ERIC BENET

hurricane


 台風も去って、日に日に秋が近づいてくる感じがしますが、まだまだ暑い日が続きます。今回紹介するアルバムは、 「ちょっぴり早い秋を感じていただく」第二弾、エリック・べネイの新譜、<ハリケーン>です。

 エリック・べネイ。彼の名前を知っている人は相当いると思いますが、少し懐かしく感じるでしょう。 それもそのはず、この新作<ハリケーン>は何と6年振りのアルバムなんですから。彼を知らない人の為に、 ここで少し彼を紹介しておきましょう。

 1969年、アメリカはウィスコンシン州のミルウォーキーで生まれた彼は5人兄弟の末っ子として育ち、 高校を卒業すると、彼の姉であるリサとデュオグループ<べネイ>を結成、92年にEMIと契約を交わしてデビューします。 が、これは大失敗に終わりました。失意のエリックを周囲が励まし、ついに96年、ソロとしてのデビュー作 <TRUE TO MYSELF>を発表。70年代ソウルを彷彿させる内容に、 時を同じくして出てきたマックスウェルやディアンジェロと共に<ニュー・クラシック・ソウル>の旗手として注目を集めます。 その後、いくつかのサウンドトラックの中に彼のクレジットを見ますが、その歌唱や作曲能力が注目され続け、 99年にはソロアルバム第二弾、<A DAY IN THE LIFE>を発表、ネオ・ソウル、R&Bバラッド、 AORといった方向を打ち出し話題になったのです。2001年にはアカデミー賞女優となるハル・ベリーと結婚。 マライヤ・キャリーの主演映画<GLITTER>に出演、そのサントラではマライヤとデュエットと順調に行っていたかと思われたのですが、 彼の私生活に関する変な噂が横行したり、アカデミー賞を受賞したばかりのハル・ベリーと2004年に離婚と、 苦難の連続で新作が発表されないままでいたのです。そして6年振りに届いたこの新作<ハリケーン>。 心地よい秋風といった雰囲気が漂います。 それでは、紹介していきましょう。

 アコースティックギターのグルーブ感溢れる#1。手拍子をたたいて踊りたくなりますね。 懐かしいソウルミュージックの匂いがする#2。スローステップを踏みたくなります。 ちょっと今までのエリックの音楽とは違うなと思っていたら、なんとタイトルにもなっている #3はデヴィッド・フォスターのプロデュース。流石にアレンジの美しさが際立ちます。ソフトバンプな感じの#4。 お洒落なダンスフロアーが目に浮かびます。コーラス部分にスティーヴィー・ワンダーの影響が見られる#5。 曲の作り方も壮大で、この歌を歌っているステージ上のエリックの姿が想像できますね。 #6はマイケル・ジャクソンの影響も見られます。転調してからのエリックの表現力がとても素晴らしいです。 土臭いけれど、とても洗練されている#7。ハル・ベリーと結婚する十年近く前に付き合っていた彼女との間に儲けたインディア。 そのインディアに捧げた#8。上品なポップスに仕上がった#9。 如何にもデヴィッド・フォスターが作り上げたというスケールの大きな楽曲です。とても優しく心に迫る#10。 シンプルなバックのサウンドが曲を引き立てている#11。美しいストリングス、美しい曲、そして美しい歌声。 本当に美しい#12。心にジ〜ンと染み渡ります。曲の前半はオルガンの響きが心をくすぐる#13。 後半は光を感じますね。そして、アルバム最後の#14は、映画音楽を聞いているかの様な広がりを感じます。 このアルバムでも数曲プロデュースしているウォルター・アファナシェフとの共作ですが、この曲、 後々隠れた名曲として残りそうな気がします。とっても落ち着いた気持ちになりませんか? アルバム最後の曲に相応しい曲でした。

 如何でしたか?地平線に落ちる前の強烈な日差し。おでこに手を当てて、その向こうの地平線を眺めている。 最後にはそんな絵が浮かんで来るようなアルバムでした。アルバムの番号は、輸入盤が、9362-47970-2 で Reprise/Friday Recordsより、国内盤が、WPCR-12058 でワーナーより発売になっています。ソウル、または、 R&Bのコーナーに行ってみて下さい。