CAROLINE HENDERSON

MADE IN EUROPE


 今年の夏は、ものすごい暑さは有りませんが、連日朝方も気温が下がる事がなく、本当に嫌な夏になっています。 そこで、気分だけども秋になっていただこうとこのアルバムを紹介する事にしました。キャロライン・ヘンダーソンの <メイド・イン・ヨーロッパ>がそのアルバムです。

 ジャズヴォーカル好きの一部のファンを除いて彼女の事を知っている人はいないでしょう。そこで、 彼女のプロフィールを少し紹介していきたいと思います。

 アメリカ人の父とスウェーデン人の母の間にストックホルムで生まれた彼女は、 生後すぐにジャズミュージシャンの父親が拠点としていたニューヨークに移住。父親の職業とニューヨークという土地柄からか、 彼女の周りには常に<ジャズ>が存在していたのです。十代のはじめに母親と共にスウェーデンに移住して 16歳でジャズクラブに出演するようになります。やがてニューヨークに戻る途中立ち寄ったデンマークの コぺンハーゲンが気に入りそのまま滞在する事になります。 そこでバンドを組んで活動している間にモデルとしての仕事も舞い込んでくるようになり、 パリやミラノのコレクションに数多く出演、バンドの方は北欧ツアーが成功とキャリアを積んでいきました。 1995年には、初のソロアルバム<CINEMATAZTIC>をリリース。 これがその年のデンマークのミュージックアワードをことごとく獲得して彼女の存在が一躍人々の知る所となったのです。 今回紹介する<メイド・イン・ヨーロッパ>がソロとして6枚目になる彼女は、今年の4月、 日本を国賓として訪れたデンマークの皇太子、皇太子妃に同行し、公式レセプションでその歌声を披露しています。 昨年、皇太子の結婚式でも歌っているほど彼女がデンマークではいかに有名な歌手であるかが分かります。 それでは紹介していきましょう。

 語りから入る#1。大人の雰囲気が伝わってきます。ピアノのアール・ハインズが作ったこの#2には、 私自身、ちょっとドキっとさせられます。何故って自分は月曜日休み。まあ、その前に約束が必要ですけどね。 気だるい雰囲気がなんとも言えません。ブッチ・レイシーのアレンジがとても素晴らしい#3。 キャロラインも大人のトキメキを上手く表現しています。彼女のオリジナルでソロのファーストアルバムにも入っていた#4。 ちょっと怪しげで気になります。彼女が16歳で歌い始めた時に歌った思い出の曲#5。 知らない人がいないくらいのスタンダードです。1952年にローズマリー・クルーニーが大ヒットを記録していますが、 実は、この曲が出版された年(1946年)の一年後にサラ・ヴォーンが作曲者が支配人をしていたレコード会社で録音しています。 が、こちらは全く売れなかったという逸話が残っている曲ですね。キャロラインはアストル・ピアソラが大のお気に入りだそうですが、 そのピアソラ作曲の#6。真夜中に部屋に点った明かりのしたで踊る男女の姿が頭に浮かびます。 途中に入る彼女の囁きが何とも官能的ですね。彼女の歌の上手さが光るこのアルバムのタイトル曲#7。 ライナーノーツでは自作曲となっていますが、これは間違いです。ちょっと彼女の声質では若いような気がする#8。 でも、パワフルで上手いです。歌詞からすると初夏の昼下がりだと思われるけれど、 彼女の歌からは秋の昼下がりの田園風景が浮かんできてしまう#9。とってもレイジーです。 国内盤のライナーノーツには自作曲となっていますが、これは間違い。1954年のミュージカル<ゴールデン・アップル>の挿入曲です。 デンマークのフレデリック皇太子の結婚式で歌った#10。ガーシュインの有名曲ですが、 優しく寄り添う様に歌うキャロラインの歌い方がいいですね。ロックのグレイトフル・デッドが歌っていた#11。 こんなに変わるの?っていう位印象が違います。アレンジって本当に凄いですね。アルバム最後の#12。 彼女の母国語のひとつであるスウェーデン語でベースだけを伴奏に歌っています。 部屋に灯していた蝋燭の炎が消えたようにこのアルバムも終わります。どこか幻想的ですね。

 如何でしたか?ちょっと早い秋を感じていただけたでしょうか。アルバムの番号は、COCB53360(国内盤) でコロンビアより出ています。ジャズヴォーカルのコーナーに行ってみて下さい。