AL JARREAU

ワルツ・フォー・デビー


 今年の夏は異常な暑さですね。そんな暑い日には、部屋に篭ってグラスを傾け、素敵な音楽と共に時間を過ごしたいものです。 そこで、今回紹介するアル・ジャロウの<ワルツ・フォー・デビー〜アル・ジャロウ・シングス・スタンダード>を聴いてみて下さい。 そんなシチュエーションにピッタリです。

 アル・ジャロウ。彼の名前はもうず〜っと前から聞いた事があると思います。が、その音楽に接した方は意外に少ないかもしれません。 グラミー賞でも、ジャズ、R & B、ポップと三つのジャンルで受賞している世界的な歌手なのですが、どうも日本では、 爆発的に盛り上がる事はありませんでした。彼の技術を駆使した声が日本では受けにくかった事がその原因として挙げられるかもしれません。 が、今回紹介するこのアルバムでは、スタンダードを多く取り上げて、今までにはない彼の世界を築き上げています。

 彼をご存知ない方のために、少しここで彼を紹介しておきましょう。
 1940年、アメリカはミルウォーキーの生まれですから、今年で64歳。60年代後半からクラブなどで歌い始めて、 75年にワーナーからデビューアルバムを発表。一部のジャズファンから猛烈な支持を受けますが、 いまいち売上には結びつきませんでした。が、続いて発表したセカンドアルバム<輝き>で、多くの支持を獲得し、 特にヨーロッパのツアーでは、売り切れが続出するほどの人気を得たのでした。そして、先にも言ったように、 グラミー賞では、ジャズ、R & B、ポップ、と3部門を獲得するまでになったのです。90年代半ばからは暫く録音をせず、 ステージ活動を主な仕事にしていたのですが、99年にヴァーヴに移籍してから、再びレコード録音の活動を再開し、 今年このアルバムを発表したというわけです。 それでは紹介していきましょう。

 エディ・ハリスの少しファンキーなナンバー#1。まずはエアコンの効いた部屋で、ギンギンに冷えたヴォッカをストレートで、 と、いきたいですね。フルートの様な彼の声に包まれながらバーボンのロックでも口に含みたくなる#2。 ハモンドオルガンの響きがお酒を進ませる#3。デビュー当時の声の抜け方も懐かしい#4。この曲には、 お洒落にキールでも如何でしょうか?そのキールをお代わりして恋人と語り合っているシーンが想像できる#5。 このアルバムのタイトル(日本盤のタイトルとは違っています)にもなっている#6。随分昔に、 アンドリュー・シスターズが唄っていましたが、ここでは、酔っ払い運転をしている感じで、とてもグルービーですね。 ちょっと一休みの感がある#7。数年前に亡くなったジャズ歌手ベティー・カーター。彼女に囁き掛けるように唄うアルの優しい声。 思わずウトウトしてしまいそうです。日本盤のタイトルになっている#8。後半のヴォーカリーズで、 彼の本領を窺う事が一寸だけできました。その彼の本領を遺憾なく発揮された#9。 キューバ・リブレでキューっと一杯てな気分でしょうか。お酒に走る気持ちを抑えるかの様な#10。 カンパリソーダの泡を見つめながら、ふと何を考えるでもなく、ただボーっとしている。そんな時間も必要です。 アルバムの最後は、やっぱりスコッチのストレートで、と思わせる#11。 でも、飛ばしているこの曲を聴いていると一杯では終わりそうもありませんね。ご機嫌になりながらアルバムは終わります。

 如何でしたか?エアコンの効いている部屋で飲んでいるお酒が回る回る。とっても気分が良い一枚でした。アルバムの番号は、 国内盤が UCCR1042 でユニヴァーサルから、輸入盤は 0602498612750 でヴァーヴから出ています。 ジャズ・ヴォーカルのコーナーに行ってみて下さい。