MADELEINE PEYROUX

careless love

国内盤
輸入盤

 今年の梅雨は少雨だと発表がありましたが、そこはやはり梅雨。雲が重く感じられる時がやはり多いですね。 そんな天気に部屋の中で何気なくこんな音楽がかかっていたらとってもお洒落です。 今回紹介するマデリン・ペルーの<ケアレス・ラヴ>がそのアルバムです。

 マデリン・ペルー。ほとんどの方が彼女の名前をご存知ないと思います。それもそのはず、 今回出たこのアルバムは何と8年ぶりなんですから。
 彼女を知らない人のために、ちょっと紹介しておきましょう。 彼女のデビューアルバムは1996年に出した<ドリーランド>でしたが、その時に22歳くらいなので、 今年で丁度30歳くらいになるでしょうか。アメリカはジョージア州生まれの彼女は、 幼いころをカリフォルニアやニューヨークで過しています。13歳で両親が離婚したのを機に母親とともにパリに移住しますが、 そこで色々なストリート・ミュージシャン達と知り合いになった事からあるグループに参加し、 ヴォーカルを担当する様になり、やがてヨーロッパをツアーするまでになりました。 その後ニューヨークで歌っていた時に彼女のデビューアルバムをプロデュースすることになるイヴ・ボーヴェスと知り合うのです。 そして、ジャズ畑に限らずやジャンルを超えた腕利きのミュージシャンらとレコーディング。 とても新人とは思えない豪華なメンバーで製作されたアルバムには、ベッシー・スミスやビリー・ホリデイ、パッツィー・クライン。 ファッツ・ウォーラー、そしてエディット・ピアフらの曲を取り上げ大きな話題になったものでした。 その後、なかなか次回作が出ないと思っていた所に、 TVの<セサミ・ストリート>のテーマ曲を手がけているウィリアム・ギャリソンのアルバム <Got You On My Mind>の中に11曲中7曲でその歌声を聴く事が出来たのです。 この中でのマデリンの歌唱はとても素晴らしいもので、 次回作に対する期待が大きくなっていた所へ今回紹介する彼女のセカンドアルバム、 <ケアレス・ラヴ>が発表になったという訳です。それでは紹介していきましょう。

 窓の当る雨の音がリズムとなって重なっていく#1。レナード・コーエンが、 もう20年位前に発表したアルバムに入っていました。彼女自身が弾くギター、ラリー・ゴールディングスのピアノ、 共にいい味を出していますね。ノラ・ジョーンズが放った大ヒット、<Don't Know Why> の作者ジェシー・ハリスとの共作#2はブルースフィーリングが溢れています。<ブルースの皇后> と言われた歌手、ベッシー・スミスの#3。古き良き時代が頭の中で想像できますね。 ボブ・ディランの歌がまだまだ影響力を与えていた時代の彼のナンバー#4。 目をつぶって聴いているとビリー・ホリデイが唄っているのかと間違える程の#5。 高いビルの窓から雨の降っている外をぼんやりと眺めている女性の姿があなたには見えるでしょうか? ビリー・ホリデイも唄っていた#6。しかし、その歌へのアプローチはビリーとはまるで違っています。 汽車に乗ってこれから旅にでようとする、そんな光景が見えてくる#7。ルイ・アームストロングの唄で大変有名ですね。 前にこのコーナーでも取り上げたディー・ディー・ブリッジウォーターのアルバムにも入っていた#8。 マデリンの唄はどこかカントリー風です。フランス語とカントリー風なアレンジのミスマッチ。お洒落!ですね。 もう半世紀以上前にハンク・ウィリアムズが書いた#9。 どこか浅川マキも唄っていた<セントジェームス病院>っていうブルースにも似ていますよね。気になった人も多いかも知れません。 とても白人のアプローチとは思えない程ディープな#10。色々な人がカヴァーしているこの曲ですが、 気ダルイ感じで唄う彼女のうたが何故かこの曲にはベストな気がしてなりません。タイトルにもなっている#11。 これもベッシー・スミスの持ち歌でした。ブルースって歌詞を聴いていると、とっても日常的なのが分かりますね。 アルバム最後の#12はビリー・ホリデイも唄っていました。このアルバムを聴いていた私達も、 このアルバムが自分にとっての天国だったかも知れません。

 如何でしたか?ちょっと重いけど、梅雨の季節に部屋の中で流れている音楽としては最高のような気がします。 ちょっと懐かしく感じるけど、とても新しい音だと思ったのは私だけではないでしょう。 ジャケットが国内盤と輸入盤では違っていますので購入する時にはお気に入りのジャケットの方で買ってみたら如何でしょうか? ギターを弾いている方が国内盤のスリップケースジャケットです。アルバムの番号は、UCCM9200(国内盤)です。 ラウンダーレーベルでユニヴァーサルから出ています。ジャズヴォーカルのコーナーに行ってみて下さい。