CHAKA KHAN

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 この所、マイケル・ボルトン、ロッド・スチュワート、レジーナ・ベルと、 ロック・ソウル畑の人たちがスタンダードを歌ったアルバムを次々と発表していますが、その中でも、 つい先頃アメリカで発売されて今回紹介するチャカ・カーンの新譜、<クラシッカーン>は、 彼女の実力を余す所なく発揮して大変素晴らしいものとなりました。それも、 ロンドン・シンフォニーとの共演なんですから、聴く前からウキウキです。

 チャカ・カーンについてご存知ない方の為に、ここで彼女を少し紹介していきましょう。
 彼女の生まれた正確な年月日は分からない(彼女のホームページにも記載がないのです)のですが、 彼女のキャリアから考えると、おそらく40〜50歳くらいだと思われます。 1973年に白人と黒人の混成バンド、<ルーファス>のヴォーカリストとしてデビューした彼女は、 すでに、彼女のヴォーカルスタイルを確立していたといっても良いでしょう。そのダイナミックでパワフルな歌声は、 ちょっと下品かとも思われる彼女の格好ですら忘れさせるほど強烈なものがありました。 78年にはアルバム<恋するチャカ>でソロデビュー。その後、ソロで出したプリンス作曲の <フィール・フォー・ユー>、デヴィッド・フォスターの<スルー・ザ・ファイヤー>が大ヒット、 押しも押されもせぬ大スターになったのです。彼女の今回のアルバムは、ジャズやポップスから選曲されていますが、 彼女のジャズとの関わりあいは、81年発売のソロアルバム<恋のハプニング>から。その中で<チュニジアの夜> を彼女なりのアレンジで取り上げ、翌82年にはチック・コリアやフレディー・ハバードとのジャズアルバム <あの頃のジャズ>を発表するまでになりました。しかし、このアルバムは、気負いすぎたせいか、 彼女のいい所が遺憾なく発揮されているとはいえず、物足りないものになってしまいました。が、 アルバム<ビバップを歌う女>で<ジャイアントステップ>や<ヤードバード組曲>等をメドレーで歌い、 その大胆なアレンジが注目されました。その後も、88年にはマイルス・デイヴィスと共演した曲を入れた <CK>を発表しますが、マイルスは既にポップス畑の人との共演がいくつかあり、 これもあまり評価されずに終わっています。しかし、今回紹介する<クラシッカーン>は、 彼女のベストというべき出来で、思わず唸ってしまうほどです。それでは、紹介していきましょう。

 いかにもジャズアルバムだと思わせたい風の#1。ミュージカル<スウィート・チャリティー> からの一曲です。売春宿でお客をひいている娼婦達の、歌ですが、ジャケットを見ると、何か、 その雰囲気を感じてしまいます。チャカのお母さんに捧げられています。ビッグバンドがハーレムらしさを良く表している#2。 途中のチャカが歌うスキャットもいいですね。これは、この曲の作者、オスカー・ブラウン・ジュ二アとその息子、 そして、チャカの妹のボニーに捧げられました。ストリングスがチャカの強烈な歌声を中和させてくれる#3。 彼女の妹、タミーとその息子に捧げられています。ホテルのラウンジで聴いているかのような#4。 大人の雰囲気です。もう70年も前に公開された映画<夜毎八時に>で使われていた甘いラヴソングの#5。 チャカなりにジャズっているのがとっても素晴らしく、鳥肌が立ってしまいそうです。彼女のおばあさんに捧げています。 語りが入る#6。とにかくお洒落な一曲です。曲のアレンジも最高ですね。彼女とは古い付き合いの アリフ・マーディンに捧げられています。70年前のミュージカルショー、<コットン・クラブ・パレード> でエセル・ウォーターズが歌って評判になり、後にリナ・ホーンの代名詞ともなった#7。 黒人歌手の先輩達に負けない歌唱をチャカも披露しています。勿論、リナ・ホーンに捧げています。 ジャズの中でも名曲であり、かつ難曲である事で有名な#8。彼女もしっかり歌ってます。これは、 クインシー・ジョーンズに捧げていますね。恋のABCからXYZまでを教えてという#9。さて、 それをチャカに教える勇気があなたにはおありでしょうか?空間の広がりを感じる#10。 彼女のお父さんとシドニー・ポインターに捧げられました。#11、#12ともに映画007の主題歌で、 オリジナルはシャーリー・バッシーが歌ったものですが、チャカもシャーリーに負けじと凄い迫力で聴かせます。 #11が甥のタイラーに、#12はシャーリー・バッシーに捧げられています。チャカ・カーン作曲のオリジナル #13でアルバムは終わりますが、この曲を捧げた一人、彼女の息子ダミアンは先日、 友人を射殺した疑いで逮捕されてしまいました。この歌が彼の心に届かなかったと思うと残念でなりません。

 如何でしたか?とってもゴージャスな夜を堪能できたんではないでしょうか?元々、 「最終的にはジャズ歌手になれたらいいと思う」って、昔彼女が言っていたのを思い出してしまいました。 このアルバムを中心にしたステージも観たくなってしまいますね。アルバムの番号は、輸入盤が 06076-87524-2 でAGUミュージックグループから、国内盤は、12月16日発売予定で、VICP 62901 でビクター・エンタテイメントから出ています。 ソウル、R&B のコーナーで、チャカ・カーンの所に行ってみて下さい。