課題文n-ro81 わたしは本当のことを彼に話すべきだったのですが,話すことができませんでした。

解説
「本当のこと」には la vero, la fakto, la vera afero が寄せられましたが,どれを使ってもよいでしょう。このような会話が交わされる状況を想定すれば,冠詞を付けたほうが自然ですね。聞き手にとっては la vero de la afero であるからです。

「彼に話すべきだった」は devus diri al li, estus devinta diri al li としましょう。paroli を使っても通じますが, 「ある内容を伝える」というときは diri を使って言います。paroli 〜-n の形は paroli Esperanton のように,〜のところに言語名が入るときに限って使いましょう。「〜について話す」というときは,paroli pri 〜 の形を取ります。

「が,話すことができませんでした」は sed mi ne povis diri のように言うことができますが,この mi とdiri は省略できます。ne povus とするのは誤りです。できなかったのは事実ですから,ne povas の形を取ります。同じ語の反復を避けて sed tion ne faris とすれば,簡潔な表現になります。この tion を g^in とするのは,よくありません。

訳例
Mi devus diri la veron al li, sed tion ne faris.


課題文n-ro82 あなたは警察に電話することができたのに, なぜしなかったのですか。

解説
「警察」は,ここでは冠詞付きの la polico 使いましょう。la polico は警察という機構の中で働いている人たちの全部を含めて指す言葉で,「警察に通報する」とか「警察が容疑者を逮捕した」などというときの「警察」はこの la polico を使っていいます。

「電話することができたのに」は,kvankam vi povus telefoni al ... のようにいうことができますが,kial vi ne telefonis al la plico(なぜ警察に電話しなかったのですか)を先行させた構文では,kvankam vi povus fari tion とするか,または,もっと省略して kvankam vi povus のようにいうこともできます。kvankam の後の主語や述語動詞を省略することができる場合もありますが,ここでは vi を省略することはできません。

参考:
Mi mang^is la tutan kukon, kvankam malbongusta, c^ar mi estis malsata.
まずい菓子でしたが,お腹が空いていたので,全部食べました。
(kvankam malbongusta は kvankam g^i estis malbongusta の g^i estis が省略された形です。)

kvankam vi povis telefoni al ... や kvankam vi povis というように povis を使うのは誤りで,「電話できたのに(しなかった)」というときは povis ではなく povus を使っていいます。

Kial vi ne faris tion, kvankam vi povus telefoni al ... のようにいうのは,よくありません。Kial vi ne faris tion といきなり言われても聞き手には何のことか分かりませんね。日本語でも「なぜそうしなかったのですか」という質問から始めたら相手はとまどうでしょう。

この課題文は kvankam でつながずに,下に挙げる訳例のようにふたつの文で言うこともできます。

訳例
Vi povus telefoni al la polico. Kial vi tion ne faris?
Kial vi ne telefonis al la polico, kvankam vi povus tion fari?


課題文n-ro83 警察はすでにそのことについての情報を入手しているようです。

解説
「警察」は前回の解説で述べたように,la polico といいます。

「そのことについての情報」は informoj pri tio でよいでしょう。pri la afero ということもできます。「情報」は複数形の informoj を使っていうのが普通です。英語の information(情報)は複数形を取らないので,その影響をエスペラントに持ち込まないように気をつけましょう。ただし,「あるひとつの情報」は informo(英語では a piece of information) で表します。

参考:
Tio estas preciza informo.
That is an accurate piece of information.
それは確かな情報です。

informoj に冠詞をつけるのは,ここではよくありません。la informoj pri tio というと,「そのことについての,あの(聞き手の知っている)情報」,または「そのことについてのすべての情報」という意味になります。

「入手している」は akiri, havi などを使っていうのがよいでしょう。gajni は「(富や権力などを)手に入れる,(愛,信頼,名声,賞などを)得る,(戦い,競技,訴訟などに)に勝つ」というような意味ですから,ここでは不適当です。akiri は点動詞なので,estas akirinta という現在の状態を akiris で表すことができますが,havi は線動詞なので現在の状態は havas という現在形で表します。havis というと「過去に持っていた(が,いまは持っていない)」という意味になります。

「ようです」は s^ajnas ke, s^ajne, s^ajnas -i のようにいうことができます。

「すでに」は jam を入れていえばよいのですが,jam s^ajnas akiri ではなく,s^ajnas jam akiri としましょう。

訳例
La polico s^ajnas jam havi informojn pri tio.
La polico s^ajne jam akiris informojn pri la afero.
S^ajnas ke la polico jam akiris informojn pri tio.


n-ro84 彼は役に立つ情報をたくさん教えてくれました。

解説
「役に立つ情報をたくさん」は,multajn utilajn informojn または multe da utilaj informoj でよいでしょう。語順は multajn informojn utilajn, multe da informoj utilaj などのようにいうこともできます。

multaj informoj と multe da informoj は,どちらも「多くの情報」と訳されますが,multe da informoj は「一度にまとめて」という含意があります。

「役に立つ」には utila がいちばんぴったりします。tau~ga も状況によっては使うことができますが,utila が含んでいる「必要としていることに使える」,あるいは「利益をもたらす」という意味は tau~ga にはありません。

「教えてくれました」は,ここでは donis か sciigi を使っていうのがよいでしょう。instrui は「学問や技術を教える」という意味で,「情報を教える」とか「名前を教える」などの「教える」に使うことはできません。

この課題文では「わたしに」という表現はありませんが,エスペラントでは al mi を入れていいましょう。日本語では「わたしが」とか「わたしに」という表現が明示されないことが多いのですが,エスペラントでは al mi を入れないでいうと,聞き手は Al kiu? と質問するでしょう。

訳例
Li donis al mi multajn utilajn informojn.


n-ro85 誰にエスペラントを教えてもらったのですか。

解説
この課題文は「誰にエスペラントを教えてもらったのですか」を直訳しないで,「誰があなたにエスペラントを教えたのですか」の形にするか,あるいは「あなたは誰からエスペラントを学びましたか」の形にするのがよいでしょう。

「誰があなたにエスペラントを教えたのですか」は,Kiu instruis al vi Esperanton? あるいは Kiu instruis Esperanton al vi? で,「あなたは誰からエスペラントを学びましたか」は,De kiu vi lernis Esperanton? となります。

Kiu instruis al vi Esperanton? と Kiu instruis Esperanton al vi? は,どちらもほとんど同じ意味ですが,違っている点を挙げるとすれば,前者は「エスペラント」に力点が置かれ,後者は「あなたに」に力点が置かれているということができます。例えば,複数の言語を学んだという相手に「エスペラントは誰に教えてもらったのですか」という質問をするときは,Kiu instruis al vi Esperanton? と尋ねるでしょう。一般的にいって,文中よりは文頭,または文末のほうが目立ちやすいので,力点を置きたい語句はそういう位置に置かれるのが普通です。ただし,会話では語調の強弱で力点を示すことができるので,語順にそれほどこだわる必要はありません。

訳例
Kiu instruis al vi Esperanton?
Kiu instruis Esperanton al vi?
De kiu vi lernis Esperanton?


n-ro86 Zamenhof でさえ例外ではありませんでした。

解説
「Zamenhof だって」は ec^ Zamenhof, または ankau^ Zamenhof。

「例外ではありません」は ne faras escepton, ne estas escepta。esceptita も使えますが,estas ne esceptita という語順ではなく,ne estas esceptita とするのがよいでしょう。
ec^ Zamenhof ne estas escepto というのは,よくありません。escepto は io esceptita(例外とされているもの) という意味なので,人については使われないのが普通です。英語の exception は somebody or something that is excepted(例外となる人またはもの)という意味ですから,he is an exception(彼は例外です)のように使われますが,エスペラントでは物についてだけ使われると覚えておいてよいでしょう。

この課題文の「〜ではありません」という現在形は,日本語としては不自然ではありませんが,Zamenhof という故人について述べているので,エスペラント文としては過去形で書くほうが自然でしょう。物語などの中では,その様子がありありと目の前に浮かぶように,過去のことでも現在形を使うことがありますが,ここでは過去形にしておきましょう。

訳例
Ec^ Zamenhof ne faris escepton.


n-ro87 この寒さは10月としては例外的です。

解説
「この寒さは」は c^i tiu malvarmo, tia malvarmo でよいでしょう。malvarmeco を使っていうこともできます。PIV では malvarmo と malvarmeco を区別していますが, 科学的なテーマの文章を除いては,どちらも同じように使われているようです。無主語文で estas malvarma とするのは誤りですから,estas malvarme としましょう。
訳例に挙げたように c^i tiu malvarma vetero を使っていうこともできます。

「10月としては」は por oktobro。en oktobro も使えますが,kiel oktobro はよくありません。kiel は kiel delegito(代表として)のように使われますが,「としては」に kiel を使うのは不適当です。

「例外的です」は estas escepta がよいでしょう。estas eksterordinara も使えますが,estas nesupozebla はここではぴったりしません。

訳例
C^i tiu malvarmeco estas escepta por oktobro.
C^i tiu malvarma vetero estas escepta por oktobro.


n-ro88 11月になると,もっと日が短くなります。

解説
「11月になると」は en novembro とするのが簡潔ですが,kiam alvenas novembro のようにいうこともできます。一般的真理について述べるときは,kiam, se のどちらを使ってもよいのですが,この課題文の場合は「もっと日が短くなります」という相対的な表現で,時に関係なくいつでも使うことのできる表現ではないので,kiam を使っていいましょう。
kiam monato iras en novembron のようにはいいません。

「もっと日が短くなります」は la tagoj farig^as pli mallongaj, la tagoj plimallongig^as などのようにいうことができます。「日」は la tagoj と冠詞つきの複数形でいうのがよいでしょう。farig^os, plimallongig^os のように -os の形でいうのは,ここではよくありません。時に関係のない一般的真理について述べるときは,-as の形を使っていいます。
sunluma tempodau~ro は「日照時間」(一日のうちで太陽が雲に覆われずに照らす時間)のことですから,ここで使うのは不適当です。
la dau~ro de ebla sunlumo(可照時間)は使うことができます。「可照時間」とは「太陽の中心が地平線に現われてから没するまでの時間」のことです。しかし la dau~ro de ebla sunlumo(可照時間)は一般になじみのない表現ですから,la tagoj を使っていうほうがよいでしょう。

訳例
En novembro la tagoj malplilongig^as.
Kiam alvenas novembro, la tagoj pli mallongig^as.


n-ro89 Anna はスカートをはけば,もっと美しく見えるのに。

解説
「スカートをはけば」は en jupo, kun jupo のようにいうと簡潔な表現になります。エスペラントでは,このように日本語が動詞を使って表現することを,前置詞で表現する場合があります。こういう表現の形になれると,日本語の直訳調でないエスペラントらしい表現を身に付けることができます。
もちろん,se Anna portus jupon というように動詞を使って表現することもできますが,この場合,日本語の「はけば」にひかれて,surmeti(はく)を使うのはよくありません。surmeti は「はく」という動作を表す動詞なので,se Anna surmetus jupon というと,「スカートをはく」という動作について述べることになるからです。ここでは「スカートをはくという動作をする Anna」についてではなく,「スカートをはいているという状態にある Anna」のことを話題にしているのですね。
ただし,Anna はスカートをはいていないのですから,動詞は事実と反対のことを表す -us を使います。
la jupo のように冠詞を付けると, 聞き手に分かる「あのスカート」を指すことになるので,ここでは無冠詞の jupo を使いましょう。

「もっと美しく見えるのに」は aspektus pli bele とするのがよいでしょう。aspekti も -us の形をとるのは,上に述べたのと同じ理由です。aspektus pli bela ではなく,aspektus pli bele というのが普通ですが,-e の語尾を持つ副詞とともに使うときは,例えば,aspektus tute bela のように 形容詞の形が使われるのが普通です。

訳例
En jupo Anna aspektus pli bele.


n-ro90 この丘に登ると,海が見えます。

解説
「この丘に登ると」は se vi surpreniras sur c^i tiun monteton のようにいうことができますが,このように動詞を使わずに前置詞を使って de sur c^i tiu monteto(この丘の上から)とか sur c^i tiu monteto(この丘の上で)などのように簡潔にいうこともできます。supreniras のように -as の形でいうと,いつでも見えるという時間に関係のない表現になり,se vi supreniros のように -os の形を使うと,「登ると見えますよ。いまから登ってみますか」というような,これから行われる行為についていう感じを伴います。ここではどちらを使ってもよいでしょう。
「登る」に grimpas, grimpos を使うと,登る道がかなり急な坂道であったり,あるいは道らしい道のないところを草木につかまりながら登る,という意味を伴って理解されるでしょう。grimpi は「よじ登る」という意味で使われるのが普通です。surgrimpante は「登りながら」という意味なので,ここでは不適当です。

「海が見えます」は vi vidas(vidos) la maron, vi povas(povos) vidi la maron などのようにいうことができます。vi は ni や oni に変えてもここでは意味はほとんど同じです。-as, -os による意味の違いは,supreniras, supreniros について述べた内容と同じです。「海」は冠詞を付けて la maro というのが普通です。「世界中に広がっている」ということから「ひとつの海」というイメージがあるからでしょう。ただし,「静かな海」とか「荒れている海」のように,ひとつの様相を示している海についていうときは kvieta maro, malkvieta maro のように無冠詞でいうのが一般的です。

訳例
De sur c^i tiu monteto vi vidos la maron.