n-ro61 わたしは彼の提案を受け入れざるを得ませんでした。

解説
「〜しないわけにはゆきませんでした」という二重否定の練習をするつもりだったのですが, 二重否定の形で寄せられたのは mi ne povis malakceptiと mi ne povis rifuzinoの2例だけで, 大部分は mi devis akcepti の形でした。もちろん, この形でも「結局〜した」という同じ結果を伝えることができるのですが, 上に挙げた訳のような言い方も使えるようにしておくといいですね。

mi povis nur akcepti と mi nur povis akcepti は同じと考えてよいでしょう。どちらも「(彼の提案を)受け入れる」という選択肢だけしかなかったという内容を表します。 mi cedis al lia propono は「彼の提案をしぶしぶながら受け入れた」というニュアンスを伝えます。

mi bedau~ras akcepti はよくありません。bedau~ri は, 過去を振り返って「〜しておけばよかった」とか「〜しなければよかった」と悔やむという意味ですが, 動詞の不定形 -i は現在や未来の行為, 状態を示す表現で, 過去の行為や状態を表す表現ではないので, bedau~ri といっしょに使うことはない, とおぼえておいてよいでしょう。

訳例
Mi ne povis malakcepti lian proponon.
Mi ne povis rifuzi lian proponon.


n-ro62 わたしは彼の提案を断ったことを後悔しています。

解説
「彼の提案を断ったことを」は ke mi rifuzis lian proponon でよいでしょう。rifuzis の代わりに malakceptis を使っても同じです。refuzis が2例見られたのは英語などとの混同ですね。
「後悔しています」は, ここでは bedau~ri を使っていうのがよいのですが, 状況によっては penti が使える場合があるかもしれません。
bedau~ri と penti の違いを挙げておきます。

比較:
* bedau~ri:過去を振り返って「...しておけばよかった」とか「...しなければよかった」と後悔する
* penti:犯した罪(道徳的なものを含む)について, それを償いたいと思い, 二度と罪を犯すまいという気持ちで後悔する(道徳的, 宗教的色彩が濃い)

訳例
Mi bedau~ras ke mi rifuzis lian proponon.


n-ro63 お申し出は辞退させていただきます。

解説
「お申し出」は via propono でもよいのですが,日本語の「お申し出」に相当するような丁寧な表現をしたいときはafabla を付けて via afabla propono とすればよいでしょう。kara をつけると「貴重な」という意味になります。

「辞退させていただきます」には rifuzi や malakceptiを使った訳文が多かったのですが,rifuzi は「拒絶する」という日本語に近い語感を持っているので,mi rifuzis lian proponon(わたしは彼の提案を断りました)というように使うのはよいのですが,提案をした相手に言うときは,rifuzi やmalakcepti を使って言うのは避けて ne povas akcepti のように言ったほうがよく,bedau~rinde を付けて言えば更によいでしょう。fordanki を使うこともできます。この語は「〜に対して感謝しつつ断る」というような意味です。

下の訳例では最初に挙げた訳文のほうが丁重に断っているな感じを与えます。一般的に長い表現のほうが丁寧な感じになるといえるでしょう。

訳例
Bedau~rinde mi ne povas akcepti vian afablan proponon.
Mi fordankas vian proponon.


n-ro64 Petroにわたしと一緒に奈良へ行ってくれるよう頼んでくれませんか。

解説
この課題文は聞き手に「Petroに頼んでくれませんか」という依頼をしていて,その頼んでほしい内容は「Petroにわたしと一緒に奈良へ行ってほしい」ということなのですね。ですから,mi petas vin, ke Petro akompanu min ... とか c^u mi povas peti al vi, ke Petro iru kun mi ... のようにいうと,聞き手から Petro に頼んでもらうという意味が薄れて,聞き手が Petro を行かせるという意味になります。

c^u vi bonvolu peti のようにはいいません。c^u vi bonvolos peti または,それより丁寧な c^u vi bonvolus peti を使っていいます。mi volus, ke vi bonvole petu Petro iri al Nara kun mi の Petro は Petron としましょう。peti al Petro でも通じますが,peti de Petro というのが普通です。peti は次のような形で使われます。
peti iun -i,
peti iun pri io,
peti ion de iu,
peti iun ke li/s^i -u

「一緒に行く」は iri kun mi, iri kune kun mi, akompani min などのようにいうことができます。kune kun はkun を強めた表現です。 akompani は他動詞ですから,akompani kun mi ではなく akompani min としましょう。
訳例
C^u vi bonvolus peti al Petro, ke li iru kun mi al Nara?
Bonvolu peti de Petro akompani min al la urbo Nara.


n-ro65 そのトランクをわたしのところへ持ってきてくださるようお願いします。

解説
 「トランク」はkofro または valizo といいます。衣類などを入れる大型で施錠できるものは kofro で,valizo は manportebla kofreto を指して使われます。

 「わたしのところへ持ってくる」は alporti al mi, または porti al mi でよいでしょう。

 「お願いします」に mi petas を使った訳文が半分くらいありましたが,この表現は課題文のような丁寧な言い方としては適当ではないといえるでしょう。peti は「してほしいことをある人に伝える」という意味なので,mi petas というのは日本語で職場の上司が部下に向かって使う「頼むよ」というような表現と同じように使われることもあります。bonvolu -iや c^u vi bonvolusを使って言えばずいぶん丁寧な表現になりますが,c^u vi ne bonvolus という否定形の表現は使わないほうがよいでしょう。日本語では「〜してくださいませんか」という否定形がよく使われますが,エスペラントでは c^u vi bonvolus という形が普通です。(『作文のためのエスペラント類義語集』, p.102をご覧ください。)日本で10年ほど暮らしたことがあるアメリカ人の Joel Brozovskyさんは,c^u vi ne bonvolus という言い方がたいへん気になったと,わたしへのメールに書いてきたことがあります。
peti を使った丁寧な言い方は下の訳例をごらんください。

訳例
Bonvolu alporti al mi la valizon.
Mi volus peti vin alporti al mi la kofron.


n-ro66誰が食卓の上を片付けたのですか。

解説
「食卓の上を片付ける」は,「食器類を取り下げる」という意味に取るのが普通だと思うのですが,応募訳の中には「食事の準備をする」という意味に取った訳文もありました。

arang^i, ordigiは「きちんと片付ける,整理整頓する」というような意味で,部屋を片付けたり,机の上を片付けたりするときなどに使われたりします。

rearang^i, reordigiは「元のようにきちんと片付ける,元のよう整理整頓する」という意味です。

arang^i, ordigi, rearang^i, reordigiは,いずれもここで使える表現ですが,purigiは「きれいにする」という意味で,食事の前や後に食卓の上を拭く行為などを指しますから,ここでは不適当でしょう。

この課題文にいちばんぴったりする言い方は,「食器類を取り下げる」という意味のprileviを使った
kiu prilevis la tablon?という言い方でしょう。

「食卓」はmang^otabloでよいのですが,普通はtabloだけで十分です。とくにprileviとともに使われるときは,mang^otabloというと不自然に聞こえます。

「食卓の上を」の「上を」を直訳してrearang^is sur 〜とするのは誤りです。

訳例
Kiu prilevis la tablon?


n-ro67 マリコは食卓の上を片付けると,そこで宿題をし始めました。

解説
「食卓の上を片付けると」は Mariko prilevis la tablon kaj のようなにいってもよいし,あるいは prilevinte la tablon のようにいってもよいでしょう。「片付けるとすぐ」という意味なら apenau~ Mariko prilevis la tablon で表します。prilevi が辞書に出ていないと書いてこられた方がありました。いま日本で使われている辞書には出ていませんが,PIVには出ていますし,わたしの手元にあるいくつかの民族語の対訳辞書にも出ています。

post Mariko prilevis la tablon というのは誤りです。post は前置詞なので「主語+動詞」の前に使うことはできません。

「宿題を」は sian hejmtaskon でよいでしょう。hejmtaskon は hejman taskon としても同じですが,sian を付けることが必要です。この sia がついていないと,だれの宿題のことを指しているのか分からなくなります。tian を付けると自分の宿題ではなく,他人(例えば友だちとか,妹など)の宿題を指すことになります。sia の代わりに la を付けた訳も寄せられましたが,人称代名詞の所有格の代わりに la を使うのは,体の部分や衣服を指す場合に限るのがよいでしょう。hejmverko は英語の homework からの類推でしょうが,エスペラントでは hejmtasko, hejma tasko といいます。なお,英語の homework は複数形になりませんが,エスペラントでは hejmtaskoj, hejmaj taskoj のように複数形を使うことができます。状況によって「宿題」であることが分かっている場合は,tasko だけでいうこともできます。

「し始めました」は komencis fari, ekfaris といえばよいでしょう。

訳例
Mariko prilevis la tablon kaj tie komencis fari sian hejmtaskon.
Prilevinte la tablon, Mariko komencis fari siajn hejmajn taskojn sur g^i.


n-ro68 わたしのまわりには英語が国際語だと思っている人が多い。

解説
「わたしのまわりには」は c^irkau~ mi でよいでしょう。multaj c^irkau~ mi あるいは multaj homoj c^irkau~ mi というと,「わたしのまわりの多くの人は」という意味になり,c^irkau~ mi multaj あるいは c^irkau~ mi multaj homoj というと,「わたしのまわりでは多くの人が」という意味になります。ここではどちらでもよいでしょう。multaj は homoj を付けなくても「多くの人たち」という意味を表すことができます。c^irkau~uloj は「まわりにいる人たち」の意味です。なお,multe da は「同じとき,同じ場所で」というニュアンスを伴うので,ここでは multaj を使っていうほうがよいでしょう。

この文は日本語の構文をそのまま移して,la homoj, kiuj pensas, ke la angla estas internacia lingvo, estas multaj c^irkau~ mi としてもよいのですが,下に挙げる訳例のように「わたしのまわりの多くの人たちは英語を国際語だと思っている」という構文にするほうが,すっきりとした分かりやすい文になります。

「英語が国際語だと思っている」は pensas ke la angla estas internacia lingvo のようにいえばよいでしょう。la angla lingvo estas internacia lingvo のように lingvo を重ねるよりも,上に挙げたようにいうほうがスマートです。同様に rigardas la anglan lingvon kiel internacian lingvon も rigardas la anglan kiel internacian lingvon とするほうがスマートです。rigardas la anglan lingvon internacia ということもできます。pensas のところに opinias, kredas を使っていうこともできます。(kredi, opinii, pensi の違いについては「作文のためのエスペラント類義語集」, p.20をご覧ください。)

「英語」は無冠詞で angla lingvo と書く人もありますが,冠詞を付けて la angla lingvo と書くことをお勧めします。lingvo を省略していうときは la angla と冠詞を付けていいます。

ここでは internacia lingvo には冠詞を付けても付けなくてもかまいません。冠詞をつけると「まさにその名にふさわしい」とうように強調されることになります。エスペランチストは Esperanto estas la internacia lingvo と考えたいところですが,一般の人から見れば Esperanto esas internacia lingvo なのでしょうね。

訳例
Multaj homoj c^irkau~ mi pensas ke la angla estas internacia lingvo.


n-ro69 「Braun先生は何語の先生なの。」「ドイツ語だよ。」

解説
「Braun先生」は s-ro Braun, または Prof. Braun でよいでしょう。Prof. は profesoro と読みます。s-ro の s は小文字で,Prof. の P は大文字で書くのが普通です。大学の先生がすべて profesoro ではないので,この課題文のように第三者に言うときは s-ro を使ってもよいでしょう。

日本語の「先生」にはいくつかの意味がありますが,普通は「学校の教師,専門学校や大学の教官」を指す語として使われたり,「自分が師事する人や弁護士,医師などに対する敬称」として使われます。sinjoro, profesoro は普通の名詞として使われるほか,名前の前に付けて敬称として使われますが,instruisto には敬称としての用法はないので, instruisto Braun といういい方は不適当です。gvidanto についても同じことがいえます。

「何語の先生なの」は「何語を教えているのか」という文にして kiun lingvon instruas とするのがよいでしょう。kian lingvon は「どんな言語を」という意味で,「何語を」という意味ではありません。kion instruas(何を教えているのか)といういい方もできます。

比較:
−Kiun lingvon vi lernas? (何語を学んでいるのですか。)
−Mi lernas Espranton.(エスペラント語です。)
−Kia lingvo estas Esperanto?(エスペラントはどんな言葉ですか。)
−G^i estas artefarita lingvo facile lernebla.(学びやすい人工語です。)

「ドイツ語だよ」は,la germanan lingvonですが,ここでは la germanan で十分です。la germana ではなく la germanan となるのは li instruas la germanan lingvon を省略した形だからです。

訳例
"Kiun lingvon instruas s-ro Braun?" "La germanan."


n-ro70 「アオキ先生も大会に参加されますか。」「たぶん参加されると思います。」

解説
「アオキ先生も」は ankau~ s-ro Aoki の語順にしましょう。「〜も」というとき ankau~ は〜の直前に置くことになっているので,s-ro Aoki ankau~ partoprenos という語順にすると,「アオキさんは参加もするし,ほかの何かもする」という意味に取られます。ankau~ は名詞,形容詞,副詞,動詞だけでなく,ankau~ en Japanio(日本でも)のように句につくこともできます。
ザメンホフには人称代名詞につくときに限って ankau~ mi, ankau~ li などの代わりに mi ankau~, li ankau~ とした用例がありますが,書くときの心得としては,「ankau~ は強調する語の直前につく」と覚えておくのがよいでしょう。
(英語ではこのようなルールがありません。だから I want to come also という文がエスペラントでは Ankau~ mi volas veni という語順になります。)

参考:
Ankau~ Marta dancis en la kunveno.その集会で(ほかの人も踊ったが)Martaも踊った。
Marta ankau~ dancis en la kunveno.その集会でMartaは(ほかのこともしたが)踊りも踊った。
Marta dancis ankau~ en la kunveno.Martaは(ほかのところでも踊ったが)その集会でも踊った。

「大会に参加する」は partopreni la kongreson でも通じますが,partopreni en la kongreso というのが,標準的な表現です。

「たぶん参加されると思います」の「たぶん」は probable または vers^ajne。

「と思います」は直訳すれば mi pensas ke ですが,ここではこの表現を入れないほうがよいでしょう。日本語は,特に会話では断定的な表現を避けるために,「と思います」という言い方を多用する傾向があります。先日の東海エスペラント大会に参加していたメキシコ人の女性といろんな話をする機会があったのですが,そのとき日本人がよく mi pensas を使うという話をしたら,Mi rimarkis tion(気づいているわ)と言って笑いました。

訳例
"C^u ankau~ s-ro Aoki partoprenos en la kongreso?" "Probable li partoprenos en g^i."
"C^u ankau~ s-ro Aoki partoprenos en la kongreso?" "Probable jes."