Dominic Miller

Shapes


 ドミニク・ミラーと聞いてピンときた人は、相当のスティング通です。 1990年に初めてスティングのアルバムに参加してから、ほとんどのアルバムにギタリストとして参加しているのが、 今回紹介するドミニク・ミラーなんです。その彼が去年発売した(日本での発売は今年3月です)アルバムは、 クラシックの名曲を集めた素晴らしい物になりました。本当は昨年のクリスマスに、と思っていたのですが、 延び延びになって、今回紹介する事になりました。
 彼を知らない人の為に、少し彼を紹介しておきましょう。
 1960年にアルゼンチンのブエノスアイレスで生まれたかれは、15歳でギタースクールに通い始めます。 その後、通った音楽学校では、ヴァイオリニストのナイジェル・ケネディらと勉強を共にし、 1989年にフィル・コリンズのアルバムに参加した事から注目を浴びるようになります。1990年、 スティングのアルバム制作に参加し、以降、スティングのほとんどのアルバムにギタリストとして参加、 ツアーにも参加して、今や、スティングのアルバム作りには欠かせない存在になっています。1995年に、 ドミニクは初めてのソロアルバムを制作し、この<シェープス>で4枚目となります。このアルバムは、 クラシックの名曲を集めた、彼としては今までにない冒険でしたが、 2003年にイギリスのクラシックチャートでナンバー・ワンを獲得するほどの大成功となりました。
 それでは紹介していきましょう。

 何か大きな宇宙を感じるバッハの#1。ほの暗い部屋に点るキャンドルが目に浮かびますね。 ギターの泣きが涙を誘う、アルビノーニの#2。ストリングスが涙の幅を増幅させます。 スティングと共作した#3は、そのスティングのヴォーカルが花を添えています。スティングファンにはもう有名な曲ですね。 誰でもが知っている#4。心が落ち着きます。元々はヴァイオリンの為の曲#5。ギターのテクニックが光ります。 いかにもクリスマス、といった雰囲気の#6。スティングと声楽界のドン、 プラシド・ドミンゴとの競演が何処となく不思議な雰囲気を醸し出しています。宇宙遊泳をしているかのような#7。 エルガーと言う人の世界が解る気がしますね。サティーの#8はもう何も言う事はないでしょう。 明日への明るい兆しが見え始めた様な感じです。彼の生まれ故郷、アルゼンチンへのトリビュートとして演奏した#9。 ドミンゴの歌声が故郷への想いを伝えていますね。アルゼンチンの歌手、アレハンドロ・レルネルを迎えて贈る#10。 元はバッハの曲ですが、全く別の曲に聞えます。ジャズ・トランぺッターのクリス・ボッティを迎えて大きな世界が見えてきた#11。 アレンジの素晴らしさを実感します。アルバム最後は、ベートーヴェンのピアノソナタからの#12。心を落ち着かせて、 背筋を伸ばして、そんな気持ちにさせられます。

 如何でしたか?楽しい、ワイワイとしたクリスマスもいいですが、 たまにはしっとりとしたクリスマスを過ごしてみるのも良いのではないでしょうか。 とても素晴らしいアルバムでしたね。アルバムの番号は、国内盤が、UCCL1078 でユニヴァーサルから、 輸入盤が、475 479-2 でデッカから出ています。ジャズギターか、クラシックのコーナーに行ってみて下さい。