NANCY WILSON

R.S.V.P.


 今年の夏は記録ずくめの猛暑でしたが、10月に入ってからは、めっきり秋を感じる様になりました。 そんな秋に相応しいアルバムを紹介しましょう。ナンシー・ウィルソンが、音楽生活50年を記念して出した <R.S.V.P.〜レア ソングス、ベリー パーソナル>です。
 ナンシー・ウィルソン、このコーナーではNo.15に続いて二度目の登場です。1937年、 アメリカはオハイオ州で生まれた彼女は、幼い時から音楽に親しみ、今年で音楽生活50年になるそうです。 プロとしてのデビューは1956年、レコードデビューが1960年ですから、プロになる前から数えて、 という事でしょう。その彼女が、今までに録音していない(一曲を除いて)曲を集めて、 豪華なゲスト陣と共に作った素敵なアルバム、それが、これから紹介する<R.S.V.P.>です。
 ナンシー・ウィルソンについては、今更紹介するまでもないくらい有名でが、簡単に紹介すると、 生まれやデビューは先に書いた通りです。1960年、キャピトルレコードから<LIKE IN LOVE> でデビューした彼女は、そのヒットで瞬く間にスター街道まっしぐら。ジャンルを超えた歌を披露してきて、 アルバムの数は60枚を越えています。また、その美貌から、TVの連続ドラマ(確か刑事もの)に主演するなど、 目覚しい活躍をしてきました。しかし、今なお、その活動は衰えることはなく、世界各地でライヴを行うなど、 精力的に活動しています。その彼女が今回届けてくれたアルバムを聴くと、とても歳を感じさせない、 素晴らしい歌声を聞かせてくれています。それでは、紹介していきましょう。

 いきなり大人の雰囲気が漂う#1。大変珍しい曲で、キャロル・スローン が二度ほど録音している他には耳にした事がありませんでした。フィル・ウッズのアルト、 トゥーツ・シールマンズのハーモニカが大人の雰囲気を倍増させてくれます。#2はビッグ・バンドとの共演です。 大劇場でのコンサートを聴いているかの様で、こちらも乗ってきますね。しかし、このスタンダード曲、 ナンシーが一度も録音していなかったとは、これも驚きです。60年代にナンシーとアルバムのヒットチャートを争った大スター、 バーブラ・ストライサンドが歌った懐かしい曲#3。ストリングスがなんて美しいのでしょうか。 デュエットしているのは、最近頭角を現してきたソウル畑のケニー・ラティモアです。 このアルバムで数曲のアレンジを担当しているジェイ・アシュビーとニューヨーク・ヴォイセスのキム・ナザリアン との奏でるバックコーラスが心の静寂を誘ってくれる#4。デューク・エリントンの曲には本当に ビッグ・バンドが良く似合うと思う#5は1930年代から歌い継がれている名曲です。 ドラマティックなナンシーの歌唱が別れの哀しさを増幅させる#6。木漏日を浴びて ベランダで温かなスープをすすっている日曜の午前11時。そんなシチュエーションが浮かんでくる#7。 もうひと寝入りしたくなりますね。ブラジルのイヴァン・リンスが映画のために書き下ろした#8。 カエターノ・べローゾの書いた原詞をイヴァン・リンスが歌って、ニューヨーク・ヴォイセスの ピーター・エルドリッジが書いた英語詞をナンシーが歌うデュエットがとても素敵です。 このアルバムでは、唯一ナンシーが以前に録音した事のある#9。機会があったら聴き比べてみるのも良いかもしれません。 トロンボーンが秋の暮れ行く夕陽の絵を引き出してくれる#10。10年ほど前の新しい曲ですが、 これからスタンダードになりそうです。ゲイリー・バートンのヴァイブラフォーンが印象深く耳に残る#11。 アルバムの最後、#12は、もう40数年ぶりの共演になるのでしょうか、1960年のアルバムで共演した、 ジョージ・シアリングとのデュエットです。夕暮れからどっぷりと日が暮れた、そんな感じです。

 如何でしたか?とっても秋を感じるアルバムでした。しかし、この充実度、本当に素晴らしい! 歌は3分のドラマだと言った人がいますが、そのドラマを表現出来る数少ない歌手ナンシー・ウィルソン。 これからの活躍をさらに願いたいものです。アルバムの番号は、国内盤が UCCT-1097 でユニバーサルから、 輸入盤がMCGJ 1013 で mcg jazz から出ています。ジャズヴォーカルのコーナーに行ってみて下さい。
 また、No.15で紹介したアルバムも大変秋に相応しい素敵なアルバムですので、そちらも一度お聴きになってみては如何でしょうか?