CHIARA CIVELLO

Last Quarter Moon


 ゴールデンウィークが終わってから東京では肌寒い日が続いていますが、梅雨に入る前、 5月の爽やかな風をみなさんにお届けしたいと思います。今回紹介するキアーラ・シヴェロの <ラスト・クォーター・ムーン>がそのアルバムです。

 キアーラ・シヴェロ。誰?その人。と思う方は沢山いらっしゃるでしょう。それもその筈、彼女、 まだデビュー仕立ての新人なんですから。しかし、その才能は、歌だけにとどまらず、作詞、作曲、 それに編曲まで、おまけにピアノも上手いという、これからが大いに楽しみなアーチストなんです。
 彼女を少し紹介しておきましょう。1975年6月イタリアはローマ生まれと言いますから、 もうすぐ30歳を迎える彼女お音楽との出会いは、子供のときに祖母に勧められたピアノからでした。 16歳になると歌を勉強し始め、ローマにあるセント・ルイス・ミュージック・アカデミーで学び、その後、 アメリカのボストンに渡って、名門バークリー音楽学院で学びます。その時、丁度彼女と同室だった トニー・ベネットの孫娘の紹介で大きなチャンスが訪れます。トニー・ヴェネットのアルバムで、 彼とデュエットする事になったのです。それからバークリーを卒業した彼女はニュー・ヨーク に出て演奏活動を続けていきますが、ここでまた大きなチャンスがやってきます。その時の彼女のバンド仲間が ポール・サイモンと仕事をする事になったのです。そこで、たまたま見学に行った彼女はバンド仲間に プロデューサーのラス・タイトルマンを紹介されます。このプロデューサーこそ、70年代〜80年代にかけて ポール・サイモンを始めとして、リッキー・リー・ジョーンズやジェームス・テイラーなどを手がけてきた大物だったのです。 彼はキアーラの演奏と歌を聴き早速契約し、今回のデビューアルバムを制作する運びとなったのです。 それでは紹介していきましょう。

 いきなり自作で始まるアルバムの#1を聴いて、もう彼女の虜になってしまわれた方も多いでしょう。 ノラ・ジョーンズとは明らかに違った魅力があります。どこかローラ・ニーノを想い出させる#2。 マイク・マニエリのヴィブラフォンが寂しさを更につのらせます。ヨーロッパの風を感じる#3。 最後の方ではアル・ジャローばりのヴォーカル・パーカッションも聴かせます。 #4はどこかで聴いた事がある人も多いでしょう。スザンヌ・ヴェガの作品です。キアーラの声にとっても合っていますね。 メロディカの音色が哀愁を感じさせます。エンリオ・モリコーネの影響が見られる#5。素敵な曲です。 タイトルにもなっている#6。月に関係する曲ってあんまり明るい内容が無いように思いますが、 この歌も例外ではありません。でも、ジト〜ッと暗いのではなく、何となく前を向いていられそうな気がしませんか? 軽いボッサで心地よい#7。ケニー・ランキンやマイケル・フランクスが歌っても、また違う感じが出て良いかもしれませんね。 イタリア語の歌詞と英語のユニゾンが妙にマッチして美しい#8。ヴォーカリーズの#9。爽やかな風です。 バート・バカラックとの共作#10。このコーナーではお馴染みのホーザ・パッソスが歌った#11。 海辺のパラソルの下でアフタヌーンティーでも飲んでいる情景が思い浮かびますね。輸入盤では最後の曲#12は、 彼女の弾き語りです。是非生のステージを聴いてみたい気がしてきます。この後、国内盤では2曲のボーナストラックがついています。

 如何でしたか?乾いた感じの爽やかな風。そんな言葉がピッタリだとおもいませんか?このキアーラという名前、 国内盤だとキアラになっていますが、イタリア語の正しい発音ではキアーラとなりますので、 ここではキアーラとさせて頂きました。ちなみに2003年度の統計によると、イタリアでは女性で2番目に多い名前なんです。 (参考までに一番多い名前はGiulia〜ジュリアだそうです。)アルバムの番号は、輸入盤が、0044006563220でヴァーヴより、 また国内盤は、UCCV-1066でユニヴァーサルから出ています。ジャズヴォーカルのコーナーに行ってみて下さい。