"安心が一番"の巻

正ちゃん(以下S)「今日は。あっ!!今 日は普通の格好じゃん。つまんないな〜。」

アキ(以下A)「何言ってるの、毎日タキ シードなんて着てたら肩凝っちゃう し、だいいちタキシードがすぐ駄目に なっちゃうじゃない。」

清ちゃん(以下K)「何かあったんですか?」

A「"CHICAGO"に行ってきたのよ。」

K「え〜! 昨日帰ってきたんですか?とんぼ帰りだったんじゃないですか。 やっぱりアキさんその筋だったんですね。」

A「何言ってるのよ、清ちゃん。 これこれ(とポスターを指さして)ミュージカルの〃CHICAGO"に行ってきたのよ。」

K「は〜。アメリカじゃなかったんです か。 怖いところ行ってきたんだなと思っちゃいました。」

A「あ〜あ、やだやだ。 あんたね、シカゴが怖いところだったのって、もう50年以上前の話しよ。 今はねアメ リカでも一二を争う安全さ。 何年か前に行ったんだけど街が綺麗でとて も住み易そうなとこだったわ。」

K「は〜。」

A「そうそう、先物取り引きの場所があってね。 アッシの友人がそこに勤めてたんで、普段は入ることの出来ない場内に入れたのよ。すごく活気があってね。 なかなかできない経験じゃない。 ラッキーだった。」

K「は〜。」

A「あんた。 は〜、は〜ばっかり言ってないで、他に何か言うことないのかしら。」

K「は〜。 ジントニックお代り。」

A「あいよっ!」

S「ところでアキさん。 昨日聞けなかっ たんですけど舞台はどうだったんです か?」

A「とっても素晴らしい舞台だったに決ってるじゃない。」

S「確か女刑務所の話しですよね?」

A「というかね、その中に収監されているヴェルマとロキシーの二人にスポットが当たっていてね、そこの女看守 にワイロを渡して、悪徳弁護士を雇って無罪を勝ち取って、ショウ・ビジネスの世界にデビューするっていう話しなのよ。」

K「は〜。」

S「セットとか衣装はどうだったんですか?」

A「舞台の半分以上がオーケストラで占められているの。 その両脇に出演者が椅子に座っているのね。 とても変っているでしょ。 このミュージカル、リヴァイヴァルなんだけど、初 めはコンサート形式だったらしいのね。 それが評判良くて、劇場変えて今、ニューヨークとロンドンでロングランになっているの。 チケット取りにくいらしわよ。 衣装の方はモノ トーンでまとめられて、セットと共にとてもシンプルなの。」

S「シンプル・イズ・ベストっていう所ですか? でもミュージカルだったら何か華やか物欲しいですよね。」

A「大丈夫。何しろ初演(1975年)の振付けと演出があのボブ・フォッシーなんだからね。」

K「は〜。何ですか? その人。」

A「アメリカのショウ・ビジネスの世界では3つの大きな賞があるの。 映画のアカデミー賞、演劇のトニー賞、それにTVのエミー賞ね。 その全てを獲得している人なの。 ほとんどが振付けと演出での受賞なんだけどね。 でも何年か前に死んじゃったのよ。 とっても残念だわ。」

K「は〜。 良い人は早死するって言いますもんね。」

A「えっ! 何だって、何言いたい訳?」

S「まあ、まあ。 で、全体ではどうだったんですか?」

A「絶対に皆に観てほしいわね。これぞエンタテイメントって感じなの。 最初から最後まで観客の眼を舞台から離させないぞって言う感じ。 これでツアー・キャストなのよね。本場で観たらどんなに凄いか。日本のどこかの劇団とは大違い。もっとどうに かして欲しいわよ、本当に。」

S「そんなに差があるんですかね?」

A「あり過ぎね。 本場物を観ちゃうと歴然ね。 早く日本のレベルもあそこまで上がって欲しいわ。 でも、前よりぐっと上がっていることも事実なんだけどね。 ほら、向うでは代役のシステムがしっかりしているでしょ。 自分の出来が少しでも悪いとすぐに代役の人に役を持っていかれちゃうのよ。 だから何時も冷や冷やなのね。 日本ではこの役はこの人って決っちゃってるじゃない。 大げさに言っちゃえば、役を貰っちゃったら勝ちなのよ。 そこなのね。 常にベストなキャスティングをする外国のシステムは、演じる方にとっては、毎日が戦争なんだけど、観るほうにとっては安心していられるの。」

K「ここはその点良いですよね。 何時も 安心だから。」

A「えっ!なに言いたいの? ここでは緊張する場面に遭わないってこと? は〜って言わないと思ったら、こういう事ははっきり言うんだから。」

S「いいじゃないですか。 落ち着いて飲めるって。」

A「そうね。まあ、いいか。 そう言えば正ちゃん、注文まだなんだけど。」

S「あっ、いけねぇ。 パッソア・ソーダお願いします。」

A「あいよっ!」



"CHICAGO"は新宿厚生年金会館で3月14日まで公演しています。
まだの方はこれからでも間に合いますので是非行ってみて下さい。
観てきた方の感想をお待ちしています。