MARK MURPHY

ONCE TO EVERY HEART


 急に冷え込んで来て、めっきり秋の気配を感じる今日この頃ですが、 こんな季節にピッタリなアルバムを紹介したいと思います。 このコーナー#14で紹介して以来2度目の登場、マーク・マーフィーが、 これもこのコーナー#109で紹介したティル・ブレナーのプロデュースで吹き込んだ新作、 <ワンス・トゥ・エヴリー・ハート>です。

 マーク・マーフィー、73歳の新作は、歳が彼の半分以下のティル・ブレナーがプロデュースして作り上げられました。 なんて素敵なアルバムなんでしょう。私がこの新作を聴いた最初の印象です。以前、 プロデューサーのティル・ブレナーは、トランペット&フュリューゲルホーン奏者として出した2002年のアルバム、 <ブルー・アイド・ソウル>の中の一曲でマーク・マーフィーを起用していますが、 何を隠そう、ティルはマークの大ファンだったのです。その彼がプロデュースして出来上がった作品が悪い筈がありません。 実際、聴いていただければ分かるのですが、本当に聴き終わった瞬間に幸せな気分になってしまいます。 マーク・マーフィーとティル・ブレナーについては、このコーナー、各々#14、 #109を参考にして頂くとして、早速このアルバムを紹介していきましょう。

 前半をフランク・カステニアのピアノで、そして、途中から入ってくる美しいストリングス、 その上に被さる様に響くマークの声。#1でもう大人の世界にどっぷり浸かってしまいました。 憂いを帯びたフュリューゲルホーンは、勿論、このアルバムのプロデューサーであるティル・ブレナーが吹いています。 最初は間奏で違う曲を入れたお洒落な編曲と思って聴いた#2。実はメドレーだったんです。 <恋>をテーマにした2曲のメドレー。まるで一つの曲に聞こえます。次の#3もメドレー。 こちらは同じ年に作曲された物。1941年という大戦前の重たい雰囲気が伝わってきますね。 ティルのオリジナル#4。ちょっと冷えてきた夕方に、向こうに沈む夕陽を眺めながらコーヒーを入れる。 そんな情景が目に浮かんできませんか?#5はマークのオリジナル。彼の優しい声にうっとりしてしまいます。 このコーナー#109で紹介したティルのアルバム<ザット・サマー>。その2曲目にも入っていた#6。 お馴染み、<セサミ・ストリート>で蛙が歌っていた歌です。ティル聴き比べてみるのも面白いかもしれません。 タイトル曲#7は、ポール・ウェストンの美しいバラッド。マークのちょっと力を抜いた所の表現が最高です。 マークの歌に人生を感じる#8。デューク・エリントン作曲の#9はとってもブルージー。 打って変わって#10は軽い感じで歌われます。短いけどティルとマークの掛け合いがスリリングですね。 そしてアルバム最後の#11は、日本盤ボーナストラック。本当に日が沈んでしまった感じがしますね。

 如何でしたか?本当に秋にピッタリだとは思いませんか?ほっとした気分にさせてくれるアルバムでした。 是非あなたも大人の雰囲気を味わってください。アルバムの番号は、UCCV-1080(国内盤)で、ユニヴァーサル (ヴァーヴ)から出ています。ジャズヴォーカルのコーナーに行ってみて下さい。