n-ro71 おそらくあしたも雨でしょう。

解説
「おそらく」は vers^ajne または probable や supozeble がよいでしょう。これらの語はいずれも「100%とまでは行かないが」という感じを伴いながら,かなり高い確率を表します。certe は「100% または,それに近い確率で」という感じを表します。これらの語は ne vers^ajne, ne probable, ne supozeble などのように,ne の直後に置かれることは普通はないので,li certe ne venos(彼はきっと来ない)とは言うことはありますが,li ne certe venos とは言いません。来ることが確実でないときは ne estas certe c^u li venos と言います。

比較:
Estas certe ke li venos.(= Li certe venos. 彼はきっと来ます。)
Ne estas certe c^u li venos.(彼が来るかどうかは, はっきりしていません。)

「あしたも」は ankau~ morgau~ または ankorau~ morgau~ でよいでしょう。ただし,ankorau~ は「過去のあるときから今(発話の時点)まで」という意味が第一義なので,未来のことについていうときに使うのは抵抗を感じるという人もいます。ankorau^ を使うと「いま降っている雨がこのまま止まずにまだあしたも降りつづける」ということを暗示し,ankau~ を使うと「きょうの雨がいったん止んで,あしたまた降る」ということを暗示します。

「雨でしょう」は pluvos とするのがいちばん簡単です。pruvos があったのはうっかりミスでしょう。

この課題文は語順がまったくといってよいくらい自由ですが,ankau~ morgau~ はひとつの固定した表現として文頭や文中,文末に置かれます。

訳例
Vers^ajne pluvos ankau~ morgau~.


n-ro72 あなたはまだメールアドレスを変えていないのですか。

解説
「メールアドレス」は ret-adreso, retadreso がよく使われますが, adreso de retpos^to, adreso de la retpos^to としてもよいでしょう。E-mesag^a adreso も通じるでしょうが,上に挙げたようにいうことをお勧めします。日本語では「あなたの」を付けませんが,エスペラントでは via を付けることが必要です。sia を付けるのは, ここでは誤りです。sia は主語が三人称のときに限って使うと覚えておきましょう。
相手が複数のメールアドレスを持っていて,そのうちのひとつが話し手と聞き手の間で既に話題になったことがあるときは,la ret-adreso のようにいうでしょうが,そうでない場合に via のかわりに la を使うのはよくありません。mia, via, lia, s^ia ... などのかわりに la を使うのは,体の部分や身に着けている衣服を指すときです。(体の部分には animo, koro, menso なども含みます。 )

「まだ変えていない」は ankorau~ ne s^ang^is というのが普通です。ne 〜 ankorau~ という形がザメンホフの用例に見られますが,PIV の 見出し語ankorau~ の中に ankorau~ ne という副見出しがあるように,ankorau~ ne という語順が普通です。
ankorau~ ne s^ang^as というのはよくありません。s^ang^i は点動詞ですが,点動詞は1回きりの完結した行為を表すときは, -as や -anta, -ata の形を取らないで, -is, -os, -inta, -onta, -ita, -ota の形を取ります。

訳例
C^u vi ankorau~ ne s^ang^is vian ret-adreson?


n-ro73 Manjo はもう寝ていますが,Tac^jo はまだ寝ていません。

解説
「もう寝ています」は jam dormas または jam enlitig^is といいます。dormas 「眠っている」という意味で,enlitig^is は「寝床に入った(入っている)」という意味です。dormis は誤りです。dormi は線動詞なので,過去形にすると「寝ていた(いまはもう寝ていない)」という意味になります。
enlitig^i は点動詞なので,-is の形で「寝床に入った」という行為を表したり,または estas enlitig^inta の代用として「寝床に入っている」という状態を表します。ekdormi も点動詞なので ekdormis の形で「眠った」あるいは「眠っている」を表すことができますが,ekdormas とするのはよくありません。点動詞は1回きりの動作について -as を使うことは特別の場合を除いてありません。(詳しくは「中級者コーナー」の「動詞の相(アスペクト)」の中の「アスペクトと -as」をご覧ください。)

「まだ寝ていません」は ankorau~ ne dormas, ankorau~ ne enlitig^is, または dormas, enlitig^is を省略して ankorau~ ne だけでもよいでしょう。

ふたつの文は sed でつなぎます。kvankam は「〜ではあるが,しかし」とか「〜であるにもかかわらず」とか「当然〜であるはずなのに,しかし」というような意味なので,ここでは不適当でしょう。

参考:
Kvankam li dormis pli ol dek horojn, li tamen s^ajnas ankorau~ dormema.(彼は10時間以上も寝たのに,まだ眠そうです。)

訳例
Manjo jam dormas, sed Tac^jo ankorau~ ne dormas.
Manjo jam enlitig^is, sed Tac^jo ankorau~ ne.


n-ro74 もう11時ですよ。早く寝なさい。

解説
「もう11時ですよ」は jam estas la dek-unua horo といいます。dek-unua は11-a と書くこともあります。-a のハイフンは書かない人もいますが,1-a(unua) は冠詞の la と区別するために 1-a と書かれます。序数詞の前には冠詞を付けるのが普通です。je la 11a は「11時に」という意味なので je を削除しましょう。

「早く」は,ここでは「今すぐ」という意味ですから,tuj か senprokraste を使って言いましょう。rapide は「いそいで,すばやく」を表します。frue は「(時刻が)早く」という意味ですから,frue enlitig^u(早寝しなさい)という表現はありますが,この課題文が表す状況で使うのは不適当です。

「寝なさい」は 「床に入りなさい」という意味ですから,enlitig^u を使っていいましょう。dormi は 「眠っている」という意味なので,dormu を使うのはよくありません。

訳例
Jam estas la 11-a horo. Tuj enlitig^u


n-ro75 Petro は死んだように眠り込んでいます。

解説
「死んだように」は kvazau~ を使っていうのがよいでしょう。「〜のように」は kiel を使っていうこともできますが,「(〜ではないのに)まるで〜であるかのように」ということを表すときは,kvazau~ を使うとよいでしょう。kiel と kvazau~ とではまったく違う意味を表すことがあるので注意が必要です。

比較:
S^i traktis lin kiel lia patrino.
母親として彼に接した。
S^i traktis lin kvazau~ lia patrino.
まるで母親のように彼に接した。

kvazau~ の後では,主語が前節と同じ場合は主語と動詞を省略することができるので,kvazau~ li estus morta, kvazau~ li estus mortinta の li estus は省略することができます。このように kvazau~ の後に使われる動詞はたいてい -us の形をとります。ザメンホフの用例には -as, -is, -os が使われているのもありますが,kvazau~ の後では -us を使うと覚えておいてよいでしょう。

参考(ザメンホフの用例):
Li havis la senton, kvazau~ li tuj mortos.
彼は今にも死ぬのではないかと感じていた。

kvazau~ li mortus は「まるで死ぬかのように」という意味になりますから,kvazau~ li estus mortinta としましょう。
preskau~ morta は「死んだも同然」という意味になりますから,ここで使うのは不適当です。

「眠り込んでいます」は dormas profunde, profunde dormas, dormegas を使っていえばよいですが,「死んだように眠っている」を表す慣用表現に,訳例の最後の訳のような表現があることも覚えておくとよいでしょう。

訳例
Petro dormegas kvazau~ li estus morta.
Petro dormegas kvazau~ mortinta.
Petro profunde dormas kvazau~ mortinta.
Petro dormas s^tonan dormon.


n-ro76 彼はまるで雷に打たれたように倒れました。

解説
「まるで雷に打たれたように」を kvazau~ frapita de tondro とした訳がいちばん多く寄せられました。形はこれでよいのですが,tondro を使うのは誤りです。「雷に打たれる」の訳として esti frapita de tondro を載せている辞書があるので,tondro を使った方はそれに拠って書かれたのでしょうが,tondro は「雷鳴」のことですから,esti frapita de tondro というのは誤りです。「雷に打たれる」は esti frapita de fulmo, esti batita de fulmo, esti fulmofrapita, esti fulmobatita のようにいいます。striki は英語の strike と違って「ストライキをする」という意味しかないので,ここで使うことができません。
「倒れました」は falis を使うのがよいでしょう。状況によっては perei を使っていうこともできます。perei は「死ぬ」という意味の「たおれる」で,「斃れる」という字を使ったりします。falis といった場合は倒れた人が亡くなったかどうか判りませんが,pereis と言えば倒れた人が亡くなったことを意味します。renversig^i はもともとの意味が「上下が逆になる」というの語ですから,「ひっくり返る」という語感を伴う倒れ方をしたイメージが浮かぶでしょう。仰向けに倒れたときにはぴったりの表現です。

訳例
Li falis kvazau~ fulmobatita.
Li falis kvazau~ li estus batita de fulmo.
Li pereis, kvazau~ fulmo batus lin.


n-ro77 雷が鳴っているときに高い木のそばに立つのは危険です。雷がその木に落ちるかもしれないからです。

解説
「雷がなっているときに」は kiam tondras というのが普通ですが,sub tondro といってもよいでしょう。

「高い木のそばに立つ」は stari apud alta arbo といいます。特定の木を指しているのではないので,la arbo とするのはよくありません。
starig^i は英語の stand up に当たる語で,「(座っている状態から)立つ,立ち上がる」という動作を表すので,ここでは不適当です。ここでは「立っている」という状態が危険だといっているのですね。
proksime de は「の近くに」という意味で,状況によっては何メートルも, あるいはそれ以上,離れている場合にも使える語ですから,ここでは apud を使っていうほうがよいでしょう。さらに接近して,ほとんど触れんばかりの状態は tuj apud で表現します。

参考:
Mi log^as proksime de la stacidomo.
わたしは駅の近くに住んでいます。

Anna sidig^is tuj apud mi.
Anna はわたしのすぐそばに座った。

「(立つのは)危険です」は stari を主語にしているので estas dang^ere としましょう。動詞(不定形)が主語のときはそれを修飾する語は,副詞形をとります。stari apud alta arbo estas dang^ere としてもよいのですが,estas dang^ere stari apud alta arbo という語順でいうのが普通です。英語で to stand by a tall tree is dangerous としないで,it is dangerous to stand by a tall tree というのと同じです。ただし,この英語を直訳して g^i estas dang^era stari apud alta arbo とするのは誤りです。

「雷がその木に落ちるかもしれないからです」は fulmo povas bati la arbon または fulmo povas frapi la arbon とするのがよいでしょう。povos とするのはよくありません。時に関係のない普遍的なことを述べるときは,-as の形を使います。povus や batus, frapus を使った訳が多く寄せられましたが,-us は事実と反対のことや実際にありえないことを述べたり,非常に丁寧な依頼などに使われる形で,ここでは povas bati, povas frapi のようにいうのがよいでしょう。

参考:
Tiam tion mi povus fari, sed ne faris.
そのときそれをすることができたのだが,しなかった。

「雷が〜に落ちる」は上に挙げたようにいうのが普通ですが,fali sur 〜-n を使っても通じるようです。ただし,普通は使われない表現なので, 変わった表現と受け取られるでしょうから,詩などを除いては使わないほうが無難です。fali al 〜とするのはよくありません。

「からです」と理由を説明するのは c^ar を使っていうことができますが,エスペラントでは c^ar を使わないで,単にふたつの文を並べるだけで,前の文に書いたことについて,その理由を述べることがよくあります。朝霧訳とrivero訳が c^ar を使わない構文でした。

訳例
Estas dang^ere stari apud alta arbo kiam tondras. La fulmo povas bati la arbon.


n-78 わたしは彼がミスをしたから怒っているのではありません。

解説
「〜だから怒っているのではありません」は「怒っていない」という意味ではなく,「怒っているのは〜のせいではなく,ほかの理由によって怒っているのだ」という意味ですから, mi ne koleras cxar ..., mi ne koleras pri ... とするのではなく,mi koleras ne cxar ..., mi koleras ne pri ... のようにいいましょう。「〜に腹を立てている」は koleri pri io というのが普通ですが,koleri pro io としても通じます。
mia kolero ne atribuas al lia eraro というのは誤りです。atribui は人を主語にして atribui al iu ion(あることをある人のせいにする)のように使われます。
pri, pro は前置詞なので,pri li eraris や pro li eraris のようにいう事はできません。pri tio ke li eraris, pro tio ke li eraris のようにいいましょう。
ザメンホフには kial を tial ke の意味に使った用例が2,3ありますが,現在はこの意味ではほとんど使われないので,c^ar を使っていうのがよいでしょう。
kolerig^as は「腹を立てる」という行為を表す語で,「腹を立てている」という状態を表す語ではないので,ここでは不適当です。

参考:
Li kolerig^as ofte pri la plej malgranda bagatelo.
彼は取るに足らないような些細なことで,よく腹を立てます。

訳例
Mi koleras ne pri lia eraro.
Mi koleras ne c^ar li faris eraron.


n-ro79 わたしが開会式に遅れたのは,わたしの不注意によるものではなく,交通事故によるものです。

解説
この文は,「わたしが開会式に遅れた理由」を主語にして, la kialo de mia malfruig^o al la malferma ceremonio estas ne pro mia malatento, sed pro trafika akcidento のようにいったり,あるいは la kau~zo kial mi malfruig^is al la malferma ceremonio estas ne pro mia malatento, sed pro trafika akcidento のようにいうこともできますが,mi malfruig^is al la malferma ceremonio ne pro mia malatento, sed pro trafika akcidento のようにいうこともできます。

malfrui と malfruig^i は,PLENA ILUSTRITA VORTARO DE ESPERANTO(PIV)では区別していますし,わたしの語感でも違う感じですが,PLENA VORTARO DE ESPERANTO(PV) では同じとしています。
「開会式」は la malferma ceremonio または la inau~guro ですが,inau~guro は,重々しい,あるいは仰々しい感じを伴う語です。

「不注意」は malatento がよいでしょう。malatentemo も「不注意」と訳されますが,接尾辞 -em は,「傾向,習慣」を示すので,1回きりの行為についていうときは,malatento のほうがよいでしょう。

比較:
Li perdis la vivon pro sia momenta malatento.
一瞬の不注意のために彼は命を失いました。
Li ofte faras erarojn pro sia malatentemo.
彼は不注意なので,よくミスをします。

「交通事故」は trafika akcidento。冠詞を付けるのは,ここではよくありません。

「〜によるものではなく,--によるものです」は,ne pro 〜, sed pro -- というのが普通ですから,ne pro mia malatento, sed trafika akcidento や ne pro mia malatento pro trafika akcidento としないで,ne pro mia malatento, sed pro trafika akcidento としましょう。

mia malfrua alveno al la inau~guro ne estis kau~zita de mia malatentemo, sed de trafika akcidento の ne estis kau~zita de mia malatentemo, sed de trafika akcidento は estis kau~zita ne de mia malatento, sed de trafika akcidento としましょう。

pri は「原因を示す前置詞」ではないので,ここでは pri を使うことはできません。c^e la malferma ceremonio, mi malfruig^is ne pro mia malatento, sed tio estis pro trafika akcidento のようにいうと,tio が何を指しているのかよく分からない文になります。

訳例
Mi malfruig^is al la malferma ceremonio ne pro mia malatento, sed pro trafika akcidento.


n-ro80 わたしは,けさもっと早く起きるべきでした。

解説
「けさ」は hodiau~ matene, c^i-matene のようにいいます。c^i matene はstreketo(-)でつないで1語にしましょう。c^i tiu matene は誤りです。

「起きる」は,ここでは「起床する」という意味に取るのが自然ですから,vekig^i(目を覚ます)よりも ellitig^i, levig^i を使っていうのがよいでしょう。levig^i は広い意味では「立ち上がる」という意味ですが,狭い意味では levig^i el la lito の意味で使われます。
「もっと早く」は pli frue といいます。ankorau~ pli frue (更にもっと早く)の ankorau~ は,ここではないほうが自然でしょう。plu frue の plu は pli とします。

「〜べきでした」を devis とした訳文が大部分を占めましたが,devis を使うのはよくありません。例えば,mi devis fari tion という文を日本語に訳してみてください。「わたしは, それをしなければなりませんでした」のように訳しますね。同じように mi devis ellitig^i ... は「わたしは起きるべきでした(だが起きませんでした)」ではなく,「わたしは起きなければなりませんでした(だから起きました)」という意味に取られます。
「〜べきでした」は estus devinta といいますが,文脈で過去のことであることが分かっている場合は,devus だけでもよいでしょう。estus devinta の意味を devintus と書く人もいますが,一般に広く使われている言い方ではないようです。このように devi の過去形を使うときは注意しなければなりませんが,同じように過去形に注意しなければならないのは,povi の過去形です。povis は実際に「できた」ことを表します。ですから「〜できたのだが,しなかった」というときに,povis を使っていうことはできません。

参考:
Tiam tion mi povus fari, sed ne faris.
そのとき私はそれをすることができたのですが,しませんでした。

Se mi levig^us pli frue c^i-matene は「けさもっと早く起きていたらなあ」という感じです。

訳例
Mi devus ellitig^i pli frue hodiau~ matene.