Linda Ronstadt

Hummin' to Myself


 このコーナーをご覧になって下さっている方のなかには、何で今更?と思う方も沢山いらっしゃると思いますが、 そういった方々には、もう一度彼女の歌声に耳を傾けては如何かな?と思い、また、彼女を知らない若い方々には、 やっぱり音楽は奥が深いんだ、と言う事を分かって頂きたいと思って今回は彼女を取り上げる事にしました。 彼女の名前は、リンダ・ロンシュタット。そう、かつて<ミス・アメリカ>と呼ばれていたその人です。 そのリンダが20数年前に出した、所謂、ジャズ三部作を上回る、大変素敵な作品を発表してくれたのです。 それが今回紹介する<ハミン・トゥ・マイセルフ>です。

 彼女を知らない人は殆どいないとは思うのですが、一応彼女を紹介してみましょう。
 アメリカはアリゾナ州、ツーソンで1946年7月16日に生まれたといいますから、 あと一年で還暦を迎えるリンダ・ロンシュタット。ジャケットでお分かりの様に、とてもそんな歳には見えない、 まだまだ若々しく、輝きすら感じますね。彼女が音楽に興味を持ち始めたのは勿論幼い頃。 エルヴィス・プレスリーが最初のアイドルだったと言います。高校時代は、彼女の実兄とともに、 フォークソング歌い始め、大学を卒業するとロス・アンジェルスに出て二人の友人とフォークトリオを結成、 1967年にデビューしますが、全く売れず、その後ソロとなって再びデビューしますが、これも全く売れず、 LAを離れてナッシュビルに移ります。そこで、カントリー&ウエスタン歌手として1971年再びデビュー。 これも全く売れませんでした。 (この時、彼女のバックバンドが後に大ブレイクするイーグルスの前身だった事はとても有名な話です。) しかし、そんな彼女に大きな転機が訪れます。 当時、ジェームス・テイラーを手がけていた大物プロデューサー、ピーター・アッシャーとの出会いです。 彼は、リンダの才能に惚れ込んで、彼女と契約、1974年に彼のプロデュースで発表されたアルバム <Heart Like A Wheel>の中からシングルカットした<悪いあなた>が全米ナンバー1になるという快挙を成し遂げたのです。 その後も大ヒットアルバムを連発していった彼女は、1983年からの所謂ジャズ三部作でファン層を広げていきます。 その後もカントリー界の二大スター、ドリー・パートン、エミルー・ハリスと共に<トリオ>を結成したり、 オペレッタに挑戦したり、ラテンのアルバムを出してみたりとその活躍は留まる所を知りませんでした。が、 2000年に出したクリスマスアルバムを最後にレコーディングから遠ざかっていました。2003年、 彼女の友人、アーロン・ネヴィルのアルバム<ネイチャー・ボーイ>にゲスト参加して、彼女もヴァーヴレーベルに移籍、 移籍後の初アルバムが今回紹介するジャズ・スタンダードを取り上げた<ハミン・トゥ・マイセルフ>なのです。  それでは紹介していきましょう。

 アラン。ブロードベントが弾く雨だれのような前奏に導かれてしっとり歌う#1。 リンダのジャズワールドに早くも引き込まれてしまいそうです。ビッグバンドを背に歌っている彼女の姿を想像してしまう#2。 ジュリー・ロンドンのハスキーヴォイスの虜になってしまった人は、きっと彼女のこの#3を聞いたからでしょう。 それだけ、ジュリー・ロンドン=#3と言えると思いますが、リンダの歌声も哀愁をそそります。 ボブ・マンのギターソロが何とも言えなくいいですね。タイトルにもなっている#4。ちょっと面白い曲ですね。 何気なく聴いていたスタンダードナンバーの#5。でも、その歌詞を良く聴いてみると結構怖い内容だったんですね。 フランク・シナトラの十八番の#6。片思いの感情が良く表現されているナンバーです。 クリスチャン・マクブライドとの前半の共演がとてもスリリングでいい#7。 #8のタイトルを聞くと何時も見てみたいと思うのは決して私だけではないでしょう。非現実的な幻想。何か素敵ですよね。 リンダのベタベタした声質がこの曲にはとても合っていて、夢の世界に引き込まれそうになります。 初めて恋をした時の気持ちって覚えていますか?そんな気持ちを歌った#9。ヴァースから歌ってメリハリを良くつけている#10。 失恋の歌ですが、ここではリンダの強い女の部分が出ていますね。アルバム最後の#11もヴァースから歌っています。 恋人を思う切ない気持ち。それがあなたにも伝わったでしょうか?

 如何でしたか?とても素敵でしたね。これから始まる梅雨時期にも、 外の雨を眺めながらちょっと感傷に浸ってこのアルバムを聴いている姿が想像できそうです。アルバムの番号は、 UCCV-1052(国内盤)で、ユニヴァーサルから出ています。ジャズヴォーカルか、ロックのコーナーに行ってみて下さい。