambau^ は c^iuj du という意味ですから,tiujn du ambau^ のように du と ambau^ がいっしょに使われることはありません。また c^iu, c^iuj の前に冠詞が置かれることはないので,ambau^ の前にも冠詞が置かれることはありません。

訳例

Mi konas neniun el tiuj du personoj.


課題文n-ro710 わたしはあそこにいる女の人たちの誰も知りません。
解説
わたしは知りません: ここでは「... の誰も知りません」という文なので,直訳すると mi ne konas iun ajn el ... としたくなりますが,mi konas neniun el ... という形でいうほうが自然な文になります。かなり前のことになりますが,ある外国の友人に「日本語ではこのようにいう」といって mi ne konas iun ajn el ... という文を見せたところ,「意味がよく分からない」というので,mi konas neniun el ... という意味だといったところ,「それは分かる。なぜ日本語ではこのような簡単な表現を取らないで,mi ne konas iun ajn el ... という分かりにくい表現を使うのか。mi konas ec^ ne unu el ... なら分かるが」といいました。ただし,日本人には mi konas ec^ ne unu el ... という表現は分かりにくいですね。やはり mi konas neniun el ... というのが国際的には標準的な表現といえるでしょう。
Mi ne konas neniun は二重否定の形ですから,「知らないことはない(みんな知っている)」という逆の意味になります。

あそこにいる女の人たちの誰も: konas の目的語として neniun el la virinoj, kiuj trovig^as(estas, staras) tie のようにいうことができますが,neniun el la virinoj tie のような簡潔な表現も使われることがあります。tie は副詞ですから名詞の virinoj を直接修飾することはできませんが,略式の表現ではこの形(名詞+tie)が使われることがあります。tie は en tiu loko という意味ですが,この en tiu loko には「その場所に」という副詞的用法と,「その場所の」という形容詞的用法があります。例えば,stari en tiu loko(そこに立っている)というときの en tiu loko は副詞的用法で,domo en tiu loko(そこに立っている家)というときの en tiu loko は形容詞的用法です。そこで en tiu loko と同じ意味の tie が la virinoj en tiu loko の en tiu loko の代わりに使われて la virinoj tie というように使われることが起きるわけです。これは英語の here などに見られる用法ですが,語尾で副詞であることを明示しているエスペラントの tie を形容詞のように使うことには抵抗を感じる人もいますから,あくまでも略式の便法であるといえるでしょう。ただし,文法上の考えとしては,la virinoj tie は la virinoj estantaj tie の estantaj を省略した表現である,といえないこともありません。

訳例
Mi konas neniun el tiuj virinoj tie.