郷 ひろみ

比呂魅卿の犯罪


待ちに待った名盤がとうとう復刻されました。今回紹介する郷ひろみの1983年の作品、<比呂魅卿の犯罪>は、 歌謡曲史上に残る名盤なんです。え〜〜?と言わないで一度聴いてみて下さい。 あなたの持っている郷ひろみのイメージが一掃される事だと思います。

郷ひろみについては今更何も説明する事はないでしょう。ここの所、生活の拠点をアメリカに移していて、 歌手活動も休業状態でしたが、つい先ごろオーストラリアでファン500人を迎えて復帰宣言をしたばかり。 これからの新たな活躍が期待できます。実は彼、私と同じ歳ばかりか何と誕生日が二日違いという事で、 一方的に親近感を覚えていたのですが、一般的にはその声の好き嫌いからか、評価はまっ二つ、 という感があります。しかし、嫌いな方もこのアルバムを聴いた途端にその思いは逆転する事間違いなしです。 それもその筈、このアルバム<比呂魅卿の犯罪>は、サウンド・プロデュース に坂本龍一を迎えて全ての楽曲に編曲を依頼、その他にも作家陣に中島みゆき、矢野顕子、糸井重里、 筒見京平などなど、そうそうたるメンバーで作られた作品だからなんです。郷ひろみのアルバムには、 単なる歌謡曲のアルバムというものだけではなく、素晴らしい企画の基に作られた作品が幾つかありました。 例えば、アメリカの売れっ子スタジオミュージシャンが集まって作られた<42ND STREET BAND> を全面にフューチヤーしたアルバムはその良い例でしょう。それらのアルバムも是非再発してもらいたいものです。 それでは、紹介していきましょう。

法廷シーンの独白から始まる#1。演技はお手のものだけあって、シーンが頭に浮かびますね。 この一曲目で、あなたもこのアルバムのヒロミワールドにはまり始めたのではないでしょうか?格好いいです。 郷ひろみの声が魔法の様に聞こえてくる#2。糸井重里の歌詞が不思議ワールドの世界に誘ってくれます。 #3も正に不思議ワールドに迷い込んだ状態。サーカスのテントの中で息をのんで見つめるアナタがそこに居ませんか? 作詞の忌野清志郎が歌っても面白いと思わせる#4。何故かアジアンテイストを感じる#5。 坂本龍一の編曲がそうさせているのでしょうか。以前にレコードで発売された時はこれからがB面。 少しA面とは趣きが変わります。その一曲目である#6。2時間の火曜サスペンス劇場を3分間で見た様な気分です。 このアルバムからのシングルカット#7。勿論、こちらはアルバムヴァージョンなのですが、 中島みゆきと筒見京平の何とも言えぬアンバランスな共存が素敵な味を出しています。これぞ歌謡曲! ですね。赤い服の女と黒服の男。二人が黙々とタンゴを踊る姿が浮かんでくる#8。ちょっと大人の世界で格好いいです。 後半にちょっとだけしか出てこない矢野顕子の声と郷ひろみの声とが妙に溶け合って何とも言えない世界を作っている#9。 郷ひろみ作詞作曲の#10は、このアルバムがひとつのショーであった事を分からせてくれます。男と女の愛の旅、 君と僕との愛を巡るパズルの世界がアルバム全体を通して表現されているとても素敵な一枚でした。 このアルバムを舞台で表現しても素晴らしい物が出来上がるのではないかと想像できます。ボーナストラックの #11は#7のシングルヴァージョン。さてみなさんはどちらがお好きでしょうか?

如何でしたか?とっても不思議な世界に浸って頂けたと思います。当時、世界を股にかけて活躍していたY.M.O. (イエロー・マジック・オーケストラ)の歌謡曲版とでも言える、本当に素晴らしいアルバムでしたね。 あなたの郷ひろみ感も変わったのではないでしょうか?復帰後の活動にも注目していきたいですね。 アルバムの番号は、MHCL 495 で、 ソニー・ミュージックから出ています。J-POPのコーナーに行ってみて下さい。